FC2ブログ

「六つの心」(06年・フランス) 雪降るパリの街で、心を揺らめかす6人の男と女、なんてね!

六つの心

去年の12月に見た、フランス映画「六つの心」。
シーンとシーンを、ゆったりと降りしきる雪でオーバーラップさせながら描くところが、なんとも粋だなあと思ってしまった作品だ。
冬のパリを舞台に、淋しさを抱えた6人の男女の物語だけど、じんわり寒さが忍び寄るこの時期、なんだか急に見たくなってレンタルしやしんた。
監督は、僕の好きな映画「去年マリエンバードで」(60)のアラン・レネ。「去年マリエン-」は学生の頃、確かATG(アート・シアター・ギルド)専門劇場で見たんだけど、流れるようなモノクロの映像美にうっとりとした覚えがある。話はあってないようなもので、現実と幻想がないまぜになった、シュールチックな筋運びだったかな。この作品も見直したいけど、ブルーレイでのセル・オンリーのようで、ちょい残念。

「六つの心」は、2010年フランス映画祭で上映されたけど、なぜか劇場公開に至らず、ひっそりとDVDリリース。
レネさん、1922年生まれだから、本作を撮ったのは84歳の時。
かなりの高齢だけど、映像センスに衰えはなく、登場人物それぞれの心の機微を丁寧にすくい取っていて、まだまだ元気、お達者やねえと思ってしまったわ。

不動産業者を営む中年男ティエリーは、
仕事仲間のシャルロットから、宗教じみたテレビ番組「人生を変えた歌」の録画ビデオを借りた。
何気なく自宅で、そのビデオを見ていると、番組終了の後に、
下着姿の女が挑発的に体をくねらす映像がでてきた。
顔は映っていないが、おそらくその女はシャルロットで、自分を誘っているのではと思ったティエリー。
ティエリーと同居している、歳の離れた妹ガエルは、夜になると一人でカフェに行く日々。
実は出会い系の雑誌に広告を出し、その相手に会うために夜な夜な外出していたんだ。
ティエリーの客の一人、キャリアウーマンのニコールは、
恋人ダンとの住む部屋を探しに、幾つかの部屋を見て回っていた。
元軍人のダンは、無職ながら、毎日ホテルのバーに通い、
バーテンのリオネルを話相手に、ぐだぐだ過ごしていた。
そんな彼に愛想が尽きだしたニコールとの関係も、少しずつギクシャクし始めた。
リオネルの寝たきりの父の介護のために、看護士としてやってきたシャルロット。
口の悪い偏屈オヤジにムカムカしながら、聖書を読んで気を静める彼女。
そして、シャルロットは、ある考えを思いつく。
リオネルのすすめで、気分を変えるために出会い系広告から女性を選び、デートを決めたダン。
彼の前に現れたのは、ガエルだった‥。

ストーリー紹介が少々長くなってしまったけど、
要するに、6人それぞれが、どこかで繋がっているんよね。

イギリスの作家アラン・エイクボーンの原作の映画化だそうだけど、元は戯曲なのかな。
室内だけで展開するし、どこか舞台劇を見ているように感じられるんよ。
ティエリーのオフィス、彼の住む部屋、ニコールとダンの住まい、リオネルの古めかしいアパートと、
どの部屋も、装飾やインテリアなど、そこに住む人間のキャラを投影しているように、
細部にまで気配りがされているのが、なんか良いなあ。
リオネルが働くホテルのバーも、クールなんだけど、めっちゃ色彩が鮮やかだし。
美術もベリーグッドだけど、
エリック・ゴーティエ(「モーターサイクル・ダイアリーズ」「夏時間の庭」)の撮影の力が大きいやん。
ニューヨーク生まれのマーク・スノウの、登場人物達を優しく包み込むような音楽も、これまた良い。
なんでも本作の音楽で、フランスのセザール賞にノミネートされたとか。

美しい映像と音楽で綴られる、6人の心。
それぞれが抱える「心の中にひそんでる孤独」を、
レネ監督は、撮影や音楽、それに美術のスタッフの力を十分に発揮して、
とても心優しい視線で描いて見せてるな。

登場人物の誰も、表面上は、あまり「孤独」に見えない。
でも、言葉や表情の端々に「孤独」の影が、ほんのりと漂うんよね。
でもって、それに、僕はなんだか胸がジーンとしてきてしまったやんかいさぁ。

