「ボックストロール」(14年・アメリカ) ファンタスティックでキュートなストップモーション・アニメの快作やん! 

ボックストロール
日本を舞台にしたストップモーション・アニメ「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」が話題を呼んだスタジオライカ製作のファンタジー・アニメがこの「ボックストロール」。
今年の春に東京都写真美術館ホールで「スタジオライカ特別上映」として「KUBO-」等と合わせて特別上映されたらしいけど、劇場公開とまでは至らずソフトスルーとなっちっち。
なんでも、第87回アカデミー賞の長編アニメ映画賞やゴールデングローブ賞アニメ映画賞にノミネートされたそうだけど、あちらの劇場で大ヒットしたって話も聞かないし、登場キャラやモンスターが日本人にはちょい取っ付きにくいと思われたのか劇場公開が見送られたみたい。
確かに、ジャケットに載ってる主人公達やモンスターを見ると、いまいち可愛げないし、あんまり魅力的には見えないな。
でも僕はスタジオライカ制作の「ココラインとボタンの魔女」(09)が気に入っていたし、レンタルで観ることにしたんだ。

で、これがキャラ達の見事なまでのナチュラルな動きと、背景となる街のファンタスティックな雰囲気にビンビンに魅入られ、個人的には大ヒットのストップモーション・アニメやったやん。
ジャケット画像と違って、主人公達も人懐っこくて好感が持てるし、モンスター達も愛嬌あるんよね。

チーズブリッジの街では、発明家トラブショーの幼い息子が失踪し、
街の地下に住むモンスター、トロールボックスが彼を誘拐して食べたんだという噂が流れ、
それ以来、トロールボックスに襲われないよう、夜は外出禁止令がひかれていた。
街の権力者ラインド卿は、駆除業者スナッチャーにトロールボックス狩りを依頼した。
そして数年後、トロールボックスに食われたと思われていたトラブショーの息子は、
実は彼らに大事に育てられいて、エッグスと名付けられてすくすくと成長していた。
夜になるとエッグスやトロールボックス達は、街に出て屑鉄や捨てられた金属加工品などを漁り、
地下に持ち帰っては、それで様々なマシンや道具を作り暮らしていた。
ある夜、街に出たエッグスは、ラインド卿の娘ウィニーに見つかった。
その後、エッグスを育てたトロールボックスのフィッシュがスナッチャー達に掴まってしまい、
エッグスはフィッシュ救出のために、初めて明るい昼間に街に出たが…。

とにかく、登場キャラ達のスムーズで滑らかな動きに魅了させられてしまう。
感情表現も豊かだし、それぞれがキャラに応じた動作で、個性がはっきりと伝わってくる。
トロールボックス達も、フィッシュを始めそれぞれの個性が際立つように動き、
顔立ちもそれぞれ変化を持たせていて、薄っぺらさの欠片もない。
ウィニーのスカートが走るたびにユラユラと揺れ動くなど、
びっくりするほど細かいところまで丁寧に描写されていて、
時間をたっぷりかけて根気強く製作されたんやなぁと感心しまりチコヨよ。
背景となるチーズブリッジの街の家々や舗道、スナッチャーのアジト、
それにボックストロール達が暮らすの地下世界など、
きめ細か過ぎるやんと思うほどきめ細かく立体的に作られてるのもベリーグッド。
ファンタジーの世界にすんなりと入り込めるのよ。

トロールボックスが幼い子供を食い殺したと噂を流したのは、実はスナッチャーで、
彼はラインド卿に取り入り彼を同じように街の権力者になるため、嘘をついたのだった。
そして、トロールボックス狩りで集めた彼らをある目的のためにアジトの地下で働かせ、
あるものを作らていた。
街の権力者になると、権力者だけのチーズの試食会に出席することができ、
スナッチャーは、それに出ることも夢見ていた。

