「ファミリーズ・シークレット 秘密を抱えた家族」(09年・アメリカ) ! ガルシアが平凡なオヤジを好演!カル~ク笑えて、ちょっぴりセンチなハートフル・コメディやん!

ファミリーズ・シークレット 秘密を抱えた家族
アメリカ俳優、アンディ・ガルシアって、「アンタッチャブル」や「ブラック・レイン」など、サスペンスやアクション系の出演作品が多く、コメディには、あまり縁のない役者さんだと思っていたんよね。
だから、彼が主演のコメディ、それも8年も前の作品を今頃リリースされても、なんだかなぁって気がしたんだけど、僕が劇場未公開作チェックによく利用させてもらってるブログ「ながら見日記・外伝」で、この作品が好意的に書かれていたので、見てみようかって思ったんだ。
なんでも、毎年春に行われるニューヨーク・マンハッタンのトライベッカ映画祭で観客賞を受賞したってのも興味をそそったし。

共演が、「ラースと、その彼女」のエミリー・モーティマー、「」リトル・ミス・サンシャイン」でオスカーをゲットしたアラン・アーキン、「ファンタステッィク・ビーストと魔法使いの旅」「スーサイド・スクワッド」と近年は大作続きのエズラ・ミラー、それに「ER緊急救命室」シリーズのジュリアナ・マルグリーズと、なかなか豪華。

犯罪者の矯正施設で看守として働いているヴィンスは、結婚20年の妻ジョイスと、
大学生の娘ヴィヴィアン、高校生の息子ヴィニーの家族を養う平凡な男。
そんなヴィンスは、昔からの“役者になりたい”という夢を捨てきれず、
妻や子供たちに内緒で演技スクールに通っていた。
ある日、矯正施設の新入りの囚人トニーが、
調書から自分が若い頃に愛した女に生ませた実の子供と知り、
ヴィンスは、彼にはそのことを伏せ、身元引受人となって家に連れ帰ることにした。
犯罪者を住まわせるなんてと文句たらたらのジョイスだったが、何とか説得。
そして、ヴィンスは、演技スクールで知り合った女性モリーの励ましと勧めで、
映画の公募オーディションを受けることにしたが…。

息子のヴィニーは、クラスメイトのオデブな女の子シェリルが好きなデブフェチ・ボーイ。
家の向かいに住んでる超オデブ女性デニスがネットで運営しているライブ・サイトのファンでもある。
娘のヴィヴィアンは、ある事情で学費稼ぎのために、
程よく育ったボディを使って、家族に秘密の仕事についている。
ヴィンスとは倦怠期真っ最中の妻のジョイスは、
若くて逞しいトニーに、いつしか欲望ムラムラリーン!
彼と二人っきりになったとき、ついつい…。

家族それぞれが、ちょっとした秘密らしきものを抱えているんだけど、
エキセントリックな展開になるわけでもなく、
なんとも軽やかで、どこかほっこりとしたタッチで物語が進む。
監督のレイモンド・デ・フェリッタって初めて聞く名前だけど、
少々ダレる部分はあるものの、登場人物それぞれのキャラ描写が丁寧で、
ソツのない演出だし、気持ちの良い作品に仕上げているな。

オモシロかったのは、ヴィンスが映画オーディションに向かう場面。
いざオーディション現場に行くと数100人の応募者たちが列をなしていて、
あまりの多さに、ヴィンスは、ちょっとガックリ&ビビリンコ。
その列の中には演技スクールの講師(アラン・アーキン)もいて、
互いにニンマリするところは笑ってしもたわ。
並んだ応募者の中から、審査員がピックアップした人間しかセリフ・テストを受けられないんだけど、
そういうところはショービジネス界の厳しさみたいなもんが、ちらりと伺え、なんか説得力あるな。
ヴィンスは、無事ピックアップされてセリフ・テストとなるんだけど、
何せ初めての経験で緊張しまくりちよこで、セリフがしどろもどろ。
でも、あることを思い出したおかげで…。
アンディの、ナチュラルにしてコミカルな演技にオオッと唸らされるナイス・シーンよ。
彼の新しい一面を見せられたようで、これからは、ニヒルな役や寡黙な役柄だけでなく、
コメディにもチャレンジして欲しいなぁ。平凡なオッサンをこれだけサラリと演じられるんだから。
作品のためだろうけど、少々ズングリ気味の体型になってるし、
なかなか上手い役者さんやなぁ、と改めて思ってしまいましたわさ。

