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「ホテル・エルロワイヤル」(18年・アメリカ) 寂れたホテルに集まった宿泊客たちの裏の顔は?ってなクライム・サスペンスやん

ホテル・エルロワイヤル
僕が愛読している映画雑誌「映画秘宝」の今年の5月号で紹介され、ちょっと興味をもってレンタルしたのが、このクライム・サスペンス「ホテル・エルロワイヤル」。

キャストが、オスカー俳優ジェフ・ブリッジス、マーベル・ヒーローで神の世界の戦士ソーを演じてるクリス・ヘイムズワース、「マッド・メン」シリーズのジョン・ハム他、結構メジャーな俳優が揃ってるのに、日本じゃPrime Video シアターで配信され、続けて即ソフトリリース。

本国アメリカでコケのかどうか知らないけど、最近はこういうパターンのリリースが増えてきてる気がするなぁ。

それはともかく、観た感想だけど、ちょっとQ・タランティーノの匂いを感じさせる、充分に楽しめるクライム・サスペンスやったやん。

時は1969年。
カリフォルニア州とネバダ州の州境に建つ寂れ気味のホテル、エルロワイヤル。
ある日、人気のないホテルにしては、熟年の神父ダニエル、二流の黒人歌手のダリーン、
掃除機セールスマンのララミー、ヒッピーのエミリーと次々と宿泊客が訪れる。
ヤク中のボーイ、マイルズが宿泊客に各々の部屋の鍵を渡すと、
客たちは、部屋に入るなり不審な行動をとり始めた…。

オープニングは、
エルロワイヤルの一室で、怪しげな男が床の下に何かが入ったカバンを隠し、
立ち去ろうとして誰かに銃撃されて死んでしまい、それから10年後というところから物語が始まる。
なかなか興味をそそってしまうオープニングやん。

登場キャラの中には、裏の顔を持つ人物もおり、
物語が進むにつれて、それが少しずつ明らかになり、
お互いに見知らぬ者同士だった客たちが、なぜか繋がっていき、トンデモナイ展開を迎える。
だから、物語をあまり書けないんだけど、
次に何が起こるかと、多分にワクワクさせられながら見入ってしまったやん。

エルロワイヤルという限定された場所ながら、
1969年という時代色を隅々まで漂わせる美術や音楽がベリーナイスで、
一昔前の犯罪娯楽映画の匂いが濃厚に立ち込めるやん。

監督は、テレビドラマ「LOST」シリーズの脚本やホラー映画「キャビン」で知られるドリュー・ゴダード。
1960年代のヒット曲と出来事を物語に絡ませながら、先の読めないストーリーを、
バイオレンを交えながらメリハリの利いた演出タッチで見せきってくれる。

ただ、後で考えると、ちょっとご都合主義的な部分もあり、
登場キャラによっては、説明不足なところもあって、いまいち共感しずらい人物もいるけどね。

ジェフ・ブリッジスは、さすがベテランだけに一癖あるキャラをシブさ満々に好演。

二流歌手ダリーンを演じたシンシア・エリヴォは、
ミュージカル版「カラー・パープル」で主役を努めたイギリス出身の注目の女優&歌手。
本当は歌が上手いらしいけど、二流歌手らしい見事(?)な歌唱っぷりやん。
どこか寂しく切なげで、ドサ回りに身をやつす人生にお疲れ気味の黒人歌手を、これまた好演。

エミリー役のダコタ・ジョンソンは、ドン・ジョンソンとメラニー・グリフィスの娘だったと
後で知ったんだけど、そんなに美人ってこともないが、60年代のヒッピー風情を上手く醸し出してる。

エミリーの妹ローズを演じたケイリー・スピーニーは、
「パシフィック・リム:アップライジング」でヒロインを演じた女優さんだけど、
ちょいコワくてキレやすい少女を、憎々しげに演じてる。

ホテルのボーイのマイケル役ルイス・プルマンは、ビル・プルマンの息子で、
父同様に、目立った個性は感じさせないが、どこか生真面目っぽい雰囲気のアクター。
ヤク中ってイメージが、いまいち不似合な気もしたな。

掃除機セールスマン役のジョン・ハムは、
どこか胡散臭いながら、正義感を発揮したばっかりに…。
もうちょっと物語に絡んで欲しいとも思ったけど、物語の展開上しかたないか。

