「人生はローリングストーン」(15年・アメリカ) ポストモダン文学の俊英作家とローリングストーン誌の記者の5日間の旅をビビッドに描いた、ちょっぴり切ないシリアスドラマやん!

人生はローリングストーン
洋画を映像ソフトで見る場合、字幕版で見るか吹替え版で見るか、どちらで見る人が多いんだろうか。
映画好きの友人の中には、洋画は絶対に字幕で見なきゃダメだ、吹替えは邪道だ、なんて言う友もいる。
洋画の吹替えを軽視する映画ファンも確かにいるけど、僕は、日本の吹替えって技術的になかなか優れていると思っているから、絶対字幕でなきゃってこだわりはあまりない。
吹替えの方が、字幕より言葉の情報量が多いから、却って作品の意図を理解しやすくなる場合だってあるし。
だから、映像ソフトに吹替えが収録されていたら、字幕だけでなく、吹替えで見直すこともある。
吹替えの方が、映像に集中することができるって利点もあるしね。

さて、本作「人生はローリングストーン」。
ポストモダン文学の旗手の一人と呼ばれたアメリカの小説家デヴィッド・フォスター・ウォレスを密着取材したローリングストーン誌の記者デヴィッド・リプスキーの回想録を基にしたロードムービー風の実話ドラマ。
ウォレスとリプスキーの会話がメインの作品だけに、セリフがとても重要なんだけど、
最初に字幕版で見たときは、要約された字幕だといまいち二人の心情がつかみきれなくて、
吹替えで見直したんだ。
すると、ウォレスが抱える心の闇というか、
世間で文学的才能を注目されてしまったが故に思い悩んでしまう心情を、
より理解することができ、映画として印象深いものになったんよ、ほんまに。
もちろん、ウォレスとリプスキーを演じた二人の俳優の演技力、監督の演出の力量もあるんだけど。

1990年代末、アメリカ・ローリングストーン誌の仮採用記者デヴィッド・リプスキーは、
小説家でもあり、本も出していたが、恋人の勧めもあって、
注目を浴びている新進気鋭の作家デヴィッド・フォスター・ウォレスの小説を読み、
ヘミングウェイ等と並ぶ凄い作家だと思ったリプキーは、彼のことをもっと知りたくなり、
彼の新作小説のプロモーション・ツアーに同行取材することとなった。
ざっくばらんで気さくなウォレスとの旅は、最初はうまくいっていたが、
ある出来事をきっかけに彼とリプスキーの関係が気まずいものとなり、そして…。

ぼさぼさのロングヘアにバンダナを巻き、2匹の犬と暮らしているウォレス。
穏やかな言葉づかいで、とても気さくな印象で登場するんだけど、
リプンスキーとべったりと過ごすうち、
ウォレスが、鬱(うつ)病で入院したこと、自殺監視プログラムを受けていたことなど、彼の暗い過去、
そして今もそれを引きずっているかもしれないことを、リプスキーが知ることとなる。

作家としての知名度が上がり、注目を浴びるが故に抱いてしまう心の不安。
シャイなのに、自己顕示欲が強くなってしまいそうな自分自身をおそれるウォレス。
そんなウォレスなりの「人生のつらさ、心の弱さ」を、同じ作家として理解していくリプスキー。

監督ジェームズ・ポンソルトは、本作で初めて知った監督さんだ。
とりたてて大きな出来事がおこることもなく、ほとんど主人公二人だけの会話で、
淡々としたタッチでストーリーを綴っていくんだけど、
二人の表情や仕草などを、カメラが寄り添うようなタッチで、
シャープ、かつ繊細に映像に切り取り、じんわりと人間味を漂わせながら描いて見せる。
そして、感動させられるってのとは違う、なんていうか、
「生きていくことのしんどさ」を静かに語りかてきて、
心の深いところでジーンとさせられてしまうような、そんな感じかな。

ウォレスに扮するジェイソン・シーゲル。
「ハッピー・ニート 落ちこぼれ兄弟の小さな奇跡」(11)で、
30歳にしてニートなダメ男を演じていたのが印象に残っている俳優。
「寝取られ男のラブ・バカンス」などコメディ作品によく顔を出している人だけど、
本作じゃ、才能豊かだが、砂糖菓子のようにモロイ心を持った小説家を、
シリアスに、説得力たっぷりに演じている。

ウォレスにより、人生のつらさを垣間見たリプスキー役は、
娯楽作からシリアスものまで幅広い役柄をこなす若手演技派ジェシー・アイゼンバーグ。
ウォレスを深く知るにしたがって、作家とは何かを考えるようになった(と思う)青年を、
実力派らしく、ニュアンス豊かに演じている。
「ゾンビランド」で演じた、ひきこもりの青年キャラが、僕は好きなのよね。

映画は、オープニングで、40代のリプスキーが、ウォレスの死(自殺)を知らされ、
12年前の、彼がウォレスと過ごした5日間の旅が描かれ、
そして、最後にまた現在に戻り、彼がウォレス追悼の会で、
その旅は人生最高の経験だったと集まった人に語りかける構成になっている。
リプスキーの追悼の言葉のあと、
地元の教会でディスコダンスを楽しげに踊る12年前のウォレスの姿が、
ハイキーな色合いで、愛おしむように映し出されんだけど、
彼の小説を読んだことがない、って言うかウォレスの名前さえ知らなかった僕だけど、
なんだか、彼に興味を持ってしまい、読みたくなってきてしもたやん。
今度、図書館に行って探してみようっと。

リプスキーの追悼の言葉のひとつ
「本は孤独を消してくれる」
僕が思うに、ウォレスは、いたたまれない孤独な人生を忘れるために
小説を書き続けたのか知れないな。

ところで、ウォレス達が新作プロモーション・ツアーで訪れた町ミネアポリスに、
メリー・タイラー・ムーアの像が観光名所として出てくるんだけど、
確かジュリー・アンドリュース主演のミュージカル映画「モダン・ミリー」に
出ていた女優さんだと思うけど、彼女、アメリカじゃメッチャ有名なんだなあと
本編とは全く関係ないところで、新しい発見をしましたわ、ほんまに。 

しかし本作の邦題「人生はローリングストーン」って、なんかベタ過ぎるやないけ。
おそらくリプスキーがローリングストーンズ誌の記者ってところから考えた安易なタイトルやろね。
原題「The End of the Tour」が、なんでこうなるの?
僕なら「旅の終わりに~ウォレスとリプスキー・心の旅路~」にするけどねぇ。

ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント 2016年1月27日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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