「湿地」(06年・アイスランド/デンマーク/ドイツ) 「このミステリーがすごい!」選出のアイスランド作家のミステリー小説の映画化なんだけどねぇ!

湿地
僕が、アイスランドのミステリー作家アーナデュル・インドリダソンの小説「湿地」を読んだのが今年の6月ごろ。
確か、書店で彼の小説「緑衣の女」の文庫本が目立つように並べられていて、手に取って後書の解説を読んだら、北ヨーロッパで最も優れたミステリに贈られるガラスの鍵賞を前作の「湿地」に続いて受賞したとか書いてあって、ちょっと気になり、自宅近くの東成図書館にあるかなぁと探しに行ったら、単行本が3冊あったので、まずは「湿地」を借りて読んだんだ。

で、柳沢由実子さんの翻訳も良かったのか、すいすい読めたし、なかなか面白かった。ただ、アイスランドの地名や人名が耳慣れない長ったらしいものが多くて、最初は少々戸惑ったけど。巻頭に物語の舞台となるアイスランドのレイキャヴィックの地図があったので、何度も見直したやんかいさぁ。
続いて日本では翻訳2作目の「緑衣の女」を読み、3作目の「声」も読んだんだ。
いずれも期待にたがわず面白く読めたわ。
4作目の「湖の男」の翻訳本が今年の9月に発売されたので、図書館で貸し出し予約を入れたけど、人気があるのか、まだ未読でおまんにやわ。

そんな、00年に発表され、12年に日本で翻訳本が発売された「湿地」の映画化作品がリリースされると知り、どんな風に映像化したのか興味津々、レンタルしたんよね。
06年制作の映画だから、11年目にしてのリリース(劇場未公開)だが、なんで今頃とも思ったけど、A・インドリダソンの名前が日本でもそこそこ知られるようになってきたんかなぁ。僕の周囲の人間は誰も彼の名前を知らなかったけど。
多分、知っているのはミステリーや推理小説好きの間だけなんやろなぁ。
なんでも、北欧映画祭「トーキョー・ノーザンライ・ツフェスティバル2015」で上映されたらしいけどね。

さて、映画版「湿地」。
原作の脚色に関しては、小説で後半に登場する重要な人物を最初に登場させたり、
少なからず構成を変えたところはあったけど、大幅な変更はなく、小説通りに物語は展開していたな。
小説でもそうだけど、過去の出来事により、哀しい運命にさらされた人間たちの心情を描いた人間ドラマ的要素が強いミステリー小説だけに、それをより明確に見る側に伝えるために構成し直したんだろうな。
90分ちょっとの尺なので、長編小説をコンパクトにまとめ過ぎてるやんとも思ったけど、
途中でダレることもなく、さくさく展開するのも悪くないかなぁ。
主人公のエーレンデュル警部に扮したイングヴァール・E・シーグルソンも、
小説のイメージに近い気がしたしね。

舞台はアイスランドのレイキャヴィック。
あるアパートで老人ホルベルグの死体が発見される。
捜査にあたったのは、エーレンデュル警部と
部下の女性警官エリンボルグと男性警官シグルデュル。
被害者の部屋を調べたとき、机の引出しの裏から古い封筒を見つけ、
中に海沿いに立つ墓の写真が入っていた。
墓に刻まれた故人の名前を調べ、それが4歳で亡くなった少女の墓と判った。
そして、被害者との関係を探っていくうちに、過去に起きた忌まわしい出来事が次々と明らかになり…。

冷え冷えかつ荒涼としたアイスランドの風景の中、
物語は、捜査を続けるエーレンデュルや部下たちの行動が、タイトに描かれていく。
監督は、「ハード・ラッシュ」(12)「2ガンズ」(13)「エベレスト 3D」(15)など、
後にアメリカ映画を撮るようになったアイルランド出身のバルタザール・コルマウクル。
「ハード・ラッシュ」は、インドリダソンも脚本に参加しているところを見ると、
コルマウクルと親しい関係にあるのかも知れないな。
あまり、独自の演出センスってのは感じないけど、登場キャラをそつなく描き分け、
地味でメリハリに乏しいけど、そこそこの切れ味でストーリーを運んでいくやん。
重要な人物を原作と違って最初に登場させたことで、
時間軸的に少々混乱を生じさせる部分があるのが、ちょっと残念な気もするけどね。
コルマウクルは、脚本も手掛けてるけど、それなら、
映像的にもう少し工夫を凝らすとかしたら良かったのに。