そして、マイティ・ソーことクリス・ヘイムズワース。
マンソン・ファミリーのボス風キャラを、
イカレたエロさムンムン、ブチ切れ気味に楽しげに演じてる。

とにかくこの映画、俳優それぞれの持ち味は、充分に発揮されていると思うな。

ただ、141分と2時間越えの作品のわりに、ダレルはないんだけど、
もうひとひねりあればなぁとも思ってしまったわさ、ほんまに。

ところで、あの隠し撮りしたフィルムに映っている大物が誰なのか、なんか気になるなぁ。
多分、銃撃された実在のあの人じゃなかろうかと思うんだけどさぁ。


20世紀フォックス・ホームエンタテインメント 2019年4月19日レンタルリリース



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「ミステリー・ロード/欲望の街」(13年・オーストラリア) オーストラリア原住民アポリジニ出身の刑事が少女殺人事件に挑むクライム・ムービーでおます!

ミステリー・ロード/欲望の街
オーストラリア映画批評家協会賞6部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞、撮影賞)を受賞したらしいと知り、ちょっと興味をひかれて見たのが、この「ミステリー・ロード/欲望の街」。

主人公が原住民アポリジニの一匹狼刑事ってのが、いかにもオーストラリアらしいて気がするし、だだっ広いオーストラリアの荒野の小さな街が舞台ってのも意外に新鮮に目に映り、クライム系の映画が好きなら見て損はないんと違うって感じの作品だった。
ジャケットのうたい文句“全世界絶賛”というのは、ちょっと大袈裟やけどね。
この映像ソフトはレンタルのみで、なぜかセル(販売)されていないのね。主役に知名度がないせいでもないと思うんだけど。
ま、ビジネス的にいろいろあるんだろうね。

シドニーの警察署から地元の小さな舞い戻ってきた原住民アポリジニ出身の刑事ジェイ。
ある早朝、街の近くの道路脇でアポリジニ少女ジュリーの死体が発見され、
ジェイは捜査を担当することになった。
ジュリーの母親や彼女の友人ワーニに聞き込みを始めるが、
彼女たちの口は堅く、捜査はなかなか進まなかった。
偶然、路上にいた少年からジュリーが落としたらしいスマホを手に入れることができ、
その中のスナップ画像にジェイの娘クリスタルが映っていた。
彼女に会うため、別れた妻メアリーの元を訪れるが、
メアリーもクリスタルも彼には冷たかった。
やがて、事件に麻薬が絡んでいることが徐々に判明し、
署内の警官も事件に関わっていることにジェイは気付き始めた。
刑事ジョノがどうも怪しいとにらんだジェイが、
彼の後を付けるとジョノは前科者の男と落ち合っていた。
ジェイは、車のナンバーから前科者の男の住居を調べ、男の家に赴くが…。

主人公ジェイの目を通して物語が語られるだけに、彼がほとんど出ずっぱりで、
彼が目にしたり聞いたことだけが、見る側(観客)に提示され、あまり詳しいことは語られず、
セリフの端々から汲み取っていくしかないんだけど、あんまり苦にはならないな。
オーストラリアのだだっ広い明るく乾いた荒野の風景が、犯罪にはあまり似つかわしく思えないのに、
どこか暗く濁った影が漂っているようなニュアンスがじんわりと伝わってくる。
少しずつ事件の背景が明らかになっていくところも、
あえてメリハリを利かせた派手な演出ではなく、実に淡々と物語を進めていくところは、
アメリカなどの犯罪映画を見慣れた目には少々まどろっこしく感じるかもしれない。
でも切り取られる映像が実にシャープで、ついつい見入ってしまえるのよ。
そして、最後にライフルによる銃撃戦があるんだが、
ライフルだけに遠くから引きがねを引くと数秒後に相手に当たったかどうかが分かるいうのが、
妙にリアルでちょっとドキドキさせる。

監督は、脚本・撮影・音楽・編集を一人でこなしたアルヴィン・センって人で、
詳細は不明だけど、ネット検索で彼の画像を見たら、どうもアポリジニの人みたい。
セリフや物語の背景、それに登場人物の説明を最小限におさえ、
多少不明瞭な部分も、それで良しとして、
映像重視で、それによって物語を展開しようとしたみたい。
いちおう事件が一段落し、ジェイが夕暮れのハイウェイを車で走る途中、
別れた妻と娘を見かけ、車から降りて二人の前に立ち尽くすラストが妙にグッとくるやん。

主人公ジェイ役は、
ガイ・ピアーズ主演のテレビドラマ「不良探偵ジャック・アイリッシュ」シリーズや
ホラー「キリング・クラウド」に出ていたアーロン・ペダーセン。
彼もアポリジニの人みたいだけど、タフで男臭くて寡黙で、
それにどこか孤独の影を宿していて、主人公にナイスマッチ。

