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「パッション」(03年・イギリス) 夫を亡くした老女が、娘の彼氏にぞっこん、抱かれてしもたわ!

パッション

007/J・ボンドことダニエル・クレイグが準主役で出ていなかったら、
おそらくDVDリリースもされずじまいだったかもしれないのが、このイギリス映画でおます。
なにせ、製作されたのが2003年。ボンド役に抜擢される4年も前だ。
なんでも、主役のアン・リードが、本作の演技でロンドン映画批評協会賞の英国主演女優賞を受賞。
作品賞や主演男優賞にもノミネートされたらしい。
英国アカデミー賞でもある「BAFTA AWARDS」でも、リードは主演女優賞でノミネートされたらしく、イギリス本国じゃ、それなりに注目を浴びた映画みたいね。
でも、いくら映画賞を受賞したりノミネートされても、
それで日本で劇場公開されるってところまではいかないのね。
本作みたいに、60歳過ぎの女性が、息子ほどの年の男に溺れるって話じゃ、主演女優も知名度ないし、
商売になれへんなぁと映画会社のスタッフが思ったんかも知れないな。

ま、なにはともあれ、原題「The Mother(ザ・マザー)」を、
邦題「パッション」にして、やっとDVDリリースされましたわさ。

ロンドン郊外で夫と暮らすメイが、独立してロンドンに住んでいる二人の子供達に会いに出かけた。
息子ボビー一家や娘ポーラら、一家揃っての夕食を楽しんだが、
以前から体調がすぐれなかった夫の容態が悪化し、突然亡くなってしまう。
突然の出来事に、心が空っぽ状態になったメイを、
ボビーは、しばらく自分の家に住んでもらおうとするが、彼の妻が嫌がる。
結局、メイは母子家庭のポーラの部屋に居候し、メイの息子のベビーシッターをすることに。
そこで、彼女は、ポーラが、ボビーの家の改築工事をしている妻子持ちのダーレン不倫している事を知り、
男運の悪い娘を心配して、別れることを勧める。
そして、それとなくダーレンの気持ちを探るため、メイは彼に接近。
自分の娘をもてあそぶ嫌な男と思っていたのに、彼の優しい態度に触れ、彼とうち解け、
次第に心が揺れ動いていくメイ、やがて…。

「誰でも歳をとり、邪魔者になる」
ボビーと彼の妻が、メイのことで口げんかをした時、
そばで工事をしていたダーレンが、二人に投げ捨てる言葉だけど、
的を射ているだけに、なんとも残酷なセリフだ。

ポーラが、メイのために、自分が主催しているサークルの老齢の男性を彼女に紹介し、
ポーラ、ダーレン、メイとその男とのダブルデートをするシーンがあるけど、
そこでも、男性が、(若い者にとって)「年寄りは邪魔だ」と言う。

「邪魔者」である老女メイを受け入れ、忘れていたセックスの快感を味わわせてくれたダーレン。
すっかり忘れていた「女であること」を取り戻し、ダーレンの体に溺れていくメイ。
ポーラにとって「母」だったのに、いつのまにか彼女と男を奪い合う「女」になっていくメイ。
でも、二人の関係がポーラの知ることとなり…。

母であること、女であること、そして老いること。
老いた時、なにに生き甲斐を見いだし、人生を溌剌としたものにしていったらいいのか。

ダーレンとの「セックス」によって、ほんのひと時、人生を輝かせ、
心に張りを持たせることができたメイ。
それを「愛」と思いこみ、それゆえに、こころが満たされていく。

年寄りのセックスまつわる話って、見苦しいってワケでもないけど、
今まであまり描かれたことがないと思うし、それをセンセーショナルでもなく、
母と娘の問題を交えながら、真摯に描いたのは、
「ノッティングヒルの恋人」の監督ロジャー・ミッシェル。
登場人物に寄り添うのでもなく、突き放すのでもなく、
少し距離を置きながら、メイとその子供達の心情や行動を冷静に見つめているって感じだね。
だから、生活感はあるけど、誰かに感情移入ってのはしにくいし、とてもシリアス。
でも、ラスト、自分なりの決断を下し、カメラの方に向かって、
確かな足取りで一人で歩いてくるメイに、
監督は、ささやかながらエールを送っているような、そんな気がしたわ。

