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「海へのオデッセイ ジャック・クストー物語」(16年・フランス・ベルギー) 海中撮影が見事な、海に魅入られたクストー親子の伝記ドラマやん。

海へのオデッセイ ジャック・クストー物語
アクアラング(潜水用高級装置“スクーバ”)を開発したことでも知られるフランスの海洋学者ジャック・クストーの人生を描いた伝記ムービーが、この「海へのオデッセイ ジャック・クストー物語」。

映画ファンなら、カンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞した、クストーがルイ・マルと共同監督した海洋ドキュメンタリー映画「沈黙の世界」(56)やアカデミー・ドキュメンタリー長編賞を受賞した「太陽のとどかぬ世界」(64)を知っている人もいると思うけど。

そんな彼と彼の妻や息子たちの数十年に渡る日々が、美しい海中撮影映像を織り交ぜながら綴られるんだけど、クストーの浮気が原因の夫婦の不和や父クストーと仲違いする息子など、人間臭いドラマが展開し、個人的にはなかなか興味深く見ることが出来たし、ラストじゃホロリッとさせられて、ちょい胸があつくなってきてしもたやん。
原作は、クストーの息子ジャン=ミシェルとアルベルト・ファルコ。

1949年、ジャック・クストーは、妻シモーヌ、二人の息子ジャン=ミシェル、フィリップと
地中海の海のそばの家に住み、家族とダイビングを楽しむ日々を送っていた。
ある日、クストーは調査船カリプソ号を妻の援助で手に入れ、
世界の海を探検する海洋調査の旅に出た。
幼いフィリップは、一緒に行きたがったが寄宿舎に入れられ成人するまでそこで成長した。
ジャックは、映画「沈黙の世界」が好評を博すなど、世界的な有名人になり、
海底調査のための技術開発のための会社を起こし、海底撮影に余念がなかった。
大人になったフィリップは、尊敬する父の仕事を手伝い、自身も海底撮影を行った。
だが、父の海の動物の扱いや海が汚染されていくのを見逃せなくなり、
やがて父と対立し、船を降りて環境保護運動に力を入れるようになった。
あるとき、ニュースでジャックの会社が破産状態だと知ったフィリップは、
父が起死回生の策として、カリプソ号で無謀な南極探検の旅に出ると知り、
父を助けよと思ったのか、彼も船に乗り込み旅に同行した…。

海に魅入られたジャックの物語だけに、
幼いフィリップと兄のジャン・ミシゼル、そしてジャックとシモーヌが、
海中散歩をするシーンに始まり、とにかく海中シーンがため息が出るほど美しい。
成人したフィリップが海中でサメの群れに取り囲まれるところや、
南極の海中を泳ぐアザラシなど、どこか神秘的かつ幻想的な雰囲気も漂い、
うっとりこ~んと見とれてしまう。

監督のジェローム・サルは、脚本にも参加しているけど、
ジャックとフィリップの父子の関係を軸に、浮気に走るジャックに苛立つ妻シモーヌ、
フィリップと美人モデルのジャンとの恋など、物語に膨らみを持たせ、
あまりシリアスにならず、キレの良い演出タッチで物語を展開して見せるな。
元飛行機パイロットだったジャックのゴーグルの使い方もニクイ。
幼いフィリップが父から譲り受けるんだけど、それがラストに…。
幼い息子たちに読み聞かせる本が「海底二万哩」というのもムフッとさせる。
物語は、実在の人物を描くだけに、遠慮してか、あっさり描き過ぎやんと思う箇所もあるけど、
とにかく海中撮影の見事な映像のおかげで、かめへんかめへんって気にさせられる。
海中映像に流れる音楽がまたいいのよ。
作曲は、「シェイプ・オブ・ウォーター」「ヴァレリアン 千の惑星と救世主」を
担当していたアレクサンドル・デスプラ。