スナッチャーはチーズが好きなのに食べると顔の様々なパーツがイビツに膨れ上がり、
異様な顔になるんだけど、そのたびに手下達が彼にヒルをたらふく浴びせて血を吸い取って
もとの顔に戻すなど、ちょいグロテスクな描写があったり、
ラインド卿が、自分の娘ウィニーより美味いチーズの方にうつつを抜かしていたり、
ちょいシニカルというか、ダークな要素がちょこちょこあり、物語に微妙な薄暗さを滲ませているな。
スナッチャーが、トロールボックスが人を食うという話を
念押しで街の人々に信じ込ませるためにマダム・フルー・フルーの名で女装して、
野外芝居を演じたりするのも、この作品を見るお子チャマには理解しがたいやんって気もするしな。

どうも、どこかヒネクレているというか、単純に明るく健全なアニメを作ろうとはしなかったみたい。
ま、「ココライン-」もどこかダークで、ヒネクレたところがあったしな。
ライカスタジオの製作ポリシーなんかしら。

それでも、トロールボックスに育てられたエッグスが、自分が人間だと自覚しても、
一緒に暮らしたトロールボックス達を見捨てることはせず、
彼らを助けようと勇気をもって冒険を繰り広げるってところはアドベンチャー物の王道チックだし、
ウィニーが、か弱い少女じゃなく気の強い勝ち気なところも現代風だし、
ライカスタジオならではのポリシーをちょこちょこ残しながらも、
微妙なサジ加減でこの作品を作ったみたい。

英語版の声には、
ベン・キングスレー、エル・ファニング、ジャレッド・ハリス、トニ・コレット、
それにサイモン・ペグとニック・フロストと豪華な俳優が並んでいるけど、
字幕版で見ると、有名俳優が声を担当していてもその有難みをちっとも感じないなぁ。

とにかく映像の隅々まで気が配られた作品だけに、
廉価版DVDが出たら、じっくり見なおしてみようと思った作品であ~りました。


ギャガ 2018年6月2日レンタル&セル・リリース



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「マッド・プロフェッサー 悪の境界線」(15年・スペイン) 殺されたがる教授と、彼の希望を叶えようとする教え子達のスパニッシュ・サスペンスなんだけどねぇ!

マッド・プロフェッサー 悪の境界線
スペイン映画と言ったら、アレックス・デ・ラ・イグレシアス、ペドロ・アルモドバル、ジャウマ・バラゲロ、ハヴィエル・フェセルなど僕のお気に入りの個性の強い監督が結構いて、彼らの作品は欠かさず見るようにしている。
彼らの作品を見てスペイン映画の面白さに目覚めさせられたようなもんで、ソフトリリースされるスペイン映画があれば、ジャンルを問わず結構追いかけて見ている。

ま、スペイン映画だから面白くって当たり前ってわけでもなく、当たり外れもあり、そうそう面白い映画を撮るスペイン監督に出くわすことはあまりない。
ひょっとしたら、面白い映画を撮るスペイン監督がいても日本で紹介されていないだけかも知れないけど。

この「マッド・プロフェッサー 悪の境界線」も、そんなスペイン映画の1本で、
WOWWOWで放映されたのみで劇場未公開作品。
ジャケットにインパクトがあり、期待を胸に見てみたんよね。

父がギャンブルで作った多額の借金を抱え、返済に四苦八苦している息子の学生ガラルダ。
なんとか卒業後の就職口は見つかったが、単位不足で卒業が危ぶまれ、
心理学教授エスピノーサに評価点を上げて卒業できるようにと頼み込んだ。
すると、教授から成績を改ざんする代わりに自分を殺してくれと頼まれる。
教授は、自分の過失から事故で愛妻の妻を四肢麻痺の重傷を負わせてしまい、
治療のための莫大な費用を捻出するため、自責の念もあって、
自分が死んで多額の保険金を手に入れ、それで妻の体を元通りにしたいと考えたのだ。
そんな無茶苦茶な取り引きはできないと、ガラルダは最初は断るが、
自分を殺してくれたら、多額の報酬も払うと言われ、それで借金がチャラになるんならと、
学生仲間も巻き込んで教授殺害を実行に移そうとするが…。

