「マザー!」(17年・アメリカ) エキセントリックでシュールなヒロインの受難ドラマ!?

マザー!
「ブラック・スワン」「レスラー」の監督ダーレン・アロノフスキーが「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー主演女優賞をとったジェニファー・ローレンスを主演に撮ったにもかかわらず、日本劇場未公開となったのが、この「マザー!」。
公開時に観客からは酷評されたそうだけど、映画評論家による映画レビューサイト「ロッテン・トマト」じゃ、平均評価が10点中8.2点となかなかの好評価だし、ちょっと気になってレンタルしたんよ。

でこれが、娯楽映画を期待したら全く期待外れもいいところかもしれないけど、だからと言ってつまらない作品と言うわけでもない。
監督の作家性がもろに出たアート系作品として見たら、それはそれで興味深く見ることができるし、僕にとっちゃエキセントリックでシュールな奇妙な味わいの作品って印象を持ったな。
一昔前のルイス・ブニュエル監督作品に見られるシュルレアリスムの感覚を、現代風にちょいバージョン・アップしたみたいな感じかな。

ま、見る人を選ぶ作品であることは確かだけど。
しかし、メジャー映画として、こんな作品を作ってしまうなんて、
アロノフスキー監督も大胆やんかいさぁ。

舞台は郊外にある一軒家。
詩人の夫と静かに暮らす妻。妻は日々、家の改修にいそしんでいる。
ある日、整形外科医の男が訪ねてきた。
妻は快く思わなかったが、夫は彼を親切に迎え入れ泊めることにした。
翌日、整形外科医の妻が現れ、その次に彼らの二人の息子が現れた。
見知らぬ人間が次々と来訪し、夫がそれを拒むことなく受け入れることに、
妻は苛立ちをつのらせていくが…。

冒頭は、ヒロインが炎に包まれ顔が焼けただれていく場面。
そして彼女の夫がデコボコした水晶のようなものを部屋のテーブルに飾る。
次に、目覚めてベッドから起き上がる妻。
もう最初から、意味深なシーンが続くが、こんなのはまだ序の口。
整形外科医が登場してから後は、ヒロインの日常が少しずつ歪んでいくというか、
彼女の周囲で、とんでもない出来事が次々と頻発し、
あげくの果てに、彼女に授かった赤ちゃんが…。
映画は、ヒロインの視点で一人称的に展開し、
あらゆる出来事が彼女の目を通して描かれる。
だから見ている側も、彼女の見たもの、体験したものしか映像から受け取ることができない。

ヒロインの存在ってのが、いったい何なのか?
彼女がなぜ嫌な思いをさせられ、それを受け入れざるをえないのか?

ネットで調べたら、監督は、アダムとイブ、アベルとカイン、キリストの受難など、
旧約聖書と新約聖書をベースにストーリーを考えたらしいけど、
そういう見方から言っても、ヒロインの存在がどういうものか、
いまいち理解しがたいところがある。
いっそ、ノイローゼ気味のヒロインの妄想を描いたと言われたほうが
納得してしまえるんよね。

デコボコした水晶のような物は何を意味しているのか?
なぜ兵隊たちが登場しするのか?謎だらけで、とにかく一筋縄ではいかない作品だけど、
映像に力が漲っていて、ヒロイン同様に見ている側も嫌な思いに浸らされ、
ぐいぐいとそのイヤ~な世界のカオスの海に投げ出されてしまう。
後半なんてもう、訳のわからない人間が雲霞のごとくヒロインの家に押し寄せて
好き勝手に振舞うし、もうムチャクチャでござりますがな状態。
そして、最後にヒロインはすべてに絶望したのか、自分の体に火をつけて…。

見ていてアタマの中がグジャグジャになりそうだけど、
メビウスの輪のように、受難めぐりの旅がまた繰り返される予感をはらんだエンディングで、
なんだか妙に納得させられるというか、成程なと思わされてしまう。