共演は、敵か味方かが最後まで分からないジョノ刑事に「マトリックス」シリーズや
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで知られるベテランのヒューゴ・ウィーヴィング、
牧場主の息子ピートにテレビ「トゥルーブラッド」のライアン・クワンティン、
それに、僕の好きな映画「人生は上々だ!」(94)の
ラッセル・クロウの父親役が印象深いジャック・トンプソンがワンシーン登場。

ほんまに主人公以外のキャストがオーストラリアのベテランや名優が並び、実に豪華やん。
監督の人徳のせいなんかしらね。
ジェイの別れた妻メアリー役タスマ・ウォルトンも、化粧気を落とし酒に溺れるやさぐれた女を好演。
彼女も、オーストラリアじゃ、そこそこ有名な女優さんみたい。

なんでも、この「ミステリー・ロード」は、オーストラリアでは人気が高いらしく、
続編「ミステリーロード2/悪徳の街」(16)が作られ、続いてテレビミニシリーズも製作されたとか。
「ミステリー・ロード2-」も、本作の後で見たけど(こちらもレンタルのみでセルなし)、
ジェイが長髪なって登場し、行方不明のアジア女性を捜査する中で、
悪事に染まりかけた若い警官に正義感を目覚めさせ、彼と共に悪に立ち向かう姿を、
本作同様のタッチで淡々と描いた作品だった。

テレビミニシリーズが日本でリリースされるかどうかわからないけど、
もしリリースされたら見てみたいやん。
ジェイ刑事がどんな活躍をするか、ちょっとばかし気になるんでね。


キングレコード 2018年9月5日レンタルリリース



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「デンジャラス・プリズン -牢獄の処刑人-」(17年・アメリカ) 愛する妻を救うためスキンヘッド男が監獄で殺人指令を実行する!?異色サスペンスやん

デンジャラス・プリズン -牢獄の処刑人-
以前、このブログで紹介した異色ウエスタン「トマホーク ガンマンvs食人族」の監督S・クレイグ・ザラーの新作がこの「デンジャラス・プリズン-」。「トマホーク-」同様、この作品も日本劇場未公開でソフト・スルーとなっちっち。
「トマホーク-」は、風変わりだけど妙に面白かったので、ちょっと気になりレンタルしたんだ。僕の愛読誌「映画秘宝」に載っていた紹介記事で興味をひかれたこともあったし。

主演は、「ウェディング・クラッシャーズ」「ドッジボール」「人生、サイコー!」など、僕にはコメディ俳優のイメージが強い長身のヴィンス・ボーン。ジャケットを見ると、めっちゃシリアスな面構えで同スキンヘッドだし姓同名の別人と違うのん?と思うほど従来のイメージとかけ離れているやん。イメージチェンジをはかったんかしらね。

で、この作品、主人公が愛する妊娠中の妻を救うために、自ら悲惨な状況の中へと突き進んでゆく姿がなんだか胸にグッときてしまう監督らしい異色サスペンスだったやん。「トマホーク-」同様に、エグい描写もしっかりあったしね。

元ボクサーのブラッドリーは、自動車修理工場をクビになり、
生活のために昔の仲間ギルを頼って麻薬の運び屋となった。
一年半後、愛する妻ローレンが妊娠し、待望の子供が生まれると喜ぶブラッドリーだったが、
ギルの新しい取引相手エリエイザーの手下達と仕事をしたとき、
ブラッドリーの忠告も聞かず、勝手な行動に出て警察と銃撃戦を繰り広げ、
彼は巻き添えを食って逮捕され、刑期7年が言い渡された。
監獄にいるとき、初老の男が面会に訪れ、彼に妻のローレンが拘束された姿を携帯で見せた。
そして、彼女を助けたければ、極悪人が収容されている別の監獄に移り、
ある人物を殺してほしいと言われた。
仕方なく、暴力沙汰を起こし、なんとか別の監獄に移送されることになったが…。

ちょい暴力的だが、あまり感情を顔に表さず仏頂面の主人公ブラッドリーの行動を、
監督は突き放すのでもなく寄り添うのでもなく、少し距離を見つめるように描いていくな。
ブラッドリーが目的の監獄に移るまでが淡々と描かれ、
もうちょっと端折って展開してもええんやんと思わせところもあったけど、
ラストのエグい殺戮描写で見ている側に衝撃を与えるために、わざとそうしたと思ってしまう。
ま、登場人物たちをあまり説明過多にならず、それでいて的確に描写する手腕はナイスだし、
どこかクールなのに不思議に端正な映像もグッドよ。