最初に、エスピノーサ教授の大学の教室の授業で、
「善悪の境界線は心の中にある。心の声に従いなさい」と彼が学生たちに語り、
物語は、善悪の境界線で右往左往する学生たちの姿が描かれていくこととなる。

監督は、脚本も兼ねているゴンサロ・ベンダラ。
導入部分は悪くないんだけど、学生たちが教授殺害を始めるあたりから、
どうにもこうにもメリハリに乏しいと言うか、平板に展開し、ちっともスリリングじゃないんよね。
演出のキレがいまいちなんよ。
ガラルダが薬を飲ませて殺害したと思った教授の部屋に忍び込んだとき、
彼の恋人ヌリアが教授に部屋に訪れる場面も、編集の手際がいまいちなのか、
ちっともハラハラさせないしなぁ。
結局は、殺害も失敗続きだし、まさかこんなところでって感じで、
教授が死の瀬戸際まで行ってしまうんだけど、それもなんかご都合主義っぽいしなぁ。
どうも、ベンダラさん、演出センスはどうもなぁって感じ。
いっそ殺しそこない続きをコメディ仕立てにして見せた方が、
よっぽど面白くなるんではとも思うけど、監督にコメディセンスはなさそうだしなぁ。

ヌリアは、姉が自殺したことから、その原因を探ろうと心理学を専攻したんだけど、
それも結局、専攻したってだけで原因が究明できたわけでもないし、
物語の本筋にに絡んでくるわけでもない。

「自殺の決定権は個人にあるべき。人生をどう終わらせるかのね」
「人生の非情さを脳は受け止めきれない」
とか、ちょい心理学的というか哲学的っぽいセリフがちょこちょこ出てくるが、
これまた、どうも上滑り気味。

なんとか作品を最後まで観れたのは、
死を望む教授に扮したミゲル・アンヘル・ソラの渋さ漂う懐の深い演技のおかげかな。
自分の過ちを深く悔い、愛する妻のために死のうとして
自分自身ではそれが出来ない心の弱さを、巧みに演じて見せる。
スペインじゃベテラン俳優なんだろうと思うけど、物語の核となる人物だけに、
それをしっかり意識した演技なんよね。
あの最後の姿、ニクイやないのぉ。
それに、彼に殺害を依頼されるガラルダ役、北村一輝似のマキシ・イグレシアスも、
ソラに負けず劣らず、教授の依頼を戸惑いながらも実行に移そうとする青年を、
柔軟に演じ、二人の関係がどうなっていくのかに興味を持たせる。

ちょこっと出てくるヌリア役アウラ・ガリードも、なかなか魅力的だし、
ガラルダの学生仲間達も、それぞれのキャラを過不足なく演じている。

まあ、そこそこ良い役者が揃っているのに、
ベンダラ監督の演出力の弱さで、
ちょっと残念な仕上がりになっちっちって作品であ~りました。

他に、面白い映画を撮るスペインの監督、おりまへんけぇ!


トランスワールドアソシエイツ 2018年 5月2日レンタル・リリース



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「マザー!」(17年・アメリカ) エキセントリックでシュールなヒロインの受難ドラマ!?

マザー!
「ブラック・スワン」「レスラー」の監督ダーレン・アロノフスキーが「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー主演女優賞をとったジェニファー・ローレンスを主演に撮ったにもかかわらず、日本劇場未公開となったのが、この「マザー!」。
公開時に観客からは酷評されたそうだけど、映画評論家による映画レビューサイト「ロッテン・トマト」じゃ、平均評価が10点中8.2点となかなかの好評価だし、ちょっと気になってレンタルしたんよ。

でこれが、娯楽映画を期待したら全く期待外れもいいところかもしれないけど、だからと言ってつまらない作品と言うわけでもない。
監督の作家性がもろに出たアート系作品として見たら、それはそれで興味深く見ることができるし、僕にとっちゃエキセントリックでシュールな奇妙な味わいの作品って印象を持ったな。
一昔前のルイス・ブニュエル監督作品に見られるシュルレアリスムの感覚を、現代風にちょいバージョン・アップしたみたいな感じかな。

