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「命の相続人」(08・スペイン) 病を癒(いや)す力を与えられた医師が、最後に愛のために選択した行為は…。

命の相続人

そこはかとなく切ないけれど、一筋の陽光に安らぎを覚えてしまうような、とても味わい深く、胸にジーンくるスペイン映画でありました。
なんて言うか、見終わって、とても穏やかで優しい気分に浸れてしまったんですわ。

人の病を癒す不思議な能力を突然に得てしまった男ディエゴ。
でも、その力は、他人は治癒できても、自分の愛する家族や恋人には効果がなく、かえって悪化させてしまうという、皮肉な運命が待ちかまえていた…。

この映画、一言で言えば、ファンタジー要素やミステリー要素が微妙なさじ加減でミックスされたヒューマン・ムービー。(一言でもないか)

監督オスカール・サントスって、初めて聞く名だけど、製作が「アザーズ」(01)「海を飛ぶ夢」(04)の監督アレハンドロ・アメナーバルで、なんかアメナーバルらしい様々な要素が折り込まれていて、ひょっとして、サントスさんは、アメナーバルの弟子的存在かも知れないな。

病院に勤務する疼痛(とうつう)科の医師ディエゴのもとに、
ある夜、痛み止めの過剰摂取により意識を失った女性サラが、病院にかつぎ込まれた。
彼女は妊娠中で、胎児も心臓に欠陥があることがわかり、母子ともに快復の見込みはなかった。
診断後、帰途につこうとしたディエゴは、サラの恋人アルマンからサラの面倒を見ることを強要され、
あげくに胸に銃弾を受けてしまい、アルマンはその場で自殺した。
瀕死の重傷を負ったディエゴだったが、体に怪我の後が見あたらず、すぐさま快復した。
しばらくして、彼が触れた治癒の見込みのない患者や急患たちの病状が快復に向かうという、
不思議な現象が起こり始めた。
ディエゴの手に、病人を治癒する特殊能力が芽生えたのだ…。

映画は、ディエゴがなぜ特殊能力を得ることができたのか、
そして、アルマンはなぜディエゴに銃を向け、自殺してしまったのか。

ディエゴが、サラの元を訪れたアルマンの妻イザベルと出会ったことから、
その謎が少しずつ解き明かされていくというミステリー展開になるわけだけど、
その根底に「愛」があり、「特殊能力」と「愛」の皮肉な繋がりを知るハメになってしまうディエゴ。
そして、自分の娘や妻が病にかかり、それが悪化していった時…。

多くの患者を救うのと、自分の愛する家族を救うのと、どちらが大事か。
そんな難しい選択を迫られたら、僕ならどうするだろう。

脚本は、これも劇場未公開の「蒼ざめた官能」(06)の監督・脚本ダニエル・サンチェス・アレバロ 。
「蒼ざめた-」は未見で何とも言えないけど、この「愛の相続人」じゃ、
愛と特殊能力って素材を巧みに重ね合わせ、繊細にして深みある人間ドラマとして、
見事に物語を作り上げたなって思ったわ。
特殊能力の相続って設定も、面白いし。登場人物のキャラ設定も丁寧。
今時の邦画みたいに、泣かせ一辺倒でもないってのもグッドでおます。

もし病気治癒できる特殊能力を持てたなら、マスコミがそれをかぎつけ、
大々的にパブリシティが展開してしまうとも思うけど、
そんな大袈裟な展開にしないで、あくまで主人公の心情に焦点をあてているってもの、なんか良いな。
彼の能力に気づいた一人の患者が、退院後、彼にその能力を使ってくれと懇願する場面がある程度。

オスカール・サントスの演出手腕も評価せなね。
ディエゴが、患者達から病状や、病による痛みの度合いを聞いていく場面から、映画は始まるけど、
重い病という、とてもリアルな世界に、特殊能力って非現実的なアイテムを上手に溶け込ませてる。
アメリカ映画なら、治癒場面なんかCGを使ってしまうかもしれないけど、
そういうのを一切排してるからかもしれないけど、好感が持てるな。

