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「ロジャー・コーマン デスレース2050」(16年・アメリカ) キッチュでブラックでポップでオバカな、B級・近未来レース・アクションやん!

ロジャー・コーマン デスレース2050
アメリカのB映画の帝王なんて呼ばれてるロジャー・コーマンが、75年に制作した近未来カーレース・アクション「デス・レース2000年」をリメイクしたのが、この、自身の名前もタイトルに入れた「ロジャー・コーマン デス・レース2050」(原題も同じ)。
アメリカなら、ロジャー・コーマンの名を付けることで作品に箔がつくのかも知れないけど、日本じゃ、マニアックな映画ファンならともかく、一般の映画ファンに、水戸黄門の印籠のごとく効果があるのかどうか、ちょっと疑問やんと思うのは僕だけかしらね。

ま、僕は、ロジャー・コーマン制作の映画なら、なんでも見るってわけでもないんだけど、75年版は好きだったので、それをどんな風にリメイクしたんだろ、と気になって見てみたんよ。

今回は、ユニバーサルってメジャー会社が関わっているし、今どきのCGを駆使した、それなりに製作費のかかったSFになってると思いきや、いい意味で安っぽい、なんともキッチュでオバカでポップ、でもってブラック風味満々のB級エンタテインメントだった。
CGもほとんど使われず、あえて70年代の映像感覚を、ちょっと新しめにお色直しして、今風テイストを申し訳程度に加味したというかね。

人口が増え続けた近未来。
アメリカ企業連合国(UCA)は、医療技術が発達し、
赤ちゃんがばかばか生まれ、老人が増えすぎた世の中で、
人口を減らそうと、歩行者を轢き殺す大陸横断カーレースを行っていた。
今度のレースの出場者は5組。
過激な宗教団体の教祖タミー、黒人歌手ミネルヴァ、
遺伝子操作で生まれたパーフェクトヒューマンことジェド、AI搭載の人工知能車、
そして、レースに勝ち続けている伝説の男、体の半分は機械のサイボーグ、フランケンシュタイン。
レースは、殺した人間の数や年齢によってポイントを稼ぎ、一番多いものが優勝するシステム。
スタートするやいなや、歩行者を片っ端から轢き殺し彼らだったが、
その裏で、UCA会長の良からぬ計略が着々と進んでいた…。

それぞれのレースカーが、あえて駄菓子的センスを狙ったのか、
あんまりカッコ良さを感じさせず、なんともチープ。
でもって、次々と人を轢き殺していくんだけど、バラバラの手足が景気よくドバドバぶっ飛ぶ様は、
これまたリアルさの欠片もなく、なんかバカバカしさえ感じ、笑ってしまう。
血飛沫たっぷりなんだけど、妙にノーテンキでエグサを感じないんよね。

レーサー達には助手が付いていて、運転手にレンズを向けたカメラ付きのヘルメットをかぶり、
それで自宅にいる観客に映像を送り、バーチャル中継を体感させているってのが、今風かな。

人工知能車にも女性博士が助手として車内に入っているんだけど、
中で何をしているかと言えば、人工知能に股間を刺激させ、アヘアヘ悶えてるだけ。
歌手のミネルヴァは、ニューアルバムPRのためにレースに参加していて、
♪キル、キル、キル~と歌いまくって、殺しまくりよる。
彼女、自分が狙った獲物(人間)を、教祖のタミーに横取りされ、敵対心がメラメララ~!
ジェドは、自分が完ぺきな人間だと強がりながら、心の片隅に弱さを抱えていて、
自分がバレリーナになってしまう妄想を見たりして、彼なりに悩んでいる。
そして、レース勝利が命のフランケンシュタインは、
新しい美人助手にそっけない態度を取りながらも、徐々に彼女に好意を持つようになるが…。

フランケンシュタインが情報を得て、点数を稼ごうと、保育園らしき屋敷に車を走らせるんだけど、
彼らの親たちが障害を持つ我が子を厄介払いしたくて殺したかったからと察知し、
子どもじゃなく、親たちを轢き殺していくのは、すごいブラックやわぁ。

