「キル・ユア・ダーリン」(13年・アメリカ) 50年代後半、既存の文化や体制に反発した青年達の姿を描いた、ゲイ・テイスト漂う青春ドラマやんかいさぁ!

キル・ユア・ダーリン
ハリー・ポッターのイメージがどうしてもつきまとうダニエル・ラドクリフ。
ポッターのイメージ脱却をはかったのかどうかは知らないけど、クラシックホラー「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」(12)じゃ、子持ちのやもめ男を演じたり、本作じゃ、実在の詩人でゲイのアレン・ギンズバーグ役に挑んだり、いろんな役にチャレンジしているみたい。
そう言えば、ショーン・コネリーが、当たり役007ジェームズ・ボンドのイメージ定着を嫌って、いろんな役柄を演じたのと似ているな。

ところで、アレン・ギンズバーグってビート文学を代表する詩人だってのは知っていたけど、ビート文学ってのがどういうものか、よく解らなかったのでネットで調べたら、1950年代後半から60年代前半にかけて、既存の文化や体制を否定し、それに敵対する文化(カウンターカルチャー)としてアメリカの若者を中心に広がったものだそう。
「キル・ユア・ダーリン」は、そんなビート・ジェネレーションの中心人物だったギンズバーグと、彼の創作を大いに刺激したルシアン・カーとの愛憎劇を軸に、ギンズバーグと後に共著「麻薬書簡」を書いたウィリアム・S・バロウズ、「路上」のジャック・ケルアック等が登場する、実話を元にしたドラマ。

ジャケットには、”史上もっとも美しく危うい殺人事件”なんてキャッチ・コピーが載ってて、
学園サスペンス風をうたってるけど、確かに殺人事件は起こるけど、ちっともサスペンスじゃないし、
1940~50年代のアメリカを舞台に、若き文学青年たちの姿をシリアスなタッチで描いた
青春ドラマのおもむきが強かったわさ。

1944年、コロンビア大学に入学した、詩人の息子アレン・ギンズバーグ。
大学の正統な授業の仕方に疑問を抱いたアレンは、
図書室で反逆児的な振る舞いをしたルシアン・カーと出会い、彼に惹かれるものを感じた。
ルシアンを通して、バロウズ、ケルアックなど、既成の文化に反発を抱く青年達と親しくなり、
彼らの行動に感化されていくアレン。
ルシアンと過ごすことにより、アレンは自分の創作意欲が、より増していくように思えた。
そのルシアンには、彼に寄り添い、つきまとう元教授で今は清掃夫の年上の男デヴィッド・カマラーがいた。
そして、ルシアンがデヴィッドを遠ざけ、彼から離れようとしたしたとき‥。

40年代、社会に反発を感じる若者達の姿が、丁寧な風俗描写の中、鮮やかに描かれているな。
ラドクリフは、精神を病んだ母を想いながらも、ルシアン達と、ハーレムやゲイの街クリストファーで
ジャズにしびれ、クスリに酔う日々を送るんだけど、その雰囲気に、なんか惹かれてしまったな。
古きを破壊し、新しき文学創造せよ!と!”ニュービジョン(新幻想派)”宣言をして、
自分たちの新しい文学を築かなきゃ、と声を張り上げ、
深夜に大学の図書室に侵入し、当時、閲覧禁止になっていたヘンリー・ミラーなどの書物を、
展示ウインドウの古い文学書と入れ替えたり、やるうことは少々ガキっぽいけど、
そこがなんか青春ぽくて、クスリっとさせられたな。
青春時代って、バカなことでも真剣に取り組み、ムチャするんよね。

そんな若き文学青年達の、社会生活からずれた日々を綴りながら、
アレンのルシアンへの恋心が、ちょい妖しいニュアンスを漂わせながら描写される。
互いの手を切って血を混じり合わせたり、指を舐めたり、
酔いつぶれたルシアンの髪の毛をアレンが愛おしむようにもてあそんだり。
そして、二人は激しく唇を重ねたりもするんだけど‥。

ラドクリフは、ナイーブながらも、ルシアンを通して、新しい文学表現に目覚め、それを目指す主人公を、
オーバーにもならず等身大の人間として、とてもナチュラルに演じているな。
パブで出会ったルシアンに似た男に身を任せるセックス・シーンにも、全裸になって挑んでるし。
ま、そんなに露骨な描写はないんだけどね。

ラドクリフより、暗い秘密を抱えながら、反逆児的に振る舞うルシアン役のディン・ハーンの印象が強かったな。
どこかゲイな匂いを漂わせて、アレンや元・恋人らしきディッドを翻弄する青年を、
時に切なげに、時に傲慢に、妖しいオーラを放ちながら、見事に演じきってるな、ほんまに。
彼が出ている「アメイジング・スパイダーマン2」を、ちょっと見たくなったわさ。

ちょっと意外だったのが、デヴィッドを演じたのが、TVシリーズ「デクスター 警察官は殺人鬼」で、
主人公デスクターを演じたマイケル・C・ホールだったこと。
思い切った役柄に挑戦するなあと思ったけど、彼もデクスター・イメージ脱却のために、
この役柄に挑んだんやろか。

笑気ガスでぶっ飛んでるバロウズ役ベン・フォスター、ケルアック役ジャック・ヒューストンも、良い感じだし、
アレンの父ルイスを演じたデヴィッド・クロスは、コメディ系の人らしいけど、
いかにも古いタイプの詩人ってのを、控えめながらさらりと演じてる。
精神を病んだ母に扮したのは、ジェニファー・ジェーソンリー。
「マシニスト」「ロード・トゥ・パーデイション」「ルームメイト」など、様々なジャンルの映画に出ているベテラン女優。
演技派らしく、心の壊れた女を好演し、作品にアクセントを与えてるな。

監督のジョン・クロキダスの監督デビュー作らしいけど、
彼の詳細はネットで調べたけど、わからずじまい。
アートの世界で有名な人なんだろうかしらね。
ラドクリフやディン、ジェニファーなどをキャスティングできるくらいだし。
新しい時代を担う一人の詩人の出発点を、同性愛をからめて、節度を持って描いたみたい。
多少、つっこみ不足で、言葉足らずな気もするけど。
ま、実際に起こった事件で、実在の人物だらけだし、遠慮があったかもしれないな。

映画の冒頭に入るナレーション
「何かを愛した時 それは永遠に君のものになるかもしれない
それは突き放しても、弧を描いて戻ってくる 君の元へ
君の一部となり 君を破滅させる」
ちょっと興味をそそる意味深なセリフだけど、
結局、誰が破滅させられたのか、または否か、それはルシアンなのか、アレンなのか。
見終わって、ちょっと考えたけど、やはり破滅したのは‥。

いずれにしろラドクリフのポッター・イメージ脱却路線は、
まずまず順調に進んでるって思いましたわさ。


TCエンターテイメント ジャパン 2014年5月2日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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