長年に渡り末期患者と接していたために、
「医療は完璧に、でも患者に深入りせず目をそらす」をモットーに働くディエゴ役は、エドゥアルド・ノリエガ。
アメナーバル監督作「オープン・ユア・アイズ」に主演したハンサムガイ。
「オープン-」の時は、どこかヤケた雰囲気に、いまいいち好きになれなかったんだけど、
今回は髭を蓄え、渋さが増してて、役柄にナイスマッチ。
彼、演技力もなかなかだったのね、とあらためて感心させられた。
女優陣も、めっちゃ充実してる。
子供が産めない悩みを持つイザベルに、「永遠のこどもたち」のベレン・ルエダ。
とても切ないホラー「永遠-」じゃ、息子を思う妻を好演していて印象深い女優だけど、
「愛の-」でも、愛を見失い酒に溺れながらも、最後には希望を与えられる妻を好演。
他に、いつのまにかディエゴと心が離れ別居中の妻ピラールにクリスティーナ・プラザス、
性病にかかる小生意気なディエゴの娘アイノアにクララ・ラゴ、
病状が悪化し、どんどんひどい状態になりなった時、心配する父に見せる笑顔が、なんともいじらしい。
そして、物語を締めくくるサラにアンジー・セペダ。
それぞれが、ニュアンス豊かに存在感ある演技を見せてる。

音楽が、多分にセンチメンタルで叙情的過ぎる気もしたけど、
おかげで素直に感情を揺さぶられたことも確かかな。

病室でのサラ、ピラール、アイノアが映し出されるラストシーン、
なんとも感慨深くて、でもって、やるせなくも美しい。

結局、「愛」が一番大事なんよ。

オンリーハーツ 2010年11月26日リリース



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「ジェニーズ・ボディ 地底の呻き」(09年・イギリス・オーストラリア・アメリカ・ハンガリー) 地底の忌まわしい何かによって幻覚を見るらしいんだけどね。

ジェニーズ・ボディ 地底の呻き

監督デビュー作「ミュート・ウィットネス 殺しの撮影現場」(94)で、第2のヒッチコックなんて言われてた、ヒッチコックと同じ英国出身のアンソニー・ウォラー。
2作目の狼男もの「ファングルフ 月と心臓(狼男アメリカンinパリ)」(97)も、コミカル&ロマンティックなポップなホラーとして、なかなか面白かったけど、
続くビル・プルマン主演のサスペンス「バッド・スパイラル 運命の罠」(99)以降は、とんと新作の情報も聞かず、監督やめたんやろかと思っていたら、突如新作のリリース。

気になっていた監督だけに、やっぱり期待しますがな、
その作品の出来に。
で、レンタルして見た印象だけど、なんていうか、
なんでこんな中途半端な作品を作ってしもたんやろと、
ちょっと悲しくなってしまいましたわさ。

サハラ砂漠の採掘場に発掘調査にやってきた学者チームからの連絡が途絶え、
様子を見にやってきたセキュリティパトロールのジャック。
現場には、学者達の姿は見えず、壁には動物の血で呪文めいた文字が書かれていた。
状況を詳しく調べるため現場待機となったジャック。
そんな彼の前に、女性地質学者JCことジェニーが現れた。
唯一の生存者だった彼女から、学者チームは、地底9マイルにある奇妙な空洞を調べていたと聞かされる。
その時から、ジャックは亡くなった家族の幻影を見るようになった…。

冒頭の発掘現場の異様な状況描写に、オカルト・ホラーめいた匂いが立ちこめ、
ちょいゾクゾクさせるんだけど、その後がアキマヘンがな。

男だけの学者チームになぜ女性のジェニーがいたのか、
本当に彼女は存在するのか、ひょっとしたら地底の邪悪な魔物が女に化身いるのではないか、
地底の何かがジャックに見せている幻覚ではないのか。
彼女の存在を不気味に思いながらも、やがて体を重ねてしまうジャック。
そして…。

