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「シドニー・ホールの失踪」(17年・アメリカ) 失踪したベストセラー作家の切ない心模様を巧み描く佳作やん!

シドニー・ホールの失踪
ミュージシャンが撮った映画ったら、日本ならサザンオールスターズの桑田圭祐が撮った「稲村ジェーン」(90)、米米CLUBのカールスモーキー石井こと石井竜也が撮った「河童 KAPPA」(94)を思い出すけど、海外にも映画監督もこなしてるミュージシャンといったら、リメイク版の「ハロウィン」「ハロウィンⅡ」を撮ったロブ・ゾンビがいる。

本作の監督もポップ・ロックバンド、ステラスターのボーカル&ギターを担当していたショーン・クリステンセンの長編映画。何でも、バンド活動休止中に撮った短編映画「リッチーとの一日(curfew)」が2012年度のアカデミー賞実写短編賞を受賞したそうで、その後、この短編を長編化した作品「Before I disappearBefore」を14年に撮っている。
どちらも日本じゃ劇場公開もソフトリリースもされなかったみたいだけど、そんな彼の監督・脚本作がこの「シドニー・ホールの失踪」。

タイトル通りベストセラー作家の失踪をめぐる物語で、作家の高校時代と人気作家時代、そして現在の姿の3つの時間軸を交差させながら描き、なぜ彼が失踪したかを紐解いていくんだけど、何とも物悲しく切なく、でもって胸にジーンをきてしまう、なかなか手ごたえのある作品だったやん。

シドニー・ホールは文章を書くのが好きな高校生。
教師に勧められて初めて書いた長編小説「郊外の悲劇」が出版社に気に入られ、
発売するやベストセラーとなり、たちまち人気作家の道を歩み始めるシドニー。
数年後、高校時代の時に愛しあったメロディと結婚していたが、
今では夫婦仲は破たんし、彼女はシドニーの元から去っていた。
ある時、シドニーのサイン会に来た熱心なファン青年が、自殺したニュースを耳にした。
マスコミで、彼の小説が若者に悪い影響を与えるとの声が上がった。
そして、しばらくしてシドニーはすべてを捨てて失踪した。
時が経ち、書店や図書館でシドニーの小説が燃やされる事件が相次いだ。
中年の刑事が捜査に当たり、事件の真相を探るなかで、
シドニー・ホールの身に起こった、運命を狂わせてしまう出来事を知ることとなるが…。

シドニー・ホールの3つの時代が折り重なるように描かれるけど、
脚本がよく練られているのか、混乱することはなく、
とてもスムーズなストーリー展開で、ミステリー要素も含みつつ、
少しずつ、なぜシドニーが失踪することになったのかが描かれていく。
クリステンセン監督の巧みな演出センスのおかげもあると思うけど、
“ほんの一瞬で人生が変わってしまった”主人公を、
寄り添うのでもなく、突き放すのではなく、微妙な距離加減で見据えているな。
自分のせいでもないが自害してしまう高校時代の友人、
また嘘をついたせいで妻だけでなく誕生する子供まで…。
そして、刑事と思わせていた男が実は…。
最初は曖昧だった輪郭が、少しずつ形を整えていき、
最後にはっきりとした造形物が出来上がるみたいな構成がベリーナイスやん。
クリステンセンは、「ミッシング ID」(11年)「トランス・ワールド」(11年)などの
脚本も書いているけど、脚本家としての腕前もなかなかみたい。

シドニー・ホールに扮したのは、
「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」(10年)「ウォールフラワー」(10年)のローガン・ラーマン。
高校生時代、人気作家時代、そして失踪後の放浪時代を、
童顔ながら髪型や髭などで変化をつけ、巧みに演じてるな。

メロディ役は、「ネオン・デーモン」(16年)のエル・ファニング。
僕には、彼女は透明感があってピュアで、どこか不思議ちゃん的なイメージが強いんだけど、
結婚後の妻としての立ち居振る舞いも嘘くさくなく、演技派なんやと実感したわ。