エーレンデュルと、非行に走ってドツボ状態の娘エヴァとの関係など、
サイドストーリーを、メインの事件の結末と絡める、エーレンデュルが呟くラストのセリフは、
じんわりと切なさが漂い、いい感じだったけどね。

結局、自分ではどうにもできない現実を前に、“負の遺産”を絶とうとして起きた哀しい事件。
そして、結末もまた…。
こういう、もの悲しい話に、良くも悪くもアイスランドの風景がピッタンコとハマるなぁ。
監督も、それを意識したのか、俯瞰による風景を度々差し挟んでる。

それに、レクイエムを思わせる女性や男性のコーラスが、
哀しい人間の運命をなだめ、死者の安息を願うように流れるのも、なんかしんみりさせよる。

エーレンデュル警部に扮したイングヴァール・E・シーグルソンは、
ネットで調べたらアイルランドのレイキャヴィック出身で63年生まれ。
地味な風貌だが、渋さが滲む男優さんで、「エベレスト 3D」にも出ているけど、
実直に仕事をこなしながら、どこか孤独感を漂わせてる主人公を好演。
ちょっぴり寂しげなたたずまいが役にハマってるな。

脇のハンサム刑事シグルデュル役ビョルン・フリーヌル・ハラルドソンや
太目の女性刑事エリンボルグ役オーラフィア・フロン・ヨンスドッティルも、
多分アイスランドの俳優さんじゃないかと思うけど、
2人が、作品にちょっぴりユーモアをプラスしていて、いいアクセントになってる。

そして、物語の鍵となる、
娘をある病気で亡くした遺伝子研究会社で働くオルン役のアトゥリ・ラフン・シーグルスソン。
繊細そうな顔立ちで、自分の哀しい過去を知ったが故に心に渦巻く苦悩を、手堅く演じている。

しかし、アイルランドの俳優の名前って、一度じゃ覚えられないものばっかりやん。

ミステリーだから、あまり内容を詳しくは書けないけど、
ジャケットのコピーにあるような「世界的ベストセラーを完全映画化」とまではいかないが、
北欧ミステリーにちょっぴり触れてみるって気持ちで見ると、
小説を未読の映画ファンなら、それなりに楽しめるんとちゃう、と思える作品であ~りました。
ほんまにね。


アメイジングD.C. 2017年11月2日リリース



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「盗聴者」(16年・ベルギー/フランス) 几帳面な中年男が盗聴テープを巡る政治事件に巻き込まれる、タイト&クールなサスペンスやん!

盗聴者
「最強のふたり」で、日本でも少しは名前が知られるようになったフランス俳優フランソワ・クリュゼ。
僕が、彼の出演作を最初に見たのが「ラウンド・ミッドナイト」(86年)。伝説のジャズ・ミュージシャンと彼の音楽を愛するフランス・デザーナーの話で、クリュゼは、一人娘を育てる、やもめのデザイナーを力まず、さらりと演じていたな。

脇役が長かった人だけど、彼の主演作を初めて見たのが、劇場未公開でソフトリリースされた「唇を閉ざせ」(06年)。妻を殺された男が、彼女を巡る事件に巻き込まれるサスペンスだけど、なかなか面白かった。彼、この作品でセザール賞・主演男優賞をとったんよね。

そんなクリュゼ主演の新作が、この「盗聴者」。
失業中の主人公が、盗聴テープの聴き起こしの仕事についたばっかりに、殺人が絡んだ政治的事件に巻き込まれるサスペンスで、知らぬ間に事件に巻き込まれ、どんどん追い詰められていく平凡な男を好演していて、作品自体も地味ながら、なかなか楽しめたな。

