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「ザ・ガード 西部の相棒」(11年・アイルランド) アイルランドのはみだし中年巡査が黒人FBI捜査官とコンビを組むんやけどね!

ザ・ガード~西部の相棒~

去年の11月に開催された”大阪ヨーロッパ映画祭”で、「アイルランドの事件簿」って邦題で上映され、見た人の幾つかのブログでオモシロかったってのを読んで、見たいなぁと思っていたのがこの「ザ・ガード 西部の相棒」。
僕のお気に入りのアイルランド出身の俳優ブレンダン・グリーソンが主演ってのも、気になっていたし。
実在したアイルランドの大泥棒を演じた「ジェネラル 天国は血の匂い」(イギリス89 監督:ジョン・ブアマン)をビデオ見て以来、グリーソンにちょい注目するようになったんだけど、そんな彼が母国で久しぶりに主役をはった作品。
共演は、グリーソンのファンだったらしい、これまた僕のお気に入りの黒人俳優、「ホテル・ルワンダ」「アイアンマン2」のドン・チードル。
この2人がメインじゃ華がないし、劇場公開は無理やろし、DVDリリースもないやろなと思っていたらまさかのリリース。ウレシカルカル・アリガットサ~ン。

アイルランド西部の小さな港町で、自由気ままにに暮らす、ちょい道徳観の欠如した中年巡査ゲイル。
ある日、頭を打ち抜かれた奇妙な死体が見つかった。
そして町に赴任してきたばかりの、ゲイルの部下マクブライドが行方不明になった。
時を同じくして、コカイン密輸組織の捜査のためにアメリカから黒人のFBI捜査官エベレットがやってきた。
なんでも、近々、アイルランドで組織が取引を行うらしい。
密輸事件に興味がなかったボイルだったが、奇妙な死体が組織メンバーの一人だと判り、
彼はエベレットと共に、捜査におもむくハメに‥。

監督は、本作でベルリン映画祭新人監督賞を受賞したジョン・マイケル・マクドナー。
彼の兄マーティン・マクドナーも監督で、マーティン作品「ヒットマンズ・レクイエム」(08)には、
主人公の殺し屋(コリンファレル)の相棒役で、ブレンダン・グリーソンが出ている。
「ヒットマン-」は、このブログでも紹介したけど、不思議な味わいの犯罪ムービーで僕の好きな作品だ。
兄弟とも、グリーソンがお気に入りの俳優さんかもね。

ジョン監督、脚本家出身のようで、本作の脚本も彼。
キャラ設定もユニークだけど、キレありユーモアあり皮肉たっぷりなセリフがバンバン飛びだす。
(字幕でしか判断できないんだけどね。)

ゲイルは、正義感は彼なりにあるけど、警官としての倫理観がちょい欠如していて、
捜査中でも、非番だからと勝手に休んでコールガールと楽しんだり、
勤務中に、パブで酒飲んで、シューティング・テレビゲームで遊んでいたり、
それでいて、余命少ない病気の母をとても愛していて、
医者に隠れて、母に酒を差し入れて一緒に飲んだり、彼なりのやり方で母を喜ばすんよね。
だから、初対面のエベレットに対しても、「密売人は黒人やメキシコ人だけだと思っていた」
とか平気で口にするし、それは人種差別発言だ!とエベレットが怒っても、
「それがアイルランド人の文化だ!」と言い切りよる。
実直で生真面目なエベレットと野放図なゲイルの、ずれまくる2人の会話が、とにかくオモシロイ。
ゲイルの突拍子もない話に、エベレットがあきれ果てて
「君はイカれているのか、賢いのか分からんな」と言うのも納得やわなぁ。

舞台がアイルランドの小さな町ってこともあるけど、
どこか、のんびりしていて、でもって調子っぱずれなオフビート感覚ってのかな、
それが作品全体に漂っている。
密輸組織のボスは、哲学かぶれで、人気の哲学者はみんなイギリス人だ!とか文句たれたり、
仲間の会話にも、ショーペンハウアーやニーチェの言葉が引きあいに出されるんよ。
組織の一人クールなリアムは、水族館で水槽を泳ぐサメを見つめながら、
「サメはいい。癒される」と意味不明なセリフつぶやきよるし。
犯罪現場撮影のマニアの青年が突然現れたり、
どこか普通のようで普通でない、でも奇妙にオモシロ・オカシイ。
演出テンポも、そんなニュアンスを醸し出すように、ユルいようでいて、妙にタイト。
微妙なさじ加減よ。

でも、すぐワイロに負ける警察の腐敗も見せるし、
マクブライドの妻がクロアチア人で、異国の戸籍をとるために結婚したとか、
結構シビアな部分も抜かりなく、かつサラリと描いている。
アイルランドが、いまでもイギリスを敵対視しているって描写もあるし。
ただオモシロくて笑えるだけじゃやないんよね。

ちょっと気になったのが、ゲイルが自宅で見ているテレビにチラリと映った映画が、
スコリモフスキの怪作「ザ・シャウト/さまよえる幻響」(78)だったての。
叫び声で人を殺すことができる男の話だけど、本編ドラマとあんまり関連性ないし、
単にジョン監督の好みの映画だったのか、なんか深読みしたくなってしもたわ。