そして刑事(?)役のカイル・チャンドラー。
ジョージ・クルーニーとアレック・ボールドウィンを足して2で割ったような顔立ちで、
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(16年)など、脇で渋いところを見せる俳優みたいだけど、
今回も、なかなか渋くて、美味しい役柄やないの。ちょい華がないけど。

他にも、シドニーの母に
「ミッション・インポッシブル/フォールアウト」に出ていたミシェル・モナハン、
シドニーの父に、「オー・ブラザー!」(01年)の個性派ティム・ブレイク・ネルソン、
出版社の社長にネイサン・レインなど、脇役も充実しているな。
もう一人、高校教師ジョーンズ役のヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世も印象的だ。
彼、「グレイテスト・ショーマン」(17年)に出ていたのね。

とにかく、ショーン・クリステンセンには注目しておいてもいいんじゃな~いと思わせられる、
次作が気になる監督の一人になったやん。


ソニー・ピクチャーズ 2018年10月3日レンタルリリース



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「海へのオデッセイ ジャック・クストー物語」(16年・フランス・ベルギー) 海中撮影が見事な、海に魅入られたクストー親子の伝記ドラマやん。

海へのオデッセイ ジャック・クストー物語
アクアラング(潜水用高級装置“スクーバ”)を開発したことでも知られるフランスの海洋学者ジャック・クストーの人生を描いた伝記ムービーが、この「海へのオデッセイ ジャック・クストー物語」。

映画ファンなら、カンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞した、クストーがルイ・マルと共同監督した海洋ドキュメンタリー映画「沈黙の世界」(56)やアカデミー・ドキュメンタリー長編賞を受賞した「太陽のとどかぬ世界」(64)を知っている人もいると思うけど。

そんな彼と彼の妻や息子たちの数十年に渡る日々が、美しい海中撮影映像を織り交ぜながら綴られるんだけど、クストーの浮気が原因の夫婦の不和や父クストーと仲違いする息子など、人間臭いドラマが展開し、個人的にはなかなか興味深く見ることが出来たし、ラストじゃホロリッとさせられて、ちょい胸があつくなってきてしもたやん。
原作は、クストーの息子ジャン=ミシェルとアルベルト・ファルコ。

1949年、ジャック・クストーは、妻シモーヌ、二人の息子ジャン=ミシェル、フィリップと
地中海の海のそばの家に住み、家族とダイビングを楽しむ日々を送っていた。
ある日、クストーは調査船カリプソ号を妻の援助で手に入れ、
世界の海を探検する海洋調査の旅に出た。
幼いフィリップは、一緒に行きたがったが寄宿舎に入れられ成人するまでそこで成長した。
ジャックは、映画「沈黙の世界」が好評を博すなど、世界的な有名人になり、
海底調査のための技術開発のための会社を起こし、海底撮影に余念がなかった。
大人になったフィリップは、尊敬する父の仕事を手伝い、自身も海底撮影を行った。
だが、父の海の動物の扱いや海が汚染されていくのを見逃せなくなり、
やがて父と対立し、船を降りて環境保護運動に力を入れるようになった。
あるとき、ニュースでジャックの会社が破産状態だと知ったフィリップは、
父が起死回生の策として、カリプソ号で無謀な南極探検の旅に出ると知り、
父を助けよと思ったのか、彼も船に乗り込み旅に同行した…。

海に魅入られたジャックの物語だけに、
幼いフィリップと兄のジャン・ミシゼル、そしてジャックとシモーヌが、
海中散歩をするシーンに始まり、とにかく海中シーンがため息が出るほど美しい。
成人したフィリップが海中でサメの群れに取り囲まれるところや、
南極の海中を泳ぐアザラシなど、どこか神秘的かつ幻想的な雰囲気も漂い、
うっとりこ~んと見とれてしまう。