デュバルは、知り合いの葬儀で、昔なじみのドグリューに会い、
自分はいま失業中で職を探していると彼に話した。
数日後、ある企業から仕事オファーの電話がかかってきた。
オフィスに面接に訪れると、代表者クレマンから、いろいろ質問された後、
君は右翼か左翼かと聞かれ、政治には興味がないと答えると採用OKになった。
クレマンは、保護すべき人や国にとって危険な人物を監視する業務を行っていると語り、
彼らの電話の盗聴記録テープの聴き起こしが君の仕事だと伝えた。
真面目で几帳面な性格のデュバルには、うってつけの仕事で、
指定された殺風景な部屋で、黙々とテープの聴き起こしを続けた。
ある時、テープから、アルジャンと呼ぶ声が聞こえ、何かただならぬ様子にぎょっとした。
しばらくして、デュバルは、たまたま読んだ新聞にアルジャン夫妻が殺された記事を目にした。
怖くなったデュバルは、辞職しようとしたが、クレマンの部下シェルフォが現れ、
今辞めたらどうなるか分からないぜと意味ありげに語り、
自分を君の車で、ある場所まで送ってくれと言い出した…。

最初に、以前の会社で働くデュバルが描かれ、
勤勉だが神経質で几帳面過ぎるばっかりに、ノイローゼ気味になるところを見せ、
主人公の性格を端的に描いてる。
それから二年の間に、妻と離婚し、職を失い、酒に溺れていたことが、
デュバルの数少ない言葉から、うかがい知れる。

ネットで調べたら、監督トーマス・クルイソフの劇場映画デビュー作のようだけど、
脚本も彼が手がけていて、タイトな作品作りを心掛けたみたいで、
セリフは必要最小限に止め、無駄な描写を極力排し、
平凡で人生の負け犬みたいな男が、知らず知らずのうちに身の危険にさらされる姿を、
ひんやりクールなムード漂うシャープな映像で描いてやろうとしたみたい。

だから、見る側が、映像や人物の行動から、物語を読み取っていかなきゃいけないところがある。
アメリカ映画のように、分かりやすくは作られていないんよね。
そのせいで、劇場未公開となったのかも知れないなぁ。

パソコンやスマホなど、今どきのデジタル情報社会で、盗聴テープをヘッドフォンで聴きながら、
紙に書き取っていくアナクロ的な方法が時代錯誤な気もしたけど、
監督は、一昔前のクライム・サスペンスの匂いを出したかったのかもしれないな。
いちおうクレマンに「デジタルは信用できない。情報が簡単に流出し、制御不能になる。
だから紙とテープを使う」と言わせていて、それなりに説得力を持たせようとしているけど。

話は、大統領選や中近東で拉致された人質にまつわる暗躍行動など、
政治的な背景が徐々に浮かび上がってくるんだけど、あまり小難しく描かれず、
とにかく、主人公が危険な世界に陥ってしまい、さあどう切り抜けるかを、
じんわりと緊張感を漂わせながら見せるな。

ラストは、もうちょいスリリングな展開があっても良かったような気もしたけど。
なんかあっさりし過ぎているような感じ。

フランソワ・クリュゼは、あまりスター・オーラを感じさせないベテラン演技派だけに、
追い詰められる男をリアリティたっぷりに演じ、さすが上手い役者やなと思わせる。
彼が演じるから、ハラハラさせるんやろなぁ。

謎めいたクレマン役のドゥニ・ポダリデス、治安総局のリーダーのラバルト役サミ・ブアジラなど、
脇の男優も、地味ながら渋めの俳優を配し、物語をギュッと締める役割を果たしているな。

デュバルが、断酒のために通っていたグループワークで知り合う女性サラを演じたアルバ・ロルヴァケルは、
そんなに美人ってこともないけど、ほのかにナチュラルな色気を放っていてチャーミング。
アメリカ映画なら、彼女もクレマンの一味とかの設定になりそうだけど、
最後まで平凡な普通の女性にしているところも、好感が持てたやん。

ま、いずれにしろ地味っぽい作品ではあるけれど、
僕にとっちゃ、それなりに面白がれた作品であ~りました。


アットエンタテインメント 2017年10月4日リリース



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「エンドレス・マーダー」(15年・オーストラリア) 殺し屋と彼に自分の殺しを依頼する男との奇妙な関係を描いた、不思議な味わいのヒューマン・サスペンスやん!