ま、見る人を選ぶ作品であることは確かだけど。
しかし、メジャー映画として、こんな作品を作ってしまうなんて、
アロノフスキー監督も大胆やんかいさぁ。

舞台は郊外にある一軒家。
詩人の夫と静かに暮らす妻。妻は日々、家の改修にいそしんでいる。
ある日、整形外科医の男が訪ねてきた。
妻は快く思わなかったが、夫は彼を親切に迎え入れ泊めることにした。
翌日、整形外科医の妻が現れ、その次に彼らの二人の息子が現れた。
見知らぬ人間が次々と来訪し、夫がそれを拒むことなく受け入れることに、
妻は苛立ちをつのらせていくが…。

冒頭は、ヒロインが炎に包まれ顔が焼けただれていく場面。
そして彼女の夫がデコボコした水晶のようなものを部屋のテーブルに飾る。
次に、目覚めてベッドから起き上がる妻。
もう最初から、意味深なシーンが続くが、こんなのはまだ序の口。
整形外科医が登場してから後は、ヒロインの日常が少しずつ歪んでいくというか、
彼女の周囲で、とんでもない出来事が次々と頻発し、
あげくの果てに、彼女に授かった赤ちゃんが…。
映画は、ヒロインの視点で一人称的に展開し、
あらゆる出来事が彼女の目を通して描かれる。
だから見ている側も、彼女の見たもの、体験したものしか映像から受け取ることができない。

ヒロインの存在ってのが、いったい何なのか?
彼女がなぜ嫌な思いをさせられ、それを受け入れざるをえないのか?

ネットで調べたら、監督は、アダムとイブ、アベルとカイン、キリストの受難など、
旧約聖書と新約聖書をベースにストーリーを考えたらしいけど、
そういう見方から言っても、ヒロインの存在がどういうものか、
いまいち理解しがたいところがある。
いっそ、ノイローゼ気味のヒロインの妄想を描いたと言われたほうが
納得してしまえるんよね。

デコボコした水晶のような物は何を意味しているのか?
なぜ兵隊たちが登場しするのか?謎だらけで、とにかく一筋縄ではいかない作品だけど、
映像に力が漲っていて、ヒロイン同様に見ている側も嫌な思いに浸らされ、
ぐいぐいとそのイヤ~な世界のカオスの海に投げ出されてしまう。
後半なんてもう、訳のわからない人間が雲霞のごとくヒロインの家に押し寄せて
好き勝手に振舞うし、もうムチャクチャでござりますがな状態。
そして、最後にヒロインはすべてに絶望したのか、自分の体に火をつけて…。

見ていてアタマの中がグジャグジャになりそうだけど、
メビウスの輪のように、受難めぐりの旅がまた繰り返される予感をはらんだエンディングで、
なんだか妙に納得させられるというか、成程なと思わされてしまう。

しかし、結局この映画はなんだったんだろうと思い、
夫が神で、その僕(しもべ)がヒロインという設定で見たらいいのかなとか、
ヒロインを“世界”と仮定し、その世界を襲い苦しめる様々な天変地異が
周囲に登場する人間たちかなとか、
ほんとに色んな考えを思い巡らすことができる作品でおまんにやわ。
アメリカ映画で、アタマをひねくり回す作品に出合うなんて久しぶりやん。

ジェニファー・ローレンスは、
夫につくす平凡な主婦のようなたたずまいから、どんどん嫌な思いをさせられ、
心を搔き乱し情緒不安になっていくヒロインを、不思議な説得力をもって演じてみせる。
夫の詩人に、スペイン俳優ハビエル・バルデムが扮しているけど、
男くさい彼って、どう見ても詩人には見えず、なぜ彼がこの役に起用されたのか、
不思議でならなかった。
監督なりに、なにか意図があるかもしれないけどね。
整形外科医役のエド・ハリスや彼の妻役ミシェル・ファイファーは、
まだ何となく役柄に合っているような気もしたな。
アダムとイブのメタファーらしいけど、中年コンビってのが、なんか意味深。
しかし、ファイファーのイヤミな中年女っぷりはなかなか。