監督のジェローム・サルは、脚本にも参加しているけど、
ジャックとフィリップの父子の関係を軸に、浮気に走るジャックに苛立つ妻シモーヌ、
フィリップと美人モデルのジャンとの恋など、物語に膨らみを持たせ、
あまりシリアスにならず、キレの良い演出タッチで物語を展開して見せるな。
元飛行機パイロットだったジャックのゴーグルの使い方もニクイ。
幼いフィリップが父から譲り受けるんだけど、それがラストに…。
幼い息子たちに読み聞かせる本が「海底二万哩」というのもムフッとさせる。
物語は、実在の人物を描くだけに、遠慮してか、あっさり描き過ぎやんと思う箇所もあるけど、
とにかく海中撮影の見事な映像のおかげで、かめへんかめへんって気にさせられる。
海中映像に流れる音楽がまたいいのよ。
作曲は、「シェイプ・オブ・ウォーター」「ヴァレリアン 千の惑星と救世主」を
担当していたアレクサンドル・デスプラ。

ジャック・クストーに扮したのは「マトリック」シリーズに出ていたランペール・ウィルソン。
海に魅入られた冒険家だが、ちょい誇大妄想的で、
家族や周囲の人間を傷つけてしまう主人公をベテランらしく柔軟な演技で見せる。

成人したフィリップ役に、「イヴ・サンローラン」(14)でサンローランを演じたピエール・ニネ。
どこかのっぺりした顔立ちながら、繊細にしてジャック同様に冒険心もある役柄を好演し、
なかなか上手い俳優やんと思ってしまったわ。後半じゃアゴ髭を蓄え、男くささも匂わせるしね。

ジャックの妻シモーヌ役は、「アメリ」のオドレイ・トトゥ。
すっかり成熟した中年女性から髪が白くなった酒浸りの老女まで、見事な演技派っぷりだ。

ラストに、ジャックが幼い息子たちに話す言葉が出てくるんだけど、
これが個人的には胸に刺さったなぁ。
「悲しいことがあったら、人間はただの塵(ちり)と思え。星のかけらに過ぎない。
はかない存在なんだ。宇宙にすれば一瞬の命だ。だから精一杯生きる。」

しかしこの作品、劇場の大きいスクリーンで見たかったなって気にさせられたわ。
大スクリーンなら、海中シーンの美しさをもっと実感できるように思うからさ。

オンリーハーツ 2018年11月2日レンタルリリース



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「グッバイ・クリストファー・ロビン」(17年・イギリス) 「くまのプーさん」のせいで人生が明るくなったり暗くなったりするクリストファーってか?

グッバイ・クリストファー・ロビン
今年9月に、クマのプーさんと大人になったクリストファー・ロビンが主人公のディズニー映画「プーと大人になった僕」が公開されたが、この映画に便乗しれソフトリリースされたってわけでもないと思うけど、「くまのプーさん」の作者A・A・ミルンと彼の息子クリストファー・ロビン・ミルンの関係を描いたのが、この「グッバイ・クリストファー・ロビン」。

A・A・ミルンが、いかにして児童小説「くまのプーさん」を書くことになったかの作品誕生秘話とも言える作品だけど、父と息子の心がすれ違っていく様をクラシカルな映像の中に穏やかなタッチで描いていて、ちょっぴり胸にグッとくる、なかなか味わい深い作品だったやん。

第一次世界大戦から帰還したミルンは、
辛い戦争による心的外傷後ストレスに悩んでいた。
そんななか、妻のダフネが妊娠し、男の赤ちゃんクリストファー・ロビンが生まれた。
ミルンは、文筆業に復帰するため、反戦を訴える執筆に取りかかったが、
なかなか思うように書けず、思い切って気分転換しようと家族と共に田舎町に引っ越した。
クリストファーの面倒を見てもらうナニーとして独身のオリーヴも一緒だった。
派手好きのダフネは、引っ越しても夫がちっともペンを走らせないことにイラつき、
ロンドンに帰ってしまった。
オリーヴも病気の母の看病のため実家に帰ることになり、
ミルンとクリストファーの二人だけで暮らすことになった。
親子ながら、最初はなかなか打ち解けあえずにいたが、
二人で森に出かけて過ごすうち、心が通い合うようになった。
ある日、クリストファーがミルンに「僕のために本を書いてよ」と言った。
ミルンは、クリストファーがいつも手に持っているヌイグルミのクマを見てアイデアを思いつき、
息子のために物語を書き始めた…。