ジャック・クストーに扮したのは「マトリック」シリーズに出ていたランペール・ウィルソン。
海に魅入られた冒険家だが、ちょい誇大妄想的で、
家族や周囲の人間を傷つけてしまう主人公をベテランらしく柔軟な演技で見せる。

成人したフィリップ役に、「イヴ・サンローラン」(14)でサンローランを演じたピエール・ニネ。
どこかのっぺりした顔立ちながら、繊細にしてジャック同様に冒険心もある役柄を好演し、
なかなか上手い俳優やんと思ってしまったわ。後半じゃアゴ髭を蓄え、男くささも匂わせるしね。

ジャックの妻シモーヌ役は、「アメリ」のオドレイ・トトゥ。
すっかり成熟した中年女性から髪が白くなった酒浸りの老女まで、見事な演技派っぷりだ。

ラストに、ジャックが幼い息子たちに話す言葉が出てくるんだけど、
これが個人的には胸に刺さったなぁ。
「悲しいことがあったら、人間はただの塵(ちり)と思え。星のかけらに過ぎない。
はかない存在なんだ。宇宙にすれば一瞬の命だ。だから精一杯生きる。」

しかしこの作品、劇場の大きいスクリーンで見たかったなって気にさせられたわ。
大スクリーンなら、海中シーンの美しさをもっと実感できるように思うからさ。

オンリーハーツ 2018年11月2日レンタルリリース



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「LOVE,サイモン 17歳の告白」(18年・アメリカ) 隠れゲイのハイティーンの日常を軽やかに描いたグッド・ムービーやん!

Love,サイモン 17歳の告白
自分がゲイであることを隠して家族と暮らす平凡な高校生の日々を軽やか&爽やかに描いた青春ムービーが、この「LOVE,サイモン」。
ベッキー・アルバータリの小説「サイモンvs人類平等化計画」を映画化したもので、日本でも岩波書店から翻訳本が出版されているみたい。

ゲイを扱った作品て、シリアス・タッチになるかコメディ・タッチなるものが多かったけど、本作は青春真っ只中の主人公サイモンの心情を、実にナチュラルなタッチでサラリッと描いていて、なんとも初々しいドラマに仕上がってる。
高校生のサイモンは、自分がゲイであることに後ろめたさはなく、さほど悩んでいるわけでもなく、ただ自分の性癖をカミングアウトすると今までの家族関係や友人関係が壊れてしまうんじゃないかと思い、それが恐くてなかなか言い出せないって感じなんよ。

そんな彼がカミングアウトし、ついでに恋を成就させるまでが綴られるんだけど、
あくまで一人の思春期のゲイの少年の心模様を、特別なものでなく
普遍性をもって優しい視線で描いているところに好感がもてるなぁ。

サイモンは、仲の良い両親と料理好きの妹と暮らす、ごく普通の高校生。
彼はゲイなんだけど、それは家族にも友人にも秘密にしていた。
ある日、友人のリアから連絡が入り、
彼女がネットでブルーと名乗る匿名の人物を見つけ、
彼は同じ学校の生徒で、ゲイであることを隠しているらしいと教えられる。
気になったサイモンは、思い切ってブルーにメールを送る。
返事を心待ちにしていたが、なかなか返事のメールは来なかった。
でも、数日してブルーからのメールやっとが届き、
喜んだサイモンは自分もゲイだと返事をし、ブルーとのメールの交換が始まった。
そして、いつしかブルーに恋心を抱いていくサイモン。
だが、学校のパソコンを使ってブルーにメール送った履歴を同級生に見られてしまい、
ゲイであることを学校でバラされたくなければ、
サイモンの女友達アビーとの仲を取り持ってくれと彼から脅迫される。
仕方なくサイモンは協力するハメになるが…。