アイルランド出身のブレンダン・グルーソンは、まさにハマリ役といって良いほどゲイル役にピッタリ。
ブレンダンなくして、本作はありあえないと思えるくらいよ。
多分、ブレンダン主役を念頭に脚本が書かれたんと違うやろか、ほんまに。
映画の後半じゃ、哀愁味ってのも体からじんわりと発散させるし。
デブい体型で、お世辞にもカッコイイとは言えないけど、
ラストの颯爽とした制服姿、銃を構えるところは、バリバリにカッコイイやんかいさぁ。

対するアメリカ出身のドン・チードル。
ゲイルが非番だからと、一人で聞き込みに回るんだけど、
地元民からことごとく無視され続け、気落ちしてしまったり、
ブレンダンの暴言を苦々しく思いながらも、
それにメゲルこともなく、気分を変えて前向きに捜査を進める捜査官を、
真面目キャラが似合う彼が、控えめだが、巧妙に演じてる。
僕は、「ブギーナイト」で演じたカントリーウエスタン好きの黒人ポルノ男優が印象に残ってるんだけど、
控えめだけど芯の強い役柄が似合う、良い俳優さんだ。

ゲイルの母役、アイルランド出身のフィオヌラ・フラナガン。
「トランス・アメリカ」や「LOST」に出ていた女優さんだけど、
余命わずかなのに、陽気で前向き、病人らしさが微塵もない、
でもどこかはかない風情が漂うキャラを、サラリと演じていて、印象深いやん。
息子とライブハウスに行き、生演奏を聴きながら幸せそうな笑顔を見せるところ、ええわぁ。

密輸組織メンバーには、アイルランド出身の「タイタンの戦い」のリーアム・カニンガム、
イギリス出身の「シャーロック・ホームズ」の悪役が抜群に良かったマーク・ストロングと、
いかにもな俳優が顔を揃えてる。

思えば、登場人物の出身地を、俳優の出身地と同じにしたようで、
結構細部に凝ってるみたい。

ところで、「ジェネラル 天国は血の匂い」をどこかの会社がDVDリリースせえへんやろか。
ブアマン監督がカンヌ国際映画祭で監督賞をとった隠れた秀作なんやけどねぇ。
主役がグリーソンでは無理かなあ。


アース・スターエンターテイメント 2012年6月22日レンタルリリース



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テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

「穏やかな暮らし」(10年・イタリア・ドイツ・フランス) 平穏に生きたかった暗い過去を持つ男を描くマカロニ・ノワールに、ちょいシビれたやん!

穏やかな暮らし

イタリア版アカデミー賞で10部門を受賞したヒューマン・ミステリー「湖のほとりで」(07年)をDVDで観て、主役の中年刑事役トニ・セルビッロの渋さが光る味わい深い演技を目にし、彼のファンになってもた。
認知症を患い療養生活を送る妻を気遣いながら、田舎町で起こった殺人事件を追う、生真面目で実直なベテラン刑事を、説得力たっぷりに好演していたのよ。ラストの、娘と2人で妻を見つめる優しく暖かな眼差し、グッときたなぁ。
そんな彼が、今度は刑事と正反対の役柄を演じてるってことで、観てみようと思ったのが、この「穏やかな暮らし」。
こちらもイタリア・アカデミー賞4部門にノミネートされ、ローマ国際映画祭じゃ、トニは最優秀男優賞をとってるし、ハズレな作品じゃないと思ったんだ。
日本じゃ去年、「イタリア映画祭」で上映されたらしい。
タイトルから、人情味漂う人間ドラマかなって勘違いしそうだけど、実はイタリア・ギャング組織が絡んでくるマカロニ・ノワール。
映画のエンドクレジットに流れる、本作のテーマソングともいえる歌を聞くと、なるほど、「穏やかな暮らし」って納得のタイトルと実感したわさ。
哀愁味があって、メロディーもなかなか良いのよねぇ。CD出ないかしらねぇ。you-tubeで探してみようかな。

ドイツの田舎町でホテル・レストランを営むイタリア人ロザリオとドイツ人の妻レナーテ。
ある日、イタリア人の若者ディエゴとエドアルドが訪れ、宿泊することになった。
ディエゴからロザリオは遠い親戚と聞いていたエドアルドは、
ロザリオがディエゴを愛おしむように抱きすくめる姿を見て、いぶかしく思う。
実は、ディエゴ達は、イタリアの暴力組織から要人暗殺のために送り込まれたヒットマンだった‥。

DVDのジャケット裏のストーリーを読まずに借りて見たので、
最初、ロザリオとディエゴの親密っぽい関係が、なんだかゲイっぽくもあり、
どうもよく解らなかったんだけど、ロザリオとディエゴ達がパブに行ったところで、
ロザリオが、「息子」と言ったので、親子だったのかと納得。
でも「息子」と言うのは、そのシーンの一言のみ。