監督は、新人G・J・エクスターンキャンプ。
netflixで配信されたコメディ・ドラマ「フランクとシンディ」をロジャー・コーマンが気に入って、
本作の監督に抜擢したしたそうだけど、5組のレーサー達を手際よく描き分け、
ブラック・ユーモアたっぷりにテンポ良くストーリーを展開しているな。
フランケンシュタイン殺害を図るレジスタンス一味の中に忍者がいて、
アクロバチックにフランケンシュタインに襲いかかるなど、バカバカしいアイデアが飛び出したり、
オモシロければ何でも有りなエンタメ・スピリットも個人的にはベーリーナイス。
ただ尺の制約もあるのか、キャラ描写にそんなに深みはなく、どのキャラも感情移入しがたいな。
何ていうか、キッチュでオバカなバイオレンスを楽しむ単純明快な娯楽作品どまりなんよ。
ひょっとしたら、はなからそれが狙いだったのかも知れないけど。
ラストに、バーチャル中継を見ていた人々が、フランケンシュタインのメッセージを聞いて、
籠っていた家から街に飛び出し、そして…ってところは、ちょいシニカルでムフッとはさせるけどね。

フランケンシュタイン役は、
「ホビット」シリーズで、オーク族の王アゾクに扮していたらしいニュージーランド俳優。
そこそこ男くさくってタフガイっぽいけど、主役にしてはオーラ不足で、なんかB級止まりな感じ。
助手アニー役、マーシー・ミラーも、
飛びぬけて美人ってこともなく、ほどほどにキレイな女優さんて感じ。
アニーは、実はレジスタンスの一味でフランケンシュタインの命を狙っていたって設定で、
彼のそばで過ごすうちに、いつしか彼の味方になるって展開で、
美味しいヒロイン・キャラなんだけど、いまいち弱いんよね。
シャワーシーンがあるのに、ヌードも見せへんのもなぁ。

まだ、黒人歌手ミネルヴァ役フォラケ・オロワフォイェクや、
宗教団体の女教祖・タミー役のアネッサ・ラムジーのほうが、
個性的なキャラを、マンガチックにノリノリで演じていて、存在感があったな。
パーフェクトヒューマン、ジェド役のバート・グリンステッドも、
尻丸出しの極細パンツ一丁も披露し、全身でオバカになりきって怪演していて、
主役より印象が強いやないの。

UCAの会長役は、A級からC級まで、作品を選ばず何でも出ているマルカム・マクダウェル。
ドナルド・トランプもどきの髪型で、イヤミなキャラを力まずリラックスして演じてる。
彼が画面に登場すると、さすがに画面が締まる、ってこともないか。

とにかく、気楽にチューハイでも飲みながらホゲーと見る分には、
楽しめるんと違うって感じの作品であ~りました。

NBCユニバーサル 2017年6月7日リリース



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「バレー・オブ・バイオレンス」(16年・アメリカ) 流れ者が、殺された愛犬の復讐に燃えるヘンテコリンなウエスタンでおます!

バレー・オブ・バイオレンス
僕のお気に入りのホラー映画の1本「インキーパーズ」(11)の監督タイ・ウエストが、制作・脚本・編集・監督の4役を兼任し、西部劇にチャレンジしたのが、この「バレー・オブ・バイオレンス」。
主演が、タイム・パラドックス・ムービーの佳作「プリデスティネーション」のイーサン・ホークで、共演が「パルプ・フィクション」「ミッドナイトクロス」のジョン・トラボルタとスターが揃っているのに劇場未公開とはこれいかに?
よほど映画の出来が悪いんとちがうかと思ったんだけど、ウエスト監督が西部劇をどう料理するのか気になって、眉に唾つけて見てみることにしたんよね。

で、これが正統派ウエスタンのようでいて、どこかズているというか、微妙にシリアスで微妙にユーモラス、でもって微妙にエンタテイメントしている、なんともヘンテコリンな印象だったな。
出そうで出ない便秘気味のウンチってところまではいかないけど、なんかスッキリしないとうかね。

愛犬アビーを相棒にメキシコを目指す流れ者ポールは、
荒野にぽつんある小さな町デントンにたどり着いた。
街の酒場で、ポールは保安官代理のギリーと些細なことでトラブルとなり、
彼を殴り倒したことから、ギリーの父で町を牛耳る保安官マーティンが現れ、
このまま町を出て行くなら逮捕しないでおこうと言われ、ポールはそれに従った。
だが、荒野で眠っているときに、根に持ったギリーが仲間を連れて現れ、
愛犬を殺され、ポール自身も崖から突き落とされた。
なんとか一命を取り留めたポールは、
痛む体もなんのその、愛犬の復讐のため、
ポールは再び町に舞い戻ろうとするが…。

オープニングタイトルが、一昔前のマカロニウエスタン・チックなアニメ風で、
題名通りバイオレンスがさく裂するガン・アクションを期待させるんだけど、
なかなかそうは問屋が卸さない。
ポールと愛犬アビーの仲睦まじいところを丁寧に描いたりして、
それゆえにアビーが無残に殺されたことで、
復讐に燃えるポールの心情に説得力を与えているんだけど、
マカロニ・ウエスタンみたいな派手な残酷描写は抑え気味で、アッサリ風味。

