「ガンスリンガーの復讐」(98年・イタリア) ほっこりユッタリ、心和むマカロニ・ウエスタンてか?!

ガンスリンガーの復讐
ロックスター、デヴィッド・ボウイが亡くなって早や1年とちょっと。ミニシアターじゃ、彼の主演作「地球に落ちてきた男」が追悼上映されているけど、そんな彼が出演したイタリア製西部劇がこの「ガンスリンガーの復讐」。
映画スターとしても「戦場のメリークリスマス」「ラビリンス/魔王の迷宮」「ハンガー」「プレステージ」など出演作は多いけど、この「ガンスリンガー-」は劇場未公開となっちっちで、2年前にソフトリリースされたんだけどセルオンリーだった。
それが、去年の秋、宅配レンタル・DISCASでレンタルされていたのを知り、未見の作品だし、ボウイの追悼をこめてみることにしたんよね。

カバージャケットじゃ、ボウイを真ん中に右にハーヴェイ・カイテル、左にイタリアのレオナルド・ピエラッチョーニが並んでいるから、てっきりボウイ主演の西部劇と思って見たら、彼は脇役だったやん。
主役はレオナルド・ピエラッチョーニなんだけど、
ボウイも脇役ながら、さすがスターオーラはビンビン、なかなか目立ってたわ。

ピエラッチョーニは、本国イタリアで大ヒットし、
日本でも公開された「踊れトスカーナ!」(96)の監督・脚本・主演をこなした人物で、
「踊れ-」で脚本を共同で書いたのが「ガンスリンガー-」の監督ジョヴァンニ・ヴェロネージ。
ジョヴァンニ・ヴェロネージと言えば、
これまた本国で大ヒットを飛ばした「イタリア的、恋愛マニュアル」(05)が
日本でも公開されたので知っている人もいると思うけど。
4話オムニバスの恋愛にまつわるユーモラスなドラマで、僕のお気に入りの一本よ。

だから、ヴェロネージとピエラッチョーニと組んだ西部劇ときたら、
一昔前のマカロニ・ウエスタンになるわけないなあと思って見たら、
案の定、良い意味で裏切られるというか、
何ともホッコリとした、穏やかな春風を浴びているような作品やったやん。
西部劇だから銃撃シーンやアクション・シーンもあることにはあるんだけど、これが…。

西部の小さな町で暮らしているドック一家。
彼は町で唯一の医者で平和主義者。
妻は先住民の首領の娘パール。そして息子のジェレミア。
穏やかな日々を送っていたある日、20年ぶりにドックの父ジョニーが帰ってきた。
ジョニーは伝説のガンマンと呼ばれる拳銃の名手だったが、
彼を倒して名を上げようとするキザなガンマン、ジャックが現れ、
町が騒然とする中、ジョニーに対決を挑んできた…。

物語の語り部となるのが少年ジェレミアで、
彼の目を通して、彼自身や周囲の大人たちの様々な出来事を綴っていき、
おかげで、映画に温かくて穏やかな空気感みたいなものを漂わせているな。
朝は屋根の上でコケコッコーと叫び、夜はウォーと狼の遠吠えをまねる、
ドック一家に住み着いている変わり者ジョシュアの存在が、なんともユーモラス。

とにかく、一昔前のマカロニ・ウエスタンにありがちなシーンが、
次から次へとものの見事に予想を裏切る展開なんだけど、
それがちっともガックリこさせないというか、これもありやんと妙に納得させられてしまう。
なにせ、酒場でジャックの手下どもを撃ち殺すのは〇〇だし、
ジェレミアを救うのに活躍するのは〇〇だし、
ラストのジョニーとジャックの対決場面じゃ○○が…。

ヴェロネージ監督は、西部劇の形をとりながら、
父と息子、祖父と孫の心の絆を描こうとしたみたいで、
そこに、ガンマンの時代が終わり、新しい時代が始まるのを、
ちょっぴり詩情みたいなものを漂わせながら語ろうとしたみたい。

映画の冒頭に、「“ウエスト”で子供たちはカウボーイごっこをした」って言葉が出るけど、
ひょっとして、監督は好きなウエスタンを自分流の味付けをして、
カウボーイごっこをしようとこの作品を撮ったのかな。

デヴィッド・ボウイは、中盤に登場するんだけど、
その登場に仕方が、キザたらっしいというか、カッコつけまくり。
カウボーイハットには羽根飾りがついててオシャレだし、
手下には、女カメラマンもいて、いちいちボウイ指示にしたがって、
彼のナイスポーズを撮りまくらせたりするし。
ギターをつま弾きながら♪ハレルヤ~♪と歌うシーンまで用意されている。
いちおうニヒルでクールなんだけど、最後の決闘じゃ…。
彼も、カウボーイごっこをしたかったので、本作に出たんかしらね。

ハーヴェイ・カイテルは、さすが渋さ満々、ガンマンの暮らしに疲れ、
平穏な生活を送ろうと考えている初老の男を味わい深く好演。

そして主役でもあるレオナルド・ピエラッチョーニ。
医者として町の人たちから尊敬され、町のもめごとなども言葉によって丸く収める
心優しい主人公を、力まず軽やかに演じてる。
いまいち個性に乏しい気もするけど、この作品じゃビッタリコン。

とにかく一昔前のマカロニ・ウエスタンを期待して見ると、なんじゃこれは!と
文句垂れてしまうかもしれないけど、
僕は、好感が持てたし、西部を舞台にしたファミリー・ドラマとしちゃ、
なかなか愛すべき作品やんと思ってしまいましたわさ、ほんまに。

ピノ・ドナッジオの音楽もなかなかよかったしね。

映像文化社 2016年9月30日DISCAS・レンタル



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森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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