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「プールサイド・デイズ」(13年・アメリカ) ちょいネクラな少年が、ひと夏の経験を通して、ほんの少し心の成長を遂げちゃう、ユーモラスな青春ドラマでおま!

プールサイド・デイズ
ちょっと面白そうだけど、ロードショー公開するには興行的にキツイやんと思われる作品を集めた特集上映ってのが、たまに行われるけど、この「プールサイド・デイズ」も、”カリテ・ファンタスティック!シネマ・コレクション2014”の中の一本として限定公開されたらしいのね。
だから、厳密には日本劇場未公開作とは言えないんだけど、限定公開だけに上映回数も限られてるし、ま、劇場未公開作として取りあげてもいいかなと思い、見てみることにしたんだ。
監督が、僕の好きな監督アレクサンダー・ペインの「ファミリー・ツリー」(11)の脚本を担当したナット・ファクソンとジム・ラッシュの二人で、その作品でアカデミー脚色賞を受賞しているだけに、ハズレってことはないだろうと思ったし。

離婚した母パムと暮らす14歳の少年ダンカンは、
母にできた恋人トレントと彼の娘ステフの4人で、
海辺の別荘でひと夏を過ごすことになった。
母やトレント親子は夏の開放感にひたって楽しんでいるのに、
ダンカンは、そんな雰囲気になじめず、一人街をぶらついていた。
そんな時、プール施設ウォーターパークで働いている、いい加減男オーウェンと知り合い、
なぜか彼に気に入られて、パークでバイトすることになった。
パークの仲間達と一緒に過ごすうち、ダンカンは少しずつ明るさを取り戻し、
毎日が楽しくなり始めた。
隣の別荘の女の子スザンナとも親しくなり、淡い恋心を抱くようになっちゃう。
だが、ある事件が起き…。

ネクラ少年が、ひと夏の体験を通して、ちょっぴりネアカな性格に変わっていく姿を、
ほっこりとした優しい視線で見つめていて、なんとも気持ちの良い作品に仕上がってるな。
大人達の身勝手さやズルい世界も、ダンカンの視点から描かれていて、
彼の心情に、すんなりと入っていけるし、あまりシリアスっぽくならないのもいい。

監督二人は、本作の脚本も書いてて、
さすが、アカデミー脚色賞を受賞しているだけに、
多彩な登場キャラそれぞれを上手に描き分け、
ユーモアたっぷり、物語に豊かな膨らみを感じさせるやん。
演出テンポも、サクサク展開させて、タルまないし。

深~い感動ってのはないけど、見終わったら、
なんだか、とても、ほんわかと温かな気持ちになれる、そんな作品だ。

いろんな人と出会い、そして別れ、
思うようにいかないことも多いけど、良いこともあるし、
人生、山あり谷あり、なんとか日々をのりきって生きてくんだ。
それは子供だって同じ。

でも大人になると、ズルさが身に付いてしまいがち。
トレントのある行動に傷ついた母親のパムが、
それでも彼と暮らすこと、家族になることを選択しようとした時、
ダンカンに言うセリフがある。
「大人は時に心にフタをする。自分を守るためにね。恐いから」

ダンカンにとっちゃ受け入れがたい言葉だけど、
でも受け入れるしかないことも、理解する。

そんな彼女が、映画のラストでとった行動、グッときてしまったやん。

ダンカン役は、カナダ出身の子役リアム・ジェームズ。
いかにもネクラで、社交性ゼロ、ファッションセンス・ゼロ、友達ゼロ、
内にこもりがちな少年を、彼自身、ほんまにネクラと違うかと思えるほど、
ダサイ格好で、リアルに演じてる。

母親役は、僕の好きなオーストラリア映画「ミュリエルの結婚」や
「シックス・センス」のトニ・コレット。
離婚して貧乏暮らしの母を、生活感ビンビン、これまたリアル。
やっぱり巧い女優さんだ。

トレント役は、コメディ映画で良い人やお人好し役が多いスティーヴ・カレルが、
珍しく、好感度ゼロのイヤ~な大人を、ほんとにイヤっぽく演じてる。
意外に、演技の幅が広いんだ。

そして、ダンカンのネクラな心を解きほぐしていくオーウェンに、
「月に囚われた男」のサム・ロックウェル。
軽佻浮薄ないい加減男、でも心優しい大人を、軽やかに演じてみせる。

スザンナ役のアナソフィア・ロブは、そんなに美人ってわけじゃないけど、
ごく普通の10代の少女キャラに、無理なくハマってる。

監督のジム・ラッシュも、パークの売店従業員ルイス役で出ていて、
客のほとんど来ない売店の仕事を辞めて旅に出るってのが口癖で、
とうとう辞めることになり、送別会を開いたのに…。
なんかニクめない、味のあるキャラよ。
もう一人の監督ナット・ファクソンもパークの従業員ロディ役で登場。
ネットで調べたら、この二人、脚本も書くけど、コメディアンでもあるみたい。

とにかく、オーウェンと恋仲になる従業員ケイトリン役マーヤ・ルドルフほか、
ちょい役に至るまで、有名どころから、そうでない人まで、
多彩な俳優が顔を揃えていて、それぞれキャラにナイスマッチ。
監督二人の人脈が豊富なんだろうね、きっと。

ところでパークに水が流れる巨大すべり台、ウォータースライダーっていうのかな、
それが物語の重要なモチーフとしてでてくるんだけど、ちょっと滑ってみたくなったやん。
今年の夏は、どこかのプールで滑ってみようかな~!
年寄りの冷や水と言われそうだけど。

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2015年4月15日リリース



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テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

「ドッペルゲンガー 凍てつく分身」(14年・ドイツ)  坊主オヤジが自分にしか見えない謎めいた男に翻弄される風変わりサスペンスでおま!

