「ナタリー」(11年・フランス) 最愛の人を失った女とサエない男の、ほっこり優しいラブストーリーにグッときたやんかいさぁ!

ナタリー
フランスで25万部のベストセラーになった恋愛小説を、原作者のダヴィド・フェンキノスと彼の兄ステファン・フェンキノスが共同監督した、ちょいユーモラスで、ほっこりと温かいラブストーリーでおます。
去年の第20回・大阪ヨーロッパ映画祭でされたんだけど、主演が「アメリ」のオドレィ・トトゥにもかかわらず、劇場未公開、DVDVスルーとなってしもたんよね。
いくらフランスのベストセラーの映画化と言ったって、美女と平凡でサエない男の恋物語って、日本じゃウケないと映画配給会社が判断したんかしらね。

監督が、原作者とその兄で、2人にとって初の劇場作品ってことだし、ひょっとしたら頭でっかちで、ひとりよがりな映画になってるかもとも思ったんだけど、ま、初監督の兄弟のお手並み拝見とばかり、レンタルしてみやした。

で、見終わったら、心がうららかな春の陽射しに包まれるような、
なんとも心地よい気分に浸らせてくれる作品であ~りました。

ナタリーは、3年前に最愛の夫を事故で亡くして以来、仕事一筋の生活を送っていた。
彼女が勤める会社の社長は、彼女に気があり、言い寄るんだけど、
もう誰も好きになれないと思っているナタリーは、それをすげなく拒否。
ある日、亡き夫を想っていたのか、うわの空状態のとき、
自分のオフィスにやって来た、同僚でサエない風貌のスウェーデン人マーカスに、突然キスをしてしまう。
自分でもモテないと自覚しているマーカスにとっちゃ青天の霹靂(へきれき)、
今度は自分からナタリーにアタックしようとするが、彼女はキスのことを覚えていなかった。
そして、いいお友達、いい同僚でいましょうと言われ、それを素直に受け入れるマーカス。
そんな素朴で心優しいマーカスに、ナタリーはいつしか惹かれ始めていく‥。

まず、オープニンの喫茶店のシーンがニクイやん。
若い頃のナタリーが喫茶店に入ると、ハンサムな若い男フランソワが彼女が何を注文するか考え、
もしアプリコットなら声をかけてみようと思っていたら、彼女がその通り注文。
店から2人が揃って出た時、彼が突然、彼女を抱き寄せてキス!
初対面なのに、なんで唐突にキスを?なんでナタリーは驚きもせず、それを受け入れたん?
と思ったら、2人はとっくに恋人同士で、初めての出会いの場を再び訪れていたんだと判る。

フランソワがナタリーに求婚する場面も、雪降る夜の町中で、手をつないだカジュアルな服装の2人を、
カメラがぐるりと一回りする間に、服が白のウエディングとスーツに変わっていき、
それで、結婚したことが、こっちに伝わってくる。
なんかセンスのいい省略の仕方というか、語り口だな。

フランソワが亡くなり、3年が経ったってのも、
普通なら字幕で何年後とかでるところを、
映像で上手に見せる(ナタリーの親友ソフィーの妊娠と2歳児)など、
初監督らしく、いろいろと映像展開に工夫を凝らしていて、
それも、あざとさを感じさせない、なんかナチュラルなタッチで描かれるところが好感もてるな。

ナタリーにキスされて、マーカスがダイい自分でもモテるんだと心躍らせながら町を歩くと、
すれ違う女性達が、彼に色目を使ってくる妄想にふけるところも、
T-rexの「ゲット・イット・オン」がバックに流れ、ウッキウキの彼の心情をさらりと見せるし。

兄のステファン監督は、本作の前に短編を数本撮っていたらしいけど、映像センスは、なかなかやん。
映画前半のフランソワが亡くなり、抜け殻のようになったナタリーのうつろな姿を、
ことさら悲劇的に描くこともせず、それでいて、彼女にすんなりと共感してしまえるような、
見せ方のさじ加減が、なかなか巧みだなって気がする。
こういうシーン、日本映画なら、どうもベッタベタのお涙頂戴になってしまうんよね。

また、音楽の使い方も、小粋だな。
「ゲット・イット・オン」もそうだけど、フレンチ・ポップスやヒット曲を、
主人公の心情を代弁もするように画面に流れ、映像が弾んでくるんだ。

オドレィ・トトゥは、もう誰も愛せないと思っていたのに、
マーカスに出会って、心が癒されていき、
少しずつ、新しい恋に踏み出していこうとするヒロインを、とても自然体で好演してる。
外見より中身で相手を見極めていくってのも、彼女が演じると、なんか説得力あるし。
ファッションも、生活感があるのに、どこかオシャレっぽいのもナイスやん。

そして、彼女と恋に落ちるマーカス役のフランソワ・ダミアン。
おつむの毛が寂しくて、お世辞にもハンサムとは言えない風貌で、服のセンスもダサダサ。
ナタリーに好意を寄せる社長や親友のソフィーも、
彼と初めて会ったとき、まさかナタリーが惹かれている彼だとは
これっぽちも思われず、無視されてしまうんよ。
ま、ナタリーの最愛の夫が、ハンサム(演じるはフランス期待の若手スターらしい、ビル・マルマイ)
だっただけに、仕方ないかも。

ナタリーから、良い友達のままでいましょと言われ、そうしようと心に決めたのに、
徐々に恋心がつのっていき、そんな自分をセーブしよと、
社内でもナタリーをわざと避けたり、心優しいだけに、
なんともいじらしいじゃあ~りませんか。
それでいて、ナタリーから彼女が子供時代に夢中になったお菓子ペッツのこと聞いたら、
それをプレゼントしたりしよるし。

そんなダサいけど心優しい人を、
ダミアンは、フランスじゃ人気コメディアンらしいけど、
オドレィ同様に、オーバーアクトにならず、自然体で演じてる。
ちょい気になる、良い俳優に出会ったなって感じ。

ラストの、ナタリーが子供の頃から青春時代を過ごした、
生まれ育った家の庭を見ながらマーカスがつぶやくモノローグ。
「彼女のすべてを知っているこの庭に、僕は隠れていよう」

見ていない人にはわからないかもしれないけど、
これから愛する人・ナタリーを、ずっと見守っていこうする意思表示みたいで、
グッきてしまったやんかいさあ。


カルチュア・パブリッシャーズ 2013年11月20日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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