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「カジュアル・ベイカンシー 突然の空席」(15年・イギリス) 「ハリー・ポッター」のJ.K.ローリングの大人向け小説のTVドラマ化でおまんにやわ!

カジュアル・ベイカンシー 突然の空席
「ハリー・ポッター」の70年前を舞台にした新シリーズの1本目「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」が現在公開中だけど、その脚本も担当した「ハリー・ポッター」の生みの親J.K.ローリングが、大人向けに書いた小説をTVドラマ化したのが、この「カジュアル・ベイカンシー 突然の空席」。

J.K.ローリング原作なのに、あまり話題にもされず、「ファンタスティック-」の公開に便乗してオマケ扱いでリリースされたみたいだけど、ま、確かに日本じゃ原作小説もそれほど話題になっていないみたい(と思う)だし仕方ないか。

話は、イギリス郊外の田舎町を舞台に、ある人物の突然の死によって、そこに住む人間たちに及ぼしていく様々な出来事を描いた群像劇で、穏やかなタッチでストーリーが展開するのに、最後にググッときてしまう、不思議な味わいを持ったドラマやったやん。

美しい田園風景が広がる田舎町パグフォード。
町の自治組織議会議員を務める、住人からの人望の厚い弁護士のバリーが突然死し、
自治組織議会に空席ができ、補欠選挙が行われることになった。
議長のハワードは、息子でバリーの弁護士仲間だったマイルズを無理矢理に出馬させる。
低所得者層のための救貧院をリゾート施設に作り変えようと考えているハワードに対抗するため、
議員で医師のバーミンダーやテッサは、テッサの夫で中等学校の副校長コリンを立候補させる。
バリーの弟で工場労働者のサイモンも、議員になればワイロがゲットできると、よこしまな考えから出馬。
そんな折、亡きバリーの幽霊サイトが何者かによって立ち上げられ、
住人達の秘密が次々と暴露されていった…。

全3話・3時間のTVドラマだけど、
登場キャラが20人以上に及び、馴染みのない俳優が多いせいもあり、
最初は各々の人間関係を把握するのに、ちょっと戸惑ってしまったわ。
原作小説では、もっと登場キャラが多く、それを整理し、
もう少し判りやすくされているみたいなんだけど。

マイルズは、父ハワードと母シャーリーの言いなり状態で、
40過ぎにもなって親に反発できない彼を疎ましく思いながらも愛している妻サマンサ。
当然、サマンサはシャーリーと犬猿の仲で、なにかにつけて対立している。

バリーとはソリが合わなかったサイモンは、
家では暴君で息子ポールにいつも辛くあたっていた。
幽霊サイトで隠し事を暴露されると、うろたえて…。
そして彼の行為が、とんでもない結果に…。

そして、低所得者層エリアに住んでいるクリスタル。
ヘロイン中毒の母テリーに悩まされながら、
幼い弟ロビーの面倒をよくみていて、
生前のバリーからは、彼から何かと援助してもらい将来を前向きに考えていた。

登場キャラそれぞれの特徴が、軽くはあるけど端的に描写されていて、
中でも、クリスタルの比重が、後半は大きなものになってくる。
風貌からして役柄にナイスマッチするような俳優がキャスティングされていて、
あまり混乱しないよう作られているのもナイスかな。

アメリカドラマなら、もっと展開にメリハリをつけてパンチを利かせるところだけど、
あえて穏やか、かつ軽やかに描いていくところが、最初は物足りなく思えるんだけど、
何ていうか、じんわりと人間味みたいなものを感じさせ、これはこれで“あり”かなとも思えてしまう。
実際、話はへヴィーな部分も結構あるんだけど、そういうのって見ていて辛くなってくるし。
ま、劇場映画とちがってTVドラマってことで、こういうタッチにしたのかも。

それでも、ラストに起こる悲しい出来事(これの伏線の張り方がニクイやないの)のあと、
ある決断をして前に進む人間もいれば、失望のどん底に陥る人間もいる、
人生いろいろ、男もいろいろ、女もいろいろと、島倉千代子の歌を思い出してしまいましたわさ。

しかし、知名度がある俳優が、
「ハリー・ポッター」シリーズでダンブルドア校長役のマイケル・ガンボンぐらいで、
後は、ダニエル・クレイグ版「007」シリーズの脇役ロリー・キニアなど地味な役者だらけ。
でも、それぞれ印象に残る演技を見せていて、
なかでもクリスタルを演じた若手俳優アビゲイル・ローリーが、
やさぐれているのに心優しさを内に秘めた少女を、
実にナチュラルに演じていて、特に印象深かったやん。

もう一人、ハワードの妻シャーリーを演じたジュリア・マッケンジー。
物腰柔らかで上品なたたずまいなのに、気位ばかり高い性格クソな高慢ちき老女を、
こんなバアさんいてそうやんと思わせるリアリティさを持って、さらりと好演。
彼女、ネットで調べたらTVシリーズ「ミス・マーブル」のマーブルを演じたこともあったんだ。
本作じゃ嫌われ役ながら、ベテランらしい確かな演技で、上手いやんかいさぁと思ってしまったわ。

このドラマ、物語もさることながら、俳優たちの演技合戦を楽しむってのも見方としてありかもしれないな。

ワーナーブラザース ホームエンタテイメント 2016年11月2日レンタル&セル・リリース



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「ペーパーマン」(09年・アメリカ) 売れない中年作家のイマジナリー・フレンド(空想の友達)はスーパーヒーローってか!?