エンドレス・マーダー
前にもこのブログで書いたと思うんだけど、ソフトリリースされる劇場未公開の映画って、ユーザーに興味を持ってもらいやすいように、作品の内容とは食い違った売り方をされる場合がしばしばある。

この「エンドレス・マーダー」も、主人公は殺し屋だけど、ジャケットに書かれているようなクライム・サスペンスとは違って、“運命”に導かれて出会う、殺し屋と彼に自分の殺害を依頼する男との友情にも似た奇妙な関係を描いた、不思議な味わいのヒューマンドラマやったやん。

ま、キャストやスタッフに馴染みがないし、本国オーストラリアのメルボルン・アンダーグラウンド映画祭で最優秀助演男優賞や審査員特別賞他を受賞したと言っても、その映画祭自体知らないし、クライム・サスペンスとしてアピールするしかないんやろなぁ。

腕の立つ殺し屋スティーブンは、パーシバルと名乗る男から、
自分を殺してくれないかと、奇妙な依頼を持ちかけられた。
パーシバルは、以前、スティーブンがある殺しの依頼を受け目的場所に着いた時、
ビルの屋上から彼の乗ったタクシーのボンネットに落ち、瀕死の重傷を負った男だった。
スティーブンは、パーシバルから金を受け取ると、
彼の不意を衝いて胸に銃弾を3発撃ち込み、立ち去った。
しばらくして、殺したと思ったパーシバルがスティーブンの前に姿を現した。
今度は、パーシバルが洗面所に入った時に、彼の顔面や胸に銃弾を撃ち込んだ。
だが、パーシバルは片方の眼球は失ったが、死には至らなかった。
彼に興味を抱いたスティーブンは、バーで彼の死にたがる事情を聞き出そうとしたが、
なかなか本当のことは打ち明けてくれなかった。
でも問い詰めると、やっと自分がゲイで、愛する男を殺されたと打ち明けた。
寂しそうなパーシバルを見て、スティーブンは店にいたゲイの男に彼を誘惑させ、
ベッドで気が緩んでいるときに、顔に枕を押し当てて窒息死させようとした。
だが、現場を見られた相手の男を殺しただけで、パーシバルは息を吹き返し、死ななかった。
スティーブンは、3年前に最愛の妻を轢き逃げされて亡くし、
未だにその悲しみから抜け出せないでいたが、同じ悲しみをパーシバルも抱いているように感じ、
いつしか2人の間に奇妙な友情のようなものが芽生えていった…。

最愛の妻の死から立ち直れないでいる殺し屋と、死にたがる男の、
“必然的に出会うことになる運命”が、ちょいセンチメンタルなノワール・ムードを映像に滲ませながら、
ムダのない演出で丁寧に描かれてるな。

監督のドルー・ブラウンって人は、おそらくオーストラリアの人だと思うけど、
セリフより、映像で物語ることにポイントを置いているようで、
殺し屋が、妻が道路上で轢き逃げされて死んだことで、
それがトラウマとなって道路に足を踏み出せずにいたり、
自室では、亡くなった時に妻が着ていたドレスを身にまとい、
口紅を塗って、オペラを聞きながら、彼女を偲んだり、
彼の心の闇や深い悲しみを、巧みに視覚化しようと頑張ってる。

パーシバルにゲイと偽って近づき、彼を痛めつけて金を巻き上げたバーテンを、
彼を傷つけた仕返しとばかりスティーブンが痛めつけるところは、結構なバイオレンスで、
ヒューマンな味わいの中にハードな要素を上手に挟み込み、
物語にメリハリを付けてるな。

マイケル・J・コスピアーの脚本が良いのかもしれないが、
映画のオープニングの出来事が、結局すべての“運命”の引き金となり、
それをスティーブンが、画家であったパーシバルの絵によって最後に気づかされるという展開もニクイ!
何をやってもなかなか死ねない男という、呪いじみてるというか、オカルトじみた話なのに、
それを“運命”というくくりで、上手に人間ドラマとして成立させているやん。
フランスの思想家ヴォルテールの「カンディード」のなかの一節
「起きることは決まっていて変えられない」って言葉も出てくるけど、
変えられない“運命”を、ちょいサスペンスの味付けをして描いたとも言えるかな。
ブラウン監督の演出の手際の良さもあるけど、ラストは、なんだかジーンと来てしまいましたわさ。