ブラッドリーが移されることになる別の監獄は、最初の監獄と違って、
古色蒼然なカビ臭い建物で幽霊が出てもおかしくないところ。
ここで、彼は殺害を依頼された男に近づくため、獄内で隔離された、
一際薄暗い、中世の牢屋のようなところに移るんだけど、
便器が壊れ、ひどい悪臭が充満している部屋で、見ているだけどオゲッとなりそう。
おまけに、電流が流れるベルトを腰に装着され、刑務官がボタンを押すたびに、
電流が体中に流れて、もんどり打って倒れさせられる。
この現実離れしたような監獄ながら、なぜか妙にリアリティを感じさせるな。
そして、目的の男がいる部屋に入ることができるんだが、そこには…。

そして、ホラー映画そこのけの無茶苦茶な殺戮描写が披露される。
一瞬、目をそむけたくなるくらいよ、ほんまに。
でも、主人公の溜まり溜まった怒りの炎が爆発し、暴走しまくったんだ考えれば、
ま、納得できるカモ~ン。

主人公を演じるヴィンス・ヴォーンは、スキンヘッドの後ろに十字架の入れ墨を入れ、
無口ながら運び屋の仕事をプロとして実直にこなす男を力演してる。
すべてが終わり、自分の運命を受け入れる表情が、実に渋いんよ。惚れてもたわ!
元ボクサーって役柄にしては、囚人達のバトル・アクションじゃ動きが鈍い気もするけど、
好意的に見れば、リアリズム重視で描けば、こんな感じなのかなとも思ってしまう。
監督が、アクション場面は、あまりカットを割らずに見せようとしているせいもあるけど。

妻のローレンに扮したのは、爬虫類顔のジェニファー・カーペンター。
美人じゃなけど、やさぐれ感を漂わせていて、キャラにはマッチしているかな。
別の監獄の冷酷な所長にTVドラマ「マイアミ・バイス」でお馴染みのドン・ジョンソン。
すっかりロマンスグレーの初老親父になったけど、未だに男臭さを匂わせ貫録もあるなぁ。

そして、ドイツ俳優、ウド・キアが、
主人公に監獄内の殺人を依頼する謎の老人としてちょろっと顔を出している。
彼が画面に出ると、たちまちビザールな匂いが映像に立ち込めちゃうな。
「処女の生血」「ブレイド」など、人間離れした役柄の印象が僕には強いからかもしれないけど。
しかし、平気な顔してブラッドリーに、
「依頼を実行できなければ、妻の体内の胎児の手足を切ってしまうぞ」
なんて言葉はキアが言うだけにゾクゾクッとしてしまうわ。

ま、普通の監獄サスペンス・アクションに収まらない、
「トマホーク-」同様、一味違う映画でありやんした。


NBCユニバーサル・エンターテインメントジャパン 2018年6月6日レンタル&セル・リリース



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「マッド・プロフェッサー 悪の境界線」(15年・スペイン) 殺されたがる教授と、彼の希望を叶えようとする教え子達のスパニッシュ・サスペンスなんだけどねぇ!

マッド・プロフェッサー 悪の境界線
スペイン映画と言ったら、アレックス・デ・ラ・イグレシアス、ペドロ・アルモドバル、ジャウマ・バラゲロ、ハヴィエル・フェセルなど僕のお気に入りの個性の強い監督が結構いて、彼らの作品は欠かさず見るようにしている。
彼らの作品を見てスペイン映画の面白さに目覚めさせられたようなもんで、ソフトリリースされるスペイン映画があれば、ジャンルを問わず結構追いかけて見ている。

ま、スペイン映画だから面白くって当たり前ってわけでもなく、当たり外れもあり、そうそう面白い映画を撮るスペイン監督に出くわすことはあまりない。
ひょっとしたら、面白い映画を撮るスペイン監督がいても日本で紹介されていないだけかも知れないけど。

この「マッド・プロフェッサー 悪の境界線」も、そんなスペイン映画の1本で、
WOWWOWで放映されたのみで劇場未公開作品。
ジャケットにインパクトがあり、期待を胸に見てみたんよね。

