「ミッドナイト・スペシャル」(15年・アメリカ/ギリシャ) 不思議な能力をもつ少年と彼の両親が織りなす、優しくて切ないSFミステリー!

ミッドナイト・スペシャル
「ミッドナイト・スペシャル」って、深夜テレビの安いバラエティ番組のタイトルみたいで、見ようか見まいか迷ったんだけど、TSUTAYAが出してるフリーの月刊マガジン3月号で、注目の話題作として取り上げていたので、それなら見てみようかとレンタルしたんよ。

ま、TSUTAYAマガジンのお勧め作品って、ちょうちん記事っぽいのもあり、記事にノセられて借りたらガックリクリクリ・クリクッリ!ってこともしばしば。
特に劇場未公開作の場合は、ネットでもあまり紹介記事を目にすることがないし、作品を見てみるまでは期待感と共に不安感もあるんよね。

そんな数少ない劇場未公開作の紹介記事サイトで、僕がけっこう参考にさせてもらっているのが、前にもこのブログで書いたけど、レンタル店で働いているらしい人が運営しているブログ「[SAMPLE]ビデオながら見日記」。
お客の立場を考えて、主観も交えながら作品を紹介しているところに好感が持てるんよ。

ま、それはさておき、この「ミッドナイト・スペシャッル」(原題も「MIDNIGHT SPECIAL」とまんまだった)、
今どきのSFものにしては、CGを多用することもなく、ドラマ要素に重点を置いた作りで、
じんわりと心におだやかな余韻を残す、実に気持ちの良い作品だった。

カルト教団の師カルヴィンの養子である不思議な能力を持つ8歳の少年アルトンは、
実の父ロイと彼の親友ルーカスと共に、教団から脱出し、ある目的地に向かうため、逃亡を続けていた。
アルトンの能力を救世主として利用していたカルト教団は、彼を取り戻そうと追っ手を差し向け、
また、アルトンの発する言葉が国家の機密情報に触れたことから、政府もアルトンの行方を追っていた。
逃亡の途中、実の母サラも合流し、目的地に近づきつつあったとき、
アルトンはなぜか衰弱していき、追っ手もすごそばまで近づいてきていた…。

物語の背景がかなり端折られていて、
ストーリーが少々解りづらいところがあり、最初はちょっと戸惑ってしまうんだけど、
やがて、不思議な能力もつ少年と父と母の家族の絆に焦点が絞られていき、
いつの間にか、愛する息子へそそぐ揺るぎない愛の姿が、じんわりと浮かび上がってくるんだ。

未見の人のために、ネタバレになるから、あまり詳しくは書かないけど、
アルトンが、なぜゴーグルで目を隠し、夜にしか行動できないのか?
彼の持つ能力は、どこから授かったものなのか?
アルトンたちが向かう目的地には何があるのか?
様々な?がクライマックスで明らかになるところは、なるほどそうだったのねぇと納得、納得。

監督・脚本のジェフ・ニコルズは、インディペンデント系の作家らしいんだけど、
エンタメ要素をちょろちょろっと散りばめながら、人間ドラマを軸に据えた作品を目指したみたい。
だから、今どきのSFと言っても、派手な見せ場連発ってことはない。
それゆえに劇場未公開となったのかもしれない。
特典映像で、監督は1980年代のSF映画チックなものを目指したって言ってるけど、
クライマックスは、確かにそんなテイストを感じとれるな。
また、主要な登場人物の心理描写に無駄がなく、
さりげない言葉や行動の端々から、それぞれの心情がくみ取れるような演出はなかなか。
あまり説明過多にならず、映画を見ている者に、
いろいろと想像する余地を残しているのも、個人的にはナイス。

ロイ役のマイケル・シャノンは、ニコルズ作品「テイク・シェルター」(11)「MUD マッド」(12)と、
ニコルズ作品の常連アクターだけど、目力(めじから)が強くって、少々アクの強い顔立ちだが、
息子のために、何が何でも突き進でいく愛情あふれる父親を、説得力たっぷりに好演。
ときおり垣間見せる優しい笑顔が、またいいんだ。

親友のルーカス役は、「ブラック・スキャンダル」「エクソダス:神と王」のジヨエル・エドガートン。
彼、15年にスリラー「ザ・ギフト」で監督デビュー(脚本も兼ねてる)を果たしているけど、
演出手腕もなかなかで、物語の肝となる主人公の幼馴染を不穏な不気味さを漂わせ、
淡々と演じていて、結構面白かった。

意外だったのが、国家安全保障局の局員ポール役で、
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(15)でカイロ・レンに扮したアダム・ドライバーが
ちょいユーモラスで味のある演技を見せていたこと。
「スター・ウォーズ・フォース-」のときはいまいち好感を持てなかったけど、
このポールは、なんか親しみが湧いたなあ。

他に、母サラにキルステン・ダンスト、カルト教団・教祖にサム・シェパード。

そして、物語のキーとなるアルトン役ジェイデン・リーベラー。
ごく普通のあどけない少年のようでいて、どこか人間離れした存在を、
とてもナチュラルに演じていて、彼なくしては、この映画が成立しなかったんじゃないと思うくらい。

とにかく、派手なSF映画を期待するとサービス不足で肩すかしを食っちゃう作品で、
見た人の好き嫌いが分かれそうだけど、僕は、なかなか気にいったし、
また見直したいと思ってしまったやん、ほんまに。

ちょっと気になったのが、エンドクレジットで流れるカントリー曲。
意外な選曲やないのと思ったけど、歌詞に意味があるんかなぁ。
訳詞の字幕が出なかったので、ちょっとモヤモヤしてしまいましたわさ。


ワーナーブラザース ホームエンターテイメント 2017年3月8日リリース



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エンドクレジットの曲名

>ちょっと気になったのが、エンドクレジットで流れるカントリー曲。
映画のタイトルと同じ、「ミッドナイト・スペシャル」という曲です。ミッドナイト・スペシャルというのは、南部を走っていた夜行列車の名前で、この列車は刑務所の近くを通ります。その刑務所には、ミッドナイト・スペシャルの灯を見ると釈放が近いという言い伝えがあり、「俺を照らしてくれ」と歌っています。

ななさん、コメントありがとうございます

「ミッドナイト・スペシャル」はヒューマンなSFドラマって観点からみると、よくできた作品ですよね。
タイトルのせいもあり、見ている人が少ないのが残念な気がします、ほんとに。

はじめまして

「虎猫の気まぐれシネマ日記」のななと申します。

これは印象に残るSF映画でした。
私は最近のたとえば「オブリビオン」や「インターステラー」のようなSFは
劇中に出てくる宇宙関係の専門用語などが理解しにくくて(理系頭でないから)
物語の急な展開から置いてきぼりになる寂しさを感じるのですが
この作品はそんなこともなく古き良き時代のSF(ETとか)のように
観やすかったです。ヒューマンドラマっぽいのもよかった。
まあ、物語の背景や事情の説明不足による置いてきぼり感はありましたが。

劇場未公開でDVDの作品中心にご紹介しておられるのですね。
私のブログも公開・非公開にはこだわりませんが、DVD鑑賞作品の感想が多いのです。
理由は劇場に行く暇がない、田舎で公開作が限られているので見逃すからですけどね。
この作品もとても良作だと思いますが非公開だったため、
これから話題に少しずつなっていくかもしれませんね。
プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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