精神科医エリザベス・キューブラー=ロスの
死と死ぬことについての画期的(らしい)本「死ぬ瞬間」の中の「死の受容のプロセス」が
主人公達の会話で引用されていているけど、
それがこの作品のテーマに少々関わっているような気がしたな。
まだ未読だから、何とも言えないけど。
図書館で、彼女の著書を探してみようっと。

スティーブン役のスティーブ・マウザキスは、オーストラリア・メルボルン出身の俳優で、
アメリカのTVシリーズ「プリズン・ブレイク」に出ているらしいけど、
これと言って特徴のある顔つきでもないし、華もなく、地味っぽいけど、
殺し屋として腕は立つが、どこかもの悲しさを滲ませていて、
微妙に人間臭い男を、力むことなくサラリと演じているな。
彼、メジャー作品の脇でキラリと光る演技を見せるタイプの役者みたい。

パーシバル役は、
本作でメルボルン・アンダーグラウンド映画祭・最優秀助演男優賞をゲットしたレオン・ケイン。
おそらく彼もオーストラリアの人だと思うけど、
後ろめたい過去ゆえに、いくら死のうとしても、なかなか死にきれない男を、
どこか愛嬌のある丸顔で、これまた好演している。
ズングリ体型のせいもあるけど、ちょいユーモアを匂わせているとこもナイスでごんすよ。

とにかく、ジャケットのようなアクションを期待したら、オヨヨと戸惑ってしまうかもしれないけど、
男二人の切なくも奇妙な友情を描いた異色のヒューマンドラマとして見たら、
なかなかの佳作やおまへんけと思うオージー・ムービーであ~りました。


トランスワールドアソシエイツ 2017年10月4日リリース



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「トロールズ」(16年・アメリカ) めっちゃカラフルでハッピーなファンタジー・ミュージカル・アドベンチャー・アニメやん!

トロールズ
ディズニー制作のアニメは日本でたいがい劇場公開されるのに、ドリームワークス制作のアニメは、最近じゃほとんど劇場未公開でソフトスルーとなってばっかり。
公開作で記憶にあるのは「シュレック」「カンフー・パンダ」ぐらいで、近作の「クルードさんちのはじめての冒険」も世界的にヒットしたらしいのに日本劇場未公開となっちっちだった。
「クールドさん-」は原始時代を舞台にしたファミリー・アドベンチャーで、上出来の作品だったし、セルDVDを買ったくらい僕のお気に入りの1本だ。
ドリームワークス作品の本作「トロールズ」も、アメリカじゃヒットして続編製作が決まったのに同様の運命で、たいしてPRもされずソフトリリースされちっち。
どうもドリームワークスのアニメ作品を扱ってる日本の映画会社が劇場公開に消極的らしいんだけど、去年、ドリームワークスがユニバーサル傘下に加わったらしいので、風向きが変わり、来年ぐらいから劇場公開されていくかもね。

ま、それはともかく、この「トロールズ」を見ることにしたんだけど、これがもう実に楽しくって、オッサンの僕でも充分に楽しめるポップでカラフル、ポピュラーなヒット曲もたっぷりのアニメだったやん。

歌と踊りとハグが大好きな、世界一ハッピーな小さな妖精トロールたち。
ある日、幸せを知らず世界で一番みじめな生物ベルゲン1人が、
ハッピーツリーのトロールを見つけて食べたら、幸せを感じることが出来た。
そこで、ベルゲンたちは年に一度、トロールを食べるお祭り、トロールフェスを始めた。
そしてやってきたお祭りの日、トロールたちの王様ペピーは、
身を挺して仲間を守り、みんなを安全なところに逃がし、隠れて暮らすことにした。
年月が立ち、ペピーの娘で勝ち気で元気いっぱいのポピー姫は、
ずっとベルゲンに見つからなかったことに安心し、
派手なパーティを開いて楽しもうとした。
ところが、トロールを逃がしたことで追放されたベルゲン王室専属料理人シェフが、
お祭りの明かりを見つけ、トロールたちに襲いかかってきた。
そして、ポピーの仲間がシェフにさらわれてしまった。
シェフは、トロールを手土産に王室に戻り、今度は自分が王の座に座ろうと考えていたのだ。
ポピーは、トロールなのに歌と踊りが嫌いなブランチの隠れ家に、
残った仲間を彼の了解も得ず無理矢理隠すことにし、
単身、さらわれた仲間を助けようとベルゲンの街に向かったが…。