ヴィニー役エズラ・ミラーは、現在の彼とは違い、まだ幼い顔立ちだしネアカっぽくて、
屈折感や陰湿さの欠片も感じさせず、デブ・フェチと言っても、
アブノーマルさはゼロで、なんか妙に明るくて健康的。

娘ヴィヴィアンに扮したのは、アンデイの実の娘ドミニク・ガルシア=ロリド。
何となく父親の面影はあるものの、なかなかの美形でプロポーションもグッド。
家族団らんの食事のシーンで、ガルシアがドミニクの胸の膨らみを見つめてしまうところは、
演技とはいえ、実の親娘だけに、妙に生々しさを感じてしもたやん。

妻のジョイス役は、映画で見かけるのは久しぶりのジュリアナ・マルグリーズ。
「ER-」の頃のイメージがまだ残っている僕には、印象が地味になったなぁって思ったな。

とにかく、俳優のアンサンブルの良さも手伝って、個人的にはなかなか楽しめた作品だった。

トランスワールドアソシエイツ 2017年5月2日リリース



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「ライズ・オブ・ザ・レジェンド~炎虎乱舞~」(14年・香港/中国) 実在の英雄フェイフォンの若き日の活躍を描く痛快武侠アクションやん!

ライズ・オブ・ザ・レジェンド~炎虎乱舞~
先日、TSUTAYAで発掘良品シリーズとして、前から気になって見たかった劇場未公開のサスペンス「ナイトビジター」(70)が出たのでレンタルしたんよ。主演が、ベルイマン作品によく出ていたマックス・フォン・シドー。
47年前の映画にしては、緊迫感もそこそこ、まとまりのある脱獄&復讐ドラマだったけど、あの結末、ジュールス・ダッシンの泥棒映画「トプカピ」(64)を思い出してしまったやん。で、ニンマリしてしもた。

それはともかく、この「ライズ・オブ・ザ・レジェンド~炎虎乱舞~」は、ジェット・リーが主演した「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズなどで描かれた実在の人物ウォン・フェイフォン(黄飛鴻)の若き日の活躍を描いた武侠アクション大作。
3年前の作品だけど、アクション、恋愛、父と子の絆など、いろんな要素を上手にブレンドした上出来の作品で、めっちゃ楽しめた。
なんで劇場公開しなかったのか不思議に思うくらいよ。

ま、最近は、アジア系の娯楽アクションは、どんなに面白い作品でも、シネコンなどではあまり上映されず、単館系でひっそりと短期間公開のあと、すぐにソフト・リリースってのがほとんど。
この「レジェンド-」なんて、大作なんだけど劇場公開すらされずDVDソフト直行になっちっち。
ツタヤのフリーペーパー「TSUTAYA CLUB MAGAZINE」にも紹介されなかったし、カンフー・アクションって、日本じゃ、もう見向きされないジャンルになってるんかしらねぇ。
僕は、好きなんだけど。

時は19世紀半ばの清朝末期。舞台は中国・広州の港町。
ここでは、黒虎組(ヘイフー)と北海組(ペイハイ)の2大組織が港の利権争いを繰り広げ、
労働者たちは、貧しい暮らしを強いられていた。
そんななか、黒虎組のボス雷公は、若い手下達に、北海組のボス殺害の命令を下す。
そして見事ボスの首を取って持ち帰った者は、雷公の4番目の義息子にするという。
手下の一人フェイは、深手を負いながらも、
鍛え抜かれた武術で、命令通り北海組のボスの首を取り、
義息子となって、黒虎組の幹部にのし上がっていく。
その裏で、フェイは組織の内情を、親友フオやチュンらが率いる仲間に密かに伝えていた。
実は、フェイも組織壊滅が目的で、黒虎組を内側から崩していこうと潜り込んでいたのだ…。

