FC2ブログ

「異人たちの棲む館」(12年・イタリア) 俳優志望の青年が、大戦中に消息を絶った劇団員の幽霊たちと心通わせるんだけどね‥!

異人たちの棲む館
自分のセクシャリティを偽ることなく自分らしく生きることの大切さを、穏やかなタッチで描いた「あしたのパスタはアルデンテ」(10)の監督フェルザン・オズペテクの劇場未公開作がこの「異人たちの棲む館」。
本作は、今年、日本で開催された”イタリア映画祭2013”で上映されていて、その時の邦題は「素晴らしき存在」(多分、イタリア題名の直訳だろうね)。
最初、DVDタイトルやジャケット・デザインから、異国の人間が主人公と同居するドラマかなと思ったんだけど、実は、「異人」ってのが40年代に活躍し、第二次大戦中、ある事件で亡くなってしまった幽霊たちのことで、そんな彼らと主人公の交流を描いた、ヒューマン・ファンタジーでありました。

俳優を夢見てローマにやってきたピエトロ。
いとこのマリアと同居してたが、古いけどバルコニー付きの安いアパートを見つけ、一人暮らしをはじめた。
ある夜、突如、男の笑い声がどこからともなく聞こえ、ビックリ。
そして、鏡に、見たことのない正装した男女が映り、またまたビックリ。
先住者がいる、契約違反だ、大家に文句言ってやると、最初は息巻くピエトロだが、
彼らが、自分にしか見えない幽霊であり、40年代に活躍した劇団のメンバーで、
自分に何も害を与えるわけでもなかったこともあり、まごつきながらも、
なんとなく彼らを受け入れ、親しくなっていった。
そんな劇団員たちから、ある人物を捜しだし、私たちをここから出してほしいと頼まれるが‥。

主人公が、気は良いんだけど、どこか頼りなげ。
でもって、とても信じ込みやすいときている。
3年前に、少しの時間一緒に過ごしただけの相手(男)を、自分の愛しい人と信じ込み、
しつこく電話をかけて、つきまとったり、相手にとっちゃ良い迷惑。案の定‥。

どうもゲイ的要素があるピエトロで、
マリアと冗談で抱き合ってる時、彼女がエッチしたそうにするんだけど、
「ゲイにもなれない僕に女の相手は無理だ」と返すピエトロ。
ひょっとして、彼、まだ童貞なんだろか!
マリアから「あんたに足りないのはセックスよ、
男でも女でもどっちでもいいから、やりなさい」なんて言われてしまいよるし。

幽霊の劇団員の一人、ルカが、ピエトロの寝顔をそばでじっと見つめ、
気がついたピエトロに、「あなたの寝顔は美しい」なんて囁くと、まんざらでもない笑顔を返すピエトロ。

ピエトロの階下に住むパオロも、微妙なニュアンスの笑顔を彼に投げかけるし、
ゲイ的ニュアンスが、映画全体に、さりげなく漂ってる。

トルコ出身イタリア在住のオズペテク監督は、自分がゲイであることをオープンにしているそうで、
そんな彼の嗜好が、作品にも反映されているみたいね。

女装のゲイが暴漢に襲われ傷ついて倒れているのをピエトロが介抱するなど、
ゲイへの偏見も、さりげなく見せてるし。

ちょっとゲイの話にそれてしまったけど、本作は、そんなニュアンスを漂わせながら、
幽霊たちとピエトロの交流を主軸に、物語は展開していく。

幽霊たちと楽しげにカードゲームしたり、
劇団員だってことで、俳優オーディションでの面接のコツを教わったりするまでになり、
幽霊たちと、結構、楽しく心を通わせるようになるピエトロ。

