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「ハッピーサンキューモアプリーズ」(10年・アメリカ) 人は誰でも、誰かに愛される価値があるんよ、多分!

ハッピーサンキューモアプリーズ
厳しい寒さが身に応える昨今だけど、
なんだか心にポワポワした春風が吹き込んでくるような、
とても優しい気分にさせられる映画だな、この「ハッピーサンキューモアプリーズ」って。

この作品、サンダンス映画祭で観客賞を受賞したらしいけど、きっと僕同様に、優しい気持ちにさせられた映画ファンが多かったかもしれないな。
米テレビシーズ「ママと恋に落ちるまで」の主人公役で一躍人気者になった男優ジョシュ・ラドナーの監督デビューで、脚本・主演と3役もこなしてる。

ニューヨークで暮らす売れない作家サム。
寝過ごして、出版社での打ち合わせに遅れそうになり、
慌てて部屋を飛び出すが、地下鉄で家族とはぐれた黒人少年を見過ごすことが出来ず、一緒に出版社に連れて行くハメに。
迷子として警察に彼を届けたのに、いつの間にかサムの後をついてきてしまう。
少年の名はラシーン、里親と暮らしているらしく、そこには戻りたくないと言う。
仕方なく、しばらくの間、自宅に住まわせることにするが‥。

サムは、街で出会ったキュートな女性に恋心を抱き、
彼女がカフェで働いてるのを見かけ、ラシーンを出汁にしてお近づきになろうとする。
最初に彼女のことで判ったのは、クラブで歌っていて、ニックネームはミシシッピ。
夜、酒が入り、良い感じになって彼女がサムの部屋まで来たはいいが、
新年に軽い女にならないと誓ったからエッチはしないと言われ、ちょいガックリ。
でも、サムは思いつきで、エッチなしの3日間の同居を提案。
なんとなく、その提案を受け入れるミシッシピだけど‥。

そんなサムの、何でも話せる親しい女友達アニーは、体中の毛がない脱毛症だけど、
それを気にすることもなく、日々、仕事に励んでいるが、
別のフロアの法律事務所の男性が、何かと彼女にモーションをかけてくる。
彼の名はサム。友達と混同するからと、サム2と呼んでる彼は、ハンサムでもセクシーでもないし、
アニーは無視し続けるだけど、彼は勝手に彼女の写真を撮ってしまいよる。
ある日、アニーは、昔、自分の心を傷つけた男に誘われ、ついつい会ってしまい、
でもってエッチするんだけど、結局、また傷つけられてしまう。
次の日、落ち込んで暗い気持ちでオフィスに行くと、机の上に数枚の写真が置いてあった‥。

もう一人、サムの幼なじみで、画材店で働くのメアリーは、恋人のチャーリーと同棲中。
ロスから帰ってきたチャーリーが、ロスに移り住んで、あちらで仕事をしたいと言いだし、
ここは私の故郷だからと、ニューヨークを離れたがらないメアリーと口ゲンカしてしまう。
そんな時、メアリーは妊娠していることを知り‥。

ラドナーは、3つのラブストーリーを、ナチュラルなタッチで軽やかに綴ってみせる。
登場女性それぞれの、ほろ苦い過去は、セリフの端々に語られるだけで、
ちょい説明不足な気がしないでもないけど、
脚本も書いてるラトナーが、あえて多くを語らないようにしている節があるみたい。
作品の雰囲気が重くなってしまうのを避けたかったのかもね。

でも、女性キャラを演じる女優達3人、アニー役マリン・アッカーマン、メアリー役ゾーイ・カザン、
ミシシッピ役ケイト・マーラが、そんな過去を引きずる心の傷みたいなものを、
上手に表情や仕草でちらちらと匂わせ、人間味たっぷり、
演技の見せ所もそれぞれ用意されていて、なかなかの好演ぶりだ。
シネマトゥディ・サイトに載っていた、本作に関するラドナーのインタビューでも、
「他の女優が演じていたら、全く完成度の低い映画になっていたかもと思うほど適役なキャスティング」
と、彼自身、納得のキャスティングだったみたい。