人と人との、指で弾いたらすぐに切れてしまいそうな繋がり、
心を通い合わせたいのに、合わせられない淋しさ、
それでも、毎日をなんとか生きていく‥。

「結局、人間は孤独なんだ」
シャルロットが言うセリフだけど、
多分、人間とは、誰だって、そういうものだと思うな。
シャルロットも、孤独を自覚し、挑発的な下着姿で踊り、
それをカメラに収めて、孤独を紛らわそうとしていたのかもしれないし。

孤独な心を演じる6人は、
ティエリーに「ミックマック」「唇を閉ざせ」のアンドレ・ドゥソリエ、
シャルロットに、「恋するシャンソン」「風にそよぐ風」のサビーネ・アゼマ、
ダンに「神々と男たち」のランバート・ウィルソン
ニコールに「モンテニュー通りのカフェ」のラウラ・モランテ、
リオネルに「しあわせ」「恋するシャンソン」のピエール・アルディーティ
ガエルに「クリクリのいた夏」のイザベル・カッレ。

レネ作品に関わりのある俳優もいるけど、この6人のアンサンブル、
それぞれ味わい深い演技を見せてて、ほんま、ええやんかいさぁ。

1年ぶりに見たけど、「孤独」を描いた作品なのに、
なんだか心がほのかに温かくなってくるやん。
レネの優しさに包まれたからやろか、ほんまにね。
また、来年の冬に見ようかな、なんちゃって。

IVC 2011年12月16日レンタルリリース



にほんブログ村 映画ブログ 映画DVD・ビデオ鑑賞へ
にほんブログ村

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

「くるみ割り人形」(09年・イギリス/ハンガリー) 美少女クラシカル冒険ファンタジー大作を狙ったんだろうけどね!

くるみ割り人形

本作は、83億円と制作費をたっぷりかけたらしい大作なのに、
なぜだか日本劇場未公開。
その時点で、多分ハズレの作品だとは思っていたけど、どんなハズレ方をしているのか、ちょっと気になって借りてみることにしやしんた。
監督は、ロシア出身で、「暴走機関車」(85)「マリアの恋人」(84)と、それなりの佳作を撮ってるアンドレイ・コンチャロフスキーだし、主演は「SUPER8/スーパーエイト」のエル・ファニングだし、なんぼなんでも、そんなにエグイ出来じゃなかろうと思っていたのよ。

原作は、E・T・A・ホフマンの「くるみ割り人形とねずみの王様」。
日本でも、サンリオが、チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」を使って、人形アニメとして79年に作ったらしいけど、多分ヒットしなかったのか忘れ去られているみたい。
バレエには詳しくない僕だけど、演目のひとつとして「くるみ割り人形」が有名だってのは知っていたし、確かマコーレー・カルキン主演の「くるみ割り人形」が93年に作られてて、劇場未公開・ビデオスルーだったけど見た記憶がある。
カルキンは狂言回し的な役柄で、ニューヨーク・シティ・バレエ団の踊りにポイントをおいた本格的バレエ映画だったかな。

さて、このコンチャロフクシー版「くるみ割り人形」。
時代は、多分20世紀初頭(と思う)のイギリス。
クリスマスの日、メアリーは叔父アルバートから、
くるみ割り人形と大きなドールハウスをプレゼントされる。
その夜、くるみ割り人形が、突然メアリーに話しかけてきた。
実は、自分は悪いネズミに魔法をかけられた王子様なんだと。
そして、一緒に自分の国に行ってほしいと。
いたずらっ子の弟マックスや、ドールハウスの中の人形たちと共に、
メアリーは冒険の旅にでることとなったけど‥。

ゴージャスでクラシカルなセットや衣装など、なかなか金がかかってるのが、よく判る。
安っぽさ皆無で、映像にも厚みがあるんだわさ。

ちょいミュージカル仕立てというか、エル・ファニングはもとより、おじさん役のネイサン・レイン、
それにネズミの王様役のジョン・タトゥーロが、チャイコフスキーの音楽をアレンジした曲を
ちょこちょこ歌ってる。
レインは、ミュージカル映画「プロデューサー」に出ているくらいで歌が上手いのは当然だけど、
タトゥーロの歌声って初めて聞いたな。意外に、レインに負けず劣らず上手かったわ。
エルは、下手でもないけどメッチャ上手くもなく、ほどほどって感じ。

クリスマスツリーを飾った居間が、夜になると超巨大空間になっていて、ツリーも何百倍もの大きさに。
ここら辺のファンタジー描写は、劇場の大スクリーンで見たら、ちょいゾクゾクきそうかな。
メアリーはくるみ割り人形と共に、ツリーの上まで行き、そこで雪の妖精たちと、宙を舞いながらダンシング。
そして人形の手を握った時、木の手が人間の手に変わり、驚くメアリー。