トロールの造形が、最初は、ちょっとお子様向けっぽ過ぎる気がしたけど、
見ている間に、だんだんトロールたちに親しみが湧いてくるな。
勝ち気で向こう見ずなポピー、用心深くてネガティブ指向のブランチ、
また、ベルゲンの王子クリスル、雑用係のブリジットなど、
それぞれのキャラの性格付けや心情が丁寧に描かれていて、
すんなりと物語に入っていけるんだ。

ポピーが心配になって彼女の後を追い、
一緒に行動することになったブランチだが、最初は仲たがいの連続。
なかなか歌ったり踊ったりしない彼にムカッとするポピーだったけど、
その理由は、ブランチの悲しい過去にあった。

また、トロールを食べたことのないベルゲンのグリスル王子と、
彼を密かに慕っているが、自分の存在さえ気付いてもらえないと
思い悩む雑用係のブリジット。

二つのラブストーリーが、トロール救出作戦と上手に絡み、
物語が進むんだけど、ムダのない展開で、ほんと、ストーリーがよく練られている。
グリスルとブリジットのロマンスには、ちょいシンデレラもどきの部分があったけど。

ハッピーなはずのトロールの中に裏切り者がいたり、
ちょいヒネクレ気味のクモなど、
ちょっと大人チックなエピソードも見受けられるけど、
ドリームワークスの作品指向を、会社の創業者の1人ジェフリー・カッツェンバーグが、
「大人と、子供の中にある大人心に向けて映画を作る」と語っていて、
それが、本作にもちょっぴりだが反映されいているみたい。
だから、オッサンの僕にだって楽しめるんだな。

トロールたちが歌う曲は、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」、ドナ・サマーの「アイ・フィール・ラブ」、ライオネル・リッチーの「ハロー」、それにアース・ウィンド&ファイア、シンディ・ローパーなどのヒット曲で、これまた大人心にビンビンくるのもベリーナイスよ。
ブランチの声を担当している歌手ジャスティン・ティンバレイクが、本作のためにプロデュースした曲「キャント・ストップ・ザ・フィーリング!」も、ほんま佳曲で、聞くだけでウキウキしてくるやん。
アカデミー賞歌曲賞にノミネートされただけはあるわさ。

とにかく、ジャケットからお子様向けやんと判断しないで、
大人の映画&アニメ好きの人にも見て欲しいと思わせる作品やった、ほんまにね。
もちろん、お子様も充分に楽しめるでありんすよ~ん。


20世紀フォックス・ホームエンターテイメント・ジャパン 2017年8月2日リリース



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「ローンウルフ 真夜中の死闘」(14年・アメリカ) 盲目の年老いた退役軍人が狼男退治に命をかける、レトロムード漂うホラーやん!

ローンウルフ 真夜中の死闘
ドラキュラやミイラ男と並ぶ、ポピュラーなホラー・モンスターのひとり、狼男が登場する、ちょっと風変わりなホラー・ムービーがこの「ローンウルフ 真夜中の死闘」。

何が風変わりかっていうと、主人公は年老いた盲目の退役軍人で、ベトナム戦争でのある出来事で心が壊れてしまい、家族とも距離を置いて孤独に生きているって設定だし、物語の舞台となるのが年寄りだらけの高齢者専用住宅地なんよね。