しかし、結局この映画はなんだったんだろうと思い、
夫が神で、その僕(しもべ)がヒロインという設定で見たらいいのかなとか、
ヒロインを“世界”と仮定し、その世界を襲い苦しめる様々な天変地異が
周囲に登場する人間たちかなとか、
ほんとに色んな考えを思い巡らすことができる作品でおまんにやわ。
アメリカ映画で、アタマをひねくり回す作品に出合うなんて久しぶりやん。

ジェニファー・ローレンスは、
夫につくす平凡な主婦のようなたたずまいから、どんどん嫌な思いをさせられ、
心を搔き乱し情緒不安になっていくヒロインを、不思議な説得力をもって演じてみせる。
夫の詩人に、スペイン俳優ハビエル・バルデムが扮しているけど、
男くさい彼って、どう見ても詩人には見えず、なぜ彼がこの役に起用されたのか、
不思議でならなかった。
監督なりに、なにか意図があるかもしれないけどね。
整形外科医役のエド・ハリスや彼の妻役ミシェル・ファイファーは、
まだ何となく役柄に合っているような気もしたな。
アダムとイブのメタファーらしいけど、中年コンビってのが、なんか意味深。
しかし、ファイファーのイヤミな中年女っぷりはなかなか。

とにかく、何度も見たくなるような作品じゃないけど、
妙に脳裏にこびりつく、そんな作品であ~りました。


パラマウント・ジャパン 2018年3月23日レンタル・リリース



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「バンド・エイド」(17年・アメリカ) ケンカの絶えない夫婦がバンドを結成して、歌ってウップンをぶちまけるってか!

バンド・エイド
「バンド・エイド」ってタイトル名を聞いただけなら、ジョンソン・エンド・ジョンソンの絆創膏が出てくる軽めのメディカル・ドラマかなとも思うってことは間違ってもないけど、副題も付いていないし、なんともイメージしにくい題名やん。

お話は、クチゲンカが絶えない夫婦が、バンドを結成して二人のケンカをネタにした曲を作って歌い、ウップンを晴らしちゃおうとするライト・コメディ。

原題も「BAND AID」とまんまで、それをカタカナ表記にしただけだど、なんか不親切やんかいさぁ。
もうちょっと映画の中身をイメージさせるような副題を付けなアカンのんと違うと思ってしまいましたわさ。

で、これが夫婦の機微を軽やかに綴った、ちょい人懐っこい小品って感じの作品だった。
制作・監督・脚本は、主演も兼ねてる30代半ばの女優ゾーイ・リスター=ジョーンズ。
テレビドラマ「LAW&ORDER:性犯罪特捜班」や映画「29歳からの恋とセックス」(12)に出ているらしいけど、僕にはお初の美人の女優さんだった。

なんでもアメリカのインディーズ系映画祭で評判になり、
辛口米映画評価サイト「ロッテン・トマト」ってのがあるらしいんだけど、
そこで85%の高評価だったのね。
それなら大ハズレにはならないだろうと思い、レンタルして見てみることにしたんだ。

今日も朝からキッチンの皿洗いのことでケンカを始めたアナとベンの夫婦。
アナは、作家志望だったが夢破れドライバー(個人タクシーみたいなもの)で生計を支え、
ベンは自宅でネットのクラウドを使ったデザイナーの仕事を細々と続けている。
互いに愛し合ってはいるものの、ある出来事の後、心にシコリが残り、
それ以来ギクシャクした関係が続いていた。
ある日、アナの親友の子供の誕生日会に出向いた二人は、
たまたま身近に会った子供用ギターをベンが弾き、アナが歌った時、
久しぶり二人の間に心が通い合い、楽しい気持ちに浸れた。
そして、バンドを組んで互いのウップンを歌にしたらいいんじゃないと思いたち、
ご近所さんの独身男ディヴが打楽器が得意と知ってドラマーとしてメンバー参加を頼み、
ガレージで練習が始まった…。