ジャックが、精神的に徐々におかしくなり、狂気じみていくって展開になるんだけど、
それがいまいち僕には感じられなかったな。
ジェニー役は、「トランスポーター2」で過激な女殺し屋に扮していたケイト・タノ。
そんなに美人とも思えないし、彼女に悪魔めいた妖しい魅力ってのが乏しいように思えるからかな。
フィットネスクラブのインストラクターのお姉ちゃんぽくて、ちょっと溌剌とし過ぎてるわ、彼女。
ジャック役も、テレビ版「暗黒の騎士/ハイランダー」のエイドリアン・ポールが扮しているんだけど、
体は引き締まってマッチョ・タイプだけど、演技力はいまいちみたいで、
精神のバランスをくずしていく様を、うまく表現できなかったみたいなのね。
ジャックは、仕事に熱中するあまり家族を顧みず、おかげで悲劇に見舞われた過去があり、
その悲しい過去ゆえに、忌まわしい幻覚を見、追いつめられていくんだけど、
ポールに、そこまでの演技力がねぇ。
それゆえ、彼にちっとも感情移入できないんでおまんにやわ。

この二人のキャストの弱さもあるんだろうけど、
ウォラー監督の演出も、どうもメリハリに欠け、いまいち冴えを感じられないんですわ。
プロデューサーが、この二人を使って映画を撮ってくれと言われ、
渋々撮ってしもたんやろか。
どうも、ノッて撮ったとは思えない。

結局、地下9マイルに存在していたのが何かってのは、よう判らんままやし。
彼女だけが、調査隊の中で、なぜ生き残っていたのかも謎のまんまやし。

脚本も、話の肝となるものを、とてもあいまいにし、
あいまいなままで映画を撮りあげたって印象かな。

どっちにしても、ガックリクリクリ・クリックリの作品でありましたわさ。
ウォラーさん、次作でもっと頑張ってチョーダイ!
ほんまにね。

話は変わるけど、ロック・グループOK Goのサイトを見たら新作PVがアップされていた。
「last leaf」って曲で、食パンに描いた線画のアニメーションなんだけど、
メランコリックな曲調とナイスマッチして、なんだかウルウルきてしまうミュージックビデオ。
今回は、メンバー出演一切なしで、秋っぽくアートな線でいったみたい。
目からハトが飛び出したり、人や車、それにキツネが押している乳母車が、崖から落ちていったり、
少々センチメンタルなイメージが全体に漂い、アートアニメとして、なかなかの力作だと思う。
だって、スゴイ数の食パン使って、時間かけて作ったってのが、よくわかるもん。

OK go公式サイト・ビデオページ

AMGエンタテインメント 2010年11月19日リリース



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「ダウト 偽りの代償」(08年・アメリカ) 検事の証拠ねつ造疑惑を暴くつもりが、罠にハマってさあ大変!

ダウト 偽りの代償

ついこの間、郵便不正事件で、大阪地検特捜部の検事が証拠のフロッピーディスクを改ざんして逮捕されたけど、
本作「ダウト-」も、テレビリポーターが、裁判で勝ち続けるスゴ腕検事の証拠ねつ造疑惑に迫ろうとする、なかなかタイムリーなテーマを扱ったサスペンスだ。
なんでも、56年製作のフリッツ・ラング監督作「条理ある疑いの彼方に」のリメイクらしい。
知らなかったけど「条理-」は00年に日本でもやっと公開されたみたい。

監督は、「カプリコン・1」(78)や僕の好きなショーン・コネリー主演の「アウトランド」(81)のピーター・ハイアムズ。
本作を撮ったのが65才の時だけど、ベテランだけに、切れ味が多少ユルめになったとはいえ、まだまだ娯楽のツボは外さず、ヒネリの利いた作品に仕上げていて、充分楽しめましたわさ。