その住宅地に狼男が出没し、老人たちを食い殺すって話で、主人公を演じるのは快作「ステイク・ランド 戦いの旅路」(10)でタフなヴァンパイア・ハンターを演じていたニック・ダミチ。
彼、アメリカのインディペンデント系の作品で活躍している人のようで、「ステイク・ランド-」じゃ脚本もこなす才人みたい。他の脚本作にカニバリズムをテーマにした「肉」(13)があり、どうもホラー指向が強いみたい。
59年生まれだから、本作の出演時は55歳だけど、老けメイクで老人になりきり、孤独に生きる主人公を力演してるやん。

高齢者専用住宅地に、愛犬シャドーと共に引っ越してきた盲目の退役軍人アンブローズ。
新居の壁に食い込んでいた得体のしれない爪を見つけ、不安がよぎる。
その夜、隣人のデロリスが何者かに襲われた。
激しい物音に目を覚ましたアンブローズは、壁を叩いて彼女の名を呼び続けた。
そんな彼のもとに、デロリスを襲った者が侵入し、彼にも襲いかかってきた。
必死に抵抗し、何とか追い払うことは出来たが、
彼を助けようとしたシャドーは息絶え絶えの深手を負った。
アンブローズは、シャドーの苦しみを見かね銃弾を撃ち永眠させた。
翌日、やってきた警官から、デロリスが惨殺された事を知ったが、
近くの森の野生動物が襲ったのだろうと結論付けられる。
でも、昨夜は満月で、ひと月ごとに似た事件が起こっていると聞いたアンブローズは、
襲った者の正体を悟り、一人でそれと戦おうと準備を始めた…。

狼男をモチーフにしながら、主人公の心の闇と、彼と息子夫婦の気まずい関係など、
ドラマ要素を巧みに絡め、どこか80年代チックなレトロなムードを漂わせ描いているな。

監督は、「NITOROニトロ」「スクリーム・アット・ナイト」の
アルゼンチン出身のアドリアン・ガルシア・ボクリアーノ。
僕にはお初の監督だけど、キレの良い演出と編集で、
主人公の心情や周囲の人間関係など、端的に手際良く見せてくれる。
それなりに腕のある監督やないのって思ってしっまたわ。

狼男は、今どきのアメリカ映画に珍しく着ぐるみで登場し、
モッサリしていて動きも妙にダサいところがあるけど、
不思議にこの作品には似つかわしい気がしたな。
人間から狼男に変身していく様でも、CGを僅かに使っているだけで、
あくまで着ぐるみにこだわっているみたい。
狼男を通して、主人公が抱える心の闇を、彼らを倒すことで振り払い、
人生を終えようと覚悟を決める心情に焦点を当てているからで、
監督が、狼男をあまりリアルに見せないでおこうと心掛けたのかもしれない。

アンブローズが、最後の闘いに挑むとき、彼にとって正装である軍服を着るなど、
ちょっと「ローリング・サンダー」を思わせるところもあるが、
退役後も、戦争で心が壊れ、まともに暮らすことができなくなった彼が、
それにケジメをつけるために制服を着たんだろうな。

亡き妻のエンゲージリングの使い方もナイスやん。

ただ、ストーリーに説明不足気味な部分もいくつかあって、
なぜアンブローズがすぐに狼男の存在を察知できたのか?
狼男と教会の神父の関係は?銃砲店でアンブローズの前に銀の銃弾を買ったのは誰?
などなどだが、見ている間はそんなに気にならない。

ダミチを筆頭に登場するのは中年や老人ばかりで、
ノッポの神父スミスに「刑事グラハム/凍りついた欲望」(86)で殺人鬼を演じたトム・ヌーナン、
教会へのバスの世話係グリフィンに「ブギーマン(ハロウィンⅡ)」(81)のランス・ゲスト、
墓石屋のオヤジに「肉」のラリー・フェセンデン他、クセのあるオッサン役者が並んでいる。
彼らのうちの誰が狼男だったのか?
気になる人は作品を見てチョンマゲ!

ラストに、アンブローズの息子ウィルが、様々な思いを込めて満月に向けて銃弾を発射するところ、
なんだか胸に軽くジワ~と来てしまったわ~。

ところで、アドリアン・ガルシア・ボクリアーノ作品って本作も含め、ほとんどが劇場未公開だけど、
彼の過去の作品がみたくなってきなぁ!DISCASで宅配レンタルしようっと!


アクセスエー 2017年8月2日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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