メイ役は、アン・リード。
「ホットファズ」(07)で、殺人鬼にハサミで刺し殺される園芸店の女主人をやってた人だ。
経歴は不明だけど、夫の死で茫然自失になったときの表情、
またダーレンとのエッチで、心に喜びが沸き立つときの表情、
そして、娘にジェラシーを抱いてしまう時の表情など、
様々な表情や感情をリアルに演じきっていて、実に巧い。
確か1935年生まれだから、本作じゃ68歳で、豊かなオッパイまで見せて、
クレイグに後ろからハメられ、ヒーヒー喘ぐところなんて、めっちゃ生々しいやん。

ダーレン役のダニエル・クレイグ。
優しい性格なんだろうけど、メイがもたれかかってきたら素直に抱きとめ、
ベッドに誘われれば、すんなりOK。
でも、彼女を愛しているわけではなく、メイの前でポーラと平気でいちゃつく。
そんなどっちつかずの、少々エエ加減な男を、ヒップ丸出しサービスもありで、巧妙に演じてる。

メイの娘ポーラ役は、
僕の好きなミュージカルタッチの劇場未公開作
「ハリウッド夢、夢物語」(89・監督・カール・ライナー)に出ていたキャスリン・ブラッドショウ。
気だては良いが男運が悪く、売れない小説を書き貯めているけど、
母は自分も認めてくれてず、兄のボビーほど愛してくれていないと思いこんでいる娘。
最後に、母と「女対女」として向き合うところなど、柔軟な演技で、
リードとの演技合戦を繰り広げてる。

しかし、老いることって、むつかしい問題だな。
僕は独り身だから、家族の問題ってのは、あまりかかわりが薄いけど、
「いつか独りぼっちで死んでいく」ってことについて、時々考えることがある。
でも結局、いくら考えたって結論が出ないし、その時はその時だ、と思うようにしている。
できれば、あまり人に迷惑をかけずにすませればいいけど。

それより、歳をとっても、どう前向きに生きれるかやね、
他の人にとって「邪魔者」にはなりたくないしねぇ。
イヤでもなるのかもしれないけど。

アットエンタテインメント 2011年4月8日リリース



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ジャンル : 映画

「友よその罪を葬れ」(09年・スペイン) 尊敬する親友の殺人を見てしもた!どないしょ!

友よその罪を葬れ

本作のジャケットのキャッチコピーが、
「友情か、正義か、驚愕の事実が善人の心をえぐる。
正統派クライムサスペンスの傑作」
ま、すごい傑作とまでは言わないけど、
丁寧な演出のスペイン製・心理サスペンスの佳作で、
見応えある作品でありましたわさ。

主人公は、法学部の大学の教師ビセンテ。
新入生達の前で、「法律家になるには、立派な倫理観をもつことだ。
倫理観がなければ人を裁くことは出来ない。あるのは善と悪…」と演説する彼は、次期教授の最有力候補と周囲から見なされている。
彼自身も、倫理を重んじ、信仰にも厚く、
自分が善人であろうと心がけている。
そんな彼が、親友であり尊敬する老教授フェルナンドが妻を殺す現場を目撃してしまった!
警察に通報すべきかいなか、思い悩むビセンテ。
やはり、通報しようと電話に手を伸ばした時、電話のベルが鳴り、
受話器を取りあげ聞こえてきたのは、妻が行方不明だと叫ぶフェルナンドの声だった。
結局、通報できずじまいとなり、やがてフェルナンドの妻の死体が発見された…。

前途洋々、教授になるのも間近にせまり、ハッピッピーだったのに、
倫理、つまり人として踏み行うべき道の前で、つまづきかかり、思い悩むビセンテ。
秘密を抱えたがゆえに、愛する妻パウラとの関係もギクシャクし始める。
何にも知らないパウラは、善意からフェルナンドと彼の幼い息子イカルドを自宅に招くけど、
それを露骨に迷惑がるビセンテ。
親しく接していたフェルナンドを、どうしてビセンテは煙たがるのか、
理由が分からないパウラとビセンテの間に亀裂が生じ、ついに彼女は彼の元から去ってしまう。