VFXや特殊メイクをふんだんに使って、ファンタジー世界に説得力を持たせてるけど、
その手の映像に慣れてしまったせいか、あまり驚きってのはないな。
ネズミ人間も特殊メイクが丁寧だし、
足のついたヘリコプターやどう猛な鉄製ブルドッグなどのアイテムも、そんなに悪くはない。
でも、何て言うかイマジネーション豊かだなってところまでは思えないんよね。
ほどほどのイマジネーション止まりというか。

思うに、この作品、コンチャロフスキーが脚本も担当しているけど、
ストーリーが、もう一つ面白みに欠けるなぁ。
メアリーと共に冒険するドールハウスの人形達キャラも、なんか弱いし、
ネズミ人間の王様や、魔法が使える彼のママ・ネズミなど、ヒール・キャラもヒネリが乏しいし。
お子さま向け映画だから、この程度のストーリーでええんと違うと書いたみたいな。
だから、映像はバリバリ厚みがあるのに、どうも展開が薄っぺらいというか。
ワクワクするようなファンタジー・アドベンチャー感がまったくないんよ。
どうもコンチャロフスキーは、こういうタイプの作品は不得手なんと違う?
スピルバーグとまでは行かないけど、もう少し娯楽センスのある監督が撮ってたら、
もっと楽しめる、オモシロイ作品に仕上がったかもしれない。
本作、もともと3Dで作られたらしいけど、3Dの立体で見ても、
あんまり印象は変わらないような気がするな。

ネットで調べたら、アメリカで公開された時は、興行的に惨敗だったそう。
イギリスやハンガリーじゃ、どうだったんだろう。
ひょっとして、本国版と編集が違うのかも?

ある意味、日本未公開も仕方ないなと思わせる作品だけど、
ジョン・タトゥーロが、ちょいお茶目っぽく、
マザコンの悪役キャラを演じているのを見れたのは、個人的にはナイスだった。
僕のお気に入りの男優だけど、なんでも器用にこなす俳優さんだ。
それと、魔法使いのママ・ネズミに扮した、「ヒューゴの不思議な発明」に出ていたフランシス・デ・ラ・トゥーア。
ひなびたナスビ顔の女優さんだが、味のある演技で、ファンタジー世界に不思議にハマってるな。

エル・ファニングは、可愛いけれど、僕には可愛いだけで終わってるって印象だった。
演出のせいなのか、もうひとつ彼女の魅力を引き出しそこねたみたい。

しかし、83億円もかけたのに、この出来って、お金がもったいないやんかいさぁ、ほんまに。

AMGエンタテインメント 2012年11月2日レンタルリリース



にほんブログ村 映画ブログ 映画DVD・ビデオ鑑賞へ
にほんブログ村

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

「キル・ザ・ギャング 36回の爆破でも死ななかった男」(11年・アメリカ) 死ぬまで戦うケルト戦士魂で、イタリアン・ギャング達に立ち向かった男やねん!

キル・ザ・ギャング 36回の爆破でも死ななかった男

先日、前から見たいと思っていたショーン・コネリー、リチャード・ハリス共演の「男の闘い」(69 監=マーティン・リット)のDVDが490円で手に入ったんで、早速見たんだ。
1870年代、アメリカに移住したアイルランド人達の話で、彼らは炭坑で安い賃金で過酷な労働を強いられていて、生活もキツイったらありゃしない。これじゃたまらんと秘密結社を組織し、労働争議を起こすんだけど、会社サイドが結社壊滅をもくろみ、スパイを送り込むという、ちょい地味だけど、なかなか見応えのある骨太な社会派ドラマでありました。
この映画で、アイルランド移民ってだけで過酷な境遇にあえいだ時代が、アメリカにもあったんだと初めて知ったな。
そんなアメリカで生きるアイルランド人の子孫である実在の人物ダニー・グリーンを描いたのが、この「キル・ザ・ギャング」。
原題は「KILL THE IRISHMAN(アイルランド男を殺れ)」

舞台はオハイオ州クリーブランド。
港湾労働者として過酷な環境で働いていたダニーは、
ギャングから借金返済を迫られている仲間の一人アートを助けるために、
イタリア系ギャング、ジョンに、コンテナに積んだ商品横流しを持ちかける。
だが、労働者を総轄する組合長に、そのことを知られ、賄賂を要求されるが、
腕力で組合長を追っ払い、彼の座を奪う。
結婚し家庭をきずくが、ジョンとの商品横流しのつき合いは続き、
結局、汚職がばれて逮捕されるハメに。
クリーブランドの犯罪組織の情報提供に応じることで、あっさり釈放されるが、
組織と深い繋がりのある、レストランや賭博場の経営者ションドーの、
借金回収業の仕事を始めたところから、だんだんヤバイ状況に追い込まれ、
やがて、イタリア系マフィアとダニー一派との激しい抗争へと発展していくのであった‥。