監督は、自らゲイであることを公表しているグレッグ・バーランディ。
監督作に、ソフトボールチームを結成しているゲイ達の恋や友情を穏やかに描いた
「ブロークン・ハーツ・クラブ」(00)があり、それのハイティーン版とも言えるのが本作かな。
演出タッチが実に軽やかで、ゲイを誇張して描くわけでもなく、
サイモンの家族や高校生達の普通の日常をサラリと描いて見せる。
サイモンが両親にカミングアウトする場面でも、ここぞとばかりドラマ的に盛り上げようともせず、
両親の反応も実にあっさりと描き、息子がゲイであっても、
それを理解し、なんら愛情が薄れることはなく愛する我が子として普通に接していくって感じだ。
母がサイモンに「もっとアナタらしくなさい。今までよりも」と語りかけ、
父もサイモンに「気付いてやれなくて、すまなかった」と言うところは、
ちょいウルッときてしまったわ。
しかし、理解と愛情のあり過ぎる両親だなぁ、ほんまに。
自分の子供がどんな性向を持っていようと、
一人の人間として愛情を持って素直に認め受け入れるんだもんあぁ。
日本でなら、親子間で気まずくなってし、いろいろトラブってしまいそうな、
そんな気がするけどさぁ。

サイモンを演じたのは「ジュラシック・ワールド」に出ていたニック・ロビンソン。
ゲイであることを隠している、ごく普通の17歳の少年を、
大袈裟にならず、自然体で軽やかに演じているな。
彼の友人達、リア役キャサリン・ラングフォード、アビー役アレクサンドラ・シップ、
ニック役ジョージ・レンデボーグ・なども普通の高校生を好演。

コメディリリーフとしてちょこちょこ顔を出す学校のワース先生役トニーヘイルも、
イヤミなキャラと思いきや好人物で物語にメリハリをつけててベリーナイスやん。

サイモンの父ジャックに扮したのは、バーランティ監督の「かぞくはじめました」に
出ていたジョシュ・デュアメル。
母エミリーに「JUNO/ジュノ」「デアデビル」のジェニファー・ガーナー。
出番は少ないながら、いい味出してる。

この作品、キャスティングがなかなかバランス良いな。
出番が少なくても、それぞれのキャラが物語に埋もれることなく、
それぞれの持ち味を上手に出しているんだよね。
原作のエッセンスを巧みにアレンジした脚本と監督のおかげかな。

サイモンが恋心が通じ、愛する彼や友人たちと一緒に車で登校するラストシーン、
なんだか心地よい春のそよ風に浸っているような、温かい気分にさせられちゃったや~ん!


20世紀フォックス・ホームエンターテイメントジャパン 2018年10月24日レンタルリリース



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「グッバイ・クリストファー・ロビン」(17年・イギリス) 「くまのプーさん」のせいで人生が明るくなったり暗くなったりするクリストファーってか?

グッバイ・クリストファー・ロビン
今年9月に、クマのプーさんと大人になったクリストファー・ロビンが主人公のディズニー映画「プーと大人になった僕」が公開されたが、この映画に便乗しれソフトリリースされたってわけでもないと思うけど、「くまのプーさん」の作者A・A・ミルンと彼の息子クリストファー・ロビン・ミルンの関係を描いたのが、この「グッバイ・クリストファー・ロビン」。

A・A・ミルンが、いかにして児童小説「くまのプーさん」を書くことになったかの作品誕生秘話とも言える作品だけど、父と息子の心がすれ違っていく様をクラシカルな映像の中に穏やかなタッチで描いていて、ちょっぴり胸にグッとくる、なかなか味わい深い作品だったやん。