ジョーンズは、数本の脚本を書いていて本作が初監督作(と思うんだけど)だが、
手持ちカメラで、アナとベンの日常を実にナチュラルにサラリと描いて見せてる。
下ネタ・ギャグもちょこちょこ出てくるけど、女性監督のせいか、
露骨なイヤラシサはなく、カラッとしていてカ~ルク笑える。
お隣さんのデイヴが、両親が離婚して以来、それがトラウマとなって性依存症になり、
依存者の会で知り合った元ストリッパーの女性達と同居同然の暮らしをしているってのが、
ヒネリが利いていてちょっと面白い。

バンドを結成するだけに音楽シーンもあるけど、そんなに上手いとも言えず、
曲もいまいち印象に残るものがないけど、
アナとベンが日ごろのウップンをぶちまける歌詞はそこそこ楽しめるな。

バンドを通して仲が良くなりそうに見えたところで、
フトしたきっかけで、またまた大ゲンカとなり、ベンが家を飛び出すんだけど、
彼の母から、自分が知らなかった誕生秘話を聞き、
彼女から、男と女の考え方の違いなどを教え諭され、
初めてアナの気持ちをベンなりに理解するところも、そんなに説教臭くないのがいい。
ま、セリフに頼り過ぎかなって気もするけどね。

ジョーンズは、心の奥底に過去の辛い出来事を引きずったまま、
それから乗り越えられないヒロインを、自分が脚本を書いているだけに、
嘘っぽさを感じさせず自然体で演じてる。
小ぶりの乳房もサービス(?)で見せてくれちゃってる。

夫ベン役は「ダーティ・グランパ」(16)に出ていたアラン・バリー。
自宅にこもっても仕事にあまり身が入らず、下着姿でぐうたらと日々を過ごすダンナを
これまた力まずサラリと演じてる。

ジョーンズやバリーより強い印象を残すのが、デイヴ役のフレッド・アーミセン。
「サタデー・ナイト・ライブ」でアメリカで広く知られるようになったコメディ俳優だけど、
感情をあまり顔に出さないポーカーフェイスの元性依存症の男ってキャラにピッタリで、
軽めの奇人を微妙なニュアンスを滲ませながら好演してる。
顔立ちが東洋っぽいと思ったら、
彼の祖父は韓国系日本人で舞踊家の邦正美って人なんだそう。
祖父の記念館が東京にあり、アーミセンはそこを訪れたことがあるんだとか。

ズシンとくる手ごたえを期待するとアリャリャとなるけど、
夫婦の心模様を軽やかに描いた、軽いがそれなり美味しい食事を
味わってみましょうって感じで見たらいいんじゃないって作品であ~りました。

しかし、こういう会話がメインの作品って日本語吹替えも収録して欲しかったわぁ。
ほんまにね。


ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2018年2月7日リリース



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「スペースウォーカー」(17年・ロシア) 世界で初めて宇宙遊泳を行った飛行士レオーノフの驚きの体験を描いた実録スペースアドベンチャー!

スペースウォーカー
ソ連(現ロシア)の宇宙飛行士と言ったら、「地球は青かった」の言葉で知られるガガーリンしか僕は思い浮かばないけど、彼の後に世界で初めて宇宙遊泳に成功したソ連の宇宙飛行士がいたのね。
それがアレクセイ・レオーノフって人で、彼の宇宙遊泳がどんなものだったかを描いたのが、この「スペースウォーカー」。

インパクトがいまいちのジャケット・デザインに、なんか地味でこじんまりした作品と違うかって思ったんだけど、宇宙系の映画は好きだし、どんなもんじゃろかいと見たんよね。
で、これが実に丁寧で、しっかりした作りの見応えのある作品だったやん。
特に宇宙でのアクシデントの数々はハラハラさせられっぱなしで、一昔前の宇宙飛行がどんなに大変だったかが説得力たっぷりに描かれるのよ。
アレクセイ・レオーノフ本人が映画の監修を努めているが、どこまで現実に即してリアルに描かれているかは分からないけど、実際に宇宙遊泳時にアクシデントが起こり彼が死にかけたことは事実みたいだし、映画的に大袈裟に描いていないような気がする。
しかし、こういう宇宙物って劇場の大画面で見てみたいなぁ。