映画は、いきなり、フェイが大勢の北海組の手下たち相手に
派手なアクションを繰り広げる場面から始まる。
光速度撮影によるスローモーション映像やアクロバチックなワイヤーワークを織り込みながら、
シャープでキレッキレのカンフー・アクションが展開し、一気に映画世界にどっぷり浸されちゃんちゃこ。

なんでも監督のロイ・チョウは
「伝統的なカンフーを最新技術を駆使して撮った」とDVDの特典で語っているけど、
まさに、その通りで、どこか現代感覚みたいなものが映像に漂っていて、妙に新鮮な感じがするな。

物語は、フェイことウォン・フェイフォンの子供時代が時折差し挟まれ、
医者にして武術の達人だった父の教えや親友となるフオ、チュンとの交流が描かれる。
社会的弱者を助け、彼らのために無償の施しを続けた父、
そんな父の影響を受け、弱者のために立ち上がったフェィ。

また、フェィやフオ、チュン、それに廓(くるわ)の遊女シンラン、それぞれの恋模様も、
さりげなく、ちょい切なくロマンティックに描かれ、豊かな映画世界を作り上げてるな。

脚本担当が女性トー・ローチンのおかげかもしれないけど、
単純明快なアクション映画にならず、登場人物それぞれの心情をさらりとすくい上げ、
映画に深みを与えているような気がするやん。

フェイに扮したのは、イケメン俳優エディ・ポン。
カンフーは未経験だったそうだけど、雷公役サモ・ハン・キンポーの直接指導を受けたおかげで、
バッチリ武術の達人になりきってる。
爽やか系の顔立ちにシュッとした容姿だし、こういう若手を主役にもってきたことで、
作品にフレッシュ感が出てくるな。

サモ・ハンは、カンフー界のレジェンドと言われているだけに、
デブいのに動きは今だもってキレがあり、クライマックスのフェイと雷公の一騎打ちじゃ、
豪快なアクションをたっぷりと見せつけよる。

フェイの父に扮したベテラン、レオン・カーフェイもいい歳の取り方をしていて、
出番は少ないが渋いしなぁ。

チュン役の清楚なワン・ルオダイ、ある秘密を隠し持つシンラン役の色っぽいアンジェラベイビーなど、
女優達も、ちゃんと見せ場が用意されていし、
雷公の幹部たち、北殺(ペイジャー)、黒鴉(カラス)、老蛇(ヘビ)の3人、
それに雷公への復讐に燃える北海組のボスの息子など、キャラにピッタリな俳優が揃ってるし、
とにかくキャスティングは文句なしよ。

この映画、劇場の大画面で見たかったなぁと思ったやん。

しかし、DVDジャケットのエディ・ポンの顔はコワ過ぎやん。爽やかさの欠片もあれへん、ほんまにね。
ジャケットのデザイン次第では、女性にも興味を持たれる可能性だってあると思うだけにさ。

NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン 2017年4月12日リリース



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「キアヌ」(16年・アメリカ) お調子者コンビが愛する子ネコ奪還のためにギャングの世界に飛び込んじゃうコメディでおます!

