「ブッチ・キャシディ 最後のガンマン」(11年・スペイン) 老境にさしかかった元アウトローの生き様にグッときたやんかいさぁ!

ブッチ・キャシディ 最後のガンマン
アメリカン・ニューシネマ「明日に向かって撃て!」(69)で描かれた実在の銀行強盗ブッチ・キャシディとサンダンス・キッド。南米ボリビアに逃亡するが、結局、警官隊に銃殺されたってことになってるらしいけど、もしも、ボリビアの奥地でブッチ・キャシディが生きながらえていたら‥。
主演がアメリカ俳優サム・シェパードだし、最初、本作はアメリカ映画だと思っていたら、な、な、なんとスペイン映画。
スペイン人が撮った西部劇って、どんなだろうと思って見たんだけど、これがなかなか渋い、見応えある作品でありやんした。

1927年・ボリビア
ブラックソーン(本作の原題)と名を変え、
ボリビアの奥地で静かに暮らしていたブッチ。
老後の余生を、今は亡きキッドの恋人エッタの息子と暮らそうとアメリカへの帰国を決意する。
銀行で全財産をおろし、帰国準備を始めた矢先、スペイン青年エドゥワルドに襲われ、金を積んだ愛馬に逃げられてしまい無一文になってしまう。
ブッチは、青年に怒りをぶつけるが、彼が「命を狙われ逃げてきた。鉱山経営者から盗んだ大金を隠しているから、それで返す」と言うのを信じ、仕方なく隠し場所に向かうことにするが‥。

エドゥアルドの言葉を信じたばかりに、えらい目にあうんだけど、
昔、強盗をはたらいていたブッチだけに、
どこか彼に若い頃の自分を見ているような気になったからかも知れないな。
おかげで、ブッチまで命を狙われるハメに‥。

監督は、佳作サスペンス「パズル」(99)を撮ったマテオ・ヒル。
アレハンドロ・アメナーバル監督作「海を飛ぶ夢」「アレクサンドリア」の脚本も書いてる人だけど、
西部劇へも思い入れがあったのかな。
端正かつ深みのある映像で、ブッチの男らしい生き様を、少々の哀愁味をまぶし、丁寧に描いてみせてる。
表面が真っ白な塩で覆われているウユニ塩湖の珍しい景観で繰り広げられる銃撃戦など、
アクション描写もキレがあるし。
ウユニ塩湖をはじめ実際にボリビアで撮影したらしい(と思うんだけど)風景は広大で実に美しいし、
本作が、スペインのアカデミー賞と言えるゴヤ賞撮影賞と美術賞をとったのも納得の映像美よ。
劇場の大きなスクリーンで見たかったな~って気にもさせよる。

また、挿入される音楽が、これまた良いんだ。
ブッチが馬に乗って道を歩むバックに、切ないギターの音色とともに
「♪俺の遺体を収めておける墓はない、終末のラッパが聞こえたら 土から飛び出すのさ
川を見ろして俺が何を見たと思う 俺を追ってくる天使の一群さ♪」
とシャガれた男性の声で情感たっぷりに歌われるんだけど、
ブッチの心情とシンクロするみたいで、なんか胸にグッときてしまうわさ。

映画は、1900年のブッチとキッド、それにキッドの恋人エッタの描写がインサートされ、
彼らを追うピンカートン探偵社のマッキンリーが、キッド達にしてやられる場面も見せる。
また、ブッチがキッドのために最後に行った行為も‥。

おそらく、帰国を決めたブッチの心に去来する、在りし日の楽しく過ごした日々の追憶なんだろうけど、
それがブッチにとっては、何ものにも代え難い、深く胸に刻まれた記憶なんだ。
その記憶を止めおこうとして、里心もあるけど、エッタの息子と暮らしたいと考えたのかも知れないな。

ブッチに扮するサム・シェパードは、撮影時、70歳の手前。
白くなった髭を蓄え、深く刻まれたシワ、静かに年を重ねて、
それでもまだ男の色気を匂わせる気骨ある主人公にピッタリで、渋さ満々に演じてる。
ピストルを構える姿も、なかなかカッコ良いし。
バンジョー弾いて、下手ウマな歌声も聞かせてくれたりもする。
20数年ぶりに再会するマッキンリーに、「クライング・ゲーム」など、
ニール・ジョーダン監督作でおなじみのスティーブン・レイ。
ブッチを追い続け、それに疲れ切り、今ではボリビアの街で安酒をくらいながら
旅客のガイドみたいな仕事で食いつないでいる、人生にくたびれた男を好演。
そして、ブッチを窮地に追いやるスペイン青年にエドゥアルド・ノリエガ。
ヒル監督の「パズル」に主演している、ハンサムで演技力もあるスペインの人気スターだ。
未公開でDVDリリースされ、本ブログで紹介した彼主演の「命の相続人」(08)
特殊な能力を持ってしまった医師の話だけど、ヒューマン・ファンタジーとも呼べる佳作で、オススメよ。

単純明快な西部劇アクションを期待したら、ガックリくるかもしれないけど、
老境にさしかかったブッチの心情を描いた人間ドラマとして見たら、結構、胸にしみるかも。
実際、僕もそうだったしね。
劇中、ブッチのセリフに「男の人生には2つの瞬間がある。家を出る時と戻る時だ。他は全部、その間だ」。
そして、ブッチは「家」である「アメリカ」に帰っていくのよねぇ‥。


角川映画 2013年1月11日レンタルリリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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