町に戻る道すがら、ポールに淡い恋心を抱いた宿屋の少女メイと再会するんだけど、
復讐のことで頭がいっぱいのポールは、つれない態度。
メイは16歳ながら人妻で、夫は遠くに出かけたままらしく、姉のエレンと共に、
病気の父に代わり、宿屋を切り盛りしている。
どうも、夫への愛情はとっくに失ってるようで、
ポールに新しい人生の夢を託そうとしている節があるようだ。

ポールは、元軍人で、軍隊に入るために妻子を捨てたという後ろめたい過去があり、
いまだに捨てた家族のことが気になっているようで、メキシコを目指しているのも、
そこに家族がまだ待っていてくれるのではないかと淡い期待を持っているからだ。
だから、メイが自分に言い寄ってきても、自分の娘と同じ年頃の彼女に
愛なんてものを感じられないわけよ。

ギリーってのは、親の権威をかさに着た、卑劣なバカムスコで、
父に内緒で、自分に恥をかかせたポールが許せず、彼を追いかけ、犬をナイフで刺し殺し、
彼を亡き者にしようとするんだが、凶悪さは希薄で小粒感たっぷり。

だから、ラストは、てっきりトラボルタ扮するギリーの父マーティンと、
ホーク演じるポールの一対一の決闘となると思いきや…。

ウエスト監督は、従来のアメリカン西部劇に彼なりのヒネリを利かせ、
ちょっと毛色の変わったウエスタンを目指したんだろうかな。
マーティンは、町を牛耳ってる割には、顔に威圧感はそこそこあるけど、
憎たらしいまでの極悪人って風情はないし、片足が義足なだけに歩く姿も少々よぼよぼ。
息子のしでかしたことなのに、親として彼が殺されるのは見過ごせないと、
老体ながら銃を構えてポールに立ち向かおうとしたり、妙に人間臭いんよね。

ギリーの恋人がエレンで、彼がポールと撃ちあいを始めようとしたとき、
彼に死なれては困ると思ったのか、突然、あなたの子供を宿したと告白しよる。
これまた、妙に人間臭い。

人間臭いと言えば、ギリーの仲間たちも、
一人は、ポールに銃を向けられ、
もう自分の娘に会うこともできず死ぬのが心残りだなんてつぶやいて殺されよるし、
タビー(デブの意味らしい)と呼ばれる一人は、ギリーのせいで自分が死ぬのがイヤだとほざき、
マーティンからタビーと呼ばれて、「俺の名はローレンスだ」と言い返し、
銃を捨てて立ち去ろうとして、これまたアッサリ殺されよる。

最初にポールに殺されるギリーの仲間のシーンは、
なぜか、ナイフで首をざっくりと切られ、血がドババッと溢れ出て、
ここだけ、ちょいマカロニ残酷テイスト。

どうも監督に、いろいろ迷いがあって試行錯誤した結局、
ヘンなウエスタンが出来上がってしっまたんと違うかな。
どうせなら、マカロニ・ウエスタンへのオマージュ全開の
残酷描写バリバリ、スカッと豪快な作品にしてほしかった気もするやんかいさぁ。

イーサン・ホークは、監督もこなすベテラン俳優だけど、髭を蓄え、なかなか渋かった。
ジョン・トラボルタは、出番が少ないうえに大して見せ場もなく、ゲスト出演って感じ。
ま、さすがに体からスター・オーラを放っていたけどね。

メイ役は、「記憶探偵と鍵のかかった少女」のタイッサ・ファミーガ。
色白で透明感があって、古風なのにどこか現代的ニュアンスが漂い、
このヘンなウエスタンには、不思議にハマっているかな。
ラストじゃ、なかなか美味しい見せ場が用意されていて、オオッと思わせちゃってくれるし。

それから愛犬アビーを演じたワンちゃん。
荒野で夜、ポールから寒くないかと声を掛けられると、
くるりと毛布を自分の体に巻きつけたり、実に達者な演技を披露しよる。
このメッチャ賢いワン公の演技、もっと見たかったなぁ、ほんまにね。

それからもう一人、オープニングタイトルの前のちょっとしたエピソードで
神父を演じたバーン・ゴーマン。
ちょいヒネくれた個性的な顔立ちの若手俳優だけど、SFアクション「パシフィック・リム」じゃ、
少々オタクな科学者をユーモラスに演じていて、印象深かったな。
本作でも、作品同様にケッタイな味を出していて、映画にピタッとマッチしていたやん。


NBCユニバーサル 2017年4月21日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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