キアヌ
アメリカで人気沸騰中らしいキーガン=マイケル・キーとジョーダン・ピールのお笑いコンビが主演したコメディがこの「キアヌ」。
いくら人気のコンビと言っても日本じゃ知名度ゼロに限りなく近いから、当然の成り行きとして劇場未公開、DVDスルー・リリースとなっチッチ。

めっちゃキュートな子ネコを巡って、いとこ同士の平凡な男二人が、ギャングの世界に飛び込んでアブナ~イ目に合っちゃうって話なんだけど、映画ネタや音楽ネタがいろいろ出てきて、それなりに楽しめる作品だったやん。
とにかく、キアヌと名付けられた子ネコが超絶カワイくって、ペットを飼わない僕でも、こんなにカワイイのなら飼ってしまいたいわ~、と思ってしまった。

彼女に振られて落ち込んでいたレルの前に突然現れた子ネコ。
彼は“キアヌ”と名付け、ペットとして可愛がることにしたが、
ある日、イトコのクラレンスと映画を見にって帰ってくると、
キアヌは何者かに盗まれてしまっていた。
どうやら麻薬密売組織に愛する子ネコを盗まれたらしいと判り、
2人は、子ネコ奪還のために、無謀にも組織のアジトであるストリップ小屋に乗り込んでいく。
案の定、そこにキアヌがいて、ボスに可愛がられていた…。

レルは、キアヌをモデルに、ヒット映画のワンシーンを再現した写真を撮っているんだけど、
「レザボア・ドッグス」「クリムゾン・タイド」「ヒート」「シャイニング」、
それに子ネコの名前にちなんでキアヌ・リーブス出演の「ハートブルー」と
彼の好みなのか、ヒットした娯楽系作品がメイン。
映画のエンドクレジットにも、子ネコによる映画シーン再現写真が出てきて、
こちらじゃ、「エルム街の悪夢」「ビートルジュース」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」他で、
映画好きな僕としちゃ、いちい静止画面にして、じっくり見てしまったやん。

ところで“キアヌ”って言葉は、
映画の中でレルがクラレンスに説明するんだけど、ハワイ語で“涼風”の意味なんだそう。

クラレンスの好きな歌手が、イギリスの白人ポップ歌手ジョージ・マイケルで、
車の中じゃジョージのヒット曲をガンガンかけまくるんだけど、
黒人なら、ソウルやラップだろとレルが文句言っても、
クラレンスは、黒人が彼の歌を聴いて何が悪い、
彼は音楽史に残る偉大な歌手だ、ジョージは神だ!と言い切りよるのが傑作!
あげくに、クラレンスがハッパでトリップした時も、
ジョージ・マイケルに会う幻想を見て、うっとりと崇めるような眼差しを投げかけよる。
(ジョージ・マイケルは去年12月に亡くなり、本当に“神の世界”に行ってしまったから、
映画は多分11月より前に撮ったんやろね。)

余談だけど、そのトリップ状態の幻想の中で、子ネコのキアヌが人間の言葉をしゃべるんだけど、
その声をキアヌ・リーブス自身が担当したらしい。
キアヌ本人の声と言われても、彼の声ってどんなだか直ぐには思い出せないし、
英語が得意じゃない僕には判断できかねて、あぁそうでっか、って感じだったけどね。

脚本は、レル役のジョーダンが書いていて、製作は主演2人なんだけど、
監督のピーター・アテンチオは、
未公開作「ザ・リグ~深海からの覚醒~」(10)が日本でソフトリリースされたぐらいで、
たいして力のある監督とは思えないな。
実際、本作「キアヌ」もちょっとメリハリに乏しいし、
無難にまとめあげてはいるけど、演出センスはそれ程でもって感じ。
子ネコを巡って、ギャング達が銃撃戦を繰り広げるまで発展するって話は悪くないだけに、
もうちょっとキレの良い演出で弾けてほしかったなぁ。

キーガンとジョーダンは、二役で不気味かつ冷酷な殺し屋コンビも演じているけど、
これも、あんまり二役の意味も感じなかったしな。

脇じゃ、ギャングのボス役に、
ポール・トーマス・アンダーソン監督作の常連俳優でコメディ作品も多い
小太り&ブサイク顔のルイス・ガスマンがちょろっと顔を見せているやん。

もうひとり、パロディー・ホラーコメディ「最終絶叫計画」シリーズのアンナ・ファリスが、
密売人からヤクを買う有名人として登場。
彼女の旦那さんが、ぼくの好きな映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」や
「ジュエアシック・ワールド」のクリス・プラットだったんやね。

とにかく、可愛い過ぎる子ネコの存在と、映画&音楽ネタでもっているような、
そんなコメディ映画であ~りました。
しかし、ほんとに、あの子ネコ、カワイイわぁ。ナデナデしたいやんかいさぁ!