とにかく、何度も見たくなるような作品じゃないけど、
妙に脳裏にこびりつく、そんな作品であ~りました。


パラマウント・ジャパン 2018年3月23日レンタル・リリース



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「バンド・エイド」(17年・アメリカ) ケンカの絶えない夫婦がバンドを結成して、歌ってウップンをぶちまけるってか!

バンド・エイド
「バンド・エイド」ってタイトル名を聞いただけなら、ジョンソン・エンド・ジョンソンの絆創膏が出てくる軽めのメディカル・ドラマかなとも思うってことは間違ってもないけど、副題も付いていないし、なんともイメージしにくい題名やん。

お話は、クチゲンカが絶えない夫婦が、バンドを結成して二人のケンカをネタにした曲を作って歌い、ウップンを晴らしちゃおうとするライト・コメディ。

原題も「BAND AID」とまんまで、それをカタカナ表記にしただけだど、なんか不親切やんかいさぁ。
もうちょっと映画の中身をイメージさせるような副題を付けなアカンのんと違うと思ってしまいましたわさ。

で、これが夫婦の機微を軽やかに綴った、ちょい人懐っこい小品って感じの作品だった。
制作・監督・脚本は、主演も兼ねてる30代半ばの女優ゾーイ・リスター=ジョーンズ。
テレビドラマ「LAW&ORDER:性犯罪特捜班」や映画「29歳からの恋とセックス」(12)に出ているらしいけど、僕にはお初の美人の女優さんだった。

なんでもアメリカのインディーズ系映画祭で評判になり、
辛口米映画評価サイト「ロッテン・トマト」ってのがあるらしいんだけど、
そこで85%の高評価だったのね。
それなら大ハズレにはならないだろうと思い、レンタルして見てみることにしたんだ。

今日も朝からキッチンの皿洗いのことでケンカを始めたアナとベンの夫婦。
アナは、作家志望だったが夢破れドライバー(個人タクシーみたいなもの)で生計を支え、
ベンは自宅でネットのクラウドを使ったデザイナーの仕事を細々と続けている。
互いに愛し合ってはいるものの、ある出来事の後、心にシコリが残り、
それ以来ギクシャクした関係が続いていた。
ある日、アナの親友の子供の誕生日会に出向いた二人は、
たまたま身近に会った子供用ギターをベンが弾き、アナが歌った時、
久しぶり二人の間に心が通い合い、楽しい気持ちに浸れた。
そして、バンドを組んで互いのウップンを歌にしたらいいんじゃないと思いたち、
ご近所さんの独身男ディヴが打楽器が得意と知ってドラマーとしてメンバー参加を頼み、
ガレージで練習が始まった…。

ジョーンズは、数本の脚本を書いていて本作が初監督作(と思うんだけど)だが、
手持ちカメラで、アナとベンの日常を実にナチュラルにサラリと描いて見せてる。
下ネタ・ギャグもちょこちょこ出てくるけど、女性監督のせいか、
露骨なイヤラシサはなく、カラッとしていてカ~ルク笑える。
お隣さんのデイヴが、両親が離婚して以来、それがトラウマとなって性依存症になり、
依存者の会で知り合った元ストリッパーの女性達と同居同然の暮らしをしているってのが、
ヒネリが利いていてちょっと面白い。

バンドを結成するだけに音楽シーンもあるけど、そんなに上手いとも言えず、
曲もいまいち印象に残るものがないけど、
アナとベンが日ごろのウップンをぶちまける歌詞はそこそこ楽しめるな。