1960年代、アメリカと冷戦中のソ連は、
宇宙開発でも相手国より先に宇宙遊泳に成功させようと躍起になっていた。
宇宙飛行士としてスカウトされたアレクセイ・レオーノフは
恐れ知らずで向こう見ずな軍用パイロット。
そして彼と共にスカウトされたパベル・ベリャーエフは冷静沈着な男だった。
1号機として打ち上げられた無人宇宙船がトラブルに見舞われて失敗し、
有人宇宙船の打ち上げ計画が暗礁に乗りかけた。
だが、アレクセイは是が非でも飛び立ちたいと現場責任者セルゲイ・コロリョフに熱心に訴え、
コロリョフは、迷いつつも、このままではアメリカに後れを取ってしまうし、
危険を顧みないアレクセイの熱意を汲み取り、やむなく宇宙船発射を決断した。
そして1965年、宇宙に飛び立ったアレクセイとパベル。
細心の注意を払いながら、アレクセイは宇宙に飛び出し、
世界初の宇宙遊泳を成功させるが…。

アレクセイが空軍パイロット時代に、搭乗中にエンジントラブルに見舞われ、
機転を利かして何とか危機を乗り越える出来事に始まり、
パベルが訓練で落下傘降下中に両足に大怪我を負うなど、
宇宙飛行までのエピソードをテンポ良く描いている。
そして、アレクセイが宇宙船から飛び出し、宇宙遊泳を始めるところも、
きめ細かい描写と的確なカメラアングルで見せ、リアリテイ満点。
あたかも、自分が無重力の宇宙に飛び出したら、
多分彼と同じような気分になるんだろうなと思わせちゃってくれる。
リアルさを追求したSFXも文句なしよ。
開発の途上の時代だけに、宇宙服のちょっとした問題から、
服内の気圧が上がってしまい膨張して中の人間が身動きできなくなってしまうなど、
ほんまにゾクリッとさせられる。
何とかこの危機を脱するが、今度は機自体に小さな亀裂が走り、そのせいで
機内に酸素が充満し発火の恐れが生じるなど、フィクションまがいのトラブル連発。
もう、ロケットが宇宙に飛び出してからは画面に釘付けになってしまいましたわさ。
地球に帰還した後も、これまた危機が訪れてしまうし…。

監督はドミトリー・キセレフ。
ロシアのダークファンタジー「ナイト・ウォッチ」(04)「デイ・ウォッチ」(06)の編集をしていた人だけど、
最初と最後に、アレクセイの幼い頃の姿をファンタジックに映し出し、
作品全体を、実録ながら、どこか宇宙に夢を馳せた人間の姿を通して、
夢見ること、そしてそれを諦めない素晴らしさみたいなものを描こうとしているような気がしたな。
キレの良い演出と編集で、尺が136分と2時間を超える作品だけど、それがちっとも長く感じない。
宇宙船内と地上の宇宙司令室を緊迫感を持って交互に描くなど、
編集で培ったテクニックが存分に発揮されているんだろうな、きっと。
シネスコサイズを効果的に使った映像もベリーナイスよ。

アレクセイに扮したのは、エフゲニー・ミローノフ。
SF「カリキュレーター」で主演していた俳優で、
ドストエフスシー原作のTVドラマ「白痴」に主演するなどロシア名誉勲章を受章した演技派男優。
地味な顔立ちながら、向こう見ずで夢を追いかける主人公を、
決してヒーローではなく等身大の人間として説得力を持って演じてる。
アレクセイと共に宇宙船に乗るパベル役は、
「ナイト・ウォッチ」の主役で日本でも少しは顔が知られているコンスタンチン・ハベンスキー。
国の決めたことには素直に従うがいつも口癖で、アレクセイをサポートする冷静沈着な男を、
ベテランらしく味わい深く演じてる。
現場責任者セルゲイ・コロリョフに扮したタヌキ顔のウラディミール・イリインも、
アメリカに負けてはならじの国からの要請もあり、
失敗を覚悟の有人宇宙船発射を決断する責任者を、苦悩を滲ませながら印象深い演技を見せてる。

