「狼たちの処刑台」(09年・イギリス) 老人ハリー、衰えたって銃の腕なら現役よ!

狼たちの処刑台

マイケル・ケーンの当たり役の1つといったら、知る人ぞ知る「国際諜報局」(64)を第1作とする英国スパイ映画ハリー・パーマー・シリーズのハリー。
荒唐無稽な007シリーズと違って、シリアス寄り。なにせ黒縁メガネのハリーは、独り者ゆえ、自分で料理ほか家事を自分でこなすし、生活感たっぷりだった。
もちろん、第1作はスパイ・サスペンスとしても上出来の作品で、「パーマーの危機脱出」(66)「10億ドルの頭脳」(67)と作られ、その後も劇場未公開だけど、初老になったハリーの活躍を描く「国際諜報員ハリー・パーマー」(95)なんてのもある。
「国際諜報員」は、ビデオ持ってるけど、トリミング版。
シネスコ版のDVDが見たいんやけど、レンタルされてないしなぁ。

ま、それはともかく、
ケーンさん、1933年生まれだから今年で77歳になるんやね。
充分お年寄りって気もするけど、まだまだ現役。今年も何本か映画に出演してはるみたい。

本作「狼たちの処刑台」は、09年作品だから、ケーン75歳の時の作品。
ジャケット写真の銃を構えたポーズも決まってるし、よぼよぼ感はまったくなし。
元英国海兵隊で活躍した過去がある主人公が、街の悪らつな若者たちをやっつけるって話だけど、
見終わって、僕には、老後のハリー・パーマーの闘いを描いた映画やなって印象を受けましたわ。
本作の主人公の名も姓はブラウンやけど、名はハリー。
英国海兵隊と英国情報局を置き換えたら、
まんま、ハリー・パーマー・シリーズの番外編といってもおかしくない気がするんよね。

公共団地で年金生活のハリー・ブラウン。
妻は入院中で、毎日、彼女を見舞い、パブで親友のレンとチェスをするのが日課だった。
ある夜、妻が危篤の知らせを受け、急いで病院に向かうハリー。
だが、近道である地下道は、ドラッグを売る凶悪な若者達がたむろしており、
遠回りをしたおかげで、妻の死に目に会えなかった。
さらに、若者達に嫌がらせを受けていたレンが、彼らに惨殺される事件が起こった。
うちひしがれ、パブで酒に溺れるハリー。
その帰り、ナイフを振りかざして襲ってきた強盗を、返り討ちにし殺してしまう。
それが、ハリーの勇敢な海兵隊員スピリッツに火がついた!
ハリーは、レンの復讐を胸に、銃を手に入れようと密売人のアジトに向かった…。

ドラッグきめてバイクで暴走しながら銃をぶっ放し、間違って人を撃ってしまい、
あわてて逃げようとして車にぶつかるってな、若者の不良っぷりを
荒い画質の手持ちカメラで見せるオープニングに、
ドキュメンタリーっぽいタッチの作品かなっと思っちゃうけど、
本編が始まると、いかにも劇映画的な、じっくりと構えた映像になる。

最初に、独りで暮らす、侘びしいハリーの生活を、シャープなカメラワークで端的にとらえ、
新人らしいダニエル・ハーパーの演出手腕、なかなかやんと思わせる。
この後の展開も、ムダなく、キレ良く、柔軟な演出手腕を発揮してるやん。
心理描写も、セリフにあまりたよらず、人物の表情や映像で、さりげなく匂わせるってとこもろエエ感じ。
銃を手に入れるために訪れた密売人の、陰鬱で退廃的なムード漂う部屋でのやりとりも、
おぞましさの中に緊張感が漂い、ベリーナイスでおまんにやわ。
ここで、ハリーが、誰にも言わなかった海兵隊時代のエピソードを語るんだけど、
彼が、少しづつ心に若い頃の勇猛ぶりを甦らせていくさまが、すんなりと伝わってくる。

50年以上の映画出演経験を持つケーン、文句なしの好演ぶりだ。
ちょっとした表情にも、味がありまくりよ。
老人だけに、動きがシャープというワケにもいかず、無理して走って肺気腫を患い、
入院してしまったり、それでも復讐を遂げようと抜け出して、ゼイゼイ喘ぎながらターゲットまっしぐら!
気丈な男の心意気に、シビレルやんかいさぁ!
なれるなら、こんな老人になりたいな。でも、腕力ないし、運動オンチやり、やっぱり無理かね。
彼と関わりを持つ女警部補リンダに、「シャッターアイランド」のエミリー・モーティマ。
警部補なら、デスクにどんと構えていればすむのに、現場主義のようで、
若者の暴力がはびこる地域に、自ら志願し赴任してきたって熱血的行動派の女性を、
とても自然体な感じで演じてる。
アメリカ映画なら、ハリーと彼女の間にほのかなロマンスみたいなものが
芽生えるって展開になりそうなところだけど、そうは問屋がおろさないわね。
レン役は、「ハリー・ポッター」シリーズで、
何かとポッターを目のかたきにしてる魔法学校の用務員ミスター・フィルチこと、デヴィッド・ブラッドリー。
それに、パブの主人シドに、中堅俳優リーアム・カニンガム。
ニール・マーシャルの「ドッグ・ソルジャー」ダリオ・アルジェントの「デス・サイト」と、
活きのいい娯楽作から「リトル・プリンセス」などいろんなジャンルで顔を見るイギリスのベテランだ。
リーアムは、最初、画面の端にちょろっと姿を見せるだけで、
もったいない使い方するなあと思っていたら、クライマックスでメチャ目立つ暴れっぷりよ。
凶悪な若者達に扮しているのは、主犯格にベン・ドリュー。
ちょいファニーな顔立ちなのに、凶暴極まりない青年を、生々しく憎々しく、
ほんまに殺したいと思わせるほどリアルに演じてるな。

渋さ満点の役者に、切れ味シャープな演出。
英国映画賞や倫敦映画批評家協会賞などにノミネートされたらしいけど、
それも納得の、僕に取っちゃグッとくる秀作でありました。

アメイジングDC 2011年3月4日リリース



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森晴樹

Author:森晴樹
大阪市東成区大今里生まれ。大阪市内を転々とし、いつのまにか僕が生まれた町、大今里に舞い戻ってきてしまいました。
情報誌、PR誌の編集・原稿執筆を経て、現在はフリーライター。クロスワード他、クイズ製作もこなしとります。趣味は、DVDで映画鑑賞。

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