第一次世界大戦から帰還したミルンは、
辛い戦争による心的外傷後ストレスに悩んでいた。
そんななか、妻のダフネが妊娠し、男の赤ちゃんクリストファー・ロビンが生まれた。
ミルンは、文筆業に復帰するため、反戦を訴える執筆に取りかかったが、
なかなか思うように書けず、思い切って気分転換しようと家族と共に田舎町に引っ越した。
クリストファーの面倒を見てもらうナニーとして独身のオリーヴも一緒だった。
派手好きのダフネは、引っ越しても夫がちっともペンを走らせないことにイラつき、
ロンドンに帰ってしまった。
オリーヴも病気の母の看病のため実家に帰ることになり、
ミルンとクリストファーの二人だけで暮らすことになった。
親子ながら、最初はなかなか打ち解けあえずにいたが、
二人で森に出かけて過ごすうち、心が通い合うようになった。
ある日、クリストファーがミルンに「僕のために本を書いてよ」と言った。
ミルンは、クリストファーがいつも手に持っているヌイグルミのクマを見てアイデアを思いつき、
息子のために物語を書き始めた…。

ミルンが、自分の詩に、
友人で挿画画家のアーネストにヌイグルミのクマとクリストファーの絵を描いてもらい、
ロンドンのダフネに送ったら、彼女がそれを雑誌ヴァニティフェアの編集者に見せ、
気に入られて掲載され、人気が出た。
そして、クリストファーが登場する物語「クマのプーさん」の児童小説が出版され、
彼も人気者になっていくが…。

物語を生み出したミルンより息子のクリストファーにばかり周囲が注目することに、
ちょっとジェラシーを覚える少々気弱な父や、
息子の気持ちも考えずに様々なマスコミに彼を引っ張り出そうとする母、
そして、それに振り回されるクリストファーを心配するオリーヴ。
それぞれの心情を、優しく穏やかな視線で軽やかに綴られていくな。

クリストファーが親元を離れて男子学校に入りイジメにあい続けたり、
オリーヴに愛する男性が出来てダフネに嫌味を言われるなど、
辛辣に描けそうな場面も、あまりそうにはならず、さらりと描写される。
実在の人物だから遠慮があったのかどうか分からないけど、
ちょっぴりほろ苦さを漂わせるだけに留めている。

監督は「黄金のアデーレ 名画の帰還」(15)「マリリン 7日間の恋」(11)のサイモン・カーティス。
ドラマ的に少々深みに欠けるきらいはあるけど、
父と息子の決別と和解のストーリを軸にして軽やかに物語を綴り、
ラストで、じんわりとハートフルな気分にさせちゃってくれるところはニクイやんかいさぁ。
木漏れ日が降り注ぐ森や清流が流れる小川など、美しい自然をとらえた映像が何とも美しい。
衣装や美術なども、レトロムード満点で実に丁寧に作り込まれている。

ミルン役は、
「スター・ウォーズ フォースの覚醒&最後のジェダイ」で、
ハックス将軍を演じたドーナル・グリーソン。
知的だが、ちょい神経質っぽい風情がキャラにマッチしていて、
心的外傷で悩んだり、息子への接し方に戸惑ったり、
ちょっと不器用な父親像を、力まず巧みに演じてる。

ダフネ役は、「スーサイド・スクワッド」でハーレイ・クインが印象的だったマーゴット・ロビー。
派手好きで勝ち気、ミルンを尻に敷いているような妻を、
ちょいイヤミな感じを滲ませ、それなりに演じてる。しかし彼女の顔立ちって、なんかケバイなぁ。

ロビーよりオリーヴを演じたケリー・マクドナルドの方が印象的だ。
気立てが良くて、おとなしく、控えめだが愛情にあふれる女性を見事に演じてる。
彼女が、成人したクリストファーと橋から小枝を川に流すシーンは、心がホッコリとしてしまう。

