「盗聴者」(16年・ベルギー/フランス) 几帳面な中年男が盗聴テープを巡る政治事件に巻き込まれる、タイト&クールなサスペンスやん!

盗聴者
「最強のふたり」で、日本でも少しは名前が知られるようになったフランス俳優フランソワ・クリュゼ。
僕が、彼の出演作を最初に見たのが「ラウンド・ミッドナイト」(86年)。伝説のジャズ・ミュージシャンと彼の音楽を愛するフランス・デザーナーの話で、クリュゼは、一人娘を育てる、やもめのデザイナーを力まず、さらりと演じていたな。

脇役が長かった人だけど、彼の主演作を初めて見たのが、劇場未公開でソフトリリースされた「唇を閉ざせ」(06年)。妻を殺された男が、彼女を巡る事件に巻き込まれるサスペンスだけど、なかなか面白かった。彼、この作品でセザール賞・主演男優賞をとったんよね。

そんなクリュゼ主演の新作が、この「盗聴者」。
失業中の主人公が、盗聴テープの聴き起こしの仕事についたばっかりに、殺人が絡んだ政治的事件に巻き込まれるサスペンスで、知らぬ間に事件に巻き込まれ、どんどん追い詰められていく平凡な男を好演していて、作品自体も地味ながら、なかなか楽しめたな。

デュバルは、知り合いの葬儀で、昔なじみのドグリューに会い、
自分はいま失業中で職を探していると彼に話した。
数日後、ある企業から仕事オファーの電話がかかってきた。
オフィスに面接に訪れると、代表者クレマンから、いろいろ質問された後、
君は右翼か左翼かと聞かれ、政治には興味がないと答えると採用OKになった。
クレマンは、保護すべき人や国にとって危険な人物を監視する業務を行っていると語り、
彼らの電話の盗聴記録テープの聴き起こしが君の仕事だと伝えた。
真面目で几帳面な性格のデュバルには、うってつけの仕事で、
指定された殺風景な部屋で、黙々とテープの聴き起こしを続けた。
ある時、テープから、アルジャンと呼ぶ声が聞こえ、何かただならぬ様子にぎょっとした。
しばらくして、デュバルは、たまたま読んだ新聞にアルジャン夫妻が殺された記事を目にした。
怖くなったデュバルは、辞職しようとしたが、クレマンの部下シェルフォが現れ、
今辞めたらどうなるか分からないぜと意味ありげに語り、
自分を君の車で、ある場所まで送ってくれと言い出した…。

最初に、以前の会社で働くデュバルが描かれ、
勤勉だが神経質で几帳面過ぎるばっかりに、ノイローゼ気味になるところを見せ、
主人公の性格を端的に描いてる。
それから二年の間に、妻と離婚し、職を失い、酒に溺れていたことが、
デュバルの数少ない言葉から、うかがい知れる。

ネットで調べたら、監督トーマス・クルイソフの劇場映画デビュー作のようだけど、
脚本も彼が手がけていて、タイトな作品作りを心掛けたみたいで、
セリフは必要最小限に止め、無駄な描写を極力排し、
平凡で人生の負け犬みたいな男が、知らず知らずのうちに身の危険にさらされる姿を、
ひんやりクールなムード漂うシャープな映像で描いてやろうとしたみたい。

だから、見る側が、映像や人物の行動から、物語を読み取っていかなきゃいけないところがある。
アメリカ映画のように、分かりやすくは作られていないんよね。
そのせいで、劇場未公開となったのかも知れないなぁ。

パソコンやスマホなど、今どきのデジタル情報社会で、盗聴テープをヘッドフォンで聴きながら、
紙に書き取っていくアナクロ的な方法が時代錯誤な気もしたけど、
監督は、一昔前のクライム・サスペンスの匂いを出したかったのかもしれないな。
いちおうクレマンに「デジタルは信用できない。情報が簡単に流出し、制御不能になる。
だから紙とテープを使う」と言わせていて、それなりに説得力を持たせようとしているけど。

話は、大統領選や中近東で拉致された人質にまつわる暗躍行動など、
政治的な背景が徐々に浮かび上がってくるんだけど、あまり小難しく描かれず、
とにかく、主人公が危険な世界に陥ってしまい、さあどう切り抜けるかを、
じんわりと緊張感を漂わせながら見せるな。

ラストは、もうちょいスリリングな展開があっても良かったような気もしたけど。
なんかあっさりし過ぎているような感じ。

フランソワ・クリュゼは、あまりスター・オーラを感じさせないベテラン演技派だけに、
追い詰められる男をリアリティたっぷりに演じ、さすが上手い役者やなと思わせる。
彼が演じるから、ハラハラさせるんやろなぁ。

謎めいたクレマン役のドゥニ・ポダリデス、治安総局のリーダーのラバルト役サミ・ブアジラなど、
脇の男優も、地味ながら渋めの俳優を配し、物語をギュッと締める役割を果たしているな。

デュバルが、断酒のために通っていたグループワークで知り合う女性サラを演じたアルバ・ロルヴァケルは、
そんなに美人ってこともないけど、ほのかにナチュラルな色気を放っていてチャーミング。
アメリカ映画なら、彼女もクレマンの一味とかの設定になりそうだけど、
最後まで平凡な普通の女性にしているところも、好感が持てたやん。

ま、いずれにしろ地味っぽい作品ではあるけれど、
僕にとっちゃ、それなりに面白がれた作品であ~りました。


アットエンタテインメント 2017年10月4日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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