女優達の存在感に比べ、男優陣は、ちょいかすみ気味だけど、
アニーに、レストランで愛の告白をするサム2、
「いい人だけど、つき合えない、は聞き飽きたよ」と女性にフラレっぱなしの人生を語り、
それでも「僕に君を幸せにするチャンスをくれ、愛することは僕の得意分野だから、試してみて」とアプローチ。
控えめななかにも、必死で愛する思いをなんとか彼女の胸に届けようとするサム2の姿、
いじらしいじゃあ~りませんか。
そして、席を立とうとするアニーに目を閉じてもらい、再び愛の言葉を語り続けるサム2。
アニーが目を開けた時、彼女の目に映ったサム2は‥。
テレビ界で活躍しているらしい地味顔のトニー・ヘイルが、
誠実だけど少々風変わりで、恋に縁遠い男を、味わい深く演じてる。
このシーン、グッとくるなあ。

過去の苦い思い出にこだわり、ミシシッピの歌を聴かないと言っていたサムが、
最後にとった行動も、これまた良いなあ。
その時の、ミシシッピの、今の自分の心境を歌った歌詞が切ないだけにねぇ。

ちょっと残念なのが、少年ラシーンが、そんなに物語にからまないところ。
彼の言動によって、サムの心にも変化が起こるってわけでもないし。
ラシーンの絵の才能にサムが気付くんだけど、ただ気付くだけだし。
ま、アメリカじゃ、誰かの里子である子供を、何の連絡もせず、
自分の部屋に住まわせるのは、誘拐と見なされるらしく、案の定‥。
でもただそれだけで、なんていうか、ラシーンが作品に登場する必然性が弱いような気がするんよね。

過去のことは過去のこと、引きずっていたらダメ、
人は誰でも愛される価値がある、
だから、自分を愛してくれる人が現れたら、それを大事にしなきゃ。
ほんの少し、気持ちを切り替えて、前向きになったら、しあわせが訪れるかも。
男運の悪かったアニーやミシシッピ、家系が離婚者ばかりで結婚に踏み切れないメアリー、
でも、彼女たちは過去を引きずることを‥。

とにかく初監督と思えないほど、気負いを感じさせず、
登場人物の心の機微をさらりとすくい取り、こなれた演出を見せるラドナー。
第2作も、監督・主演で撮りあげ、またまたサンダンス映画祭で好評らしかったけど、見たいやんかいさあ。

ところで、メアリーがチャーリーとある映画監督のことを話題にする場面があるんだけど、
「みんな彼に辛口過ぎるよ。最高の映画を何本も撮ってる。数が多すぎるだけよ」と
彼女が言うんだけど、この監督って、多分、W・アレンのことかしらね、
アレンもニューヨークを舞台にした映画を何本も撮ってるし、違うかなぁ。


トランスフォーマー 2012年12月7日レンタルリリース



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「グラバーズ」(12年・イギリス) ガンガン飲んで泥酔してエイリアンを撃退ってか!

グラバーズ
レンタル店に並んでいる劇場未公開のSF系&ホラー系の映画って、うたい文句やジャケットデザインは大げさっぽいのに、中身はスッカスカ、ヘ~ナヘナなダメ作品が多いよねぇ。
チープなのはいいんだけど、アイデアや演出センスが、見事に欠落しているというかさ。
だから、その種の作品は、眉に唾塗って慎重に選ぶんだけど、それでも借りなきゃよかったと思うことがしばしば。
本作も、スタッフ・キャストに馴染みがないし、多少の不安はあったけど、去年のサンダンス映画祭ミッドナイト部門の公式出品作らしいし、解説には「80年代の怪獣作品への見事なトリビュート(エンパイア誌)」って言葉にひかれて、見ることにしたんでおます。
で、これが、なかなか面白かったやん。
久しぶりに、活きのいいコミカルなB級SF映画を見たなあって感じよ。

舞台は、アイルランドの、のんびりとした静かな漁村の島、エリン島。
ここにダブリンから女性警官リサが、休暇を取った警官の穴埋め要員としてやってきた。
出迎えたのは、アル中気味の地元警官オシェ。
生真面目で仕事熱心なリサに、ダブリンと違って、ここじゃ大きな事件なんて起こりゃしないよ、
と迷惑顔のオシェだったけど、さっそくと事件発生!
波打ち際に、いくつもの深い傷を負ったゴンドウ鯨の死体が打ち上げられのよ。
そして、漁師パティは、海で怪物を捕まえたと言ってきた。
彼が捕まえた、イソギンチャクのような口とイカのような数本の足を持つ生き物を
海洋生態学者スミスが調査したところ、血と水を吸収して生きる生物だとわかった。
そして、パティがその生物を見つけた砂浜の洞窟に、リサ達が入った時、
突如、巨大モンスターが現れ襲いかかってきた‥。

