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「ある殺人に関するテーゼ」(13年・アルゼンチン・スペイン) 元弁護士が、自分の教え子が殺人犯だと思いこむんだけど、実は‥!ってな異色サスペンスでおま。

ある殺人に関するテーゼ
このブログで「クリミナル」を紹介したとき、法月(のりづき)倫太郎の推理小説「生首に聞いてみろ」のこと書いたけど、どうも彼の作品にハマってしまったみたいで、彼の処女長編「密閉教室」を、これまたBOOK OFFの105円コーナーで見つけてゲット。
学校の密閉された教室で高校生の死体が発見されるんだけど、その教室の机と椅子がすべて消えていた!という、なんとも謎めいた展開で、そのトリックを級友の高校生が解き明かしていくんよ。
で、最期に彼が真犯人を突きとめる、と思いきや‥。
いちおう犯人らしい人物は示されるんだけど、ちょっとスッキリしないような、でも納得してしまえるというか、なんとも複雑な余韻が残る小説だったな。ちょい青春小説的なおもむきもあるし、面白いことは面白いんだけどね。

さて、この「ある殺人に関するテーゼ」は、「密閉教室」とは別の意味で、やはり複雑な余韻が残ってしまう、異色ミステリーだったなぁ。
一応ミステリーの形をとっているけど、元弁護士が殺人犯とにらんだ相手が本当にそうなのか、単に彼の勝手な思いこみで突っ走ったようにも見えるし、何て言うか、犯罪の迷宮にハマりこんでしまった男の悲劇というか‥。

アルゼンチンの法科大学院で教鞭をとっている元弁護士のロベルト。
自分のゼミに、級友の息子で優秀な生徒ゴンサロがやって来た。
ある日、ゼミの最中に、大学構内の駐車場で、若い女性の惨殺死体が発見された。
被害者がつけていた蝶の形のネックレスと、ゴンサロの蝶にまつわる話から、
彼が犯人ではと疑いを持ったロベルト。
独自に調査を始めようとするなかで、偶然、被害者の妹ラウラと知り合い、好意を抱くが‥。

殺人現場に残された、”彼女に似た女は殺す”とボロ紙に書かれた犯人のメッセージ。
このメッセージが、ある意味、ロベルトの迷走のきっかけともなるみたいなんだけど、
映画は、重要そうな部分を小出しするだけで、見ているこちらも、まごつかされてしまう。

ゴンサロの両親と親しかったロベルトは、ゴンサロの誕生日も一緒に祝ったんだけど、
その写真のゴンサロの母が、殺された女性と同じ髪型だったってのが意味ありげ。

ゴンザロは、父と一緒にDNA鑑定をしたことがあるなんて言うし、
ひょっとしたら自分は、母がロベルトと不倫して生まれたのではと疑っているのかも。

ロベルトがゴンサロの部屋に忍び込んで見つけた薬局のレシートをたよりに、
同じ薬局で殺人に使われた道具を買うと、ピッタリ一致する金額。
ピカソのあまり有名でない絵画が好きだという、絵画にまつわるゴンサロの意味深なセリフ。
ロベルトの部屋にあったペーパーナイフの紛失。

様々な伏線が随所に提示され、それをもとにロベルトが真犯人なのかどうか推理してね、
と言われているような感じだな。

一応、ディエゴ・パスコウスキって作家の原作があるみたいだけど、邦訳本はあるんかな。

監督は、エルナン・ゴルドフリードって初めて名前を聞く人。多分アルゼンチンの人だろうな。
演出はシャープで、淀みなく、メリハリを利かせながら展開して見せるし、実力は結構あるみたい。