ワーナーブラザース ホームエンターテイメント 2017年4月5日リリース



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「ミッドナイト・スペシャル」(15年・アメリカ/ギリシャ) 不思議な能力をもつ少年と彼の両親が織りなす、優しくて切ないSFミステリー!

ミッドナイト・スペシャル
「ミッドナイト・スペシャル」って、深夜テレビの安いバラエティ番組のタイトルみたいで、見ようか見まいか迷ったんだけど、TSUTAYAが出してるフリーの月刊マガジン3月号で、注目の話題作として取り上げていたので、それなら見てみようかとレンタルしたんよ。

ま、TSUTAYAマガジンのお勧め作品って、ちょうちん記事っぽいのもあり、記事にノセられて借りたらガックリクリクリ・クリクッリ!ってこともしばしば。
特に劇場未公開作の場合は、ネットでもあまり紹介記事を目にすることがないし、作品を見てみるまでは期待感と共に不安感もあるんよね。

そんな数少ない劇場未公開作の紹介記事サイトで、僕がけっこう参考にさせてもらっているのが、前にもこのブログで書いたけど、レンタル店で働いているらしい人が運営しているブログ「[SAMPLE]ビデオながら見日記」。
お客の立場を考えて、主観も交えながら作品を紹介しているところに好感が持てるんよ。

ま、それはさておき、この「ミッドナイト・スペシャッル」(原題も「MIDNIGHT SPECIAL」とまんまだった)、
今どきのSFものにしては、CGを多用することもなく、ドラマ要素に重点を置いた作りで、
じんわりと心におだやかな余韻を残す、実に気持ちの良い作品だった。

カルト教団の師カルヴィンの養子である不思議な能力を持つ8歳の少年アルトンは、
実の父ロイと彼の親友ルーカスと共に、教団から脱出し、ある目的地に向かうため、逃亡を続けていた。
アルトンの能力を救世主として利用していたカルト教団は、彼を取り戻そうと追っ手を差し向け、
また、アルトンの発する言葉が国家の機密情報に触れたことから、政府もアルトンの行方を追っていた。
逃亡の途中、実の母サラも合流し、目的地に近づきつつあったとき、
アルトンはなぜか衰弱していき、追っ手もすごそばまで近づいてきていた…。

物語の背景がかなり端折られていて、
ストーリーが少々解りづらいところがあり、最初はちょっと戸惑ってしまうんだけど、
やがて、不思議な能力もつ少年と父と母の家族の絆に焦点が絞られていき、
いつの間にか、愛する息子へそそぐ揺るぎない愛の姿が、じんわりと浮かび上がってくるんだ。

未見の人のために、ネタバレになるから、あまり詳しくは書かないけど、
アルトンが、なぜゴーグルで目を隠し、夜にしか行動できないのか?
彼の持つ能力は、どこから授かったものなのか?
アルトンたちが向かう目的地には何があるのか?
様々な?がクライマックスで明らかになるところは、なるほどそうだったのねぇと納得、納得。

監督・脚本のジェフ・ニコルズは、インディペンデント系の作家らしいんだけど、
エンタメ要素をちょろちょろっと散りばめながら、人間ドラマを軸に据えた作品を目指したみたい。
だから、今どきのSFと言っても、派手な見せ場連発ってことはない。
それゆえに劇場未公開となったのかもしれない。
特典映像で、監督は1980年代のSF映画チックなものを目指したって言ってるけど、
クライマックスは、確かにそんなテイストを感じとれるな。
また、主要な登場人物の心理描写に無駄がなく、
さりげない言葉や行動の端々から、それぞれの心情がくみ取れるような演出はなかなか。
あまり説明過多にならず、映画を見ている者に、
いろいろと想像する余地を残しているのも、個人的にはナイス。