バンドを通して仲が良くなりそうに見えたところで、
フトしたきっかけで、またまた大ゲンカとなり、ベンが家を飛び出すんだけど、
彼の母から、自分が知らなかった誕生秘話を聞き、
彼女から、男と女の考え方の違いなどを教え諭され、
初めてアナの気持ちをベンなりに理解するところも、そんなに説教臭くないのがいい。
ま、セリフに頼り過ぎかなって気もするけどね。

ジョーンズは、心の奥底に過去の辛い出来事を引きずったまま、
それから乗り越えられないヒロインを、自分が脚本を書いているだけに、
嘘っぽさを感じさせず自然体で演じてる。
小ぶりの乳房もサービス(?)で見せてくれちゃってる。

夫ベン役は「ダーティ・グランパ」(16)に出ていたアラン・バリー。
自宅にこもっても仕事にあまり身が入らず、下着姿でぐうたらと日々を過ごすダンナを
これまた力まずサラリと演じてる。

ジョーンズやバリーより強い印象を残すのが、デイヴ役のフレッド・アーミセン。
「サタデー・ナイト・ライブ」でアメリカで広く知られるようになったコメディ俳優だけど、
感情をあまり顔に出さないポーカーフェイスの元性依存症の男ってキャラにピッタリで、
軽めの奇人を微妙なニュアンスを滲ませながら好演してる。
顔立ちが東洋っぽいと思ったら、
彼の祖父は韓国系日本人で舞踊家の邦正美って人なんだそう。
祖父の記念館が東京にあり、アーミセンはそこを訪れたことがあるんだとか。

ズシンとくる手ごたえを期待するとアリャリャとなるけど、
夫婦の心模様を軽やかに描いた、軽いがそれなり美味しい食事を
味わってみましょうって感じで見たらいいんじゃないって作品であ~りました。

しかし、こういう会話がメインの作品って日本語吹替えも収録して欲しかったわぁ。
ほんまにね。


ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2018年2月7日リリース



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「スペースウォーカー」(17年・ロシア) 世界で初めて宇宙遊泳を行った飛行士レオーノフの驚きの体験を描いた実録スペースアドベンチャー!

スペースウォーカー
ソ連(現ロシア)の宇宙飛行士と言ったら、「地球は青かった」の言葉で知られるガガーリンしか僕は思い浮かばないけど、彼の後に世界で初めて宇宙遊泳に成功したソ連の宇宙飛行士がいたのね。
それがアレクセイ・レオーノフって人で、彼の宇宙遊泳がどんなものだったかを描いたのが、この「スペースウォーカー」。

インパクトがいまいちのジャケット・デザインに、なんか地味でこじんまりした作品と違うかって思ったんだけど、宇宙系の映画は好きだし、どんなもんじゃろかいと見たんよね。
で、これが実に丁寧で、しっかりした作りの見応えのある作品だったやん。
特に宇宙でのアクシデントの数々はハラハラさせられっぱなしで、一昔前の宇宙飛行がどんなに大変だったかが説得力たっぷりに描かれるのよ。
アレクセイ・レオーノフ本人が映画の監修を努めているが、どこまで現実に即してリアルに描かれているかは分からないけど、実際に宇宙遊泳時にアクシデントが起こり彼が死にかけたことは事実みたいだし、映画的に大袈裟に描いていないような気がする。
しかし、こういう宇宙物って劇場の大画面で見てみたいなぁ。

1960年代、アメリカと冷戦中のソ連は、
宇宙開発でも相手国より先に宇宙遊泳に成功させようと躍起になっていた。
宇宙飛行士としてスカウトされたアレクセイ・レオーノフは
恐れ知らずで向こう見ずな軍用パイロット。
そして彼と共にスカウトされたパベル・ベリャーエフは冷静沈着な男だった。
1号機として打ち上げられた無人宇宙船がトラブルに見舞われて失敗し、
有人宇宙船の打ち上げ計画が暗礁に乗りかけた。
だが、アレクセイは是が非でも飛び立ちたいと現場責任者セルゲイ・コロリョフに熱心に訴え、
コロリョフは、迷いつつも、このままではアメリカに後れを取ってしまうし、
危険を顧みないアレクセイの熱意を汲み取り、やむなく宇宙船発射を決断した。
そして1965年、宇宙に飛び立ったアレクセイとパベル。
細心の注意を払いながら、アレクセイは宇宙に飛び出し、
世界初の宇宙遊泳を成功させるが…。