なんでも、本国アルゼンチンじゃ、この映画、100万人動員の大ヒットだったそう。
もしかしたら原作がベストセラーになっていて、そのせいもあったんじゃなかろうか。

主演のロベルト役は、
第82回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したサスペン「瞳の奥の秘密」でも主演をはったリカルド・ダリン。
自分の判断を信じ、病的なまでに突っ走り、どんどんドツボにハマリ込んでいく主人公を力演。
なぜか、主人公がボクシングが趣味で、サンドバッグにがんがんパンチを食らわせるシーンもあり、
初老近い年齢なのに、セクシー&タフっぽさもアピールしてる。

ゴンサロに扮するのは、「EVAエヴァ」に出ていたアルベルト・アルマン。
おとなしそうな顔立ちなのに、どこか得体の知れない不気味っぽさを漂わせてて、
ひょっとしたら彼がやぱりと思わせる、なかなかに絶妙な演技を見せている。

そして、2人と関わりを持ってしまうラウラに、カル・リヴェロ。
スレンダー・ビューティなのに、庶民っぽさもあり、なかなか魅力的だな。

しかし、1回見ただけじゃ、小出しの伏線まで目が行き届かないし、
もう一度見直したら、ロベルトの妄想だったのか、ゴンサロが真犯人なのか、ヒントがつかめるかな。

アルゼンチンで100万人動員というのも、1回見ただけじゃわからないから、リピーターが結構いたのかも。
それを狙って作られた映画なら、製作者も商売上手やんかいさあ、ほんまにね。

ミッドシップ 2014年2月21日リリース



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テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

「ナタリー」(11年・フランス) 最愛の人を失った女とサエない男の、ほっこり優しいラブストーリーにグッときたやんかいさぁ!

ナタリー
フランスで25万部のベストセラーになった恋愛小説を、原作者のダヴィド・フェンキノスと彼の兄ステファン・フェンキノスが共同監督した、ちょいユーモラスで、ほっこりと温かいラブストーリーでおます。
去年の第20回・大阪ヨーロッパ映画祭でされたんだけど、主演が「アメリ」のオドレィ・トトゥにもかかわらず、劇場未公開、DVDVスルーとなってしもたんよね。
いくらフランスのベストセラーの映画化と言ったって、美女と平凡でサエない男の恋物語って、日本じゃウケないと映画配給会社が判断したんかしらね。

監督が、原作者とその兄で、2人にとって初の劇場作品ってことだし、ひょっとしたら頭でっかちで、ひとりよがりな映画になってるかもとも思ったんだけど、ま、初監督の兄弟のお手並み拝見とばかり、レンタルしてみやした。

で、見終わったら、心がうららかな春の陽射しに包まれるような、
なんとも心地よい気分に浸らせてくれる作品であ~りました。

ナタリーは、3年前に最愛の夫を事故で亡くして以来、仕事一筋の生活を送っていた。
彼女が勤める会社の社長は、彼女に気があり、言い寄るんだけど、
もう誰も好きになれないと思っているナタリーは、それをすげなく拒否。
ある日、亡き夫を想っていたのか、うわの空状態のとき、
自分のオフィスにやって来た、同僚でサエない風貌のスウェーデン人マーカスに、突然キスをしてしまう。
自分でもモテないと自覚しているマーカスにとっちゃ青天の霹靂(へきれき)、
今度は自分からナタリーにアタックしようとするが、彼女はキスのことを覚えていなかった。
そして、いいお友達、いい同僚でいましょうと言われ、それを素直に受け入れるマーカス。
そんな素朴で心優しいマーカスに、ナタリーはいつしか惹かれ始めていく‥。

まず、オープニンの喫茶店のシーンがニクイやん。
若い頃のナタリーが喫茶店に入ると、ハンサムな若い男フランソワが彼女が何を注文するか考え、
もしアプリコットなら声をかけてみようと思っていたら、彼女がその通り注文。
店から2人が揃って出た時、彼が突然、彼女を抱き寄せてキス!
初対面なのに、なんで唐突にキスを?なんでナタリーは驚きもせず、それを受け入れたん?
と思ったら、2人はとっくに恋人同士で、初めての出会いの場を再び訪れていたんだと判る。