ロイ役のマイケル・シャノンは、ニコルズ作品「テイク・シェルター」(11)「MUD マッド」(12)と、
ニコルズ作品の常連アクターだけど、目力(めじから)が強くって、少々アクの強い顔立ちだが、
息子のために、何が何でも突き進でいく愛情あふれる父親を、説得力たっぷりに好演。
ときおり垣間見せる優しい笑顔が、またいいんだ。

親友のルーカス役は、「ブラック・スキャンダル」「エクソダス:神と王」のジヨエル・エドガートン。
彼、15年にスリラー「ザ・ギフト」で監督デビュー(脚本も兼ねてる)を果たしているけど、
演出手腕もなかなかで、物語の肝となる主人公の幼馴染を不穏な不気味さを漂わせ、
淡々と演じていて、結構面白かった。

意外だったのが、国家安全保障局の局員ポール役で、
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(15)でカイロ・レンに扮したアダム・ドライバーが
ちょいユーモラスで味のある演技を見せていたこと。
「スター・ウォーズ・フォース-」のときはいまいち好感を持てなかったけど、
このポールは、なんか親しみが湧いたなあ。

他に、母サラにキルステン・ダンスト、カルト教団・教祖にサム・シェパード。

そして、物語のキーとなるアルトン役ジェイデン・リーベラー。
ごく普通のあどけない少年のようでいて、どこか人間離れした存在を、
とてもナチュラルに演じていて、彼なくしては、この映画が成立しなかったんじゃないと思うくらい。

とにかく、派手なSF映画を期待するとサービス不足で肩すかしを食っちゃう作品で、
見た人の好き嫌いが分かれそうだけど、僕は、なかなか気にいったし、
また見直したいと思ってしまったやん、ほんまに。

ちょっと気になったのが、エンドクレジットで流れるカントリー曲。
意外な選曲やないのと思ったけど、歌詞に意味があるんかなぁ。
訳詞の字幕が出なかったので、ちょっとモヤモヤしてしまいましたわさ。


ワーナーブラザース ホームエンターテイメント 2017年3月8日リリース



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「DRAGON ドラゴン」(15年・ロシア) 可憐な花嫁と謎めいた青年、そして“ドラゴン”のピュアなラブ・ファンタジーやん!

DRAGONドラゴン
モンスターが登場するSF映画やファンタジー映画が好きでよく見るんだけど、CG技術で楽チンにモンスターをクリエイトできる昨今、劇場未公開のモンスター登場作品も増えているみたい。
でも、未公開作の場合、基本的に低予算の作品が多いせいか、しょぼいCGで作られたモンスターは下手くそな演出も相まって、迫力不足もいいところだし、薄っぺらくてガックリクリクリ・クリックリってのがほとんど。
話も、人間たちがそんなモンスターたちに襲われ、逃げまどい、最後は反撃に出るという、ありがちな展開。
だから、劇場未公開のモンスター登場系作品って、ここのところ避けてきたんだけど、このロシア映画「DRAGON ドラゴン」は、近くのTSUTAYAの店じゃ、ファンタジー・ジャンルでずっと上位の人気だったので、レンタル・リリースが去年の9月だったけど、ちょっと気になりレンタルしたんよ。