宇宙から地球に、何か光る物体が飛んでくるトップシーン。
ちょいジョン・カーペンターの「遊星からの物体X」のオープニングを思わせてムフッとさせよるやん。
そして、真夜中、漁船の船員が襲われ、「GRABBERS」ってタイトルがドッカ~ン!

前半は小出しに、住民達が何者かに襲われる場面を、サスペンスタッチで手際よく見せるな。
でも、謎の生物を調べているスミスが、「これはメスだ、だって睾丸がない」と言ったり、
襲われて首だけ残った死体を見て、医者が「これなら靴箱で埋葬できる」とか、
ちょいブラックなジョークにクスリとさせよる。

やがて、パティがメスの謎の生物に襲われても無事だったのは、
彼が酒飲みで、体内に吸収された酒のせいだったと判明。
謎の生物はアルコールにめちゃ弱かったんだ。

島民を守るため、オシェは、街の人々をパブに集め、盛大にパーティを開き、飲み明かそうと提案。
血中アルコール度が高けりゃ、襲われる心配もないわけだ。
島民が飲んでいる間、リサやオシェ達は、万が一を考えて、撃退道具を揃えていたが‥。

アルコールに弱いエイリアンなんて、なんともアホっぽい設定だけど、
アイルランドってのは、世界一飲酒量の高い国だそうで、ビール消費量でも世界第2位。
そこにヒントを得たってのは、脚本のケビン・レハーンが、
ひょっとしたらアイルランド人だったからかもしれないね。

エイリアンが水を吸収して凶暴で元気になるってところ、
ジョー・ダンテの「グレムリン」(84)を思わせるな。
可愛いモグワイが、水に濡れたら凶悪なミニモンスター、グレムリンに変身し大暴れするところがさ。
「グラバーズ」でも、卵からかえったばかりの謎のミニ生命体がどんどこ現れ、
パブで暴れまくるシーンは、「グレムリン」もどきだし。

監督のジョン・ライトは、登場キャラをそれぞれキッチリ見せながら、
ユーモアたっぷりに、歯切れのいいタッチで、娯楽映画のツボを押さえ、描いてみせてる。
懐かしの怪獣映画への愛みたいなものもチョイ感じさせるし。

出演は、オシェに「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」に出ているらしい、
ヴァンサン・カッセルに顔立ちが似てるリチャード・コイル。
妻に逃げられ酒浸りのグータラ警官を、気負わずサラリと演じてる。
リサに、「イン・ハー・スキン」のルース・ブラッドリー。
そこそこ美人で、生真面目、なのにエイリアン撃退のために、
史上最高の泥酔警官になってしまうリサを、これまたユーモラスかつ健気に演じてる。
島民達は、個性のきつそうな俳優を揃えたみたいで、
丸顔デブのパブの主人の妻ウナなんて、作家・今井志麻子そっくり。

そんなに予算はかかっていないけど、アイデアとノリの良い演出で見せる、
個人的には、充分満足した映画でありましたわさ。
いかにもなエンディングも、やっぱそうくるかと、そのベタさ加減にニヤリとさせられたし。


アース・スターエンターテインメント 2012年12月21日レンタルリリース



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「モンスター・イン・パリ 響け!僕らの歌声<インターナショナル版>」(11年・フランス) 映画愛を感じる、ふんわりレトロなフレンチ・ファンタジー・アニメーションでおまんにやわ

モンスター・イン・パリ 響け!僕らの歌声<インターナショナル版>
1910年1月、フランスのパリが大洪水に見舞われ、巨大な湖と化し大変だったらしいんだけど、そんな実際の出来事にモンスターを絡めたファンタジー・アニメでおます。
去年の大阪ヨーロッパ映画祭で特別上映されたけど、劇場公開までは至らなかった。
製作はリュック・ベッソンで、最近いまいちの作品の多い彼だけに少々不安はあったけど、レトロムードたっぷり、パリのシンボル、エッフェル塔も効果的に使ってるし、僕としちゃ、結構楽しめた作品でありやんした。
主要キャラの一人が映画館の映写技師で、映画の父と呼ばれるフランス生まれのメリエス(ジョルジュ・メリエス)って言葉が出てくるところも、映画ファン魂をくすぐるやんかいさぁ。