ハベンスキー以外、ほとんど馴染みのない俳優ばかりだけど、
本国ならいざ知らず、それが逆に物語にリアルさを感じてしまう結果となったようにも思うな。

とにかく、実録スペースアドベンチャーとして、ほんとに良くできた作品でありやんした。
変に、ソ連万歳みたいな国粋主義じみたものもないし、
エンタテインメントとして充分楽しめるんよね、ほんまに。
映画ファンなら、見て欲しいわぁ。

インターフィルム 2018年2月9日リリース



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「ウィッチ・アンド・ドラゴン~秘密が見える少女~」(15年・デンマーク) 不思議な力を持った少女が王国の陰謀に巻き込まれるキュートなファンタジー・アドベンチャーやん!

ウィッチ・アンド・ドラゴン~秘密が見える少女~
「ハリー・ポッター」シリーズのヒット以来、劇場未公開のファンタジー系映画のソフトが次から次とリリースされるようになったけど、安っぽいCGに安っぽい役者、それに安っぽいストーリーと安さ満々の作品が結構多くて、この手のジャンルは好きなのでよく見るんだけど、げんなりすることがしょっちゅう。
このデンマーク映画「ウィッチ・アンド・ドラゴン…」も、最初は見るのをためらったんだけど、本国で「イントゥ・ザ・ウッズ」を抑えて公開初週間第1位のヒットを放ち、デンマーク・アカデミー賞5部門(脚色賞・衣装賞・作品賞・VFX賞・他)をゲットしたと知り、それなら映画の出来に期待してもええんとちゃうと思い見ることにしたんよ。
なんでも、デンマークを代表する女流ファンタージー作家、リーネ・コーバーベルの原作を映画化したもので、日本でも早川書房から翻訳本が出ていたらしい。

で、これが実に丁寧な作りの作品で、なかなか楽しめたやん。
人の秘密が見えてしまう不思議な力を持つ少女が、王国の陰謀に巻き込まれ、大変な目に会うという物語なんだけど、健気な主人公を演じるレベッカ・エミリー・サトラップが、そんなに美人じゃないんだけど芯の強さみたいなものを全身から発散してい魅力たっぷり、物語に説得力があるんだ。
主人公が10歳の少女だからって、安易にお子様向けにしていないところも好感が持てたしね。

遠い昔、ドゥンアーク王国の領主や彼の妻子が何者かに殺される事件が起き、
領主の後継者ニコディマスが血の付いた刃を持っていたことから容疑者として捕えられた。
ニコディマスの容疑を裏付け自白させるため、司法長官は、
相手の目を見ることで、その相手が秘密にしておきたい心の奥にある恥や罪悪感を暴く
特別な力“恥あかし”を持つ女性マルシナを呼び、二コディマスの心を読み取ろうとした。
母マルシナが城へ向かった後、兄や妹と留守番をしていた娘ディナのもとに
城の代官ドラカンがやって来た。
母がお前を呼んでいるから一緒に来なさいと言われ、彼女はドラカンと共に城に向かった。
城に着くと、ドラカンはニコディマスの心を読み取ってほしいと彼女を牢に連れて行った。
実は、ディナも母の力を受け継いでいたのだ。
母がニコディマスを先に読み取っていたのに、なぜ私が同じことをしなければならないのか、
疑問に感じるディナだったが…。

