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「シドニー・ホールの失踪」(17年・アメリカ) 失踪したベストセラー作家の切ない心模様を巧み描く佳作やん!

シドニー・ホールの失踪
ミュージシャンが撮った映画ったら、日本ならサザンオールスターズの桑田圭祐が撮った「稲村ジェーン」(90)、米米CLUBのカールスモーキー石井こと石井竜也が撮った「河童 KAPPA」(94)を思い出すけど、海外にも映画監督もこなしてるミュージシャンといったら、リメイク版の「ハロウィン」「ハロウィンⅡ」を撮ったロブ・ゾンビがいる。

本作の監督もポップ・ロックバンド、ステラスターのボーカル&ギターを担当していたショーン・クリステンセンの長編映画。何でも、バンド活動休止中に撮った短編映画「リッチーとの一日(curfew)」が2012年度のアカデミー賞実写短編賞を受賞したそうで、その後、この短編を長編化した作品「Before I disappearBefore」を14年に撮っている。
どちらも日本じゃ劇場公開もソフトリリースもされなかったみたいだけど、そんな彼の監督・脚本作がこの「シドニー・ホールの失踪」。

タイトル通りベストセラー作家の失踪をめぐる物語で、作家の高校時代と人気作家時代、そして現在の姿の3つの時間軸を交差させながら描き、なぜ彼が失踪したかを紐解いていくんだけど、何とも物悲しく切なく、でもって胸にジーンをきてしまう、なかなか手ごたえのある作品だったやん。

シドニー・ホールは文章を書くのが好きな高校生。
教師に勧められて初めて書いた長編小説「郊外の悲劇」が出版社に気に入られ、
発売するやベストセラーとなり、たちまち人気作家の道を歩み始めるシドニー。
数年後、高校時代の時に愛しあったメロディと結婚していたが、
今では夫婦仲は破たんし、彼女はシドニーの元から去っていた。
ある時、シドニーのサイン会に来た熱心なファン青年が、自殺したニュースを耳にした。
マスコミで、彼の小説が若者に悪い影響を与えるとの声が上がった。
そして、しばらくしてシドニーはすべてを捨てて失踪した。
時が経ち、書店や図書館でシドニーの小説が燃やされる事件が相次いだ。
中年の刑事が捜査に当たり、事件の真相を探るなかで、
シドニー・ホールの身に起こった、運命を狂わせてしまう出来事を知ることとなるが…。

シドニー・ホールの3つの時代が折り重なるように描かれるけど、
脚本がよく練られているのか、混乱することはなく、
とてもスムーズなストーリー展開で、ミステリー要素も含みつつ、
少しずつ、なぜシドニーが失踪することになったのかが描かれていく。
クリステンセン監督の巧みな演出センスのおかげもあると思うけど、
“ほんの一瞬で人生が変わってしまった”主人公を、
寄り添うのでもなく、突き放すのではなく、微妙な距離加減で見据えているな。
自分のせいでもないが自害してしまう高校時代の友人、
また嘘をついたせいで妻だけでなく誕生する子供まで…。
そして、刑事と思わせていた男が実は…。
最初は曖昧だった輪郭が、少しずつ形を整えていき、
最後にはっきりとした造形物が出来上がるみたいな構成がベリーナイスやん。
クリステンセンは、「ミッシング ID」(11年)「トランス・ワールド」(11年)などの
脚本も書いているけど、脚本家としての腕前もなかなかみたい。

シドニー・ホールに扮したのは、
「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」(10年)「ウォールフラワー」(10年)のローガン・ラーマン。
高校生時代、人気作家時代、そして失踪後の放浪時代を、
童顔ながら髪型や髭などで変化をつけ、巧みに演じてるな。

メロディ役は、「ネオン・デーモン」(16年)のエル・ファニング。
僕には、彼女は透明感があってピュアで、どこか不思議ちゃん的なイメージが強いんだけど、
結婚後の妻としての立ち居振る舞いも嘘くさくなく、演技派なんやと実感したわ。

そして刑事(?)役のカイル・チャンドラー。
ジョージ・クルーニーとアレック・ボールドウィンを足して2で割ったような顔立ちで、
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(16年)など、脇で渋いところを見せる俳優みたいだけど、
今回も、なかなか渋くて、美味しい役柄やないの。ちょい華がないけど。

他にも、シドニーの母に
「ミッション・インポッシブル/フォールアウト」に出ていたミシェル・モナハン、
シドニーの父に、「オー・ブラザー!」(01年)の個性派ティム・ブレイク・ネルソン、
出版社の社長にネイサン・レインなど、脇役も充実しているな。
もう一人、高校教師ジョーンズ役のヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世も印象的だ。
彼、「グレイテスト・ショーマン」(17年)に出ていたのね。

とにかく、ショーン・クリステンセンには注目しておいてもいいんじゃな~いと思わせられる、
次作が気になる監督の一人になったやん。


ソニー・ピクチャーズ 2018年10月3日レンタルリリース



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テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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