やがて、頼まれた人捜しをするなかで、劇団員たちの裏の姿、それゆえの悲しい運命を知り、
部屋から出たいという彼らの望みを叶えようと、ピエトロなりに奮闘。

オズペテク監督は、
自分が死んでいることに気づいていない幽霊たち(彼らの中で時間は止まっている)という
ちょい風変わりな存在を、とてもナチュラルなタッチで、
「あしたのパスタ-」同様、ユーモアを交え描いてみせている。
声高にメッセージを投げかけるのではなく、やんわりと、さりげなく語りかけるっていうか。
今が2010年だと知り、愛するわが子が死んだと思っていた劇団員の女優が、
ピエトロが見せるパソコン画面に、70歳過ぎているが健在な息子と孫の姿を見て、涙する場面など
切なくも、なかなか心に染みいるやん。

エミリオ役、エリオ・ジェルマーノは、僕は初めてみたけど、
心優しいが、どこか寂しさを抱えているような主人公を、気負わずさらりと演じていて、
自分にしか見えない幽霊との交流というファンタジーに、それなりに説得力をもたせてる。
この演技で、イタリア・ゴールデングローブ賞で最優秀男優賞をとったみたい。
エンディングで彼の顔のアップが映し出された時の表情が、何とも言えず良いのよ。

彼のいとこ、マリア役は、「あしたのパスタはアルデンテ」で家政婦を演じていたパオラ・ミナッチョーニ。
弁護士事務所に勤めていて、男達とのセックスもおおらかなんだけど、
妊娠がわかり、誰の子かわからず、ちょい落ち込みはしても、なんとかなるわとすぐに前向き。
「閉まる扉あれば、開く扉ありよ、呼び鈴を押せばいい」といたって明るい。
そんなに美人じゃないけど、人間味があってチャーミング。
ちょっと気になる女優さんだ。

幽霊たちを演じる俳優も、名前はわからないけど、デブのオチビさんから、劇団リーダーのパオロまで、
上品でノスタルジックな匂いを放ち、幽霊なんだけど、どこか地に足がついてるって感じを巧みに演じてるな。

ピエトロが探そうとしている人物役に、アンナ・プロクレメル。
ロベルト・ロッセリーニ監督イングリット・バーグマン主演の「イタリア旅行」(53)
に出演したことしかわからないけど、結構息の長いベテラン女優さん。
本作出演時は、89歳らしかったけど、事件の鍵となる人物を、
憎々しげに、かつ堂々と演じていて、印象に残るなあ。

深く胸に突き刺さる作品ってわけではないけど、
なんか、おっとりと優しい気持ちにさせてくれる、そんなイタリア作品でありましたわさ。


オンリー・ハーツ 2013年10月4日レンタルリリース



にほんブログ村 映画ブログ 映画DVD・ビデオ鑑賞へ
にほんブログ村

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

「ランズエンド 闇の孤島」(12年・イギリス) ’怒り’を’情熱’と勘違いし、取り返しのつかない過ちを犯してしまった刑事、そして‥

ランズエンド 闇の孤島
「アメリカン・ビューティー」(02)のアカデミー賞監督サム・メンデスが製作総指揮をつとめてるってのが、一応セールスポイントの、劇場未公開・英国サスペンスでおます。
監督が、イギリスらしい端正なゴシック・ホラーの佳作「アウェイニング」のニック・マーフィーってのに興味をひかれ見てみることにしたんだけど、サスペンスより人間ドラマに重点を置いた、ちょい切なくて、もの悲しい、なかなか渋い作品であ~りました。
なんでも、04年にイギリスTVで放映された連続ドラマを劇場映画用にリメイクしたものだそう。

舞台は、クラシカルな建物が立ち並ぶ、海沿いの町ランカシャー。
少女殺害事件が発生し、刑事ジョーは、被害少女と親しくしていた、
元小児性愛犯罪者ピューリーが怪しいとにらみ逮捕し、尋問する。
だが、証拠不十分でピューリーは釈放されてしまう。
どうしても疑惑をぬぐえないジョーは、パーティの夜、
同じ刑事の弟クリシーと共に、軽めの認知症を患う父を車で送る帰り、
酔った勢いで、ピューリーが奉仕活動をしている協会に行き、
彼を無理矢理、離れ小島に連れていき、白状させようとする。
そこは、元刑事の父が、狙いを付けた容疑者を力づくで白状させるのに使っていた島だった‥。

