「エンドレス・マーダー」(15年・オーストラリア) 殺し屋と彼に自分の殺しを依頼する男との奇妙な関係を描いた、不思議な味わいのヒューマン・サスペンスやん!

エンドレス・マーダー
前にもこのブログで書いたと思うんだけど、ソフトリリースされる劇場未公開の映画って、ユーザーに興味を持ってもらいやすいように、作品の内容とは食い違った売り方をされる場合がしばしばある。

この「エンドレス・マーダー」も、主人公は殺し屋だけど、ジャケットに書かれているようなクライム・サスペンスとは違って、“運命”に導かれて出会う、殺し屋と彼に自分の殺害を依頼する男との友情にも似た奇妙な関係を描いた、不思議な味わいのヒューマンドラマやったやん。

ま、キャストやスタッフに馴染みがないし、本国オーストラリアのメルボルン・アンダーグラウンド映画祭で最優秀助演男優賞や審査員特別賞他を受賞したと言っても、その映画祭自体知らないし、クライム・サスペンスとしてアピールするしかないんやろなぁ。

腕の立つ殺し屋スティーブンは、パーシバルと名乗る男から、
自分を殺してくれないかと、奇妙な依頼を持ちかけられた。
パーシバルは、以前、スティーブンがある殺しの依頼を受け目的場所に着いた時、
ビルの屋上から彼の乗ったタクシーのボンネットに落ち、瀕死の重傷を負った男だった。
スティーブンは、パーシバルから金を受け取ると、
彼の不意を衝いて胸に銃弾を3発撃ち込み、立ち去った。
しばらくして、殺したと思ったパーシバルがスティーブンの前に姿を現した。
今度は、パーシバルが洗面所に入った時に、彼の顔面や胸に銃弾を撃ち込んだ。
だが、パーシバルは片方の眼球は失ったが、死には至らなかった。
彼に興味を抱いたスティーブンは、バーで彼の死にたがる事情を聞き出そうとしたが、
なかなか本当のことは打ち明けてくれなかった。
でも問い詰めると、やっと自分がゲイで、愛する男を殺されたと打ち明けた。
寂しそうなパーシバルを見て、スティーブンは店にいたゲイの男に彼を誘惑させ、
ベッドで気が緩んでいるときに、顔に枕を押し当てて窒息死させようとした。
だが、現場を見られた相手の男を殺しただけで、パーシバルは息を吹き返し、死ななかった。
スティーブンは、3年前に最愛の妻を轢き逃げされて亡くし、
未だにその悲しみから抜け出せないでいたが、同じ悲しみをパーシバルも抱いているように感じ、
いつしか2人の間に奇妙な友情のようなものが芽生えていった…。

最愛の妻の死から立ち直れないでいる殺し屋と、死にたがる男の、
“必然的に出会うことになる運命”が、ちょいセンチメンタルなノワール・ムードを映像に滲ませながら、
ムダのない演出で丁寧に描かれてるな。

監督のドルー・ブラウンって人は、おそらくオーストラリアの人だと思うけど、
セリフより、映像で物語ることにポイントを置いているようで、
殺し屋が、妻が道路上で轢き逃げされて死んだことで、
それがトラウマとなって道路に足を踏み出せずにいたり、
自室では、亡くなった時に妻が着ていたドレスを身にまとい、
口紅を塗って、オペラを聞きながら、彼女を偲んだり、
彼の心の闇や深い悲しみを、巧みに視覚化しようと頑張ってる。

パーシバルにゲイと偽って近づき、彼を痛めつけて金を巻き上げたバーテンを、
彼を傷つけた仕返しとばかりスティーブンが痛めつけるところは、結構なバイオレンスで、
ヒューマンな味わいの中にハードな要素を上手に挟み込み、
物語にメリハリを付けてるな。

マイケル・J・コスピアーの脚本が良いのかもしれないが、
映画のオープニングの出来事が、結局すべての“運命”の引き金となり、
それをスティーブンが、画家であったパーシバルの絵によって最後に気づかされるという展開もニクイ!
何をやってもなかなか死ねない男という、呪いじみてるというか、オカルトじみた話なのに、
それを“運命”というくくりで、上手に人間ドラマとして成立させているやん。
フランスの思想家ヴォルテールの「カンディード」のなかの一節
「起きることは決まっていて変えられない」って言葉も出てくるけど、
変えられない“運命”を、ちょいサスペンスの味付けをして描いたとも言えるかな。
ブラウン監督の演出の手際の良さもあるけど、ラストは、なんだかジーンと来てしまいましたわさ。

精神科医エリザベス・キューブラー=ロスの
死と死ぬことについての画期的(らしい)本「死ぬ瞬間」の中の「死の受容のプロセス」が
主人公達の会話で引用されていているけど、
それがこの作品のテーマに少々関わっているような気がしたな。
まだ未読だから、何とも言えないけど。
図書館で、彼女の著書を探してみようっと。

スティーブン役のスティーブ・マウザキスは、オーストラリア・メルボルン出身の俳優で、
アメリカのTVシリーズ「プリズン・ブレイク」に出ているらしいけど、
これと言って特徴のある顔つきでもないし、華もなく、地味っぽいけど、
殺し屋として腕は立つが、どこかもの悲しさを滲ませていて、
微妙に人間臭い男を、力むことなくサラリと演じているな。
彼、メジャー作品の脇でキラリと光る演技を見せるタイプの役者みたい。

パーシバル役は、
本作でメルボルン・アンダーグラウンド映画祭・最優秀助演男優賞をゲットしたレオン・ケイン。
おそらく彼もオーストラリアの人だと思うけど、
後ろめたい過去ゆえに、いくら死のうとしても、なかなか死にきれない男を、
どこか愛嬌のある丸顔で、これまた好演している。
ズングリ体型のせいもあるけど、ちょいユーモアを匂わせているとこもナイスでごんすよ。

とにかく、ジャケットのようなアクションを期待したら、オヨヨと戸惑ってしまうかもしれないけど、
男二人の切なくも奇妙な友情を描いた異色のヒューマンドラマとして見たら、
なかなかの佳作やおまへんけと思うオージー・ムービーであ~りました。


トランスワールドアソシエイツ 2017年10月4日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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