「マフィアは夏にしか殺らない」(13年・イタリア) マフィアがはびこるシチリアで生まれ育った男の子の、コミカルで、ちょいシリアスな成長ドラマでおまんにやわ!

マフィアは夏にしか殺らない
「マフィアは夏にしか殺らない」ってタイトルから、ノワール風味のギャング映画かなっと最初は思ったんだけど、ジャケットに人なつっこそうな少年の顔のアップがデザインされているし、ちょいアート系の作品ぽくもあるみたいで、いったいどんな映画なんだろう?と気になって見てみたんだ。
去年のイタリア映画祭2014で日本で上映されていて、何でもイタリア・アカデミー賞やイタリア映画記者賞で、新人監督賞を受賞したらしく、本国でも大ヒットらしいのね。

で、これが、ケラケラ笑えて、でもってシニカルな要素もあり、胸がジンときちゃう秀作でありやんした。
風変わりな少年の恋物語と、マフィアにまつわる事件を巧みに絡み合わせ、娯楽要素も抜かりなく、
久しぶりに、面白くて、味わいのある、愛着の持てるイタリア映画を見たって感じよ。

物語の舞台は、シチリア島の州都パレルモ。
コッポラ作品「ゴッドファーザー3」にも登場した、マフィアがはびこってる土地。
1970年代、そんなパレルモで生まれ育った少年アルトゥーロ。
ある日、転校生のフローラを一目見たその時から、恋の炎がメラメ~ラ。
でも、なかなか思いを告げられず悩んでいた時、
偶然、テレビ番組に登場したアンドレオッティ首相の、
奥さんへのプロポーズの話を聞いて、
成る程、そうすればいいんだ、僕の告白のアドバイスをしてくれたと、
首相が大好きになってしまうアルトゥーロ。
部屋に彼の写真を飾り、学校の仮装大会でも、首相の扮装をするくらい。
(DVDジャケットの写真は、アンドレオッティに扮したときの姿)
でも、首相の言った方法でフローラに恋心を伝えようとした矢先、
彼女は銀行家の父と共にスイスに引っ越してしまった…。
そして、大人になったアルトゥーロは、小さな放送局で働いていたが、
代議士の秘書となってパレルモに戻ってきたフローラと偶然再会。
彼女の後押しで、代議士への取材記者に選ばれ、
今度こそ、彼女に思いを告げようとするが…。

監督・脚本は、大人になったアルトゥーロを演じている、ピエルフランチェスコ・ディリベルト。
俳優の時はピフと名乗ってるそうで、彼自身、パレルモの出身らしい。
本作は、彼の初監督だけど、
マフィアの存在を感じつつ生活する中での、少年の甘酸っぱい恋心を、
ほっこりとしたユーモアをまぶして、リズムを刻むようなキビキビしたタッチで描いている。
アルトゥーロの誕生なんて、卵子に精子がドドッと押し寄せるCGアニメにしたり、
卵子にひとつの精子が突入するのと、マフィア同士の抗争をカットバックで見せたり、
どこかポップな感覚が見られるのも、なんかナイスやん。

彼に、パレルモ特有のお菓子・イリスを教えてくれた警部や、
将来は記者になると決めたアルトゥーロがアポナシ・インタビューを敢行した議員、
それに、彼のフローラへの幼い恋を優しく見つめる検事が、
次々と、マフィアによって無惨に殺されていくって、暗いエピソードも、
あまりシリアスにならず、そんな事件が日常茶飯事のパレルモの状況を見せつつ、
あくまで主人公のラブストーリーから物語はぶれない。

マフィアにまつわる犯罪事件は、テレビニュースなど実写が挿入され、
物語にリアリティを与えているけど、反マフィアを声高にメッセージするってことはない。
でも、ラストに、アルトゥーロが自分の息子に、マフィア撲滅に立ち上がり、
命を落としていった議員、警官たちのモニュメントを一つ一つ優しく教えていくところは、
反マフィアへの主張が、穏やかだけど、真摯に見ている側に語りかけてくるようで、
なんだか、ちょい胸がジーンときてしまったな。

子供時代のアルトゥーロを演じたアレックス・ビスコンティ少年が、実に良いなあ。
マフィアの抗争や暗殺が日常的なパレルモで、
大人達が、殺したのはマフィアじゃなく女だってウワサ話を耳にすると
それを本気にして、死ぬのはイヤだから、女の子に近寄ろうとしなかったり、
でも、牧師にそんなことはないと言われて、女の子へのアタックを始めたり、
いじらしいじゃあ~りませんか!

そんな、少々多感な少年を、アレックス君、とても等身大に自然体で演じてるのよ。
少年時代のエピソードをもっと見たいって気もしたわ。
少女時代のフローラ役、ジネヴラ・アントーンも、
アレックス君をやきもきさせる女の子を、とてもナチュラルに演じていて、これまたベリーナイス。
大人になったフローラには、クリスティアーナ・カポトンディ。
ちょっと「マッサン」のエリー役シャーロット・ケイオ・フォックスにちょい面影が似ている女優さんだけど、
ピフとはお似合いのカップルみたい。

いずれにしろ、次作が楽しみなイタリアの監督さんだな。
ま、次作が撮れても、日本じゃ特別映画祭の上映止まりで、
DVDリリースもままならないかもしれないけど。

オンリー・ハーツ 2015年3月6日レンタル・リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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