ダニーは、根っからの悪人ではない、と言って善人でもない。
暴力で相手を従わせることもいとわないし、汚い仕事も平気でやる。
彼は、心中にアイルランドのケルト戦士の魂を受け継いだ、闘い続ける男なんだ。

隣家のアイルランド人の老婆オーキフが、家賃滞納で家具を税務署に持って行かれるのを目にした時、
ダニーは、彼女の滞納金を所員に払ってやる。
「同情で払ってくれたの?」と彼女が問うと、
「いや、アンタの強さはアイルランドの誇りだから」
ダニーは、常に自分がアイルランド人であることを意識し、彼女に一目置いていたんだ。

それまで暴力的なダニーに好意を抱かなかったオーキフは、彼を見直し、自宅に招き入れる。
「アナタはケルト戦士の末裔。ケルトは死ぬまで闘うことにこだわる民族だった。
アナタは戦士の目をしている。優しさも見える」
そして、彼女の父の形見である、十字架のペンダントを彼にプレゼントする。

ダニーは、最後までイタリアン・マフィアに屈することはなかった。
マフィアに狙われても、逃げも隠れもしなかった。
ケルト戦士としての生き方を最後まで貫いたんだ。

自分の信頼を裏切った者に対しちゃ、冷徹に見殺しにしてしまうし、
卑劣な相手は片っ端から、爆弾であの世に送ってしまう。
でも、地元の貧しい家庭を支援するなど善行も行うし、
アイルランド人達からは、厚い信頼を寄せられてる。

そんなダニーを、ガッチリ体型で上背もある北アイルランド出身のレイ・スティーヴンソンが好演。
「パニッシャー:ウォーゾーン」(08)のコミックヒーローもナイスだったけど、
こういうシリアス風味の実録ものでも、存在感ビンビン、画面が締まるなあ。
単純明快なアクション系作品が多いけど、ちょい重厚な作品にもチャレンジして欲しいやんかいさあ。
脇に、「フルメタル・ジャケット」のヴィンセント・ドノフリオがジョン役、
「パルプ・フィクション」「ヘアスプレー」のクリストファー・ウォーケンがションドー役、
「ミッドナイト・ミート・トレイン」の殺人鬼が迫力満々だったヴィニー・ジョーンズが
アイルランドの血が混じった元ボクサー、ダニーの仲間キース役、
「007/消されたライセンス」のロバート・ダヴィが
ニューヨークマフィアの殺し屋レイ役など、なかなか渋めのキャスティング。
ダヴィなんて、ほとんど顔が映らない損な役なのに、
さすがベテラン、不気味な殺し屋ムードをビンビンに漂わせとる。
ヴァル・キルマーが、刑事役で出ているけど、ずんぐりブヨブヨで、精彩に欠けるなあ。
なんかやる気のなさそうな演技にみえるしなあ。

もう一人、老女オキーフ役のフィオヌラ・フラナガン。
彼女、アイルランドのダブリン出身のせいもあるのか、出番は少ないながら、
説得力ある味わい深い演技で、作品に深みを与えてるな。

監督は、「ダイハード3」「ジュマンジ」の脚本を担当し、
J・トラボルタ出演の「パニッシャー」(04)で監督デビューしたジョナサン・ヘンズリー。
本作も脚本を共同で書いているけど、多彩な登場人物を混乱させることなく、
サクサクと展開するんだけど、もうひとつパンチ力に欠けるというか。
アイルランド伝統の指輪や十字架のペンダントなど、小道具の使い方は上手いんだけど。

でも、作品にマッチした役者が揃い、頻繁に爆破シーンもあるので、
なんとかラストまで見せきってしまうわね。

右手を拳銃に見立ててレイに向け、ニンマリと微笑んでいるようなダニーの最後の姿、
70年代のケルト戦士として死ぬまで闘い抜いた男の雄姿に、なんか、ちょびっとグッときたなあ。

ただ副題は ? ね。
36の爆破事件はあったけど、すべてがダニーに向けられたもんじゃないし、
ダニーも相手を爆弾で殺しまくってたんやからね。ま、目くじら立てるほのこともないんやけど。


アットエンタテイメント 2012年11月2日レンタルリリース



にほんブログ村 映画ブログ 映画DVD・ビデオ鑑賞へ
にほんブログ村

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク
QRコード
QRコード