ペーパーマン
洋画で、あまり知名度がなかった俳優の出演作が大ヒットしたら、ソフト業界じゃ、その俳優の過去の出演作をお蔵出しとでも言うのか、以前の出演作がリリースされるってことがよくある。
エロティック・ミステリー「氷の微笑」(92)がヒットした時も、これで一躍人気スターになったシャロン・ストーンの過去作品「シザーズ/氷の誘惑」(90)ってのが出たことがあったしさ。

この「ペーパーマン」も、7年前の作品ながら、世界的に大ヒットしたアメコミ・ムービー「デッドプール」に主演したライアン・レイノルズが、主人公のイマジナリー・フレンド(空想の友達)を演じていたおかげでソフトリリースされたんだと思うな。
ジャケットからして、レイノルズがスパーマンの安い焼き直しみたいな扮装の写真使ってるもんね。

この手のお蔵出しムービーって、ヒット作にあやかってセールスしているのが見え見えで、
作品自体はなんだかな~ってのが多いんだけど、ヒーローものって好きだし、
コメディ要素もあるようなのでレンタルしてみたんよね。

売れない作家リチャードは、
スランプ気味ながら、それを克服して2冊目の本に取り掛かるために
妻の勧めで、海辺のコテージでしばらく滞在ことにした。
一人っ子として育った彼には、
8歳の時から40年以上になるイマジナリー・フレンド、“キャプテン・エクセレント”がいて、
何かにつけ、彼に悩み事を聞いてもらっていた。
ある日、ママチャリで街に出かけたとき、地元の17歳の少女アビーに出合う。
なぜか彼女に興味を抱いたリチャードは、ベビーシッターを頼みたいともちかけ、
それから毎週金曜日に、彼女がコテージに来るようになったが…。

リチャードは、一人っ子だったゆえに、孤独感からイマジナリー・フレンドを作り出したけど、
アビーも、悲しい過去ゆえに、リチャードと同様に…。

本作、ヒーロー的要素もコミカルな要素もあまりなくって、
自分に自信が持てなかった中年男と少女の間に、奇妙な友情みたいなものが芽生え、
お互いが、今の状況から一歩前に踏み出し、生まれ変わろうとする姿を、
イマジナリー・フレンドを絡めて、穏やかに見つめたヒューマン・ドラマやった。

監督・脚本は、「この森で、天使はバスを降りた」(96)などに出ていた俳優キーラン・マローニーと
彼の奥さんミシェル・マローニー。
絶滅した鳥ヒースヘン(ニューイングランドソウゲンライチョウ )の話や折り紙の白鳥など、
“鳥”が主人公二人の心情と行動にオーバーラップするように上手に使われているな。

キーランにとっちゃ初監督となる作品のようで、映像展開にぎこちないところもあるけど、
ちょっと寒々としたロングアイランドの風景の中、ほんのりハートウォーミングなエンディングが、
なんだか、ポワポワッと気分を温かくしてくちゃうやん。

リチャードに扮しているのは、「イカとクジラ」「ブラッド・ワーク」「ジム・キャリーはMr.ダマー」と、
シリアスからコメディまで、なんでもこなすベテラン、ジェフ・ダニエルズ。
なんか頼りなげで“大人になりきれない大人”って感じを、うまく出しているな。

ジェフより強い印象なのが、アビー役のエマ・ストーン。
物語の半ばで、心の傷となった幼い頃の悲しい出来事をリチャードに話すんだけど、
「幼すぎて、未来があることを知らなかった」ってセリフ、切な過ぎるわ~。
憂いをたたえた彼女の表情、なんとも愛おしくなってくるやんかいさぁ!

そして、セールスポイントでもあるライアン・レイノルズの“キャプテン・エクセレント”。
主人公にもっと絡んでくるかと思いきや、リチャードの悩みの“聞き役”に徹していて、
「現実と向き合えるまでは付きまとってやる」と言い放って、ちょこちょこ現れよるだけ。
ヒーローの恰好なのは、リチャードが8歳のころにコミックからヒントを得て作り出した
イマジナリー・フレンドからだろうな、多分。

レイノルズより、マコーレー・カルキンの弟キーラン・カルキンのほうが、
キャラのせいもあるけど味のある良い演技してたわさ。

ところでイマジナリー・フレンドが登場する映画で思い出すのが、
フィービー・ケーツ主演のファンタジー・コメディ「私の彼は問題児(ドドンパ)」(91)。
夫に浮気された若妻が、舞い戻った実家で幼い頃に作り出した想像の友達と20年ぶりに再会するって話で、
なかなか楽しい映画だった。
DVDをもってるハズだから、探して、また見てみようっと!


ギャガ 2016年10月5日レンタル&11月2日セル・リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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