ミルンが、自分の詩に、
友人で挿画画家のアーネストにヌイグルミのクマとクリストファーの絵を描いてもらい、
ロンドンのダフネに送ったら、彼女がそれを雑誌ヴァニティフェアの編集者に見せ、
気に入られて掲載され、人気が出た。
そして、クリストファーが登場する物語「クマのプーさん」の児童小説が出版され、
彼も人気者になっていくが…。

物語を生み出したミルンより息子のクリストファーにばかり周囲が注目することに、
ちょっとジェラシーを覚える少々気弱な父や、
息子の気持ちも考えずに様々なマスコミに彼を引っ張り出そうとする母、
そして、それに振り回されるクリストファーを心配するオリーヴ。
それぞれの心情を、優しく穏やかな視線で軽やかに綴られていくな。

クリストファーが親元を離れて男子学校に入りイジメにあい続けたり、
オリーヴに愛する男性が出来てダフネに嫌味を言われるなど、
辛辣に描けそうな場面も、あまりそうにはならず、さらりと描写される。
実在の人物だから遠慮があったのかどうか分からないけど、
ちょっぴりほろ苦さを漂わせるだけに留めている。

監督は「黄金のアデーレ 名画の帰還」(15)「マリリン 7日間の恋」(11)のサイモン・カーティス。
ドラマ的に少々深みに欠けるきらいはあるけど、
父と息子の決別と和解のストーリを軸にして軽やかに物語を綴り、
ラストで、じんわりとハートフルな気分にさせちゃってくれるところはニクイやんかいさぁ。
木漏れ日が降り注ぐ森や清流が流れる小川など、美しい自然をとらえた映像が何とも美しい。
衣装や美術なども、レトロムード満点で実に丁寧に作り込まれている。

ミルン役は、
「スター・ウォーズ フォースの覚醒&最後のジェダイ」で、
ハックス将軍を演じたドーナル・グリーソン。
知的だが、ちょい神経質っぽい風情がキャラにマッチしていて、
心的外傷で悩んだり、息子への接し方に戸惑ったり、
ちょっと不器用な父親像を、力まず巧みに演じてる。

ダフネ役は、「スーサイド・スクワッド」でハーレイ・クインが印象的だったマーゴット・ロビー。
派手好きで勝ち気、ミルンを尻に敷いているような妻を、
ちょいイヤミな感じを滲ませ、それなりに演じてる。しかし彼女の顔立ちって、なんかケバイなぁ。

ロビーよりオリーヴを演じたケリー・マクドナルドの方が印象的だ。
気立てが良くて、おとなしく、控えめだが愛情にあふれる女性を見事に演じてる。
彼女が、成人したクリストファーと橋から小枝を川に流すシーンは、心がホッコリとしてしまう。

クリストファーの子供時代を演じたウィル・ティルストン。
劇映画初出演で、出演時は8歳だったそうだけど、
物語のカナメとなる役柄を表情豊かに好演。
あまり演技してますって感じはなく、自然体でノビノビと演じているって気がしたな。
成人になったクリストファー役は、アレックス・ロウザー。
「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」では、
主人公役ベネディクト・カンバーハッチの少年時代を演じていた俳優だ。
「くまのプーさん」に登場したおかげでイジメにあい続け、
それがもとで父と決別して軍隊に入るが、戦地で仲間が「くまのプーさん」の歌を口ずさむのを聞き、
父の生み出したキャラクターが人の心を慰め励ましているんだと知ったと父に話し
和解するところは、じんわりと胸が温まってくる。
ちょっとクセのある顔立ちで、ひ弱なイメージだけど、性格俳優として伸びるカモ~ン。