クリストファーの子供時代を演じたウィル・ティルストン。
劇映画初出演で、出演時は8歳だったそうだけど、
物語のカナメとなる役柄を表情豊かに好演。
あまり演技してますって感じはなく、自然体でノビノビと演じているって気がしたな。
成人になったクリストファー役は、アレックス・ロウザー。
「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」では、
主人公役ベネディクト・カンバーハッチの少年時代を演じていた俳優だ。
「くまのプーさん」に登場したおかげでイジメにあい続け、
それがもとで父と決別して軍隊に入るが、戦地で仲間が「くまのプーさん」の歌を口ずさむのを聞き、
父の生み出したキャラクターが人の心を慰め励ましているんだと知ったと父に話し
和解するところは、じんわりと胸が温まってくる。
ちょっとクセのある顔立ちで、ひ弱なイメージだけど、性格俳優として伸びるカモ~ン。

この映画を観終わって、なんだかクリストファー・ロビンのことが気になってしまったやん。
映画によると、彼はその後「くまのプーさん」の印税を一切受け取ろうとせず、
ロンドンで小さな書店を始めたらしい。
デェズニーの「プーと大人になった僕」は、全くのフィクションだけど、
クリストファー・ロビンをどんなふうに描いているか、ちょっと見てみたくなったやんかいさぁ。
DVDレンタルされたら借りてみようかなぁ。


20世紀フォックス・ホームエンターテイメントジャパン 2018年10月3日レンタルリリース



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「ミステリー・ロード/欲望の街」(13年・オーストラリア) オーストラリア原住民アポリジニ出身の刑事が少女殺人事件に挑むクライム・ムービーでおます!

ミステリー・ロード/欲望の街
オーストラリア映画批評家協会賞6部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞、撮影賞)を受賞したらしいと知り、ちょっと興味をひかれて見たのが、この「ミステリー・ロード/欲望の街」。

主人公が原住民アポリジニの一匹狼刑事ってのが、いかにもオーストラリアらしいて気がするし、だだっ広いオーストラリアの荒野の小さな街が舞台ってのも意外に新鮮に目に映り、クライム系の映画が好きなら見て損はないんと違うって感じの作品だった。
ジャケットのうたい文句“全世界絶賛”というのは、ちょっと大袈裟やけどね。
この映像ソフトはレンタルのみで、なぜかセル(販売)されていないのね。主役に知名度がないせいでもないと思うんだけど。
ま、ビジネス的にいろいろあるんだろうね。

シドニーの警察署から地元の小さな舞い戻ってきた原住民アポリジニ出身の刑事ジェイ。
ある早朝、街の近くの道路脇でアポリジニ少女ジュリーの死体が発見され、
ジェイは捜査を担当することになった。
ジュリーの母親や彼女の友人ワーニに聞き込みを始めるが、
彼女たちの口は堅く、捜査はなかなか進まなかった。
偶然、路上にいた少年からジュリーが落としたらしいスマホを手に入れることができ、
その中のスナップ画像にジェイの娘クリスタルが映っていた。
彼女に会うため、別れた妻メアリーの元を訪れるが、
メアリーもクリスタルも彼には冷たかった。
やがて、事件に麻薬が絡んでいることが徐々に判明し、
署内の警官も事件に関わっていることにジェイは気付き始めた。
刑事ジョノがどうも怪しいとにらんだジェイが、
彼の後を付けるとジョノは前科者の男と落ち合っていた。
ジェイは、車のナンバーから前科者の男の住居を調べ、男の家に赴くが…。

主人公ジェイの目を通して物語が語られるだけに、彼がほとんど出ずっぱりで、
彼が目にしたり聞いたことだけが、見る側(観客)に提示され、あまり詳しいことは語られず、
セリフの端々から汲み取っていくしかないんだけど、あんまり苦にはならないな。
オーストラリアのだだっ広い明るく乾いた荒野の風景が、犯罪にはあまり似つかわしく思えないのに、
どこか暗く濁った影が漂っているようなニュアンスがじんわりと伝わってくる。
少しずつ事件の背景が明らかになっていくところも、
あえてメリハリを利かせた派手な演出ではなく、実に淡々と物語を進めていくところは、
アメリカなどの犯罪映画を見慣れた目には少々まどろっこしく感じるかもしれない。
でも切り取られる映像が実にシャープで、ついつい見入ってしまえるのよ。
そして、最後にライフルによる銃撃戦があるんだが、
ライフルだけに遠くから引きがねを引くと数秒後に相手に当たったかどうかが分かるいうのが、
妙にリアルでちょっとドキドキさせる。