裁判で、17回連続で被告を有罪で刑務所送りにしている検事ハンター。
有罪の決め手が、いつもDNA鑑定ばかりなのに、
証拠ねつ造疑惑を抱いたテレビリポーターのニコラス。
ハンターを追いつめるため、偶然起きた娼婦殺人事件を利用し、
刑事から手に入れた調査データを元に、靴やナイフなど犯人と同じ物を入手し、
その入手経過を仕事仲間に撮影させ、でっちあげの容疑者になりすまそうとする。
案の定逮捕され、ハンターの追求を受けるニコラス。
ハンターがねつ造証拠を出した時、友人が撮影したDVD映像を提出し、
ハンターをハメようとしていたんだが…。

いきなり布で目隠しされた女性の顔のアップが現れ、オヨヨッと思わせられるが、
実はテレビリポーターのニコラスが、
町中でインスタントコーヒーと高級コーヒーの試飲をしてもらっていたっていたんだわさ。
このシーン、最初はどうってことない場面だと思っていたんだけど、
映画を見終わったあとで、よーく考えたら、
これは、ラスト暗示していたんだと気づかされたね。

見ている者をミスリードし、思わぬ結末が待ちかまえている展開だけに、
未見の人のために、あんまり中身のことが言えないけど、なかなか巧妙に作られた作品でありんすよ。
実際、僕も、エエッ!まさか!とダマされましたわさ。
と同時に、フリッツ・ラングの「条理-」がスゴク見たくなったな。
50年以上も前に、あの展開をどういう風に描いたんだろうか?とね。
「CSI」のような科学的な捜査なんかできっこなかった時代だけにさぁ。

一度目は気づかなかったけど、二度目に見た時、
あちらこちらに結末へと繋がる伏線が張られていたことにも気づかされたわ。
なるほど、あのシーンには、実はそういうことだったのかってね。
ハイアムズは、本作の脚本も書いていて、
クラシック作品を、今の時代に通用するように上手にアレンジしていると思うな。
多分にご都合主義的な箇所もあるけど、娯楽映画だもん、気にしない気にしない。
ラストを、ヒロインの「クタバレ(ファック・ユー)」のセリフで締めくくるってのもナイスでおまんにやわ。

ジャケットじゃ、キャストのトップにマイケル・ダグラスがきて主演とうたってるけど、
本作の実質の主役は、ニコラス役のジェシー・メトカーフと、
ハンターの部下の女性エラ役のアンバー・タンブリン。
ハンター役ダグラスは、そんなに出番が多くないが、要所要所で登場し、画面をビシッと締めてる。
メトカーフとタンブリンだけじゃ、どうも作品に小粒感が漂ってしまいがちだけに、
ダグラスが出ることで、それを回避できてるって感じかな。

なにせメトカーフは、テレビシリーズ「デスパレートな妻たち」出演ぐらいで、
ほかに「ゾンビ・ホスピタル」(08)「モテる男のコロし方」(06)と、作品歴はいまいち。

映画の後半でナイスな活躍を見せるタンブリングは、
「ザ・リング」「呪怨パンデミック」に出ていたらしいけど、ほとんど記憶にないなあ。
でも、本作じゃ、愛する男を助けるため、必死のパッチで真相を探るヒロインを熱演!
可憐さと気丈さをあわせもったような顔立ちに、ググッときましたわさ。
女優としての華もあるし、ひょっとしたら今後、大役を掴むんじゃなかろうか。
個人的に応援してまっせ!

他に、「アバター」に出ていたヌーボー顔のジョエル・デビッド・ムーアがニコラスの相棒フィンレイ役。
友人を助けるために激しいカーチェシスを繰り広げとります。
黒人刑事に、「ダレン・シャン」(09)でシルクド・フリークのガリガリ芸術家を演じていたオーランド・ジョネス。
ジョネスって、コメディ作品が多いらしいけど、本作じゃ硬派な刑事を、笑顔ひとつ見せず演じてる。

今度、ファンになったアンバー・タンブリンが出ているという
「旅するジーンズと19才の旅立ち」を見てみようっと!
フレー!フレー!タンブリン!

日活 2010年11月4日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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