この映画を観終わって、なんだかクリストファー・ロビンのことが気になってしまったやん。
映画によると、彼はその後「くまのプーさん」の印税を一切受け取ろうとせず、
ロンドンで小さな書店を始めたらしい。
ディズニーの「プーと大人になった僕」は、全くのフィクションだけど、
クリストファー・ロビンをどんなふうに描いているか、ちょっと見てみたくなったやんかいさぁ。
DVDレンタルされたら借りてみようかなぁ。


20世紀フォックス・ホームエンターテイメントジャパン 2018年10月3日レンタルリリース



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「マザー!」(17年・アメリカ) エキセントリックでシュールなヒロインの受難ドラマ!?

マザー!
「ブラック・スワン」「レスラー」の監督ダーレン・アロノフスキーが「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー主演女優賞をとったジェニファー・ローレンスを主演に撮ったにもかかわらず、日本劇場未公開となったのが、この「マザー!」。
公開時に観客からは酷評されたそうだけど、映画評論家による映画レビューサイト「ロッテン・トマト」じゃ、平均評価が10点中8.2点となかなかの好評価だし、ちょっと気になってレンタルしたんよ。

でこれが、娯楽映画を期待したら全く期待外れもいいところかもしれないけど、だからと言ってつまらない作品と言うわけでもない。
監督の作家性がもろに出たアート系作品として見たら、それはそれで興味深く見ることができるし、僕にとっちゃエキセントリックでシュールな奇妙な味わいの作品って印象を持ったな。
一昔前のルイス・ブニュエル監督作品に見られるシュルレアリスムの感覚を、現代風にちょいバージョン・アップしたみたいな感じかな。

ま、見る人を選ぶ作品であることは確かだけど。
しかし、メジャー映画として、こんな作品を作ってしまうなんて、
アロノフスキー監督も大胆やんかいさぁ。

舞台は郊外にある一軒家。
詩人の夫と静かに暮らす妻。妻は日々、家の改修にいそしんでいる。
ある日、整形外科医の男が訪ねてきた。
妻は快く思わなかったが、夫は彼を親切に迎え入れ泊めることにした。
翌日、整形外科医の妻が現れ、その次に彼らの二人の息子が現れた。
見知らぬ人間が次々と来訪し、夫がそれを拒むことなく受け入れることに、
妻は苛立ちをつのらせていくが…。

冒頭は、ヒロインが炎に包まれ顔が焼けただれていく場面。
そして彼女の夫がデコボコした水晶のようなものを部屋のテーブルに飾る。
次に、目覚めてベッドから起き上がる妻。
もう最初から、意味深なシーンが続くが、こんなのはまだ序の口。
整形外科医が登場してから後は、ヒロインの日常が少しずつ歪んでいくというか、
彼女の周囲で、とんでもない出来事が次々と頻発し、
あげくの果てに、彼女に授かった赤ちゃんが…。
映画は、ヒロインの視点で一人称的に展開し、
あらゆる出来事が彼女の目を通して描かれる。
だから見ている側も、彼女の見たもの、体験したものしか映像から受け取ることができない。

ヒロインの存在ってのが、いったい何なのか?
彼女がなぜ嫌な思いをさせられ、それを受け入れざるをえないのか?

