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「サラリーマン・バトル・ロワイアル」(16年・アメリカ/コロンビア) 社員のみなさん、生き残りたいなら殺し合いを始めましょうってか!

サラリーマン・バトル・ロワイヤル
僕の好きな映画「スリザー」(06年)「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズ(14・17年)の監督ジェームズ・ガンが脚本&製作したってので、見ようかなと思ったのが、この「サラリーマン・バトル・ロワイアル」。

邦題もそうだけど、ガンの脚本だから彼の作品に見られるユーモラスでちょいレトロなアクション・ムービーだろうと考えていたら、いやはや何とも、お笑い一切なしで、ひたすら社員たちが殺し合いまくる作品だったやん。

でも殺伐としているかというとそうでもなく、カラッと乾いたタッチでバコバコ展開するので、なかなか楽しめる娯楽作に仕上がっていたやん。
ガン作品でお馴染みのマイケル・ルーカー(「スリザー」じゃ、エイリアンに体を乗っ取られてグロいモンスターになってしまうエロ親父を怪演しとった)や、ガンの弟ショーン・ガン(「ガーデアンズ・オブ・ギャラクシー・リミックス」じゃ、ルーカーの手下を演じとった)が顔を出してるのも、ニヤリとさせられたしね。

舞台はコロンビアのボコタ。
アメリカ政府がバックについているらしい会社ベルコ・インダストリーズに出社した社員たちが
仕事を始めようとした時、突然、奇妙なアナウンスが流れる。
「8時間後にほぼ皆死ぬ。30分以内に同僚2人を殺せば生き残る確率がある」と。
何かの冗談だと笑っていたら、突如ビルのすべての窓に頑丈なシャッターが降ろされ、
80人の社員は閉じ込められてしまった。
慌てふためきながら状況を把握しようとロビーに集まった時、数人の社員の頭が吹き飛んだ。
入社時に、危険な国だから用心のためにと頭に埋め込まれた追跡装置と言われていたものが、
爆発して殺されたのだ。
このままでは死ぬと悟った社員たちは、外部へ助けを求める者、保身のために仲間の社員を殺す者など、
それぞれが生き残るために必死の行動をとるが…。

90分弱と短い尺ながら、数多くの社員たちのキャラが手際よく描写され、
見ていて、混乱することなくストーリーを上手に運んでいるな。
下手くそな監督なら、数多い登場人物をさばききれずグチャグチャになりそうなところを、
キビキビしたタッチでスピーディに見せたのは、オーストラリア出身の監督グレッグ・マクリーン。
「悪魔のはらわた」のオーストラリア版とも言える「ウルフクリーク 猟奇殺人谷」(05)や
ワニが人を襲う「マンイーター」(07)を撮った監督だけど、
この2作は、ちょい不気味ムードが漂っていたかなと思うくらいで、
僕にはさほど面白かったって印象はなかった。
それが、「サラリーマン - 」じゃ、畳み込むようなメリハリの利いた演出センスを発揮し、
社員たちに殺し合いをさせる目的が明らかになるラストまで、一気に見せきってくれるやないの。
エグい殺しもチラッと見せるだけで、露骨に残虐な殺戮を見せびらかそうとしないところもナイス。
ま、この監督なら作品にユーモラスな味を加えないのも納得できるな。
ただ一か所だけ、トイレの殺戮場面での「トイレは清潔に使おう」って張り紙だけはベタだけどクスリツ!

低予算の作品のようだが、スター級の俳優が出ないだけに、
誰が何時死んでしまうかの予想がつかないところもグッド・グッド。

主人公マイク役のジョン・ギャラガー・Jrは「10クローバー・フィールド・レーン」(16)に出ていたらしいが、
僕には、ほとんどお初の俳優だ。
さほどハンサムでもなくタフガイって感じでもなく、ちっともヒーローらしさはないんだけど、
それが、切羽詰まった状況ゆえに、いやでも強くなっていくところを説得力を持って好演してる。

マイクの恋人リアンドラ役のアドリア・アルホナは、ちょいエキゾチックな美人で魅力あったなぁ。
最後には自分にちょっかいを出そうとした同僚のイヤミな男の顔面に思いっきり斧を振り下ろしたり、
パワフルで気丈なところもベリー・ナイスよ。

ジュン・ギャラガー・Jrやアドリア・アルホナもそうだけど、
ネットで調べていたら、本作のキャストには、どうもテレビドラマで活躍している俳優が多いみたい。

マイクと対立する上司のバリー役トニー・ゴールドウィンは、
往年の名プロデューサー、サミュエル・ゴールドウィンの孫で、監督作もあるベテラン俳優。
保身のために片っ端から部下を殺しまくる身勝手な上司を、
品の良いニヒルさみたいなもんを漂わせながら演じてる。
リアンドラに色目を使うイヤミ男ウェンデル役のジョン・C・マッキンリーは、
数々の作品に顔を出してるベテラン脇役俳優だけど、
本作じゃ憎たらしくて冷酷なスケベ親父を実に厭らしさ満々演じてる。
他にも、デブの警備員役ジェームズ・アール、新人社員役メロニー・ディアス、
ズングリ相撲取り体型の上司役ブレント・セクストン、お茶目なメガネ社員役ジョシュ・ブレナーなど、
登場キャラそれぞれが、物語に埋もれることなく存在感を示している。
ジェームズ・ガン監督「スリザー」に町長役で出ていたグレッグ・ヘンリーも、
今回の計画の黒幕として最後に顔を出しよる。

ところで原題が「THE BELKO EXPERIMENT(ザ・ベルコ・エクスペリメント)」。
ベルコと言ったら冠婚葬祭の会社を思い浮かべるけど、
なんだか妙に作品に相応しい原題やなあと思ってしまいましたわさ。


20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2017年12月2日リリース



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「MAIGRET メグレ」(16年・イギリス) ミスター・ビーンのR・アトキンソンが人気犯罪小説のキャラ、メグレ警視役にチャレンジしたやんかいさぁ!