どうも、クラウディオ・クッペリーニ監督は、説明的なセリフを最小限に止め、
登場人物の表情や仕草、行動をとおして、映像で物語を語ろうとしているみたい。
だからなのか、シャープで端正な映像に力みたいなもんを感じるな。
前半は、どちらかというと淡々としているんだけど、ムダに見える描写がほとんどないと思える。
かなり緻密に映像を積み重ねてるって感じよ。

ディエゴ達が、ターゲットに狙いをつけ、銃をぶっ放すところから、
物語に、ノワールの匂いが立ちこめ始める。
それまで物静かに進んでいたストーリーに、ジワリジワリと緊張感が滲み出すんよね。
そして、エドアルドがロザリオの正体に気づいてしまい‥。

”穏やかな暮らし”がしたかったロザリオ。
でもそれが許されない状況に追い込まれてしまい、
とんでもない行動に出ることに‥。

人は過去から、なかなか逃れることはできない。
過去の行為は、いつのまにか現在の自分を、その過去へと引きずり戻そうとしてしまう。

ロザリオの店の客である牧師が病に倒れ、
病院を訪れた彼が、昏睡状態でベッドに横たわっている牧師に言う。
「私は何人も殺した。転向し、息子も家族も信用も捨てた。
神は新しい人生(穏やかな暮らし)をくださった。
でも今、それを取り上げようとなさる。神は人を助ける気などないのだ」
それは懺悔ではなく、ほとんど恨み節とも言える告白だ。

ロザリオが、なぜ15年前に自分が死んだことにして、家族を捨て、
”穏やかな暮らし”を求めてドイツに来たのかは語られない。
そこんところは、見る者の想像にゆだねようとしているみたい。

”穏やかな暮らし”を求めるロザリオの心情が、物語の骨子で、
それにまつわる周囲の物語は、必要最小限に止めようと、監督が意図しているみたい。

ただ、父と息子の愛憎関係は、結構丁寧に描かれてる。
ロザリオは、レナーテとの間に幼い息子マティアスがいるんだけど、
ディエゴがマティアスと親しくなるのを、2人が母違いの兄弟だけに、
ロザリオが複雑な表情で見つめるところなど、
3人それぞれの感情が織りなす微妙な空気が画面に漂うところ、
さりげないんだけど、なかなか上手い演出だと思ったな。

監督は、人物の仕草や表情など、セリフではなく映像で語ろうとしているだけに、
演技の達者な俳優をキャスティングしたようで、
ロザリオ役のトニ・セルヴィッロ、それに応えて、自然体で主人公を見事に演じて見せてる。
ネットで調べたら、1959年生まれだから、本作出演時は、51歳。
でも、映像で見るセルヴィッロは、薄い白髪で、髭も白く、顔にシワが刻み込まれ、50代後半に見える。
「湖のほとりで」(07年)が48歳の時だけど、その時もかなり年寄りくさく見えたし、
老け顔なのね、トニさん。イタリアの井上達夫(吉本新喜劇)じゃあ~りませんか。
背筋がシャンと伸びてて、贅肉もそんなになく、体つきは年相応みたいだけど。
しかし、生真面目な刑事役から、元殺し屋まで、演技力の幅が広い人みたい。
イタリアを代表する名優とか言われてるらしいけど、ま、それも納得ね。

妻レナーテ役は、ドイツ女優ユリアーネ・ケーラー。
「名もなきアフリカの地で」(01)「ヒトラー 最後の12日間」(04)でヒトラーの愛人役など、
僕は本作で初めお目にかかったけど、ほんのり色香漂う、ベテラン女優みたい。
出番は少ないけど、不可解な行動をとるロザリオを不審に思いつつも、
愛ゆえに彼を信じようとする、けなげな妻を好演。
そして、息子ディエゴにマルコ・ダモーレ、エドアルドにフランチェスコ・ディ・レヴァ。
ネットで調べても全く詳細が解らないんだけど、
マルコは、坊主頭で見た目厳ついのに、久しぶりに会う父を慕いつつも、
自分は父とは違う生き方をしようとするディエゴを、結構繊細に演じてみせてる。
女好きで少々無鉄砲なキャラを演じるフランチェスコも、いかにもチンピラっぽい匂いプンプン。
フランチェスコとセックスフレンドになる、ロザリオのレストランで働くドリス。
名前は判らないけど(多分ドイツの女優さんだと思う)、キュートな魅力があって、
肉感的なヌードも披露するし、誰か名前を知ってたら教えて欲しいやんかいさぁ。

ラストのロザリオの決断。
”穏やかな暮らし”を求める彼の気持ちが理解はできるけど、あまり共感はできないな。
だって自分本意で、ちょっと身勝手過ぎる気がするから。
ひょっとしたら、家族のことを思ってそうしたのかもしれないけど。

ロザリオとは状況は違うけど、
今とは別の生活、別の生き方、やってみたいなぁと、たまに考えることがあった。
歳食ってくると、気力も体力も、どうにもこうにもアキマヘン!なんやけどね。ほんまに。


オンリー・ハーツ 2012年4月6日レンタルリリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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