父がギャンブルで作った多額の借金を抱え、返済に四苦八苦している息子の学生ガラルダ。
なんとか卒業後の就職口は見つかったが、単位不足で卒業が危ぶまれ、
心理学教授エスピノーサに評価点を上げて卒業できるようにと頼み込んだ。
すると、教授から成績を改ざんする代わりに自分を殺してくれと頼まれる。
教授は、自分の過失から事故で愛妻の妻を四肢麻痺の重傷を負わせてしまい、
治療のための莫大な費用を捻出するため、自責の念もあって、
自分が死んで多額の保険金を手に入れ、それで妻の体を元通りにしたいと考えたのだ。
そんな無茶苦茶な取り引きはできないと、ガラルダは最初は断るが、
自分を殺してくれたら、多額の報酬も払うと言われ、それで借金がチャラになるんならと、
学生仲間も巻き込んで教授殺害を実行に移そうとするが…。

最初に、エスピノーサ教授の大学の教室の授業で、
「善悪の境界線は心の中にある。心の声に従いなさい」と彼が学生たちに語り、
物語は、善悪の境界線で右往左往する学生たちの姿が描かれていくこととなる。

監督は、脚本も兼ねているゴンサロ・ベンダラ。
導入部分は悪くないんだけど、学生たちが教授殺害を始めるあたりから、
どうにもこうにもメリハリに乏しいと言うか、平板に展開し、ちっともスリリングじゃないんよね。
演出のキレがいまいちなんよ。
ガラルダが薬を飲ませて殺害したと思った教授の部屋に忍び込んだとき、
彼の恋人ヌリアが教授に部屋に訪れる場面も、編集の手際がいまいちなのか、
ちっともハラハラさせないしなぁ。
結局は、殺害も失敗続きだし、まさかこんなところでって感じで、
教授が死の瀬戸際まで行ってしまうんだけど、それもなんかご都合主義っぽいしなぁ。
どうも、ベンダラさん、演出センスはどうもなぁって感じ。
いっそ殺しそこない続きをコメディ仕立てにして見せた方が、
よっぽど面白くなるんではとも思うけど、監督にコメディセンスはなさそうだしなぁ。

ヌリアは、姉が自殺したことから、その原因を探ろうと心理学を専攻したんだけど、
それも結局、専攻したってだけで原因が究明できたわけでもないし、
物語の本筋にに絡んでくるわけでもない。

「自殺の決定権は個人にあるべき。人生をどう終わらせるかのね」
「人生の非情さを脳は受け止めきれない」
とか、ちょい心理学的というか哲学的っぽいセリフがちょこちょこ出てくるが、
これまた、どうも上滑り気味。

なんとか作品を最後まで観れたのは、
死を望む教授に扮したミゲル・アンヘル・ソラの渋さ漂う懐の深い演技のおかげかな。
自分の過ちを深く悔い、愛する妻のために死のうとして
自分自身ではそれが出来ない心の弱さを、巧みに演じて見せる。
スペインじゃベテラン俳優なんだろうと思うけど、物語の核となる人物だけに、
それをしっかり意識した演技なんよね。
あの最後の姿、ニクイやないのぉ。
それに、彼に殺害を依頼されるガラルダ役、北村一輝似のマキシ・イグレシアスも、
ソラに負けず劣らず、教授の依頼を戸惑いながらも実行に移そうとする青年を、
柔軟に演じ、二人の関係がどうなっていくのかに興味を持たせる。

ちょこっと出てくるヌリア役アウラ・ガリードも、なかなか魅力的だし、
ガラルダの学生仲間達も、それぞれのキャラを過不足なく演じている。

まあ、そこそこ良い役者が揃っているのに、
ベンダラ監督の演出力の弱さで、
ちょっと残念な仕上がりになっちっちって作品であ~りました。

他に、面白い映画を撮るスペインの監督、おりまへんけぇ!


トランスワールドアソシエイツ 2018年 5月2日レンタル・リリース



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「MAIGRET メグレ」(16年・イギリス) ミスター・ビーンのR・アトキンソンが人気犯罪小説のキャラ、メグレ警視役にチャレンジしたやんかいさぁ!

