「ボックストロール」(14年・アメリカ) ファンタスティックでキュートなストップモーション・アニメの快作やん! 

ボックストロール
日本を舞台にしたストップモーション・アニメ「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」が話題を呼んだスタジオライカ製作のファンタジー・アニメがこの「ボックストロール」。
今年の春に東京都写真美術館ホールで「スタジオライカ特別上映」として「KUBO-」等と合わせて特別上映されたらしいけど、劇場公開とまでは至らずソフトスルーとなっちっち。
なんでも、第87回アカデミー賞の長編アニメ映画賞やゴールデングローブ賞アニメ映画賞にノミネートされたそうだけど、あちらの劇場で大ヒットしたって話も聞かないし、登場キャラやモンスターが日本人にはちょい取っ付きにくいと思われたのか劇場公開が見送られたみたい。
確かに、ジャケットに載ってる主人公達やモンスターを見ると、いまいち可愛げないし、あんまり魅力的には見えないな。
でも僕はスタジオライカ制作の「ココラインとボタンの魔女」(09)が気に入っていたし、レンタルで観ることにしたんだ。

で、これがキャラ達の見事なまでのナチュラルな動きと、背景となる街のファンタスティックな雰囲気にビンビンに魅入られ、個人的には大ヒットのストップモーション・アニメやったやん。
ジャケット画像と違って、主人公達も人懐っこくて好感が持てるし、モンスター達も愛嬌あるんよね。

チーズブリッジの街では、発明家トラブショーの幼い息子が失踪し、
街の地下に住むモンスター、トロールボックスが彼を誘拐して食べたんだという噂が流れ、
それ以来、トロールボックスに襲われないよう、夜は外出禁止令がひかれていた。
街の権力者ラインド卿は、駆除業者スナッチャーにトロールボックス狩りを依頼した。
そして数年後、トロールボックスに食われたと思われていたトラブショーの息子は、
実は彼らに大事に育てられいて、エッグスと名付けられてすくすくと成長していた。
夜になるとエッグスやトロールボックス達は、街に出て屑鉄や捨てられた金属加工品などを漁り、
地下に持ち帰っては、それで様々なマシンや道具を作り暮らしていた。
ある夜、街に出たエッグスは、ラインド卿の娘ウィニーに見つかった。
その後、エッグスを育てたトロールボックスのフィッシュがスナッチャー達に掴まってしまい、
エッグスはフィッシュ救出のために、初めて明るい昼間に街に出たが…。

とにかく、登場キャラ達のスムーズで滑らかな動きに魅了させられてしまう。
感情表現も豊かだし、それぞれがキャラに応じた動作で、個性がはっきりと伝わってくる。
トロールボックス達も、フィッシュを始めそれぞれの個性が際立つように動き、
顔立ちもそれぞれ変化を持たせていて、薄っぺらさの欠片もない。
ウィニーのスカートが走るたびにユラユラと揺れ動くなど、
びっくりするほど細かいところまで丁寧に描写されていて、
時間をたっぷりかけて根気強く製作されたんやなぁと感心しまりチコヨよ。
背景となるチーズブリッジの街の家々や舗道、スナッチャーのアジト、
それにボックストロール達が暮らすの地下世界など、
きめ細か過ぎるやんと思うほどきめ細かく立体的に作られてるのもベリーグッド。
ファンタジーの世界にすんなりと入り込めるのよ。

トロールボックスが幼い子供を食い殺したと噂を流したのは、実はスナッチャーで、
彼はラインド卿に取り入り彼を同じように街の権力者になるため、嘘をついたのだった。
そして、トロールボックス狩りで集めた彼らをある目的のためにアジトの地下で働かせ、
あるものを作らていた。
街の権力者になると、権力者だけのチーズの試食会に出席することができ、
スナッチャーは、それに出ることも夢見ていた。

スナッチャーはチーズが好きなのに食べると顔の様々なパーツがイビツに膨れ上がり、
異様な顔になるんだけど、そのたびに手下達が彼にヒルをたらふく浴びせて血を吸い取って
もとの顔に戻すなど、ちょいグロテスクな描写があったり、
ラインド卿が、自分の娘ウィニーより美味いチーズの方にうつつを抜かしていたり、
ちょいシニカルというか、ダークな要素がちょこちょこあり、物語に微妙な薄暗さを滲ませているな。
スナッチャーが、トロールボックスが人を食うという話を
念押しで街の人々に信じ込ませるためにマダム・フルー・フルーの名で女装して、
野外芝居を演じたりするのも、この作品を見るお子チャマには理解しがたいやんって気もするしな。

どうも、どこかヒネクレているというか、単純に明るく健全なアニメを作ろうとはしなかったみたい。
ま、「ココライン-」もどこかダークで、ヒネクレたところがあったしな。
ライカスタジオの製作ポリシーなんかしら。

それでも、トロールボックスに育てられたエッグスが、自分が人間だと自覚しても、
一緒に暮らしたトロールボックス達を見捨てることはせず、
彼らを助けようと勇気をもって冒険を繰り広げるってところはアドベンチャー物の王道チックだし、
ウィニーが、か弱い少女じゃなく気の強い勝ち気なところも現代風だし、
ライカスタジオならではのポリシーをちょこちょこ残しながらも、
微妙なサジ加減でこの作品を作ったみたい。

英語版の声には、
ベン・キングスレー、エル・ファニング、ジャレッド・ハリス、トニ・コレット、
それにサイモン・ペグとニック・フロストと豪華な俳優が並んでいるけど、
字幕版で見ると、有名俳優が声を担当していてもその有難みをちっとも感じないなぁ。

とにかく映像の隅々まで気が配られた作品だけに、
廉価版DVDが出たら、じっくり見なおしてみようと思った作品であ~りました。


ギャガ 2018年6月2日レンタル&セル・リリース



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プロフィール

森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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