「ぼくとアールと彼女のさよなら」(15年・アメリカ) 冴えない男子高校生と難病の女の子の交流を軽やかに描いた、ユーモラスでちょっぴりホロリの青春ドラマやん!

ぼくとアールと彼女のさよなら
重い病気を抱えた女の子が男の子と出会う物語と言ったら、二人の間に恋が芽生えて、男の子が愛する彼女を悲しみをこらえて最後まで看取るってな、涙腺ユルユルにしまくりチヨコな、お涙頂戴ストーリーを思い浮かべてしまい、その手の映画は苦手だし、今まであまり見なかった。

でも、「ぼくとアールと彼女のさよなら」は、主人公の男子高校生が映画オタクってところに、映画好きな僕としちゃ興味をそそられ、去年のサンダンス映画祭でグランプリと観客賞をゲットしたと知り、見てみることにしたんよね。

で、これが、ごく普通の男子高校生が、難病を抱えた女の子との交流を通して、ほんの少し心の成長を遂げていく姿を、ユーモラスかつビビッドに描いた、なんとも気持ちの良い、上出来の青春ムービーやったやん。
ヘンに泣かせにはしらず、難病ものにありがちな展開にならないところも好印象よ。

目立たず出しゃばらず、無難に学校生活を送るのが信条の男子高校生のグレッグ。
趣味と言えば、幼い頃から社会学の教授である父からアート系の映画をいろいろ見せられ、
外国映画好きとなり、友人のアールとともに、名作をもじった映画作りをすること。
ある日、幼馴染みだけど今は疎遠になっている同じ学校に通うレイチェルが白血病となり、
グレッグの母は、彼にレイチェルの話し相手になるよう無理強いし、仕方なく彼女に会うこととなった。
最初は形だけの付き合いだったが、話を交わすうちに打ち解けていき…。

グレッグとアールが作った、好きな映画の題名をバカっぽく変えた作品ってのが、
ゴダール作品をもじった「軽蔑できない」「勝手に走りやがれ」、
ニコラス・ローグ作品のもじり「赤い影/キモいドワーフに殺されるぞ」、
ベルイマン作品のもじり「第七の強引」、ビスコンティ作品のもじり「テニスに死す」、
キューブリック作品のもじり「木綿仕立てとオレンジ」、M・パウエル作品のもじり「クソを吸うカレら」、
J・シュレシンジャー作品のもじり「午後2時48分のカーボーイ」、
H・アシュビー作品のもじり「オールドとモード/老人は髪をさわる」
と、なかなかにアート路線まっしぐらで、グレッグ&アール版映画のワンシーンもちょこっと映るんだけど、
映画好きとしちゃニンマリさせられてしまったやん。

グレッグの父が息子に見せていた映画ってのが、
確かヴェルナー・ヘルツォークの「フィッツカラルド」か「アギーレ/神の怒り」。
そんな映画を幼い頃に見せられていたら、まあ、そうなってしまうのも当然か。

監督は、「glee/グリー」「アメリカン・ホラー・シトーリー」など、
もっぱらTVドラマで活躍していたアルフォンソ・ゴメス・レホン。
劇場映画はお初かもしれないけど、シャープかつ柔軟な映像センスで、
登場人物や背景を、鮮やかに映像に描きこんで見せてる。
登場キャラそれぞれの存在感を上手に際立たせているというか。

また、レイチエルの部屋のクッションや本なかの細工など、小道具の使い方もニクイ。

グレッグの心の内を、パペットアニメで見せたり、学園風景も、どこかポップなタッチで描いたり、
難病ドラマにありがちな湿っぽさを、極力画面に漂わせないように心掛けてるってところもいい感じ。

あくまでグレッグの心の成長が物語の芯であり、そこからブレないんよね。

原作のジェシー・アンドリュースが、映画の脚本も担当しているせいもあるんだろうね、多分。

グレッグに扮したトーマス・マンは、初めてお目にかかった若手俳優だけど、
ちょいオタク気味のごく普通の高校生を、とても自然体で演じている。
病状が悪化したレイチエルを励ますためにオリジナル映画を作って見せることになるんだけど、
最初は成り行きで仕方なく撮影していたものが、
やがて、本気で彼女のためを思い、時間をかけて作っていくところなど、
微妙な心の揺らぎを、ニュアンス豊かに演じていて、なかなかうまいやん。

レイチエル役のオリヴィア・クックは、どこかナタリー・ポートマンに似た顔立ちのイギリスの女優さんだけど、
僕が彼女を初めて見たのが、劇場未公開のホラー「呪い襲い殺す」(14)。
可愛い娘だなあとは思ったけど、あまり強い印象はなかった。
でも「ぼくとアールと-」じゃ、役柄のせいもあるけど、なんとも印象深い。
病気に侵された自分を悲しんだり、嫌いになったり、でも明るく振舞おうとしたり、
オーバーアクトにならず、これまたナチュラルかつ繊細に演じて見せるんよ。
役柄上スキンヘッドにもなるし、めっちゃファンになってしもたやん。
なんでも、S・スピルバーグ監督のSF大作「ゲームウォーズ」(17年公開予定)のヒロインに選ばれたそうで、
今後、注目を浴びること必至。
なんでも、「スターウォーズ8」のヒロイン候補としても名前があがっているんだとか。

アール役のRJ・サイラーは、ネットで調べても詳細データが全く見当たらず、
TVで活躍しているか、または新人俳優なのかもしれないけど、
親友とまではいかないけど、グレッグとつかず離れずの友人ポジションを、さらりと好演。

もう一人、全身タトゥーを入れた風変わりなマッカシー先生に扮したジョン・バーンサル。
グレッグたちは、彼の部屋にいつも入り浸っていて、ダチみたいな感じなんだけど、
その彼が、自分の亡くなった父のことをグレッグ話すところ、味わい深いやん。
これがラストシーンにつながる深みのあるセリフで、脇キャラなのに、オイシイやないの。

ところで、レイチェルの部屋に「X-MEN」のウルヴァリンのポスターが貼ってあって、
そのポスターのウルヴァリンがしゃべるシーンで、
映画のウルヴァリン役ヒュー・ジャックマンが声の出演をしてるらしいのね。
それがどないしたんや?と言われるかもしれないけど、
なんかジャックマンの律義さがうかがい知れるエピソードじゃあ~りませんか!ほんまに。


20世紀フォックスホームエンターテイメントジャパン 2016年8月3日リリース



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森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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