ネットで調べたら、監督は、アダムとイブ、アベルとカイン、キリストの受難など、
旧約聖書と新約聖書をベースにストーリーを考えたらしいけど、
そういう見方から言っても、ヒロインの存在がどういうものか、
いまいち理解しがたいところがある。
いっそ、ノイローゼ気味のヒロインの妄想を描いたと言われたほうが
納得してしまえるんよね。

デコボコした水晶のような物は何を意味しているのか?
なぜ兵隊たちが登場しするのか?謎だらけで、とにかく一筋縄ではいかない作品だけど、
映像に力が漲っていて、ヒロイン同様に見ている側も嫌な思いに浸らされ、
ぐいぐいとそのイヤ~な世界のカオスの海に投げ出されてしまう。
後半なんてもう、訳のわからない人間が雲霞のごとくヒロインの家に押し寄せて
好き勝手に振舞うし、もうムチャクチャでござりますがな状態。
そして、最後にヒロインはすべてに絶望したのか、自分の体に火をつけて…。

見ていてアタマの中がグジャグジャになりそうだけど、
メビウスの輪のように、受難めぐりの旅がまた繰り返される予感をはらんだエンディングで、
なんだか妙に納得させられるというか、成程なと思わされてしまう。

しかし、結局この映画はなんだったんだろうと思い、
夫が神で、その僕(しもべ)がヒロインという設定で見たらいいのかなとか、
ヒロインを“世界”と仮定し、その世界を襲い苦しめる様々な天変地異が
周囲に登場する人間たちかなとか、
ほんとに色んな考えを思い巡らすことができる作品でおまんにやわ。
アメリカ映画で、アタマをひねくり回す作品に出合うなんて久しぶりやん。

ジェニファー・ローレンスは、
夫につくす平凡な主婦のようなたたずまいから、どんどん嫌な思いをさせられ、
心を搔き乱し情緒不安になっていくヒロインを、不思議な説得力をもって演じてみせる。
夫の詩人に、スペイン俳優ハビエル・バルデムが扮しているけど、
男くさい彼って、どう見ても詩人には見えず、なぜ彼がこの役に起用されたのか、
不思議でならなかった。
監督なりに、なにか意図があるかもしれないけどね。
整形外科医役のエド・ハリスや彼の妻役ミシェル・ファイファーは、
まだ何となく役柄に合っているような気もしたな。
アダムとイブのメタファーらしいけど、中年コンビってのが、なんか意味深。
しかし、ファイファーのイヤミな中年女っぷりはなかなか。

とにかく、何度も見たくなるような作品じゃないけど、
妙に脳裏にこびりつく、そんな作品であ~りました。


パラマウント・ジャパン 2018年3月23日レンタル・リリース



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「ミッション・ワイルド」(14年・アメリカ/フランス) 心を病んだ女たちと流れ者が荒野を旅するロードムービー・ウエスタンやん!

ミッション・ワイルド
缶コーヒーBOSSのCMでお馴染み、宇宙人ジョーンズことアメリカ俳優トミー・リー・ジョーンズが監督・主演した日本劇場未公開の異色ウエスタンが、この「ミッション・ワイルド」。
2年前に、京都ヒストリカ国際映画祭で「ホームズマン」の原題で上映されたらしいけど、日本でも知名度のある俳優がドドッと出ていたにも関わらず劇場未公開となり、遅まきながらソフトリリースされたんよね。
トミー・リー・ジョーンズにとっちゃ2作目の監督作で、彼の初監督作「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」は僕はまだ未見だけどカンヌ映画祭で2部門受賞(男優賞・脚本賞)したし、演出手腕はどんなもんじゃろ?と見てみることにしたんだ。

でこれが、今まであまり描かれることのなかったアメリカ開拓時代に東部などから西部の開拓地に嫁いだ女たちの過酷な状況と、それゆえに心が壊れてしまった彼女たちを故郷に連れ戻す様を淡々と描いた、枯れた味わいのロードムービーだったやん。

舞台は19世紀アメリカの開拓地ネブラスカ。
厳しく過酷な荒野の生活で心が病んでしまった3人の妻たちを、
アイオワの教会に連れて行って故郷に送り返すことになり、
独身のメアリーがその役を引き受ける。
その直後、彼女は馬に乗った状態で木に吊るされた初老の男ジョージを目にし、
旅に同行することを条件に彼を助ける。
そして5人の荒野を超える旅が始まった…。