ドッペルゲンガー 凍てつく分身
日本劇場未公開作品を見続けていると、時々、なんとも妙ちきりんな作品に出会うことがある。
本作も、僕にとっちゃ、妙ちきりんなんだけど、変な味わいがある、ちょい楽しませてくれるサスペンス風味のドイツ映画だったな。
邦題に”ドッペルゲンガー”って付いてるから、主人公が自分とそっくりの姿をした分身を見てしまう話かと思っていたら、全然そうではなくって、自分にしか見えない謎めいた男に付きまとわれる話で、分身でもなんでもないんよ。
”ドッペルゲンガー”ってドイツ語だし、ユーザーの興味を引きそうな響きがあるし、ドイツ映画だから邦題ししてしまおうと、ソフト会社が、エエ加減に付けたんやろね、ほんまに。
だから、ジャケットカバーのコピー「お前は、俺か?」も中身と大違い。ミスコピーもええとこやないの!
本作は今年の2月にWOWOWで放映されたらしいけど、最近は、WOWWOW放映後にソフトリリースされる劇場未公開作品ってのが増えてきているみたい。

田舎町で、バイクの修理工場を一人で営んでる中年男エリック。
ある日、キャンピングカーの屋根にフードをすっぽり被った謎めいた男を見かける。
最初は気にも止めなかったが、その男は、エリックのそばに頻繁に現れ、付きまとうようになる。
その男は、「俺はヘンリー」と名乗り、「俺はお前の一部だ」と言った。
そして、彼の姿は他の人間には見えなかった。
幻覚が見えることに不安を覚えたエリックは医者の診察を受けるが、
その医者から、催眠術師らしき女性を紹介される。
彼女は、針灸医でもないのに、鍼(ハリ)を使って、幻覚の原因を探ろうとするが、
ヘンリーの声にうながされ、治療途中で彼は逃げ出した。
ある日、ガスパーと名乗る男が工場に現れ、
ヘンリーをツィレと呼び、「犯罪組織のボス、カイテルを殺す手伝いをしてくれ、
でなければヤツにオマエの居場所を知らせる」と言い出した。
何がなんだか分からず、混乱するエリックに、
ヘンリーは「この世界はニセモノだ」と告げるが…。

ヘンリーとは一体何者なのか?
エリックとカイテルには、どういった因縁があるのか?
そして、エリックの過去に起こった出来事とは…?

前半は、ちょいミステリアスな展開。
謎の男ヘンリーに、最初はおののくエリックだけど、
どこにでも当たり前のように現れるヘンリーに慣れていったのか、
いつの間にか、ヘンリーがそばにいることに違和感を覚えなくなってしまうのが、
なんかヘン。
ヘンと言えば、マフィアが絡んできたことに恐怖を感じ、
自分の過去を探ろうと再び催眠術師のもとを訪れ、鍼を刺してもらうんだけど、
首の後ろに刺した鍼を抜いたら、封印した過去を思い出してしまうので、
抜くときは覚悟しろと注意されるのも、解ったような解らないような。
だいいち鍼でそんなことが可能なんやろか?と思ってしまうわさ。

映像はクールでシャープ、でもってちょい端正。
演出テンポも悪くない。
ただ、ストーリー展開に、なんか無理矢理感を感じてしまうな。
エリックは、過去の記憶を心の奥底に封印したってことなんだけど、
アルツハイマーでもあるまいし、そんなに簡単に記憶を閉じこめ、
全く忘れ去ってしまうなんてことが、ありえるんやろか?
どうも、脚本段階で詰めが甘いというか。
事故で脳にダメージを受け、記憶が曖昧になったってなエピソードでもあれば納得できるんだけど。

エリックが、自分で首の後ろの鍼を抜き、
過去の出来事が彼の脳裏によみがえったところから、
映画はいきなりキレッキレのバイオレンス・アクション満々の展開に!
そして、彼は、甘い夢に浸りながら…。

監督・脚本のアキシミリアン・アーレンヴァインは、僕には全くお初の人だけど、
ラストまで引っ張りきる演出力はナイスだけど、
脚本はもちょっと練ったほうがよかったんと違う?ほんまに。
いろんな要素を盛り込もうとしたのかもしれないけどさ。

エリック役は、ドイツの演技派ボウズ・タフガイのユンゲル・フォーゲル。
そして、謎の男ヘンリー役に、「ラン・ローラ・ラン」「素粒子」に出ていた
ドイツの、これまた中堅演技派モーリッツ・ブライブトロイ。
後半で、二人の関わりの理由が明らかにされ、
「俺はオマエの一部」「この世界はニセモノ」の意味が明らかになっていくんだけど、
微妙かつ不可思議なエリックとヘンリーの共存関係を、
ベテランらしく、オーバーにならず巧妙に演じてる。
ヘンなストーリーなのに、この二人のおかげで、エンディングまで見れたんだと思うやん。

余談だけど、
エリックの恋人でシングルマザーのユリアの幼い娘リンダが、
誕生日に、小さなバイキング・ビッケのカブトを被っているシーンがあり、
ドイツの児童文学「小さなバイキング ビッケ」って
ほんまに本国じゃポピュラーなんやなと思わされたやん。
この「小さなバイキング ビッケ」は、09年にドイツで、
僕の好きな監督&俳優ミヒャエル・ブリー・ヘルビビによって劇場実写映画化され、
日本じゃDVDスルーとなったけど、これが大人が見てもすこぶる楽しめるコミカルな娯楽作。
また見てみたくなったやんかいさぁ。

プライムウェーブ 2015年6月3日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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