アレクセイが空軍パイロット時代に、搭乗中にエンジントラブルに見舞われ、
機転を利かして何とか危機を乗り越える出来事に始まり、
パベルが訓練で落下傘降下中に両足に大怪我を負うなど、
宇宙飛行までのエピソードをテンポ良く描いている。
そして、アレクセイが宇宙船から飛び出し、宇宙遊泳を始めるところも、
きめ細かい描写と的確なカメラアングルで見せ、リアリテイ満点。
あたかも、自分が無重力の宇宙に飛び出したら、
多分彼と同じような気分になるんだろうなと思わせちゃってくれる。
リアルさを追求したSFXも文句なしよ。
開発の途上の時代だけに、宇宙服のちょっとした問題から、
服内の気圧が上がってしまい膨張して中の人間が身動きできなくなってしまうなど、
ほんまにゾクリッとさせられる。
何とかこの危機を脱するが、今度は機自体に小さな亀裂が走り、そのせいで
機内に酸素が充満し発火の恐れが生じるなど、フィクションまがいのトラブル連発。
もう、ロケットが宇宙に飛び出してからは画面に釘付けになってしまいましたわさ。
地球に帰還した後も、これまた危機が訪れてしまうし…。

監督はドミトリー・キセレフ。
ロシアのダークファンタジー「ナイト・ウォッチ」(04)「デイ・ウォッチ」(06)の編集をしていた人だけど、
最初と最後に、アレクセイの幼い頃の姿をファンタジックに映し出し、
作品全体を、実録ながら、どこか宇宙に夢を馳せた人間の姿を通して、
夢見ること、そしてそれを諦めない素晴らしさみたいなものを描こうとしているような気がしたな。
キレの良い演出と編集で、尺が136分と2時間を超える作品だけど、それがちっとも長く感じない。
宇宙船内と地上の宇宙司令室を緊迫感を持って交互に描くなど、
編集で培ったテクニックが存分に発揮されているんだろうな、きっと。
シネスコサイズを効果的に使った映像もベリーナイスよ。

アレクセイに扮したのは、エフゲニー・ミローノフ。
SF「カリキュレーター」で主演していた俳優で、
ドストエフスシー原作のTVドラマ「白痴」に主演するなどロシア名誉勲章を受章した演技派男優。
地味な顔立ちながら、向こう見ずで夢を追いかける主人公を、
決してヒーローではなく等身大の人間として説得力を持って演じてる。
アレクセイと共に宇宙船に乗るパベル役は、
「ナイト・ウォッチ」の主役で日本でも少しは顔が知られているコンスタンチン・ハベンスキー。
国の決めたことには素直に従うがいつも口癖で、アレクセイをサポートする冷静沈着な男を、
ベテランらしく味わい深く演じてる。
現場責任者セルゲイ・コロリョフに扮したタヌキ顔のウラディミール・イリインも、
アメリカに負けてはならじの国からの要請もあり、
失敗を覚悟の有人宇宙船発射を決断する責任者を、苦悩を滲ませながら印象深い演技を見せてる。

ハベンスキー以外、ほとんど馴染みのない俳優ばかりだけど、
本国ならいざ知らず、それが逆に物語にリアルさを感じてしまう結果となったようにも思うな。

とにかく、実録スペースアドベンチャーとして、ほんとに良くできた作品でありやんした。
変に、ソ連万歳みたいな国粋主義じみたものもないし、
エンタテインメントとして充分楽しめるんよね、ほんまに。
映画ファンなら、見て欲しいわぁ。

インターフィルム 2018年2月9日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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