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「マザー!」(17年・アメリカ) エキセントリックでシュールなヒロインの受難ドラマ!?

マザー!
「ブラック・スワン」「レスラー」の監督ダーレン・アロノフスキーが「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー主演女優賞をとったジェニファー・ローレンスを主演に撮ったにもかかわらず、日本劇場未公開となったのが、この「マザー!」。
公開時に観客からは酷評されたそうだけど、映画評論家による映画レビューサイト「ロッテン・トマト」じゃ、平均評価が10点中8.2点となかなかの好評価だし、ちょっと気になってレンタルしたんよ。

でこれが、娯楽映画を期待したら全く期待外れもいいところかもしれないけど、だからと言ってつまらない作品と言うわけでもない。
監督の作家性がもろに出たアート系作品として見たら、それはそれで興味深く見ることができるし、僕にとっちゃエキセントリックでシュールな奇妙な味わいの作品って印象を持ったな。
一昔前のルイス・ブニュエル監督作品に見られるシュルレアリスムの感覚を、現代風にちょいバージョン・アップしたみたいな感じかな。

ま、見る人を選ぶ作品であることは確かだけど。
しかし、メジャー映画として、こんな作品を作ってしまうなんて、
アロノフスキー監督も大胆やんかいさぁ。

舞台は郊外にある一軒家。
詩人の夫と静かに暮らす妻。妻は日々、家の改修にいそしんでいる。
ある日、整形外科医の男が訪ねてきた。
妻は快く思わなかったが、夫は彼を親切に迎え入れ泊めることにした。
翌日、整形外科医の妻が現れ、その次に彼らの二人の息子が現れた。
見知らぬ人間が次々と来訪し、夫がそれを拒むことなく受け入れることに、
妻は苛立ちをつのらせていくが…。

冒頭は、ヒロインが炎に包まれ顔が焼けただれていく場面。
そして彼女の夫がデコボコした水晶のようなものを部屋のテーブルに飾る。
次に、目覚めてベッドから起き上がる妻。
もう最初から、意味深なシーンが続くが、こんなのはまだ序の口。
整形外科医が登場してから後は、ヒロインの日常が少しずつ歪んでいくというか、
彼女の周囲で、とんでもない出来事が次々と頻発し、
あげくの果てに、彼女に授かった赤ちゃんが…。
映画は、ヒロインの視点で一人称的に展開し、
あらゆる出来事が彼女の目を通して描かれる。
だから見ている側も、彼女の見たもの、体験したものしか映像から受け取ることができない。

ヒロインの存在ってのが、いったい何なのか?
彼女がなぜ嫌な思いをさせられ、それを受け入れざるをえないのか?

ネットで調べたら、監督は、アダムとイブ、アベルとカイン、キリストの受難など、
旧約聖書と新約聖書をベースにストーリーを考えたらしいけど、
そういう見方から言っても、ヒロインの存在がどういうものか、
いまいち理解しがたいところがある。
いっそ、ノイローゼ気味のヒロインの妄想を描いたと言われたほうが
納得してしまえるんよね。

デコボコした水晶のような物は何を意味しているのか?
なぜ兵隊たちが登場しするのか?謎だらけで、とにかく一筋縄ではいかない作品だけど、
映像に力が漲っていて、ヒロイン同様に見ている側も嫌な思いに浸らされ、
ぐいぐいとそのイヤ~な世界のカオスの海に投げ出されてしまう。
後半なんてもう、訳のわからない人間が雲霞のごとくヒロインの家に押し寄せて
好き勝手に振舞うし、もうムチャクチャでござりますがな状態。
そして、最後にヒロインはすべてに絶望したのか、自分の体に火をつけて…。

見ていてアタマの中がグジャグジャになりそうだけど、
メビウスの輪のように、受難めぐりの旅がまた繰り返される予感をはらんだエンディングで、
なんだか妙に納得させられるというか、成程なと思わされてしまう。

しかし、結局この映画はなんだったんだろうと思い、
夫が神で、その僕(しもべ)がヒロインという設定で見たらいいのかなとか、
ヒロインを“世界”と仮定し、その世界を襲い苦しめる様々な天変地異が
周囲に登場する人間たちかなとか、
ほんとに色んな考えを思い巡らすことができる作品でおまんにやわ。
アメリカ映画で、アタマをひねくり回す作品に出合うなんて久しぶりやん。

ジェニファー・ローレンスは、
夫につくす平凡な主婦のようなたたずまいから、どんどん嫌な思いをさせられ、
心を搔き乱し情緒不安になっていくヒロインを、不思議な説得力をもって演じてみせる。
夫の詩人に、スペイン俳優ハビエル・バルデムが扮しているけど、
男くさい彼って、どう見ても詩人には見えず、なぜ彼がこの役に起用されたのか、
不思議でならなかった。
監督なりに、なにか意図があるかもしれないけどね。
整形外科医役のエド・ハリスや彼の妻役ミシェル・ファイファーは、
まだ何となく役柄に合っているような気もしたな。
アダムとイブのメタファーらしいけど、中年コンビってのが、なんか意味深。
しかし、ファイファーのイヤミな中年女っぷりはなかなか。

とにかく、何度も見たくなるような作品じゃないけど、
妙に脳裏にこびりつく、そんな作品であ~りました。


パラマウント・ジャパン 2018年3月23日レンタル・リリース



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テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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