葬儀の後、式の出席者達がフェルナンドの家に集まるんだけど、
このとき、ビセンテは、殺害の現場である庭で凶器であるスコップを見つけ、
とっさに持ち帰ってしまう。そして、大学の自分の部屋の机に隠すんだけどね。
これが後でえらいことになりまんねやわぁ。

親しい人間の悪の行為を見てしまった時、人はどうするべきか、
善人として、どう振る舞えばいいのか。
主人公を、法学部の教師に設定したことで、そのテーマがより顕著になり、
ビセンテがどう決断を下していくのか、興味津々、成り行きを見届けたくなってくる。

パウラの提案で、ビセンテ夫婦とフェルナンド親子で山小屋を訪れた時、
ビセンテの様子がおかしいことに気づいていたフェルナンドは、
ひょっとして知っているのか、と迫る。
ビセンテが目撃したと知り、妻に苦しめられていたと事情を語るフェルナンド。
だからといって、殺人を容認できるわけもないビセンテ。

サスペンスだから、あまり後半の物語は語れないけど、
人間が善人なら、犯した罪を、やはり何らかの形であがなおうとするんだろう。
でも、あがなったところで、それですべてが丸く収まるのか?
あんな結末になって、彼が抱えざるを得なかった心にのしかかる重い闇はどうなるんだろう。
なんともほろ苦く、ちょい複雑やなぁ。

監督は、フアン・マルティネス・モレノ。
ネットで調べたら、スペイン版のこの映画のサイトがあって、
モレノ監督って、髭モジャの熊みたいなオッサン。
本国じゃ数本作品があるようだけど、何せサイトはスペイン語なんで、詳しいことは全く判りましぇん。
本作の脚本も彼が書いていて、
ストーリー展開に、ご都合主義的な部分もちょい見受けられるけど、
説明過多にならず、人間の倫理観の問題を、サスペンス要素を加味しながら、
うまくまとめ上げてるって気がするな。
演出の手際も、ムダがなく的確。
ビセンテが殺人を目撃した時、持っていた酒のビンが握った手から、すこしずつ滑り落ちていくってな、
ちょいヒッチコック風のサスペンス描写も、なんかニンマリよ。
適度な緊張感を最後まで持続させてるってのもナイス。
登場人物それぞれの描写も抜かりなく、人間ドラマとしても充分見せてくれますわさ。

ビセンテ役は、「サルバドールの朝」(06)や
ジャウマ・バラゲロ監督の「ネイムレス 無名恐怖」(99)に出ていたトリスタン・ウヨア。
と言っても、「ネイムレス-」は見ているけど、どんな役柄だったか、ちっとも思い出せない。
調べたら、エグい殺され方をする好奇心旺盛な長髪の雑誌記者の役だった。
本作じゃ、ジャック・ニコルソン風の額の広さに短髪で、メガネかけてるし、印象がガラリと違ってる。
知的で、妻を愛する、善人であろうとする主人公を、微妙な表情で細やかに演じ、実にウマイやんかいさぁ。

フェルナンドに扮しているのは、エミリオ・グティエレス・カバ。
確か僕の大好きな、スペイン監督アレックス・デ・ラ・イグレシアの「13 みんなのしあわせ」で、
ヒロインと大金の争奪戦を繰り広げ、
あげくはエレベーターに挟まれて体がまっぷたつってなアパートの住人を演じていた俳優さんだ。
スペインじゃ、ベテランの名優らしいのね。
白い髭面で、ちょい津川雅彦っぽい顔立ちだけど、これまた知的だけど、
衝動的に殺人を犯し、ビセンテまで巻き込んでしまったことに深く後悔している老教授を、
熟練の演技で、存在感たっぷりに演じてる。

他に、妻パウラ役ナタリー・ポサ、
ビセンテと大学で張り合ってる嫌みな教師ダニエル役にアルベルト・ヒメネス他、
どの役柄も、キャストにナイスマッチ。

良い俳優に良い演出。
僕個人としちゃ、なかなかの掘り出し物的・作品でありやんした。
フアン・マルティネス・モレノ監督、また次回作が日本でリリースされたら、見逃さへんで!

オンリーハーツ 2011年3月25日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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