MAIGRET メグレ
Mr.ビーンで知られるローワン・アトキンソンが、フランス作家ジュルジュ・シムノンの推理小説シリーズの登場キャラ、メグレ警視役に挑んだテレビ・ドラマが、この「MAIGRET メグレ 」。
コメディ系の俳優がシリアスものに挑戦するってのは、今年の夏に亡くなったジェリー・ルイスや「スーパーバッド 童貞ウォーズ」のジョナ・ヒルなど結構多いけど、ローワン・アトキンソン=メグレ警視ってのは、いまいちピンとこなかった。

メグレ警視が登場する作品と言えば、映画ではジャン・ギャバン主演の「殺人鬼に罠にをかけろ」(58)「サン・フィアクル殺人事件」(59)「メグレ赤い灯を見る」(63)、ブリュノ・クレメール主演のテレビ・シリーズ「新・メグレ警視」を思い浮かべるぐらいで、いずれもフランス本国でフランス・キャストによって作られていた。
イギリスでメグレ警視ものを作るのはこれが初めてかなと思って調べたら、「ハリー・ポッター」シリーズのダンブルドア校長役で知られるマイケル・ガンボン主演で、テレビシリーズ「メグレ警視」(92~93)が作られておりやんした。
ガンボン版はミステリー専門チャンネル“AXNミステリー”で放映されたらしいけど、ちーとも知らなんだ。
ローワン・アトキンソン版も、AXNミステリーの枠で今年の4月に放映されたらしいけど、
ウチのテレビは地上波オンリイなので、見れないんよんねぇ。

ま、それはともかくローワン・アトキンソン版メグレがどんな出来栄えか、
ちょっと気になってDISCASでレンタルしたんよ。
1話完結で2話リリースされおり、続けて見たんだけど、
これがなかなかに良く出来た犯罪ドラマやったやん。

1話目は、ジャン・ギャバンの「殺人鬼に罠にをかけろ」と同じ原作。
パリで発生した連続女性殺人事件をメグレ警視が捜査するもので、
なかなか犯人の目星がつけられず、婦人警官をオトリに殺人鬼をおびき寄せようと考え、
襲われた婦警が犯人の衣服の一部を引きちぎっていたことから捜査が進展し、
ある男が浮かび上がるが…。

2話目は、メグレのオフィスに、見知らぬ男から電話がかかり、命を狙われていると告げる。
部下と共に男の足取りを捜査する中、その男の死体が発見され、
やがて地方の金持ちを狙った強奪殺人事件と男の死が関係あることが分かり始めるが…。

いずれも、クラシカルな時代考証や衣装、美術が実に丁寧で、
英国製だけに言葉は英語なんだけど、フランスが舞台のドラマに全く違和感を感じないんよ。
ハンガリーの首都ブダベストでロケしたらしいけど、
ここは一昔前のフランスの街の風景がそのまま残っているような場所らしく、
イメージとしての古き良きレトロなフランスを再現するのに最適だったようで、効果抜群だ。
1話が85分ぐらいと短めだが、演出もキビキビしているし、
人間ドラマにポイントを置いたストーリーも、個人的にはナイスやん。

そして、メグレ警視に扮したアトキンソンが、実にハマってるんだ。
くわえたパイプをくゆらせながら物静かに考え事をする仕草なんて、
これがあのミスター・ビーン?なんて信じられないじゃあ~りませんか。
Mr.ビーンの面影が完全に払拭されていて、物静かで観察眼に優れ、
じわじわと犯人を心理的に追いつめていく主人公を、渋さを滲ませながら好演。
頼りになる部下達への指示も的確だし、上司の妨害にもメゲルことなく黙々と
犯人とにらんだ相手を心理的に追い詰めていくところなど、唸らされてしまう。
あらためて、アトキンソンって懐の深い俳優なんだなあと思わされてしまう。
なんでも、次にはMR.ビーンの新作を作るらしく、またコメディに戻るみたい。
渋いアトキンソンもいいけど、コミカルなアトキンソンもやっぱり見たいやん。

ジャンヴィエ刑事役ショーン・ディングウォール、ラポワント刑事役レオ・スターも、
メグレ警視の忠実な部下を手堅く演じていて、互いの信頼関係がすんなりと伝わってくる。
アトキンソンはアクションは披露しないけど、代わりにディングルウォールが
若手刑事として犯人追跡に街中を思いっきり走り回ってる。

メグレの心優しい奥さん役ルーシー・コウも、出番は少ないが印象的だ。
コメリオ判事に扮したエイダン・マクアードルの、嫌味なメグレの上司っぷりもイイ感じ。
とにかく、良い役者を隅々まで揃えていて、それぞれがキャラにナイス・マッチなんよ。

イギリス本国じゃ、アトキンソン版メグレは好評だったそうで、
シーズン2も製作決定したみたいだし、来年にでもレンタル・リリースされたら
絶対見ようと思ってしまったヤンバルクイナ!


KADOKAWA/角川書店 2017年11月10日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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