「ランズエンド 闇の孤島」(12年・イギリス) ’怒り’を’情熱’と勘違いし、取り返しのつかない過ちを犯してしまった刑事、そして‥

ランズエンド 闇の孤島
「アメリカン・ビューティー」(02)のアカデミー賞監督サム・メンデスが製作総指揮をつとめてるってのが、一応セールスポイントの、劇場未公開・英国サスペンスでおます。
監督が、イギリスらしい端正なゴシック・ホラーの佳作「アウェイニング」のニック・マーフィーってのに興味をひかれ見てみることにしたんだけど、サスペンスより人間ドラマに重点を置いた、ちょい切なくて、もの悲しい、なかなか渋い作品であ~りました。
なんでも、04年にイギリスTVで放映された連続ドラマを劇場映画用にリメイクしたものだそう。

舞台は、クラシカルな建物が立ち並ぶ、海沿いの町ランカシャー。
少女殺害事件が発生し、刑事ジョーは、被害少女と親しくしていた、
元小児性愛犯罪者ピューリーが怪しいとにらみ逮捕し、尋問する。
だが、証拠不十分でピューリーは釈放されてしまう。
どうしても疑惑をぬぐえないジョーは、パーティの夜、
同じ刑事の弟クリシーと共に、軽めの認知症を患う父を車で送る帰り、
酔った勢いで、ピューリーが奉仕活動をしている協会に行き、
彼を無理矢理、離れ小島に連れていき、白状させようとする。
そこは、元刑事の父が、狙いを付けた容疑者を力づくで白状させるのに使っていた島だった‥。

ワイド画面に切り取られた、どこか寂しさみたいなもんが漂う、
冷え冷えとしたブルーがかった映像が、なんとも魅力的だな。

監督は、ドキュメンタリー出身だそうだけど、
越えてはならない一線を越えてしまい、罪を犯してしまう主人公を、
寄り添うのでもなく、突き放すのでもなく、適度な距離感で描いてみせてるな。
シュールじみた映像も差し挟み、映画らしい味付けも巧みだし。
ただ、連続ドラマを92分に凝縮(多分ね)しているせいか、
ジョーとクリシーと父の関係を軸にし、
ジョーの妻や娘、クリシーの恋人など、周囲の登場人物の描写がアッサリし過ぎな気もするわ。
後半で、ジョーの妻が夫のしでかしたことを知る場面じゃ、誰からの知らせかは判然としないしね。

刑事達の犯罪捜査も、現代にしては、後手後手に回りすぎているような。
ま、それを言ったら、この物語が成立しなくなるんだけどね。

キーワードとなる、殺された少女の体に掘られていた文字「フォー・リアル」も、
もうひとつインパクトに欠けるような気もするし。
その言葉のせいでジョーは‥、となるわけなんだけど。

ま、ハラハラするようなサスペンスを期待して見ると、もの足らないかもしれないな。
でも、父と息子達のシリアスでヒューマンなドラマとして見れば、ぜんぜんそんなことはない。

キャストは、演技力のあるイギリスの中堅俳優が揃ってる。
ジョー役に「ダビンチ・コード」のポール・ベタニー。
罪悪感にさいなまれ苦しみながらも、家族を思い、罪をひた隠しにしようと必死になる主人公を、
オーバーアクトにならず、ちょい狂気を滲ませながら、リアリティ豊かに演じてる。
弟のクリシー役に、ベタニーとはちっとも似ていない、チビでズング気味のスティーブン・グレアム。
ジョーより、ちょい心優しいのか、ピューリーの母に同情したり、人間くさいキャラを好演。
二人の父に、「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」(11)でアメリカ進出をはたした
ルパート・ワイアット監督「DATSUGOKU 脱獄」で主演を演じていたブライアン・コックス。

そして、ジョーの同僚で、彼の行動に不審を抱くロバート役に、マーク・ストロング。
「シャーロック・ホームズ」(09)で、ホームズの敵役が印象的だったな。
シャープ・ボディにクールな眼差しで、「ジョン・カーター」など、悪役が似合う俳優さんだけど、
本作じゃ、クールさは相変わらずだけど、冷静沈着で、ちょい人間くさい刑事を、そつなく演じてる。
彼が、ジョーの前で言う「我々は時に怒りを情熱と勘違いするものだ」って含みあるセリフ。渋いやないの~。

もう一人、ピューリー役に、ベン・クロンプトン。
マイク・リー監督「人生は、時々晴れ」(02)に出ていた人だけど、
いかにも元性犯罪者って匂いを放っていて、胡散臭さプンプン、
ジョーに罪を犯させる引き金となるキャラを巧み演じてる。

「ジョーは、愛する人のためなら地獄へも行く。人は何のために苦しむ? 愛だ」
クリシーのセリフだけど、結局、ジョーは愛のために苦しみ、そして地獄へ堕ちていったと彼は考える。
はたしてそうだろうか、僕には、愛する人のためってより、
自分の信念が揺らぐことを恐れ、自分自身を守るための行為に思えたりして。
愛するひとのためって言葉は、良いわけにすぎないのよ。
それなら、父親のとった行動の方がよっぽど‥。
いずれにしろ、ラストじゃ、なんだか、もの悲しい切ない余韻に浸らせられてしまう作品であ~りました。


カルチュア・パブリッシャーズ 2013年9月6日レンタルリリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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