監督は、脚本・撮影・音楽・編集を一人でこなしたアルヴィン・センって人で、
詳細は不明だけど、ネット検索で彼の画像を見たら、どうもアポリジニの人みたい。
セリフや物語の背景、それに登場人物の説明を最小限におさえ、
多少不明瞭な部分も、それで良しとして、
映像重視で、それによって物語を展開しようとしたみたい。
いちおう事件が一段落し、ジェイが夕暮れのハイウェイを車で走る途中、
別れた妻と娘を見かけ、車から降りて二人の前に立ち尽くすラストが妙にグッとくるやん。

主人公ジェイ役は、
ガイ・ピアーズ主演のテレビドラマ「不良探偵ジャック・アイリッシュ」シリーズや
ホラー「キリング・クラウド」に出ていたアーロン・ペダーセン。
彼もアポリジニの人みたいだけど、タフで男臭くて寡黙で、
それにどこか孤独の影を宿していて、主人公にナイスマッチ。

共演は、敵か味方かが最後まで分からないジョノ刑事に「マトリックス」シリーズや
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで知られるベテランのヒューゴ・ウィーヴィング、
牧場主の息子ピートにテレビ「トゥルーブラッド」のライアン・クワンティン、
それに、僕の好きな映画「人生は上々だ!」(94)の
ラッセル・クロウの父親役が印象深いジャック・トンプソンがワンシーン登場。

ほんまに主人公以外のキャストがオーストラリアのベテランや名優が並び、実に豪華やん。
監督の人徳のせいなんかしらね。
ジェイの別れた妻メアリー役タスマ・ウォルトンも、化粧気を落とし酒に溺れるやさぐれた女を好演。
彼女も、オーストラリアじゃ、そこそこ有名な女優さんみたい。

なんでも、この「ミステリー・ロード」は、オーストラリアでは人気が高いらしく、
続編「ミステリーロード2/悪徳の街」(16)が作られ、続いてテレビミニシリーズも製作されたとか。
「ミステリー・ロード2-」も、本作の後で見たけど(こちらもレンタルのみでセルなし)、
ジェイが長髪なって登場し、行方不明のアジア女性を捜査する中で、
悪事に染まりかけた若い警官に正義感を目覚めさせ、彼と共に悪に立ち向かう姿を、
本作同様のタッチで淡々と描いた作品だった。

テレビミニシリーズが日本でリリースされるかどうかわからないけど、
もしリリースされたら見てみたいやん。
ジェイ刑事がどんな活躍をするか、ちょっとばかし気になるんでね。


キングレコード 2018年9月5日レンタルリリース



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「ウェディング・バトル アウトな男たち★」(16年・アメリカ) 堅物オヤジと娘の恋人のハイテンション男の、ライトなノリのバトルやんかいさぁ!

ウェディング・バトル アウトな男たち★
アメリカのコメディ映画って日本じゃウケないのか、たいがい劇場未公開でソフトスルーってのが多いけど、この「ウェディング・バトル-」もアメリカじゃ週末興行収入ランキングで初登場4位と、それなりにヒットした(と思うんだけど)のに劇場公開は見送られソフトスルーとなっちっち。
出演が、「スパイダーマン」「オズ はじまりの戦い」のジェームズ・フランコに、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、「GODZILLA ゴジラ」にも出ていたブライアン・クランストンとメジャー俳優競演だというのにね。

映画は、堅物オヤジが、大学生の娘の恋人が全身タトゥーだらけでエッチ大好きなハイテンション男と知って、なんとか娘と別れさせようとする軽いノリのコメディ。
フランコとクランストンがキャラにナイスマッチで、脇役も充実しているし、なかなか楽しめるアメリカン・コメディだったやん。