特別な能力を授かったばかりに、邪悪な陰謀に巻き込まれてしまう少女の冒険ドラマを
キレの良い演出でテンポ良く見せてくれる。
相手の心を読み取れる能力ゆえに周囲の人間から敬遠され、
友達を作ることも叶わない自分に腹立たしさを覚えていたディナが、
母の窮地を救うために、疎ましく思っていた自分の能力を使おうと決心し、
傷つきながらも真っ直ぐに突き進む姿をビビッドに描写。
ディナを取り巻く人間達、ニコディマスや彼女が街で知り合った少女ローサなども、
過不足なく描かれるし、デンマークの大自然の風景や衣装や美術&装飾など、
細部に至るまで中世のファンタジー世界を手抜きなく映像に塗りこめているのもナイス。
安っぽさが微塵もないし、スコーンと物語に入り込めちゃうんだ。

ただ、96分に収めるためにディナをメインに物語を展開させようとしたため、
登場キャラによっては描写が不足気味のところもあるけど、そんなには気にならない、かな?

また、邦題にドラゴンが付いてるけど、ドラゴンはほんのちょびっと登場するだけで、
それもオオトカゲみたいな造形で、ディナに噛みつくぐらいだし、ちっとも迫力がないんよ。
原作はどうか知らないが、多分原作でもそんなに登場しないんだろうな。

とにかく主人公のディナに、レベッカ・エミリー・サトラップがピッタリコン。
彼女、目ヂカラがあるとういか、目に強さが宿っているって感じ。
おそらく、それゆえにヒロインに選ばれたんだろうけど、
期待に応えようと精一杯頑張ってるって気がしたな。

彼女と共に悪者と戦うニコディマスを演じたヤーコブ・オフテブロは、
ノルウェー出身で「獣は月夜に夢を見る」などに出ていた俳優だけど、
やさ男風情のわりには、そこそこ活躍をしよる。
でも、おいしい見せ場はレベッカに持っていかれてしまうけど。

代官ドラカン役は、デンマーク生まれのピーター・プラウボルグ(Peter Plaugborg)。
陰謀の親玉で、母と共に国を乗っ取ろうと企み、ドラゴンの血を飲んで強くなろうとするワルを、
ちょい爬虫類を思わせるヌメリとした風情で冷ややかに演じてる。

ドラカンに従う戦闘隊長にソーレン・マリン。
デンマークのテレビドラマ「THE KILLING/キリング」の出演していた強面の男優だけど、
ワルに見えていたのが、ディナによって心を読まれ、彼女に協力することになる隊長を、
ちょい渋めに演じてる。

映画は、続編が作られそうな終わり方をしていたけど、
案の定、本国のヒットも手伝って続編制作が決定し、今年(2018年)公開されるんだとか。
日本でリリースされたら、またレベッカちゃんに会ってみたいやんかいさいぁ。


彩プロ/竹書房 2018年1月3日リリース



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「ミッション・ワイルド」(14年・アメリカ/フランス) 心を病んだ女たちと流れ者が荒野を旅するロードムービー・ウエスタンやん!

ミッション・ワイルド
缶コーヒーBOSSのCMでお馴染み、宇宙人ジョーンズことアメリカ俳優トミー・リー・ジョーンズが監督・主演した日本劇場未公開の異色ウエスタンが、この「ミッション・ワイルド」。
2年前に、京都ヒストリカ国際映画祭で「ホームズマン」の原題で上映されたらしいけど、日本でも知名度のある俳優がドドッと出ていたにも関わらず劇場未公開となり、遅まきながらソフトリリースされたんよね。
トミー・リー・ジョーンズにとっちゃ2作目の監督作で、彼の初監督作「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」は僕はまだ未見だけどカンヌ映画祭で2部門受賞(男優賞・脚本賞)したし、演出手腕はどんなもんじゃろ?と見てみることにしたんだ。

でこれが、今まであまり描かれることのなかったアメリカ開拓時代に東部などから西部の開拓地に嫁いだ女たちの過酷な状況と、それゆえに心が壊れてしまった彼女たちを故郷に連れ戻す様を淡々と描いた、枯れた味わいのロードムービーだったやん。

舞台は19世紀アメリカの開拓地ネブラスカ。
厳しく過酷な荒野の生活で心が病んでしまった3人の妻たちを、
アイオワの教会に連れて行って故郷に送り返すことになり、
独身のメアリーがその役を引き受ける。
その直後、彼女は馬に乗った状態で木に吊るされた初老の男ジョージを目にし、
旅に同行することを条件に彼を助ける。
そして5人の荒野を超える旅が始まった…。