ジョーンズ監督は、荒涼とした西部の風景をシネスコ画面に鮮やかに切り取ってるな。
どこまでも広く荒々しく、どこか寒々とした風景、そんな中を荷馬車に女たちを乗せて進むんだけど、
見るからに大変な旅だというのがすんなりと伝わってくる。
旅の中で、メアリーやジョージの心情が描写されるけど、
なぜメアリーが一人で開拓地にやって来て住んでいのかなど、
あまり過去のいきさつは語られることもなく、
女たちの心を病んだ理由もそんなに丁寧に描かれず小出しにされるので、
見ている側が、推し量らなきゃならない部分があるな。
監督が、あえてそうしたのかも知れないけど、映像展開が時々ブツ切りというか、
女たちの開拓地での生き様が唐突に挿入されたりして、映像の流れがギクシャクするところもある。
メアリーがジョージに対して最後に取った行動も、なんとなく分かるような、そうでもないような。
なんていうか、映像の行間を読みこんでいかないと話に置いてけぼりを食ってしまいそうな感じかな。
アメリカ映画なら、もう少し解りやすく描いてもいいように思ったけど、
そうする気ははなからなかったような感じ。
しかし、物語の後半のメアリーのあまりにも唐突な…。
エエッと思ってしまいましたわさ。
いずれにしろ、西部劇の隠された部分をちゃんと描こうとした監督の心意気はなかなかよね。

メアリー役のヒラリー・スワンクは、東部からやっきた音楽が好きな31歳の女性で、
結婚願望があるのに、気位が高いゆえに男たちから敬遠され誰からもつれなくされるヒロインを、
リアルに演じて見せてる。
旅のさ中、一人迷子になって取り乱し、やっとジョージを見つけたときに泣きわめきいたり、
ジョージに結婚してと申し込んでも断られ、気位どころか生きる気力さえ失っていくところは、
痛々しいやら切ないやら。そしてとうとう…。

トミー・リージョーンズは、軍隊からの脱走した過去がある流れ者で、
義理堅く、どこか剽軽で多少の正義感を持ち合わせた男を、気張らずに演じて見せる。
メアリーとは、異性と言うより戦友のような気持で接していて、
彼女から結婚がダメなら、せめてセックスをして迫られても、
あくまで友情から仕方なく行為に及ぶなど、心優しさが滲み出るところがナイス。

心を病んだ主婦を演じる3人の女優、
グレイス・ガマーは、生んだ子供を次々と亡くし心が壊れた女の役で、
布製の人形を手放せないでいる若い妻を熱演。
オーストラリア出身のミランダ・オットーは、
夫から子供を産む道具としてしか扱われず、母の看病も重なり、これまた心を病んでしまう女を好演。
デンマーク出身のソニア・リヒターは、気がおかしくなって凶暴になる女を、これまた生々しく演じてる。

脇のキャストが、ハリウッドの大物俳優ジョーンズだけに、
彼が声をかけたのかどうかは分からないけど、なかなか豪華。
グレイス・ガマーの実の母であるメリル・ストリープが、ラストで教会の牧師の妻役で顔を出し、
ジョージが荒野にぽつんと建ってるホテルで出会う陰険なホテルオーナーにジェームス・スペイダー、
メアリーの知り合いの牧師にジョン・リスゴーと大物系が次々登場するんよ。
コーエン兄弟の「トゥルー・グリット」(10)で数々の映画女優賞をゲットしたヘイリー・スタンフェルドも
ホテルの裸足のメイド役でチラリと登場するし、ほんまに俳優に関しては贅沢でおまんにやわ。

本作、エンターテイメント性にはいまいち欠けるけど、
異色のウエスタンとして見て損はない作品かなって印象であ~りました。


トランスフォーマー 2017年12月22日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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