で、これが良い意味で予想を裏切る、なんともファンタジック&ビューティフル、
フォークロアな味付けもベリーグッドな上出来のロシアン・ムービーだったやん。

昔々の物語。
ロシア辺境の小さな国の侯爵の娘ミラは、
ドラゴン退治をした英雄の孫イーゴリの花嫁になろうという日に
いなくなったと思われていたドラゴンが突如現れ、さらわれてしまった。
そして遠い海の孤島の穴倉に閉じ込められるが、
そこで彼女と同じように囚われの身だという謎めいた青年に出合う。
なんとか穴倉から脱出したミラは、青年の行動に怪しさを感じ取り、
彼から逃げようとして、崖から真っ逆さまに落ちてしまう。
だが、青年がとっさに飛び降り、人間からドラゴンの姿となって…。

真の姿はドラゴンだが、人間になりたいと願う青年。
そんな彼に、最初は恐怖を覚え、孤島からの脱出を必死に試みるミラが、
徐々に青年と心を通わせ、彼に“夢”という意味のアルマンと名前を与えるなど、
2人が親密になっていく様子が丁寧に描かれてるな。

舞台が孤島に移ってからは、
青年=ドラゴンとミラの二人だけの話になるんだけど、
ミラを演じるアリョーナ・チェーホフの可憐にしてキュートな魅力と、
柔軟な演出センスでちっともダレることはない。

監督は、アメリカ映画界に進出し「ウォンテッド」などを撮った「ナイト・ウォッチ」の
ティムール・ベクマンベトフの作品に携わったインダル・ドジェンドゥバヴ。
タイの伝統的な影絵チックなもので英雄のドラゴン退治の様を見せたり、
どこか民話風なニュアンスを漂わせながら、ドラゴンや奇抜な孤島の景観など、
CG映像のレベルも高く、すんなりとファンジーの世界にいざなってくれるやん。
ロシアの民族衣装も美しいし、どこか牧歌的でロマンティックな音楽もグッド・グッドよ。

最初は、ドラゴンvs乙女のバトル・ムービーかと思っていたら、
「美女と野獣」チックなピュアなラブ・ストーリー。
女性に触れると、ドラゴンの性(さが)から逃れることができず、
愛しはじめたサラを襲い殺してしまいそうと悩むアルマン。
そんな彼を心から愛しく思うミラは、彼の気持ちを察し、
一人小舟に乗って孤島から離れていく。
そして、無事、国に戻ったミラは、再度イーゴリと結婚式をあげようとするが…。

人間は、愛する人には花を贈るのが普通とか、
アルマンがミラを喜ばせようと夜空に花火を打ち上げたり、
オッサンが見るには、少々こっつ恥ずかしいような場面もあるけど、
不思議に、すんなりとヒロインに感情移入してしまうし、
心地よいエンディングには、めっちゃ心が和んでしもたわぁ。

ミラ役のアリョーナさんは、
ロシア国内でも人気上昇中の女優だそうだけど、
見た目が可憐なのに少々勝ち気で、自分の運命を自分で切り開いていくヒロインを、
存在感たっぷりに演じ、現代感覚もあり、作品にちょいモダンな味わいをプラスしているかな。
だから、いにしえの民話風ファンタジーなのに、あまり古臭いって印象はないな。
ファンになってしもたわ。彼女の出演作、他にあるなら見たいやんかいさぁ。
ドラゴンの化身・アルマン役も、
ニューヨークで一流誌のモデル経験もあるマドヴェイ・ルィコヴってのも、
モダン風味に貢献してるやん。

ただ、ちょっと残念に思ったのが、
アルマンの孤島でのお友達、アライグマとネズミを掛け合わせたようなミニ・モンスターが、
添え物的で、主人公たちにあまり絡まず、
せっかく登場させたのにもったいないやんと思ったこと。
これがアメリカ映画、とくにディズニー映画なら、もう少し目立つ活躍をさせて、
物語に弾みをつけるところだけどね。

いずれにしろ、モンスターであるドラゴン系作品の異色ラブ・ファンタジーとしちゃ、
充分楽しめる作品であ~りました、ほんまに。

KANの歌じゃないけど、最後に愛勝つのよねぇ~。


インターフィルム 2016年9月2日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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