長雨でセーヌ川の水位が急激に上昇し、パリの街が浸水した1910年。
気弱な映写技師エミールは、劇場の受付嬢モードに恋しているが、なかなかデートに誘えない。
エミールの友達で宅配業を営んでる自称発明家のラウルは、社交的だがお調子者、でもって鳥アレルギー。
ある日、科学者の実験室に届け物をしたラウルとエミールは、
留守を預かっていたオラウータンのチャールズの制止も無視して
科学者の留守をいいことに、勝手に実験をはじめてしまう。
そして、物体が大きくなる薬品をいい加減に調合してしまい、モンスターを生みだしてしまった‥。

映写機の回転ベルトが緩んでしまい、エミールが慌ててズボンのベルトを代用するんだけど、
ベルトを買い直そうと店にいったら、中古の映画撮影機が売られていて、
あんまり悩まず、即座に撮影機を買ってしまうところ、なんか微笑ましいな。
彼、映画が好きで映画を撮りたかったんだ。

ラウルの愛車キャサリンは、007映画に登場する車みたいに、
いろんなギミックが仕込まれていて、これまた楽しい。
いつも、みんなから藁(ワラ)みたいと誤解されるコートを着ているんだけど、
これが、後半で上手に生かされているところもニクイやん。

ラウルの幼なじみルシールは、キャバレー「不思議な鳥」の人気歌手。
その彼女の前に、街を恐怖におとしいれているモンスターが現れた。
最初は怯えた彼女だが、モンスターの、自分の存在を悲しむ切ない歌を聞き(この歌のメロディーがえんよね)
同情心から、モンスターをかくまうことにする。
そして、フランクールと名付け、音楽好きなモンスターと共に舞台に上がることに。

店には、自分の出世&名誉欲しか考えないメイノット長官が、
部下の警部パテを伴い、よく訪れていた。
実はメイノットは、ルシールをおかぼれなのであった。

監督・脚本が「シャーク・テイル」(04)のビバ・パーシェロン。
彼の監督デビュー作アニメ「エルドラド黄金の都」(00)が、作りは丁寧だけど、
パンチに欠け、いまひとつの出来だっただけに、「シャーク・テイル」もパスして見なかった。
今回も、後半は、ラウルの愛車と、彼らを追うメイノットの乗った気球船の
派手な追撃アクションが用意されているけど、いまいちスリリンさに欠けるのね。
でも、何て言うか、レトロなパリの世界に、その緩さみたいなものがナイス・マッチ。
素材が監督のセンスにピッタリときたというか。
ラストのエッフェル塔でのラウル&エミール達とメイノットの対決も、
多少は現代的センスはあるものの、懐かしい一昔前の活劇映画を見ているような感じだし。

監督は、古き良き時代の娯楽映画を、ちょい現代風にリフォームしようと考えたのかな。
それに、フランス映画らしく、ラウルとルシール、エミールとモードの恋の行方もキッチリみせるし。
ついでに、警部パテの恋の芽生え(?)まで。

度々登場するコソ泥のコ小ネタも楽しい。

ただ、オラウータンのチャールズのキャラが、あんまり生かされていないような気も。
アメリカ映画なら、チャールズをメインにして、もっと活躍させたかもしれないかも。

ラウルとエミールが危機一髪の時、彼女がつけてたヒマワリのブローチをヒントに、
彼がポケットから取り出したものは‥。
結構、あちらこちらに伏線がはられていて、それが後半に上手く機能していく脚本も、
ま、よく考えられているかな。
二回見て、なるほどアレかと気付いたところもあるけど。

そして、モンスターの正体が意外や意外‥。

しかし、水に沈んだパリの街にそびえるエッフェル塔って映像、それだけでファンタスティックやん。

本作は、インターナショナル版ってことでセリフは英語だけど、
フランス語なら、もっとレトロな味わいが増したかもしれないな。

映画好きなら、見てちょんまげ!

カルチュア・パブリシャーズ 2012年12月5日レンタルリリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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