ジョーンズ監督は、荒涼とした西部の風景をシネスコ画面に鮮やかに切り取ってるな。
どこまでも広く荒々しく、どこか寒々とした風景、そんな中を荷馬車に女たちを乗せて進むんだけど、
見るからに大変な旅だというのがすんなりと伝わってくる。
旅の中で、メアリーやジョージの心情が描写されるけど、
なぜメアリーが一人で開拓地にやって来て住んでいのかなど、
あまり過去のいきさつは語られることもなく、
女たちの心を病んだ理由もそんなに丁寧に描かれず小出しにされるので、
見ている側が、推し量らなきゃならない部分があるな。
監督が、あえてそうしたのかも知れないけど、映像展開が時々ブツ切りというか、
女たちの開拓地での生き様が唐突に挿入されたりして、映像の流れがギクシャクするところもある。
メアリーがジョージに対して最後に取った行動も、なんとなく分かるような、そうでもないような。
なんていうか、映像の行間を読みこんでいかないと話に置いてけぼりを食ってしまいそうな感じかな。
アメリカ映画なら、もう少し解りやすく描いてもいいように思ったけど、
そうする気ははなからなかったような感じ。
しかし、物語の後半のメアリーのあまりにも唐突な…。
エエッと思ってしまいましたわさ。
いずれにしろ、西部劇の隠された部分をちゃんと描こうとした監督の心意気はなかなかよね。

メアリー役のヒラリー・スワンクは、東部からやっきた音楽が好きな31歳の女性で、
結婚願望があるのに、気位が高いゆえに男たちから敬遠され誰からもつれなくされるヒロインを、
リアルに演じて見せてる。
旅のさ中、一人迷子になって取り乱し、やっとジョージを見つけたときに泣きわめきいたり、
ジョージに結婚してと申し込んでも断られ、気位どころか生きる気力さえ失っていくところは、
痛々しいやら切ないやら。そしてとうとう…。

トミー・リージョーンズは、軍隊からの脱走した過去がある流れ者で、
義理堅く、どこか剽軽で多少の正義感を持ち合わせた男を、気張らずに演じて見せる。
メアリーとは、異性と言うより戦友のような気持で接していて、
彼女から結婚がダメなら、せめてセックスをして迫られても、
あくまで友情から仕方なく行為に及ぶなど、心優しさが滲み出るところがナイス。

心を病んだ主婦を演じる3人の女優、
グレイス・ガマーは、生んだ子供を次々と亡くし心が壊れた女の役で、
布製の人形を手放せないでいる若い妻を熱演。
オーストラリア出身のミランダ・オットーは、
夫から子供を産む道具としてしか扱われず、母の看病も重なり、これまた心を病んでしまう女を好演。
デンマーク出身のソニア・リヒターは、気がおかしくなって凶暴になる女を、これまた生々しく演じてる。

脇のキャストが、ハリウッドの大物俳優ジョーンズだけに、
彼が声をかけたのかどうかは分からないけど、なかなか豪華。
グレイス・ガマーの実の母であるメリル・ストリープが、ラストで教会の牧師の妻役で顔を出し、
ジョージが荒野にぽつんと建ってるホテルで出会う陰険なホテルオーナーにジェームス・スペイダー、
メアリーの知り合いの牧師にジョン・リスゴーと大物系が次々登場するんよ。
コーエン兄弟の「トゥルー・グリット」(10)で数々の映画女優賞をゲットしたヘイリー・スタンフェルドも
ホテルの裸足のメイド役でチラリと登場するし、ほんまに俳優に関しては贅沢でおまんにやわ。

本作、エンターテイメント性にはいまいち欠けるけど、
異色のウエスタンとして見て損はない作品かなって印象であ~りました。


トランスフォーマー 2017年12月22日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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