MAIGRET メグレ
Mr.ビーンで知られるローワン・アトキンソンが、フランス作家ジュルジュ・シムノンの推理小説シリーズの登場キャラ、メグレ警視役に挑んだテレビ・ドラマが、この「MAIGRET メグレ 」。
コメディ系の俳優がシリアスものに挑戦するってのは、今年の夏に亡くなったジェリー・ルイスや「スーパーバッド 童貞ウォーズ」のジョナ・ヒルなど結構多いけど、ローワン・アトキンソン=メグレ警視ってのは、いまいちピンとこなかった。

メグレ警視が登場する作品と言えば、映画ではジャン・ギャバン主演の「殺人鬼に罠にをかけろ」(58)「サン・フィアクル殺人事件」(59)「メグレ赤い灯を見る」(63)、ブリュノ・クレメール主演のテレビ・シリーズ「新・メグレ警視」を思い浮かべるぐらいで、いずれもフランス本国でフランス・キャストによって作られていた。
イギリスでメグレ警視ものを作るのはこれが初めてかなと思って調べたら、「ハリー・ポッター」シリーズのダンブルドア校長役で知られるマイケル・ガンボン主演で、テレビシリーズ「メグレ警視」(92~93)が作られておりやんした。
ガンボン版はミステリー専門チャンネル“AXNミステリー”で放映されたらしいけど、ちーとも知らなんだ。
ローワン・アトキンソン版も、AXNミステリーの枠で今年の4月に放映されたらしいけど、
ウチのテレビは地上波オンリイなので、見れないんよんねぇ。

ま、それはともかくローワン・アトキンソン版メグレがどんな出来栄えか、
ちょっと気になってDISCASでレンタルしたんよ。
1話完結で2話リリースされおり、続けて見たんだけど、
これがなかなかに良く出来た犯罪ドラマやったやん。

1話目は、ジャン・ギャバンの「殺人鬼に罠にをかけろ」と同じ原作。
パリで発生した連続女性殺人事件をメグレ警視が捜査するもので、
なかなか犯人の目星がつけられず、婦人警官をオトリに殺人鬼をおびき寄せようと考え、
襲われた婦警が犯人の衣服の一部を引きちぎっていたことから捜査が進展し、
ある男が浮かび上がるが…。

2話目は、メグレのオフィスに、見知らぬ男から電話がかかり、命を狙われていると告げる。
部下と共に男の足取りを捜査する中、その男の死体が発見され、
やがて地方の金持ちを狙った強奪殺人事件と男の死が関係あることが分かり始めるが…。

いずれも、クラシカルな時代考証や衣装、美術が実に丁寧で、
英国製だけに言葉は英語なんだけど、フランスが舞台のドラマに全く違和感を感じないんよ。
ハンガリーの首都ブダベストでロケしたらしいけど、
ここは一昔前のフランスの街の風景がそのまま残っているような場所らしく、
イメージとしての古き良きレトロなフランスを再現するのに最適だったようで、効果抜群だ。
1話が85分ぐらいと短めだが、演出もキビキビしているし、
人間ドラマにポイントを置いたストーリーも、個人的にはナイスやん。

そして、メグレ警視に扮したアトキンソンが、実にハマってるんだ。
くわえたパイプをくゆらせながら物静かに考え事をする仕草なんて、
これがあのミスター・ビーン?なんて信じられないじゃあ~りませんか。
Mr.ビーンの面影が完全に払拭されていて、物静かで観察眼に優れ、
じわじわと犯人を心理的に追いつめていく主人公を、渋さを滲ませながら好演。
頼りになる部下達への指示も的確だし、上司の妨害にもメゲルことなく黙々と
犯人とにらんだ相手を心理的に追い詰めていくところなど、唸らされてしまう。
あらためて、アトキンソンって懐の深い俳優なんだなあと思わされてしまう。
なんでも、次にはMR.ビーンの新作を作るらしく、またコメディに戻るみたい。
渋いアトキンソンもいいけど、コミカルなアトキンソンもやっぱり見たいやん。

ジャンヴィエ刑事役ショーン・ディングウォール、ラポワント刑事役レオ・スターも、
メグレ警視の忠実な部下を手堅く演じていて、互いの信頼関係がすんなりと伝わってくる。
アトキンソンはアクションは披露しないけど、代わりにディングルウォールが
若手刑事として犯人追跡に街中を思いっきり走り回ってる。

メグレの心優しい奥さん役ルーシー・コウも、出番は少ないが印象的だ。
コメリオ判事に扮したエイダン・マクアードルの、嫌味なメグレの上司っぷりもイイ感じ。
とにかく、良い役者を隅々まで揃えていて、それぞれがキャラにナイス・マッチなんよ。

イギリス本国じゃ、アトキンソン版メグレは好評だったそうで、
シーズン2も製作決定したみたいだし、来年にでもレンタル・リリースされたら
絶対見ようと思ってしまったヤンバルクイナ!


KADOKAWA/角川書店 2017年11月10日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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