ワイド画面に切り取られた、どこか寂しさみたいなもんが漂う、
冷え冷えとしたブルーがかった映像が、なんとも魅力的だな。

監督は、ドキュメンタリー出身だそうだけど、
越えてはならない一線を越えてしまい、罪を犯してしまう主人公を、
寄り添うのでもなく、突き放すのでもなく、適度な距離感で描いてみせてるな。
シュールじみた映像も差し挟み、映画らしい味付けも巧みだし。
ただ、連続ドラマを92分に凝縮(多分ね)しているせいか、
ジョーとクリシーと父の関係を軸にし、
ジョーの妻や娘、クリシーの恋人など、周囲の登場人物の描写がアッサリし過ぎな気もするわ。
後半で、ジョーの妻が夫のしでかしたことを知る場面じゃ、誰からの知らせかは判然としないしね。

刑事達の犯罪捜査も、現代にしては、後手後手に回りすぎているような。
ま、それを言ったら、この物語が成立しなくなるんだけどね。

キーワードとなる、殺された少女の体に掘られていた文字「フォー・リアル」も、
もうひとつインパクトに欠けるような気もするし。
その言葉のせいでジョーは‥、となるわけなんだけど。

ま、ハラハラするようなサスペンスを期待して見ると、もの足らないかもしれないな。
でも、父と息子達のシリアスでヒューマンなドラマとして見れば、ぜんぜんそんなことはない。

キャストは、演技力のあるイギリスの中堅俳優が揃ってる。
ジョー役に「ダビンチ・コード」のポール・ベタニー。
罪悪感にさいなまれ苦しみながらも、家族を思い、罪をひた隠しにしようと必死になる主人公を、
オーバーアクトにならず、ちょい狂気を滲ませながら、リアリティ豊かに演じてる。
弟のクリシー役に、ベタニーとはちっとも似ていない、チビでズング気味のスティーブン・グレアム。
ジョーより、ちょい心優しいのか、ピューリーの母に同情したり、人間くさいキャラを好演。
二人の父に、「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」(11)でアメリカ進出をはたした
ルパート・ワイアット監督「DATSUGOKU 脱獄」で主演を演じていたブライアン・コックス。

そして、ジョーの同僚で、彼の行動に不審を抱くロバート役に、マーク・ストロング。
「シャーロック・ホームズ」(09)で、ホームズの敵役が印象的だったな。
シャープ・ボディにクールな眼差しで、「ジョン・カーター」など、悪役が似合う俳優さんだけど、
本作じゃ、クールさは相変わらずだけど、冷静沈着で、ちょい人間くさい刑事を、そつなく演じてる。
彼が、ジョーの前で言う「我々は時に怒りを情熱と勘違いするものだ」って含みあるセリフ。渋いやないの~。

もう一人、ピューリー役に、ベン・クロンプトン。
マイク・リー監督「人生は、時々晴れ」(02)に出ていた人だけど、
いかにも元性犯罪者って匂いを放っていて、胡散臭さプンプン、
ジョーに罪を犯させる引き金となるキャラを巧み演じてる。

「ジョーは、愛する人のためなら地獄へも行く。人は何のために苦しむ? 愛だ」
クリシーのセリフだけど、結局、ジョーは愛のために苦しみ、そして地獄へ堕ちていったと彼は考える。
はたしてそうだろうか、僕には、愛する人のためってより、
自分の信念が揺らぐことを恐れ、自分自身を守るための行為に思えたりして。
愛するひとのためって言葉は、良いわけにすぎないのよ。
それなら、父親のとった行動の方がよっぽど‥。
いずれにしろ、ラストじゃ、なんだか、もの悲しい切ない余韻に浸らせられてしまう作品であ~りました。


カルチュア・パブリッシャーズ 2013年9月6日レンタルリリース



にほんブログ村 映画ブログ 映画DVD・ビデオ鑑賞へ
にほんブログ村

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク
QRコード
QRコード