「スペースウォーカー」(17年・ロシア) 世界で初めて宇宙遊泳を行った飛行士レオーノフの驚きの体験を描いた実録スペースアドベンチャー!

スペースウォーカー
ソ連(現ロシア)の宇宙飛行士と言ったら、「地球は青かった」の言葉で知られるガガーリンしか僕は思い浮かばないけど、彼の後に世界で初めて宇宙遊泳に成功したソ連の宇宙飛行士がいたのね。
それがアレクセイ・レオーノフって人で、彼の宇宙遊泳がどんなものだったかを描いたのが、この「スペースウォーカー」。

インパクトがいまいちのジャケット・デザインに、なんか地味でこじんまりした作品と違うかって思ったんだけど、宇宙系の映画は好きだし、どんなもんじゃろかいと見たんよね。
で、これが実に丁寧で、しっかりした作りの見応えのある作品だったやん。
特に宇宙でのアクシデントの数々はハラハラさせられっぱなしで、一昔前の宇宙飛行がどんなに大変だったかが説得力たっぷりに描かれるのよ。
アレクセイ・レオーノフ本人が映画の監修を努めているが、どこまで現実に即してリアルに描かれているかは分からないけど、実際に宇宙遊泳時にアクシデントが起こり彼が死にかけたことは事実みたいだし、映画的に大袈裟に描いていないような気がする。
しかし、こういう宇宙物って劇場の大画面で見てみたいなぁ。

1960年代、アメリカと冷戦中のソ連は、
宇宙開発でも相手国より先に宇宙遊泳に成功させようと躍起になっていた。
宇宙飛行士としてスカウトされたアレクセイ・レオーノフは
恐れ知らずで向こう見ずな軍用パイロット。
そして彼と共にスカウトされたパベル・ベリャーエフは冷静沈着な男だった。
1号機として打ち上げられた無人宇宙船がトラブルに見舞われて失敗し、
有人宇宙船の打ち上げ計画が暗礁に乗りかけた。
だが、アレクセイは是が非でも飛び立ちたいと現場責任者セルゲイ・コロリョフに熱心に訴え、
コロリョフは、迷いつつも、このままではアメリカに後れを取ってしまうし、
危険を顧みないアレクセイの熱意を汲み取り、やむなく宇宙船発射を決断した。
そして1965年、宇宙に飛び立ったアレクセイとパベル。
細心の注意を払いながら、アレクセイは宇宙に飛び出し、
世界初の宇宙遊泳を成功させるが…。

アレクセイが空軍パイロット時代に、搭乗中にエンジントラブルに見舞われ、
機転を利かして何とか危機を乗り越える出来事に始まり、
パベルが訓練で落下傘降下中に両足に大怪我を負うなど、
宇宙飛行までのエピソードをテンポ良く描いている。
そして、アレクセイが宇宙船から飛び出し、宇宙遊泳を始めるところも、
きめ細かい描写と的確なカメラアングルで見せ、リアリテイ満点。
あたかも、自分が無重力の宇宙に飛び出したら、
多分彼と同じような気分になるんだろうなと思わせちゃってくれる。
リアルさを追求したSFXも文句なしよ。
開発の途上の時代だけに、宇宙服のちょっとした問題から、
服内の気圧が上がってしまい膨張して中の人間が身動きできなくなってしまうなど、
ほんまにゾクリッとさせられる。
何とかこの危機を脱するが、今度は機自体に小さな亀裂が走り、そのせいで
機内に酸素が充満し発火の恐れが生じるなど、フィクションまがいのトラブル連発。
もう、ロケットが宇宙に飛び出してからは画面に釘付けになってしまいましたわさ。
地球に帰還した後も、これまた危機が訪れてしまうし…。

監督はドミトリー・キセレフ。
ロシアのダークファンタジー「ナイト・ウォッチ」(04)「デイ・ウォッチ」(06)の編集をしていた人だけど、
最初と最後に、アレクセイの幼い頃の姿をファンタジックに映し出し、
作品全体を、実録ながら、どこか宇宙に夢を馳せた人間の姿を通して、
夢見ること、そしてそれを諦めない素晴らしさみたいなものを描こうとしているような気がしたな。
キレの良い演出と編集で、尺が136分と2時間を超える作品だけど、それがちっとも長く感じない。
宇宙船内と地上の宇宙司令室を緊迫感を持って交互に描くなど、
編集で培ったテクニックが存分に発揮されているんだろうな、きっと。
シネスコサイズを効果的に使った映像もベリーナイスよ。

アレクセイに扮したのは、エフゲニー・ミローノフ。
SF「カリキュレーター」で主演していた俳優で、
ドストエフスシー原作のTVドラマ「白痴」に主演するなどロシア名誉勲章を受章した演技派男優。
地味な顔立ちながら、向こう見ずで夢を追いかける主人公を、
決してヒーローではなく等身大の人間として説得力を持って演じてる。
アレクセイと共に宇宙船に乗るパベル役は、
「ナイト・ウォッチ」の主役で日本でも少しは顔が知られているコンスタンチン・ハベンスキー。
国の決めたことには素直に従うがいつも口癖で、アレクセイをサポートする冷静沈着な男を、
ベテランらしく味わい深く演じてる。
現場責任者セルゲイ・コロリョフに扮したタヌキ顔のウラディミール・イリインも、
アメリカに負けてはならじの国からの要請もあり、
失敗を覚悟の有人宇宙船発射を決断する責任者を、苦悩を滲ませながら印象深い演技を見せてる。

ハベンスキー以外、ほとんど馴染みのない俳優ばかりだけど、
本国ならいざ知らず、それが逆に物語にリアルさを感じてしまう結果となったようにも思うな。

とにかく、実録スペースアドベンチャーとして、ほんとに良くできた作品でありやんした。
変に、ソ連万歳みたいな国粋主義じみたものもないし、
エンタテインメントとして充分楽しめるんよね、ほんまに。
映画ファンなら、見て欲しいわぁ。

インターフィルム 2018年2月9日リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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