フランソワがナタリーに求婚する場面も、雪降る夜の町中で、手をつないだカジュアルな服装の2人を、
カメラがぐるりと一回りする間に、服が白のウエディングとスーツに変わっていき、
それで、結婚したことが、こっちに伝わってくる。
なんかセンスのいい省略の仕方というか、語り口だな。

フランソワが亡くなり、3年が経ったってのも、
普通なら字幕で何年後とかでるところを、
映像で上手に見せる(ナタリーの親友ソフィーの妊娠と2歳児)など、
初監督らしく、いろいろと映像展開に工夫を凝らしていて、
それも、あざとさを感じさせない、なんかナチュラルなタッチで描かれるところが好感もてるな。

ナタリーにキスされて、マーカスがダイい自分でもモテるんだと心躍らせながら町を歩くと、
すれ違う女性達が、彼に色目を使ってくる妄想にふけるところも、
T-rexの「ゲット・イット・オン」がバックに流れ、ウッキウキの彼の心情をさらりと見せるし。

兄のステファン監督は、本作の前に短編を数本撮っていたらしいけど、映像センスは、なかなかやん。
映画前半のフランソワが亡くなり、抜け殻のようになったナタリーのうつろな姿を、
ことさら悲劇的に描くこともせず、それでいて、彼女にすんなりと共感してしまえるような、
見せ方のさじ加減が、なかなか巧みだなって気がする。
こういうシーン、日本映画なら、どうもベッタベタのお涙頂戴になってしまうんよね。

また、音楽の使い方も、小粋だな。
「ゲット・イット・オン」もそうだけど、フレンチ・ポップスやヒット曲を、
主人公の心情を代弁もするように画面に流れ、映像が弾んでくるんだ。

オドレィ・トトゥは、もう誰も愛せないと思っていたのに、
マーカスに出会って、心が癒されていき、
少しずつ、新しい恋に踏み出していこうとするヒロインを、とても自然体で好演してる。
外見より中身で相手を見極めていくってのも、彼女が演じると、なんか説得力あるし。
ファッションも、生活感があるのに、どこかオシャレっぽいのもナイスやん。

そして、彼女と恋に落ちるマーカス役のフランソワ・ダミアン。
おつむの毛が寂しくて、お世辞にもハンサムとは言えない風貌で、服のセンスもダサダサ。
ナタリーに好意を寄せる社長や親友のソフィーも、
彼と初めて会ったとき、まさかナタリーが惹かれている彼だとは
これっぽちも思われず、無視されてしまうんよ。
ま、ナタリーの最愛の夫が、ハンサム(演じるはフランス期待の若手スターらしい、ビル・マルマイ)
だっただけに、仕方ないかも。

ナタリーから、良い友達のままでいましょと言われ、そうしようと心に決めたのに、
徐々に恋心がつのっていき、そんな自分をセーブしよと、
社内でもナタリーをわざと避けたり、心優しいだけに、
なんともいじらしいじゃあ~りませんか。
それでいて、ナタリーから彼女が子供時代に夢中になったお菓子ペッツのこと聞いたら、
それをプレゼントしたりしよるし。

そんなダサいけど心優しい人を、
ダミアンは、フランスじゃ人気コメディアンらしいけど、
オドレィ同様に、オーバーアクトにならず、自然体で演じてる。
ちょい気になる、良い俳優に出会ったなって感じ。

ラストの、ナタリーが子供の頃から青春時代を過ごした、
生まれ育った家の庭を見ながらマーカスがつぶやくモノローグ。
「彼女のすべてを知っているこの庭に、僕は隠れていよう」

見ていない人にはわからないかもしれないけど、
これから愛する人・ナタリーを、ずっと見守っていこうする意思表示みたいで、
グッきてしまったやんかいさあ。


カルチュア・パブリッシャーズ 2013年11月20日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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