「10番街の殺人」(71年・イギリス) めちゃクラ~イけど、なかなかシャープな、ブリティッシュ実録犯罪ドラマやん!

10番街の殺人
TSUTAYAの「発掘良品」シリーズって、過去にソフト化された作品やソフト化されていなかった作品の中から、”100人の映画通が選んだ本当に面白い映画”を発掘してレンタルリリースしてくれるってのが、ありがたいと思う。
それも、芸術系の作品からB級の娯楽作まで、幅広いジャンルの中から作品選びをしていて、名作オンリーにならないところも評価できると思うな。

本作「10番街の殺人」も、今年1月に発掘良品の1本としてレンタルされたもので、元々TSUTAYAの「復刻シネマライブラリー」シリーズで発売されていた作品。

劇場未公開ながら、前から見てみたいと思っていた作品だっただけに、ウレシカルカルでおまんにやわ。
なにせ、「復刻シネマライブラー」は、完全受注生産で1枚3,800円とお高いのよね。
完全受注生産だけに、廉価版も出そうにないしね。

さて、この「10番街の殺人」、
イギリス・ロンドンに実在した連続殺人鬼ジョン・クリスティーを取り上げた実録犯罪ドラマで、
クリスティーと、彼によって、妻子殺しの罪を着せられ絞首刑にされた男ティム・エバンスの話を軸に
描かれた作品。
なんでも、クリスティーが実際に住んでいた10番街のアパートで撮影されたらしく、
オープニングタイトル以降は音楽を排し、リアリズムに徹した作りになっている。

1944年・ロンドン。
気管支炎で悩んでいた女性を治療してあげると自宅に招いたクリスティーは、
イギリスらしく、まずは紅茶でもてなし、そしてガスを吸わせて絞殺。
裏庭の土を掘って死体を埋めた。
そして5年後の1949年。
クリスティーの住む10番街のアパートに、貧乏な子連れの若夫婦ティム&ベリルが越してきた。
ベリルは、二人目の子供を宿したが、ティムの稼ぎでは生活できないと思い、堕胎することを考えていた。
それを察知したクリスティーは、自分は医者になる勉強もしていたから助けてあげると言い、
その言葉を鵜呑みにしたベリルは、彼から堕胎治療を受けることにするが…。

殺人鬼クリスティーに扮したのは、リチャード・アッテンボロー。
「ジュラシック・パーク」(93)のオーナー役の小太りのジイさんと言えば、
あ、あの人と思い浮かべる人もいると思うけど、
俳優だけでなく「ガンジー」でアカデミー監督賞を受賞し、
「コーラスライン」「チャーリー」なども撮ってる才人。
そんなアッテンボローが、物腰穏やか、落ち着いた言葉づかいで、
ごく普通の中年オヤジに見えながら、心の内に、どす黒い狂気を宿した殺人鬼を、
実に生々しく演じている。
ズングリ体型にハゲでメガネ、およそ男性的魅力からかけ離れているのに、
女性たちが、いとも簡単に彼の巧みな言葉に騙され、誘いにのってしまうのか、不思議なくらいだけど、
おそらく、害がなさそうで、ちょい知的な雰囲気に、油断させられてしまうんだろうな。

彼によって、妻子殺しの濡れ衣を着せられ、絞首刑に処せられるティム役は、ジョン・ハート。
「リドリー・スコットの「エイリアン」で、腹からエイリアンの幼虫が飛び出し、
最初のエイリアンの犠牲者となるクルーを演じていた俳優さんだ。
シリアス系からエンタメ系まで、多彩な役柄をこなす演技派だけど、
本作じゃ、無学で文字を読めず、虚言癖があり、感情的にもろく、
クリスティーに丸め込まれたあげく、いい加減な裁判で絞首刑にされる哀れな男を好演。
僕は、コミックの映画化作品「ヘルボーイ」(04年・ギレルモ・デル・トロ監督)で、
主人公の育ての親のトレヴァー・“ブルーム”・ブルッテンホルム教授を演じていたんだけど、
このキャラがなんか好きなのよ。

監督は、リチャード・フライシャー。
「10番街の殺人」の前に、同じように連続殺人鬼を扱った実録もの「絞殺魔」(68)を撮っていて、
こちらはアメリが舞台で、当時の人気スター、トニー・カーティスがシリアルキラーに扮していたな。
マルチスクリーンを多用し、映像的にも凝った作りで、
フライシャーの演出センスもなかなかの面白い作品だった。

本作「10番街の殺人」でも、淡々と描いているようで、クリスティーがティムの妻ベリルを初めて見たとき、
彼の視線が、恰好の獲物を見つけたとでも言うように一瞬うごめいたり、
ティムたちが階段前で喧嘩して、倒れたベリルの太ももが露わになったとき、
クリスティーの目の色が変わったり、
短いカットで、クリスティーの心理状況を巧みに描く手腕は、なかなかのものやん。
じんわりと不気味さが見ている側に伝わってくるのよ。

露骨な殺人描写はほとんどないけど、殺人の時に使うロープや小道具を効果的に画面に映し出し、
次のカットで、死体を始末しようと床板を外して穴を掘っていたり、省略の仕方も、手際がいい。

フライシャー監督は、最初、ドキュメンタリーやニュースフィルムを手掛け、
後に劇映画の監督をするようになった人らしいけど、
それだけに、実録ものを、劇映画の手法を使いながらも、
リアルに描くのに、たけているのかもしれないな。

ところで、リチャード・アッテンボロー主演作に「雨の午後の降霊祭」って
面白いミステリー映画があるんだけど、この映画じゃ、
子供誘拐を企てる霊媒師の妻の片棒を担ぐ、
「10番街の殺人」の殺人鬼と違って、気弱な夫を演じていて、こちらも印象深かったな。
「雨の午後の-」は、黒沢清監督が「降霊」として日本バージョンでリメイクしたことでも知られる作品よ。

しかし、TSUTAYAの「発掘良品」シリーズで、
リチャード・レスター監督のコミカル・ミュージカル「ローマで起こった奇妙な出来事」や
リノ・ヴァンチュラ主演のコミカル・アクション「女王陛下のダイナマイト」なんてのも、
リリースしてくれへんやろか。
2本とも、ヒネリの利いた、なかなか面白い作品なんやけどね。
"100人の映画通"の誰かが推してくれたらいいのになあ、ほんまに。

ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント/復刻シネマライブラリー 2016年1月6日レンタル



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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