ミシガンで印刷会社を経営するネッドは、
カリフォルニアのスタンフォード大学にいる娘ステファニーから、
恋人のレアードに会わせたいと言われ、妻バーバラや息子スコッティと共に娘のもとにやってきた。
娘の案内で訪れたのはレアードが暮らす大豪邸。彼はゲーム会社の若き社長だったのだ。
だが、全身タトゥーで言葉づかいも下品でチャラさ満々のレアードにムカッときたネッドは、
スティファニーに、あんな男とは別れろと言うが、娘はそれをやんわりと受け流す。
レアードの豪邸に泊るハメになったネッドは、レアードと二人きりの時、
彼から「娘さんプロポーズする許可を下さい」と突然言われ、オタオタしてしまう。
それだけでなく、ステファニーが大学をやめて、レナードが作ったNPOの財団で働くと知り、
あんな男に娘をやるもんかと息巻いてしまうネッドだったが…。

監督は「ミート・ザ・ペアレンツ」シリーズの脚本を書いているジョン・ハンバーグ。
監督作に日本劇場未公開の「40男のバージンロード」(09)があり、
アメリカで大ヒットしたそうだけど、コメディ作品には定評がある人みたい。
本作じゃ、ハイテンション男と彼に敵意剥き出しの堅物オヤジの姿を、
ライトなノリで軽やかに描いていて、気楽にケラケラ笑える。
主演の二人だけでなく、妻のバーバラやレアードの秘書グスタフなど
脇キャラも一癖ある存在として映画に弾みを付けてるし。

傑作だったのが、「ピンク・パンサー」のクルーゾー警部と助手ケイトのもじり。
レナードがゲーム会社CEOだから誘拐される危険もあるとかで、
それに備えて、グスタフがレナードが油断している時に
彼に襲いかかるという訓練が、何度も出てくる。
ネッドが「それって、ピンク・パンサーか?」とレナード達に聞くが、
「ピンク・パンサー」のことを知らないレナード達がきょとんとするのには、
なんかジェネレーションギャップを感じさせて、ヘンに面白かったわ。

日本製の水洗トイレ洗浄機のギャグも笑ったやん。
使い方が分からないネッドに代わってグスタフがリモコン操作するのもヘンに可笑しいし、
エッチをネッドから拒まれたバーバラーがトイレ洗浄機で不満解消するのも、
キワドイけれど、サラリとした下ネタでムフムフムフよ。
この水洗トイレ洗浄機が、最後に物語を締めくくる役目を果たすのも、
そんなアホなと思いながらも、まあそれもアリでしょと受け流してしまえるかな~?

ストーリー展開が、ちょいトロい部分もあるが、
気の利いたセリフと適度な下ネタ・ギャグ、ナイス・キャストのアンサンブルで、
大爆笑とまではいかないけど、まとまりのあるコメディ作品になってるな。

雑誌「映画秘宝」によると、本作はコメディ俳優ジョナ・ヒルが
ダスティン・ホフマンの娘と付き合っていた時にひらめいたアイデアだそうで、
友人のベン・スティラーと二人で主役をやる企画だったらしい。

ま、それはともかく、
フランコのハイテンションぶりは嫌味がなく、ゲスっぽさもないし、
クランストンの堅物オヤジぶりも実に様になってる。

グスタフ役のキーガン=マイケル・キーが、
有能なのにお茶目なところもあるキャラを気持ち良さげに演じてるし、
バーバラ役のミーガン・ムラリーの熟女な色気も良い感じ。

ネッドとバーバラがロックバンドKISSの大ファンだという設定から、
KISSのジーンとポールが本人役で登場し、
「アイ・ワズ・メイド・フォー・ラビング・ユー」を歌うのも楽しいやん。


20世紀フォックス 2018年6月6日レンタル&セル・リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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